告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

文字の大きさ
上 下
42 / 66

婚約者になりました(前)

しおりを挟む
 えー、お日柄も良くと始まる今日は、俺と伊月さん両家の顔合わせ兼結納の日だ。

 付き合い始めだしまだまだでいいんじゃね?という俺の主張は右耳から左耳に抜けていったようで2ヶ月で互いの家のスケジュールを合わせ、大安一粒万倍日の今日を迎えた。

 伊月さんから仕立ててもらったスーツを着て桐箱に入っている花ノ宮家の家紋入りのネクタイピンやカフス、ラペルピンを身につけリビングに行くとそれはもう嬉しそうな伊月さんが待っていた。

 同じような装いの伊月さんはいつも下ろし流している髪をオールバックにしていて大人っぽい。いや大人なんだけどな。

 今日の会場は花ノ宮本邸、伊月さんの実家だ。なのでいつもより多い護衛と車で向かうとそこは別天地だった。

 延々と続く塀に囲まれたそこは門も大きく、正門から屋敷まで歩いて15分くらいかかりそうだった。今回は車なのでそう時間はかからなかったけど、もうその時点で屋敷は大きいのだろうとは思っていたが、スケールが違った。

 木々を抜けた先に広がるは純和風のお屋敷。超高級旅館よのうな重厚感、庭は某有名御苑真っ青な庭園。東屋も見えますよ。

 車から降り、アホ面を見せないよう冷静を装いながら玄関に入ると天井が高く圧迫感が無い造りになっていた。

 そしてずらりと並ぶお手伝いさん達。これが一番驚いた。繋いでいた手に力が入りくすくすと笑われてしまった。この段階で驚きまくりになるんだったら一度前もって伺わせてもらうんだった。

「今日は宜しく頼むよ」

「「「「「畏まりました」」」」」

 お手伝いさん達が一斉に頭を下げる。言い慣れてるなぁと伊月さんを見たら軽くリップ音をさせてキスをしてくる。いくら頭を下げてて見ていないとはいえこんなトコではやめてくれ!

 抗議も込めてキッと睨むとまたキスをされてしまった。ダメだこりゃ。

 顔合わせの座敷まで本邸の執事さんに案内をされる。庭園を見渡せる廊下を歩いて行くと玄関前から見るより素晴らしく、大きな池には色鮮やかな鯉が優雅に泳ぎ、完璧に整えられた木々は燃えるように赤く色づいている。伊月さんの見た目が"洋"な感じだからここで育ったというのが少し不思議だ。着物を着ているイメージも全然沸かないしな。

 庭園に見惚れながら歩く、歩く、歩く……

 ……ちょっと歩き過ぎじゃね?

 普通のお宅は3階建てでも玄関から3階の奥の部屋まで1分もかからないと思いますが?俺達ゆうに数分歩いてますよね?え?平屋だからだよ?平屋でもここまで広くないと思いますが⁉グー◯ルマップ見るのが怖え!

 これ絶対迷子になるヤツだと慄きながら歩いているとやっと座敷に着いた。

 執事さんの声かけの後ふすまを開けると既に互いの両親が待っていた。しかしおや?両親って伊月さんのとこと合わせても4人ですよね?

「……ねえ、聞いてないんだけど」

「うーん、お伺い立てたら増えちゃったんだよねぇ」

 いや増え過ぎだろ!互いの両親の他に花ノ宮家前当主夫妻から始まって俺の祖父母、鷹司本家前当主と現当主、祐善寺兄弟に良規さんって集まりすぎだろ!何かの会合⁉てか、良規さん神楽の番だけど部外者じゃん!一番ワケワカラン!

「今うちの両親は海外で外せない仕事があって来られないんだ。すまない」

 うん、そういう事じゃないんですよ新羅しんらサン。そして一番の部外者なのににやにやしている良規さんがムカツクー!

「瀬名婚約おめでとう」

 ヤメロ、そんな純粋な目で見てくるな神楽よ。それより隣の良規さんのニヤけ顔をどうにかしてくれ。

「来たか。座りなさい」

 花ノ宮家現当主の伊月さんの母親から促され2人で上座に座らされ、長いテーブルを挟み互いの親戚同士で向かい合っている。これは参加人数の多さと、伊月さんが俺と離れて座りたくないと言った結果らしい。

「皆さん本日は花ノ宮伊月と三波瀬名の両家の顔合わせ及び結納にお集まり頂きありがとうございます」

 伊月さんが頭を下げるのと一緒にペコリとする。

「本日僕と瀬名が立てた結婚までの大まかな予定を皆さんに了承してもらい、結納に移らせて頂きます。まず始めに紹介を。手前から父の花ノ宮雅也まさやと母の神奈、祖父母の仁と芙美ふみ、従兄弟の祐善寺新羅、神楽、友人で神楽の番の遠野良規です」

「こちらも手前から父の三波宇佐と母の美夜、祖父母の和史とナタリー、曾祖父の鷹司洋平、祖父の蓮二です」

 紹介された順に会釈をしていく中「瀬名たんじいちゃん達の名前知ってたんだね!」とじいちゃんが感動している。じいちゃんが母方の曾祖父だと知った時に調べといて良かった~(汗)

「この後の日程ですが結納後、瀬名の発情期ヒートがきたら番になります。結婚は4年後、瀬名が卒業した年に。結婚式は見せたくないですが、花ノ宮家の付き合いもあるので仕方なく、仕方なく国内でやります。僕は研修期間が終わり次第、次期当主として花ノ宮ホールディングスに入る予定です」

 そうなのだ。先日伊月さんが正式に次期当主に指名され、花ノ宮家を継ぐ事になった。元々医師免許を取得しても医師として働く気はなかったらしい。
 ホント俺との子供を取り上げるだけの為に医師免許取るってヤバいよな。前に「瀬名以外の股を見るのが苦痛」って言ってるのを聞いてちょっと引いたよな。

 俺は大学卒業後、父親の研究室で助手をする予定。これは家に居てほしい伊月さんの最大の譲歩だ。ま、妊娠までの期間限定だけど。

「以上が僕達で考えた日程ですが、宜しいでしょうか」

「うむ、いいのではないか。なあ宇佐よ」

「そうですね、こちらも異論はありません」

 伊月さんの母親である神奈さんが俺の父親に話しかけるが、その気安さから知り合いだったようだ。

「……ああそうだ、結婚式の日時は1年前までには決めてくれ。根回しが必要だからな」

 大企業のトップともなればスケジュールも先々まで決まっているんだろう。伊月さんも分かっているから頷いている。

「積もる話はあるからさっさと結納をしてしまおうか」

 パチンと神奈さんが指を鳴らすと、後ろのふすまが開き金屏風の前の赤い台の上に白木に乗せられた結納品が置いてある。

「さあ、さっさとやって宴だ」

 戸惑っている若者組をよそに親達は隣の座敷に移動し始める。それと同時にお手伝いさん達が食事の準備を開始。

 ……もしかして食事宴会を早くやりたくて結納を急いでないか?

 だよな⁉早くしろって目で訴えられてるしな⁉



ーーーーーーーーーー

この作品は第11回BL小説大賞にエントリーしていますので良かったら投票宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

処理中です...