告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

文字の大きさ
上 下
43 / 66

婚約者になりました(後)

しおりを挟む
 結納……




 それは形式に則って行われる。

 特に上流階級の花ノ宮家がするのだ、厳かなものになるだろう。







 ――――――――――なるよな?普通。

 まさか「目録後で確かめといて」「はーい」で終わると思うか⁉

 俺だってそこまで形式張ってなくていいと思うよ?でもさ、結納品前にして若者組以外ソワソワ……挨拶と目録のやり取りが終わったら速攻さっきの座敷で宴会が始まると思わないじゃん。

 三波家以外上流階級ですよね貴方達。久々の酒だウェーイとか言ってるけど上流階級ですよねジョウリュウカイキュウ。

 あっ気に取られている俺らに「主役がいないと始まらないだろ」と急かす親達。飲み会の主役みたいに言ってるけど、結納だかんな!

 こうしていても埒が明かないので元の席、と言っても先ほどのテーブルや座布団は片付けられに椅子とテーブルに変わっていて和洋折衷の懐石料理が並んでいる。しかも畳が傷まないように毛足の短い絨毯を敷いている。この短時間で完璧に用意するなんて凄いなお手伝いさん達!

 そして俺と伊月さんの席には懐石料理とは別に箱が。小さな座布団のようなものの上に置かれ中にはお揃いのリング、婚約指輪が鎮座している。2人で着けるのは稀らしいけど、互いに着けている方が周囲にアピールできるからと選んだものだ。デザインも結婚指輪と重ね付けできるようにしたんだ。値段は……聞かないでくれ。

「瀬名、手を出して」

 箱から指輪を取るとうやうやしく薬指に通し、着けた指輪に口づけをする。俺も同じように伊月さんの薬指に通し、恥ずかしいのでさっとちゅっとして終わる。みんな注目してるから俺的にこれが限界だ。

「これで婚約は成立した。かんぱーい」

 一斉にグラスを掲げおめでとうの合唱を貰い、嬉し恥ずかし礼をする。うん、指輪を交代で着けてる時から飲みたそうにグラスを持ってウズウズしていたのは見なかった事にしておくよ。

 それからは和気あいあいと懐石料理を食べつつ飲む、飲む、飲む。……主に親達が。
 俺も20歳になってるし飲むけど、一応婚約の場なので舐める程度にしか口にしない。下手に飲んで迷惑かけたら黒歴史にしかならないしな。

 さすがにこの場で伊月さんからの給餌は丁寧に遠慮し、黙々と食べていると神奈さんと母親の会話が耳に入ってくる。どうやら2人は上流階級のΩコミュニティで知り合った仲らしい。

「まさか7年前伊月が美夜の息子を嫁にと言ってくるとは驚いたよ。しかも瀬名くんあの頃の美夜そっくりだし」

「私だって驚きましたよ」

「でもこうやって見るとそっくりなのに分かるもんだな」

 神奈さんが俺と母親を見比べて頷いている。言いたい事は分かる。俺と母親は一卵性双生児なのかと言うくらいうり二つなのに見分けがつくのだ。俺の目が緑色だからとかではなく、男性的女性的な感じで違うので、間違われる事はあまり無い。

「性格までそっくりではないよな?」

「あー、ないない。美夜きゅんはクールビューティーだけど瀬名は伊月くんに似てるよ~」

「それはそれで微妙だな」

「大丈夫、腹黒くないから~」

「なら良し。瀬名くん、伊月は腹黒くて執着も酷いが宜しく頼む」

「瀬名も割り切りが凄いからそこんとこヨロシクね」

 神奈さんは真顔で、父親はへらへらと俺達に言ってくる。さすが親というか的確すぎてぐうの音も出ない。

 花ノ宮夫夫ふうふは伊月さんが人、金、権力を総動員して俺を囲おうとしてるのを見て「息子怖っ」と思ったと。それなのに運命の番が現れた時はどうなるのかと戦々恐々とし、拒否したので安堵したらしい。

「1度瀬名くんとの婚約が流れた時にやらかしそうになってるからねぇ」

 と遠い目で言われたのでみんなの安寧のために、伊月さんを闇堕ちさせないようにしようと心の中で誓ったのだった。


 ◇◇◇◇◇


 結納という名の宴会はまだまだ続いていたが、親達のノリと酒の量についていけないので若者組は適度な時間で抜ける。

 今日は全員本邸ここに泊まる事になっていて、長い廊下の途中で新羅さんや神楽達と別れ本邸の伊月さんの部屋に行く。
 部屋に入ると、12畳ほどのシンプルなフローリングに爽やかなサンダルウッドの香りが部屋中に広がっていてちょっとクラクラする。屋敷が広すぎて風呂やトイレ完備らしい。

