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婚約者になりました(前)
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えー、お日柄も良くと始まる今日は、俺と伊月さん両家の顔合わせ兼結納の日だ。
付き合い始めだしまだまだでいいんじゃね?という俺の主張は右耳から左耳に抜けていったようで2ヶ月で互いの家のスケジュールを合わせ、大安一粒万倍日の今日を迎えた。
伊月さんから仕立ててもらったスーツを着て桐箱に入っている花ノ宮家の家紋入りのネクタイピンやカフス、ラペルピンを身につけリビングに行くとそれはもう嬉しそうな伊月さんが待っていた。
同じような装いの伊月さんはいつも下ろし流している髪をオールバックにしていて大人っぽい。いや大人なんだけどな。
今日の会場は花ノ宮本邸、伊月さんの実家だ。なのでいつもより多い護衛と車で向かうとそこは別天地だった。
延々と続く塀に囲まれたそこは門も大きく、正門から屋敷まで歩いて15分くらいかかりそうだった。今回は車なのでそう時間はかからなかったけど、もうその時点で屋敷は大きいのだろうとは思っていたが、スケールが違った。
木々を抜けた先に広がるは純和風のお屋敷。超高級旅館よのうな重厚感、庭は某有名御苑真っ青な庭園。東屋も見えますよ。
車から降り、アホ面を見せないよう冷静を装いながら玄関に入ると天井が高く圧迫感が無い造りになっていた。
そしてずらりと並ぶお手伝いさん達。これが一番驚いた。繋いでいた手に力が入りくすくすと笑われてしまった。この段階で驚きまくりになるんだったら一度前もって伺わせてもらうんだった。
「今日は宜しく頼むよ」
「「「「「畏まりました」」」」」
お手伝いさん達が一斉に頭を下げる。言い慣れてるなぁと伊月さんを見たら軽くリップ音をさせてキスをしてくる。いくら頭を下げてて見ていないとはいえこんなトコではやめてくれ!
抗議も込めてキッと睨むとまたキスをされてしまった。ダメだこりゃ。
顔合わせの座敷まで本邸の執事さんに案内をされる。庭園を見渡せる廊下を歩いて行くと玄関前から見るより素晴らしく、大きな池には色鮮やかな鯉が優雅に泳ぎ、完璧に整えられた木々は燃えるように赤く色づいている。伊月さんの見た目が"洋"な感じだからここで育ったというのが少し不思議だ。着物を着ているイメージも全然沸かないしな。
庭園に見惚れながら歩く、歩く、歩く……
……ちょっと歩き過ぎじゃね?
普通のお宅は3階建てでも玄関から3階の奥の部屋まで1分もかからないと思いますが?俺達ゆうに数分歩いてますよね?え?平屋だからだよ?平屋でもここまで広くないと思いますが⁉グー◯ルマップ見るのが怖え!
これ絶対迷子になるヤツだと慄きながら歩いているとやっと座敷に着いた。
執事さんの声かけの後ふすまを開けると既に互いの両親が待っていた。しかしおや?両親って伊月さんのとこと合わせても4人ですよね?
「……ねえ、聞いてないんだけど」
「うーん、お伺い立てたら増えちゃったんだよねぇ」
いや増え過ぎだろ!互いの両親の他に花ノ宮家前当主夫妻から始まって俺の祖父母、鷹司本家前当主と現当主、祐善寺兄弟に良規さんって集まりすぎだろ!何かの会合⁉てか、良規さん神楽の番だけど部外者じゃん!一番ワケワカラン!
「今うちの両親は海外で外せない仕事があって来られないんだ。すまない」
うん、そういう事じゃないんですよ新羅サン。そして一番の部外者なのににやにやしている良規さんがムカツクー!
「瀬名婚約おめでとう」
ヤメロ、そんな純粋な目で見てくるな神楽よ。それより隣の良規さんのニヤけ顔をどうにかしてくれ。
「来たか。座りなさい」
花ノ宮家現当主の伊月さんの母親から促され2人で上座に座らされ、長いテーブルを挟み互いの親戚同士で向かい合っている。これは参加人数の多さと、伊月さんが俺と離れて座りたくないと言った結果らしい。
「皆さん本日は花ノ宮伊月と三波瀬名の両家の顔合わせ及び結納にお集まり頂きありがとうございます」
伊月さんが頭を下げるのと一緒にペコリとする。
「本日僕と瀬名が立てた結婚までの大まかな予定を皆さんに了承してもらい、結納に移らせて頂きます。まず始めに紹介を。手前から父の花ノ宮雅也と母の神奈、祖父母の仁と芙美、従兄弟の祐善寺新羅、神楽、友人で神楽の番の遠野良規です」
「こちらも手前から父の三波宇佐と母の美夜、祖父母の和史とナタリー、曾祖父の鷹司洋平、祖父の蓮二です」
紹介された順に会釈をしていく中「瀬名たんじいちゃん達の名前知ってたんだね!」とじいちゃんが感動している。じいちゃんが母方の曾祖父だと知った時に調べといて良かった~(汗)
「この後の日程ですが結納後、瀬名の発情期がきたら番になります。結婚は4年後、瀬名が卒業した年に。結婚式は見せたくないですが、花ノ宮家の付き合いもあるので仕方なく、仕方なく国内でやります。僕は研修期間が終わり次第、次期当主として花ノ宮ホールディングスに入る予定です」
そうなのだ。先日伊月さんが正式に次期当主に指名され、花ノ宮家を継ぐ事になった。元々医師免許を取得しても医師として働く気はなかったらしい。
ホント俺との子供を取り上げるだけの為に医師免許取るってヤバいよな。前に「瀬名以外の股を見るのが苦痛」って言ってるのを聞いてちょっと引いたよな。
俺は大学卒業後、父親の研究室で助手をする予定。これは家に居てほしい伊月さんの最大の譲歩だ。ま、妊娠までの期間限定だけど。
「以上が僕達で考えた日程ですが、宜しいでしょうか」
「うむ、いいのではないか。なあ宇佐よ」
「そうですね、こちらも異論はありません」
伊月さんの母親である神奈さんが俺の父親に話しかけるが、その気安さから知り合いだったようだ。
「……ああそうだ、結婚式の日時は1年前までには決めてくれ。根回しが必要だからな」
大企業のトップともなればスケジュールも先々まで決まっているんだろう。伊月さんも分かっているから頷いている。
「積もる話はあるからさっさと結納をしてしまおうか」
パチンと神奈さんが指を鳴らすと、後ろのふすまが開き金屏風の前の赤い台の上に白木に乗せられた結納品が置いてある。
「さあ、さっさとやって宴だ」
戸惑っている若者組をよそに親達は隣の座敷に移動し始める。それと同時にお手伝いさん達が食事の準備を開始。
……もしかして食事を早くやりたくて結納を急いでないか?
