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番外編 鷹司家の人々①
しおりを挟む結納も終わって少しした頃、じいちゃんから「もう上善の事を気にしなくて良くなったかし、瀬名たんと伊月くんの婚約をお披露目したいから遊びにおいで~」と言われたので秋も深まった日曜に鷹司本家に顔を出す事になった。
母親のン十年振りの里帰りも兼ねているので家族4人+伊月さんというメンツで今鷹司本宅の門前にドン!といる。しかも和装で。
着物姿を見たいというじいちゃんの我儘でこうなったのだが、全員分サイズぴったりの着物を送られてきたら着るしかないよな。帰ったらそのままエロに突入する気しかない。(着付けが終わった直後に突入しそうになったが)
両親は落ち着いた色合いの着物で、俺と伊月さんはお揃いの柄で色違い。百夢は何故か黒に近い紺色の着物で膝辺りから裾にかけて銀色のグラデーションがかかっている。ワイルドな様相だからパッと見ヤ◯ザの親分にしか見えん。じいちゃんも何故このチョイスにしたのか。
「たのもー!」
父親が道場破りのような言い方をしながら門をくぐる。迎えに来た車は門の中まで入れないので俺達を降ろしたら走り去って行った。大きな門から玄関まで歩きながら見渡すと、両脇に低い生垣が植えてあり、そこから山茶花が咲き誇っているのが見える。花ノ宮邸とは違う趣きがある庭だ。
玄関に着くと既にじいちゃん達がにこにこしながら待っていた。
「いらっしゃい。美夜たん、瀬名たん待ってたよ~」
ぱあっと両手を広げ満面の笑みで迎えるじいちゃん。あ、ひいじいちゃんか。他にも現当主のじいちゃんと伯父さん達が勢揃いしている。
「美夜たんお帰り~」
「瀬名たんもよく来たね~」
「瀬名たん伯父さんだよ~」
「美夜たんお兄ちゃんだよ~」
「美夜たん相変わらず美人だね~」
たんはやめれー!俺もうハタチ!つーか母さんの美夜たんもキツいんだけど⁉
「ウザい」
「「「えーん美夜たん冷たーい」」」
母さんの絶対零度の眼差しに悲しそうなジジオジズ。あーこれ昔からそうだったんだと察し。どうりで駄菓子屋行った帰りに母さんが疲れた顔してたんだ。
「はあ……あれが兄とは……伊月くん、瀬名、百夢あれが私の兄雪也、修二、桂よ」
「長男の雪也でっす!」
「次男の修二だよ~」
「三男の桂DAZE☆」
うわ~イケオジ3人がポーズ決めながら自己紹介って。しかも全員着物なのにお構いなしか。ポーズの熟れてる感が引くんですけど。
「さあ、みんな入りなさい」
ひいじいちゃんイケオジズのポーズ無視か?切り替え早いな!百夢がポカンとしてるぞ。「みんなあんな感じなんだ……」って小声で言ってるし。俺もこれから会う親戚がそうかと思うと不安しかないよ!
玄関から屋敷に入り通された座敷はたいして歩かなくて着いた。やっぱそうだよな、これが普通の家だ。花ノ宮邸がおかしな広さなんだよ。
お手伝いさんが開けた障子の向こうには伯父さん達の奥さんや子供達がやっぱり着物姿で座っていて大注目される。ン十年振りに帰って来た本家の末っ子と夫、母親そっくりな息子に超絶イケメン、ヤ◯ザのような息子。注目度バツグンですな。性格的に一番インパクトがある父親がこの中だと存在が薄いという不思議。
当主であるじいちゃんに促され、座ったテーブルには寿司や惣菜が所狭しと置かれている。……うん、ちょっと前に似たような光景を見た気がする。
「今日本家に集まってもらったのはものすごーく久しぶりに末娘の美夜たんが鷹司に帰って来たのと、美夜たんの息子である瀬名たんが花ノ宮家次期当主である伊月くんとの婚約を報告する為だ」
「その心は」
「美夜たん達に会いたかっただけだよー」
意気揚々とじいちゃんが話しているが、美夜たん瀬名たんはデフォなんですか?デフォなんですね。( ー`дー´)キリッとして話しているけど、伯父さん達の奥さんと子供達が微妙な顔してるぞ。やはりジジオジズが変なだけで他は普通っぽい。
「兄さん達の奥様方お久しぶりです。この度息子の瀬名が花ノ宮家のご子息である伊月くんと婚約しましたのでご挨拶にあがりました」
母親に紹介され伊月さんと共に頭を下げる。ジジオジに挨拶するのすっ飛ばしてるけどさっき挨拶したからいいのか?
「それはそれはご婚約おめでとうございます。美夜さんも本当にお久しぶりね。元気そうで何よりだわ」
長男の奥さんらしき人が柔らかな微笑みを浮かべ話すと、他の奥さんも頷いている。その後ろに座っている子供達は無表情やつまらなそうな顔をしている。まあ、初めて会う従兄弟の婚約話なんて興味ないだろうな。1人だけ睨んでるのがいるけど。
「おにぃ、アイツ俺嫌い」
「コラ」
「だってアイツおにぃの事睨んでんじゃん」
睨んでいるのに気付いた百夢がボソリと言い睨み返そうとするので、テーブルの下でグリグリしたらふにゃってしまった。百夢には父親が、通常の抑制剤に運命の番専用抑制剤を混ぜて飲ませているので俺を運命と認識はしていないが、ブラコンは全開である。
そんなやり取りをしている間にも親達の近状や俺達の話が進んでいく。それで知ったのは鷹司家に何代も女の子がいない状況で産まれたのが母親らしく、それはもう家族全員猫可愛がりしたらしい。そういう環境だとと我儘に育ちがちなのに持って産まれた性格か、ジジオジズが構っても母親にあしらわれていたらしい。
「美夜たんクールすぎてじいちゃんいじけちゃうよ~」
で、娘フィーバーも伯父さん達にポコポコと娘が産まれた事により落ち着いたのに、母親が自分そっくりな息子を産んだ事でまたフィーバーがきたらしく、会えないひ孫の為にひいじいちゃんが駄菓子屋を作ったり、父親や伊月さんの研究に投資をしていたようだ。あと、上善が娘にあてがうオメガを探して俺に目を付けたのをいち早く察知し、伊月さんに情報をリークしたのは鷹司家だったとさ。
いや、何故フィーバーをぶり返しちゃった?
ーーーーーーーーーー
☆鷹司家情報☆
鷹司家はΩが多く産まれる家系ですが、当主は家のΩを守る為に基本αがなります。
次期当主は長男の雪也、他兄妹はみんなΩです。その中で次男だけΩ同士で結婚しています。
次男曰く「俺は突っ込みたいんだよね~」だそうです。
鷹司家は本家長男以外の兄弟が一代限りの分家として名乗れます。それ以外は親戚筋と呼ばれ、それは同じΩの名家である越乃家や浦霞家も同じです。
この作品は第11回BL小説大賞にエントリーしていますので良かったら投票宜しくお願いします。
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