 手を引かれソファーがあるのに大きなベッドに座らされ、俺の前に伊月さんがひざまずき麗しい顔を上げる。

「瀬名、僕と婚約してくれてありがとう。7年前、神楽から写メを見せてもらった時からずっと瀬名だけを見ていたから今日を迎えられて嬉しいよ。これからずっと僕の隣にいてね」

 左手の薬指にキスをされ胸が温かくなる。7年間変わらず想い続けるって相当だ。しかも拗らせてるし。でもそれが嬉しいなんて俺も大概だ。

「俺も……伊月さんが7年間想い続けてくれて嬉しいよ。それに運命より俺を選んでくれてありがとう」

 何故か涙が出てきて泣き笑いみたいになってしまった。もちろん嬉し泣きだ。

「一緒に幸せになろうね」

 ふわりと囲うように優しく俺を抱き締め唇がそっと重ねられる。それは7年間を埋めるには足りないものだったけど、これから一緒にいようといつ誓いのキスには十分だった。






 だったんだよ?



「ちょっ、ちょ、伊月さん、ここ伊月さんの実家、部屋、誰か来るかも!」

 うっとりとキスを受け入れていたら段々と深くなり手つきもいやらしいものになっていき、現在ヤル気満々の伊月さんとちょっと待ての俺との攻防戦が勃発中。逃げようにもがっしりと囲われ逃げれない。

「誰も来ないから大丈夫だよ。……それとも僕とスルの嫌?」

「ぐっ……」

 そんな顔で言われたら抵抗出来ないじゃないか。もちろんヤルのは嫌じゃ……ないし?

「まだまだ7年間の想いはぶつけられてないからね。一気にぶつけられるほど少なくないから小分けにぶつけるね」

「ひぇ……」



 俺は婚約というだけではなく、7年分を小分けにぶつけられている事を知った日でもあった。

 大丈夫か俺………







ーーーーーーーーーー


これでこの話は完結となります。お読み下さった方、感想を下さった方ありがとうございます。

思ったよりも父親の宇佐の出番が多くなりました。話の中で専門家という立場上、説明セリフが多いのですが、適当な性格とゆるい話し方のせいで緊迫した場面がじゃなくなるという(笑)

コメディ寄りの物語だったのでそれで良しです!

まだ書きたい話もあるのでもう少し続けようと思ったのですが、あちこち話が飛びそうなので婚約で完結させ番外編で書くことにしましたのでもう少しお付き合いください。

今考えている番外編としては

☆鷹司家の人々
☆瀬名と伊月が番になる話
☆結婚後の話
☆子供の話
☆瀬名と百夢の話
☆飯坂理久のその後

です。結婚後と子供の話は纏める可能性はあります。鷹司家の人々に関してはちょっと話が長くなるかもです。おかしな人たちの集まりなので(笑)

番外編は11/6から2日に1度更新しようと思います。




この作品は第11回BL小説大賞にエントリーしていますので良かったら投票宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

イケメンがご乱心すぎてついていけません!

アキトワ(まなせ)
BL
「ねぇ、オレの事は悠って呼んで」  俺にだけ許された呼び名 「見つけたよ。お前がオレのΩだ」 普通にβとして過ごしてきた俺に告げられた言葉。 友達だと思って接してきたアイツに…性的な目で見られる戸惑い。 ■オメガバースの世界観を元にしたそんな二人の話  ゆるめ設定です。 ………………………………………………………………… イラスト:聖也様(@Wg3QO7dHrjLFH)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

α様に囲われて独立が出来ません!

翠 月華
BL
 男女という性別に加え第二の性別アルファ、ベータ、オメガというモノがある世界。  そんな世界には愚かな過去がある。一昔前、オメガは疎まれ蔑まられていた。そんなオメガ達だがある日を境に数が減少した。その哀しき理由に気づかず、オメガを酷似した結果オメガは宇宙の人口の一割以下まで減った。そして、人々は焦りオメガを保護という名で囲っていった。  そんな世の中に一人の平凡で平穏な暮らしを望むベータ、那央がいた。  しかし、那央はベータではなく、オメガだった。  那央の運命はいかに…

処理中です...