だよな⁉早くしろって目で訴えられてるしな⁉
ーーーーーーーーーー
この作品は第11回BL小説大賞にエントリーしていますので良かったら投票宜しくお願いします。
付き合い始めだしまだまだでいいんじゃね?という俺の主張は右耳から左耳に抜けていったようで2ヶ月で互いの家のスケジュールを合わせ、大安一粒万倍日の今日を迎えた。
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今日の会場は花ノ宮本邸、伊月さんの実家だ。なのでいつもより多い護衛と車で向かうとそこは別天地だった。
延々と続く塀に囲まれたそこは門も大きく、正門から屋敷まで歩いて15分くらいかかりそうだった。今回は車なのでそう時間はかからなかったけど、もうその時点で屋敷は大きいのだろうとは思っていたが、スケールが違った。
木々を抜けた先に広がるは純和風のお屋敷。超高級旅館よのうな重厚感、庭は某有名御苑真っ青な庭園。東屋も見えますよ。
車から降り、アホ面を見せないよう冷静を装いながら玄関に入ると天井が高く圧迫感が無い造りになっていた。
そしてずらりと並ぶお手伝いさん達。これが一番驚いた。繋いでいた手に力が入りくすくすと笑われてしまった。この段階で驚きまくりになるんだったら一度前もって伺わせてもらうんだった。
「今日は宜しく頼むよ」
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お手伝いさん達が一斉に頭を下げる。言い慣れてるなぁと伊月さんを見たら軽くリップ音をさせてキスをしてくる。いくら頭を下げてて見ていないとはいえこんなトコではやめてくれ!
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顔合わせの座敷まで本邸の執事さんに案内をされる。庭園を見渡せる廊下を歩いて行くと玄関前から見るより素晴らしく、大きな池には色鮮やかな鯉が優雅に泳ぎ、完璧に整えられた木々は燃えるように赤く色づいている。伊月さんの見た目が"洋"な感じだからここで育ったというのが少し不思議だ。着物を着ているイメージも全然沸かないしな。
庭園に見惚れながら歩く、歩く、歩く……
……ちょっと歩き過ぎじゃね?
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「……ねえ、聞いてないんだけど」
「うーん、お伺い立てたら増えちゃったんだよねぇ」
いや増え過ぎだろ!互いの両親の他に花ノ宮家前当主夫妻から始まって俺の祖父母、鷹司本家前当主と現当主、祐善寺兄弟に良規さんって集まりすぎだろ!何かの会合⁉てか、良規さん神楽の番だけど部外者じゃん!一番ワケワカラン!
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花ノ宮家現当主の伊月さんの母親から促され2人で上座に座らされ、長いテーブルを挟み互いの親戚同士で向かい合っている。これは参加人数の多さと、伊月さんが俺と離れて座りたくないと言った結果らしい。
「皆さん本日は花ノ宮伊月と三波瀬名の両家の顔合わせ及び結納にお集まり頂きありがとうございます」
伊月さんが頭を下げるのと一緒にペコリとする。
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「こちらも手前から父の三波宇佐と母の美夜、祖父母の和史とナタリー、曾祖父の鷹司洋平、祖父の蓮二です」
紹介された順に会釈をしていく中「瀬名たんじいちゃん達の名前知ってたんだね!」とじいちゃんが感動している。じいちゃんが母方の曾祖父だと知った時に調べといて良かった~(汗)
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俺は大学卒業後、父親の研究室で助手をする予定。これは家に居てほしい伊月さんの最大の譲歩だ。ま、妊娠までの期間限定だけど。
「以上が僕達で考えた日程ですが、宜しいでしょうか」
「うむ、いいのではないか。なあ宇佐よ」
「そうですね、こちらも異論はありません」
伊月さんの母親である神奈さんが俺の父親に話しかけるが、その気安さから知り合いだったようだ。
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大企業のトップともなればスケジュールも先々まで決まっているんだろう。伊月さんも分かっているから頷いている。
「積もる話はあるからさっさと結納をしてしまおうか」
パチンと神奈さんが指を鳴らすと、後ろのふすまが開き金屏風の前の赤い台の上に白木に乗せられた結納品が置いてある。
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戸惑っている若者組をよそに親達は隣の座敷に移動し始める。それと同時にお手伝いさん達が食事の準備を開始。
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