告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

文字の大きさ
上 下
57 / 66

番外編 クリスマス⑤

しおりを挟む
「おーし、そろそろ行くか」

 背伸びをしながら良規さんが言うけど今は17時、パーティーまでまだ2時間ある。

「ちょっと早くない?」

「イルミネーション見ながら行けばいいだろ」

 いや簡単に言うけどSP連れてこの人数でぞろぞろ歩いたら周りに迷惑だろ。

「ねえ、それだったらネクタイ買いたいから店に行きたいんだけど」

 ゲームをやめてテーブルまで来た有理と椿にお願いされる。そういえばお揃いのネクタイクリーニングに出したんだっけ。

「じゃあ店に行こうか。イルミネーションは車から見よう」

「ちぇっ、しゃーないデートで行くか」

「デート……」

 おっと、良規さんのデート発言に神楽が赤くなってる。本当いつまでも乙女だな。

「いつもの店でいいかい?」

「「うん!」」

 スマホを取り出し電話をかける伊月さん。店に連絡してネクタイを用意させるんだろうなぁ。まあ大人数で見回るのは迷惑だし仕方ないよな。

 コートやマフラーを着けて大藤さん夫婦に見送られ、ホテルからほど近い店に到着すると、オーナーが待っていて丁寧に挨拶をされるとそのまま奥のVIPルームに通される。ぞろぞろと店内を横切ると、お客さん達にガン見されてしまった。やたらと顔面偏差値が高い集団だし気になるよな。お客さんが店員に「彼らはスターなのかい?」とヒソヒソ話しているが、一般人ですぞ。

 VIPルームに着くと、店のネクタイ全部集めたと分かるくらい大量のネクタイがかけられていて、何故かバレッタなどのヘアアクセサリーが並べられていた。伊月さん的に男子組がネクタイを買うなら女子組にも買ってあげないとフェアではないらしい。まあネクタイ選んでいる間ヒマだろうし桜花と麗羅も喜ぶしいいか。

 という考えを速攻後悔する俺。

「ぐぬぬぬ……」

「瀬名どうしたの?」

 不思議そうに見てくる伊月さんは気づいていない。ヘアアクセサリーを見るのは全然いいのだが、いかんせんお子様が着けるような値段ではないのだ。

「ゼロがいっこ多い」

 ゼロが1つを侮るなかれ。ここは日本ではない。通貨はドルだ。安くても数百ドル、これでは歩く身代金になってしまう。

「何言ってんだ?そもそもお前、数十万のスーツ着てんじゃねーか。桜花だって十万以上の服着て今更だろ」

「分かってるけど……このちっこいのが日本円で八万とか!庶民生まれからしたら「はあ⁉」なんだけど!」

 そう熱弁するもハイソ生まれな3人からは共感を得れず。首を傾げられるだけだった。ガッデム!

 諦めて値段を見ないように見守るのに徹していると桜花と麗羅はお揃いのブローチにしていた。桃紫の蝶をモチーフにしたそれを早速服に着けてもらいきゃっきゃしている。無邪気さが可愛いわ。その光景に親が全員ほんわかしちゃったよ。値段は……う◯い棒やキャベツ◯郎が死ぬほど食える額とだけ言っておこう。

 さて、諸君。「女は買い物が長い」と最初に言い始めた奴、出でこい!
 男も買い物長ぇんだよ!特にうちの子!1時間かけてネクタイ一本選ぶなよ!「これいいね」「いやこっちの方が似合うよ」「やっぱりこっちの方が……」あー、もう女子か!

「母さんこれにする」

「ハイハイ」

「スーツに合う?」

「アウヨー」

「派手じゃない?」

「ハデジャナイヨー」

「……心がこもってない」

 当たり前だ。桜花達なんてものの10分で決めてるんだ。お前達が時間かけすぎるから、ヒマすぎて伊月さんが俺に時計をプレゼントするって言い始めて選んじゃったんだぞ!それがまたセンスが良くて結局購入しちゃったんだからな!恐ろしくて値段見れなかったわ!

 まあ神楽も道連れにしてやったがな!





 時間はかかったがネクタイも購入しその場で着け会場へ向かうと、ちょうどいい時間になっていた。

 会場は中世の建物を少し近代的にしたような白い大きな屋敷で、建物や庭をライトアップしている。
 今回のクリスマスパーティーは今住んでいるエリアの上位αの集まりで、参加するαはもちろん上位と希少種のみで、その家族も参加して行われる以外にアットホームなパーティーだ。

 車を降り、中へ入ると5mはありそうなクリスマスツリーに出迎えられる。天井には目を細めて見ないといけないくらいキラキラとシャンデリアが光を放っており、「シャンデリアが落ちて下敷きになったりする推理小説や漫画があったなぁ」と思ったのは俺だけではないハズ。

 落ちてきたらひとたまりもないシャンデリアをちょっと避けながらホールを歩いていると見知った家族に出会う。

『イツキ!ヨシキ!』

ウェイ蘭華ランファ

 まだ20代後半のα夫婦、リーウェイ蘭華ランファが1歳になったばかりの双子を抱きながらにこやかに話しかけてきた。

『ハッピーホリデイズ』

『ハッピーホリデイズ』

 挨拶を交わし久々の再会を喜ぶ。李夫婦とは5年ほどの付き合いで、夫婦共同経営で大手出版会社を経営している。見た目は2人共背も低く、Ωと間違えられる容姿をしているがれっきとした上位αである。

『そうそう、イツキあの女捕まえたって?』

『まあね』

 情報早っと思ったら伊月さんが捕まえたとメールを送っていたらしく、今日来ているαはほぼ全員知っているそうだ。

『情報通りΩの男女を連れて来てたよ。強制発情ヒート薬を使ってたのか徐々に匂いがキツくなってたね』

『うわ~エッグいな』

 ああ、あれは薬で発情期ヒートにしてたのか。だから2人一気に発情香を出してたのか。

『それも予測済だったから、部屋にバース性専用の空気清浄機や換気をしてたし、僕以外βで揃えてβ用の抑制剤飲ませていたから大丈夫だったよ』

『イツキは大丈夫だったのか?』

『大丈夫じゃなかったけど強い抑制剤飲んでたから殆ど効かなかったよ』

 それにその後つまに助けてもらったからね、と意味深な事を言わないでほしい。神楽まで思い出して赤面してるから!

『拘束してからそのまま外に出すわけにいかないから、連れて行った医師に診せてΩには鎮静剤を打って大人しくしてもらったぜ』

 どうやら良規さんが部屋に連れて入って来た白衣の人は、バース性の医師だったらしい。気になってたんだよな、見ず知らずの白衣の人がいたから。納得だ。

『あれ?イツキとヨシキは医師免許持ってるんじゃないのか?』

『あー、俺達産科専門だし嫁しか診ないから』

『執着強っ』

 おーい、事実だがおかしな事が混じってるぞ。神楽が増々赤くなってるし。

『そっ……それより会場に入ろうよ。ここじゃあゆっくり話せないだろ』

『そうだね』

 神楽が羞恥死ぬ前に話を逸らし会場に促す。これ以上は子供達に聞かせられない話をする予感しかないからな。

 会場に入る前にクローク係にコートを預け入ると、そこは外だった。うん、俺間違った事言ってないからな。

 そして思った。

「金かけすぎじゃね?」



ーーーーーーーーーー

第11回BL小説大賞で作品に投票してくださった方、ありがとうございますm(_ _)m
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

イケメンがご乱心すぎてついていけません!

アキトワ(まなせ)
BL
「ねぇ、オレの事は悠って呼んで」  俺にだけ許された呼び名 「見つけたよ。お前がオレのΩだ」 普通にβとして過ごしてきた俺に告げられた言葉。 友達だと思って接してきたアイツに…性的な目で見られる戸惑い。 ■オメガバースの世界観を元にしたそんな二人の話  ゆるめ設定です。 ………………………………………………………………… イラスト:聖也様(@Wg3QO7dHrjLFH)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

α様に囲われて独立が出来ません!

翠 月華
BL
 男女という性別に加え第二の性別アルファ、ベータ、オメガというモノがある世界。  そんな世界には愚かな過去がある。一昔前、オメガは疎まれ蔑まられていた。そんなオメガ達だがある日を境に数が減少した。その哀しき理由に気づかず、オメガを酷似した結果オメガは宇宙の人口の一割以下まで減った。そして、人々は焦りオメガを保護という名で囲っていった。  そんな世の中に一人の平凡で平穏な暮らしを望むベータ、那央がいた。  しかし、那央はベータではなく、オメガだった。  那央の運命はいかに…

処理中です...