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「さて、上善氏の処理については明日終わるので次は飯坂家ですね」
筒井さん処理って言っちゃったよ。とりあえずご愁傷さまと心の中で言っとく。しかし結局上善の娘に関しては全く思い出せなかったなぁ。
「契約の反故に嘘の噂流布による名誉毀損……こちらは訴訟を起こすつもりです」
「そんな……!」
飯坂両親は青ざめているがそりゃそうだろう。長年ストーキングしてるし息子を唆してたんだから。
「伊月様に対する長期に渡る付きまとい、フェロモンテロともいえる行為、悪意を持って噂を流す、悪質ですから。ただ……」
ちらりと飯坂弟に視線を向ける。
「ただ、先ほどまでの言動を鑑み、精神鑑定を理久氏に受けてもらいます」
「はあ⁉僕は正常だっつーの!」
やだ飯坂弟、筒井さんにまで歯を剥き出しに威嚇してるんですけど⁉大人しそうな見た目とギャップがありすぎて怖い。
「はいはーい、運命の番に拒絶された子って精神的に不安定になる子が多いんだよ。メンタルケア受けたのかなぁ?」
「えっ……あの……」
父親の言葉に飯坂両親が挙動不審になっている。もうそれだけで行っていないのが分かる。
「契約時にその話もして上乗せでお金をお渡ししたはずですが?」
「それは……」
「もし精神鑑定を受けて問題があればこちらも考えましょう」
「「………」」
筒井さんの提案に飯坂両親は黙ってしまった。頭の中でそろばんを弾いているんだろうな。息子が鑑定を受けて余計な事を話して不利にならないかとか。
「精神鑑定はオススメするよーというか受けた方がいい。言動からいって通常生活に支障が出てるはずだから」
「何言ってんだお前!僕は正常だ!」
「いや、おかしいよお前。花ノ宮先輩は別なヤツを選んだんだ諦めろよ」
「兄ちゃんこそ何言ってんの?伊月さんは僕の事が好きなんだよ!今は違うってみんなに言わされてるだけで伊月さんだって運命の番である僕の匂いが好きだし項を噛みたいはずさ!」
やべぇ、飯坂兄が諭してもトンデモ理論を展開させてやがる。
「匂い……匂いねぇ。ねえ飯坂理久くん、今僕の匂い分かる?」
「分かるよ、だって運命の番の匂いだもん!」
得意気に鼻を膨らませてスーハーしている姿がちょっとだけ面白い。
「で、匂いを嗅いだ感想は?」
「うん、良い匂い!」
「それだけ?」
「それだけだけど?」
「体調や気持ちの変化は?」
「そんなの無いよ」
伊月さんの問いにきょとんとする飯坂弟。質問の意味が分かっていないようだ。
「うん、効いてる。君ね、本能が今僕を『運命の番』と認識していないよ」
「はあ⁉そんな事ないよ!」
「だって君、さっき匂いを嗅いでも体調や気持ちに変化が無かったよね?」
そう、さっきの質問の答えは、フェロモンに誘発される運命の番の本能が働かなかったと自分で証明したも同然だった。
「え?何で?だって僕達運命でしょ?」
「忌々しいがそうだね。でも今体は初めて会った時のような衝動は無いはずだよ」
「……」
「そこで聞くけど君は僕の事を好き?」
「好きだよ!だって運命の番だもん!」
「それ以外」
「えっ?」
「『運命の番』という事を抜かしたら僕のどこが好きなの?」
「顔!お金持ち!医学部!頭がいいんでしょ?」
「他は?」
「……」
「分からないよね?だってこの距離で会うの2度目だからね。君が知ってる事なんてネットや世間で知られているものだけ。そんな好き、アイドルや芸能人を好きって言うのと何が違うのかな?」
飯坂弟は本能が求める事さえなければ運命なんてこんなものだと言われているのに気づいているだろうか。そして伊月さんの中身を見ていないし、知ろうともしていないのを。
「あのねー、運命の番だからって幸せになるんじゃないんだよね。相手が既婚者だった場合、家庭を壊して周りを不幸にするし、出合った衝動で番になってから性格が合わなくて別れる事もあるんだよ。お互い好きな人がいるのに本能で惹かれて苦しむ時もある。幸せなカップルばかりじゃないのが現実なの。だからこその今日発表した『運命の番専用抑制剤』なんだよねぇ」
ピラリと父親が薬のシートを取り出し見せる。普通の抑制剤と違い青みがかった錠剤、伊月さんが俺と居たいが為に開発した執念と執着の結晶。
「今伊月くんと君はこの抑制剤を飲んでいる。運命というしがらみが無い状態なんだよ。それでも君は伊月くんの事が好きでいられるの?」
「僕は……」
戸惑いと混乱で言葉がでないんだろう、先ほどの勢いは無くなりテーブルを見つめ動かない。
「……もうこれ以上の話し合いは今日は無理そうなので後日また席を設けましょう。あなた達は息子さんの事をもっと真剣に考えた方がいい」
筒井さんの鶴の一声でその場はお開きになり、後日飯坂家から精神鑑定を受ける連絡が来たらしい。
「伊月さんここに座って下さい」
あれから一度荷物を取りに大学へ行きマンションへ帰って来た俺は、リビングの3人がけのソファーに正座で座りポンポンと伊月さんに座るように促す。
真正面に神妙な顔で座った伊月さんに俺は今から説教をする!会見や話し合いで疲れているだろうが後回しにはできない。
「伊月さん」
「はい」
「俺はこれから説教をします」
「はい」
ぐっと背筋を伸ばし聞く態勢の伊月さんの後ろにおろおろする大藤さんが見えるが気にしない。
「伊月さんは何故俺に大事な事を話してくれないの?そんなに俺信用出来ない?」
「違うっ、違うよ!」
「抑制剤の事は別にいいんだけど、今日の会見や話し合いも直前まで知らなかったし、マンションや交流会なんかも言わなかったよね?何で?」
じっと伊月さんを見つめると、目を細め「やっぱり瀬名の緑は綺麗だね」って何言い出すんだよ!
「瀬名に……瀬名に拒否されると思ったから。だって瀬名面倒くさがりでしょ?特に面倒が起こりそうなものは嫌がりそうだし」
確かに。事前に知らされていたら会見にすら行かなかった自信がある。でも理由を聞いたら行く!……多分。
「お……俺だってきちんと話してくれたら行くよ!じゃあマンションは?」
「サプライズ」
「サプライズが過ぎる!!」
マンション一室ならまだしも1棟はおかしいだろ!その感覚は庶民とセレブの違いなのか⁉誰か教えてくれ!
「今度からきちんと言って。俺、教えてもらえないの嫌だから」
「嫌いにならない?」
「そんなんで嫌いになるわけないだろ。寧ろ言われない方が嫌いになる」
「分かった」
「次、もしかして伊月さん俺の事体から落とそうとしてた?」
離れているとはいえ大藤さんが同じリビングの空間に居るので顔を寄せ小声で話す。
「……」
無言は肯定だ。そりゃ話し合いの時動揺してたもんな。こっちの方が今、大問題なんだよ。
「いや、裸の付き合いをして距離を縮めようとしただけで……」
(嘘くさい……)
「へえ……距離を縮めようとしたら他の人にも同じ事するんだ」
「違うっ、違うよ瀬名!あんな事するの瀬名にだけだよ!7年間拗らせてるのに他の人にやるわけないでしょ!」
俺の冷めた目に気づいたのか腰に抱きついてぐりぐりと頭を押し付けてくる。拗らせている自覚はあるんだな。
「あれのせいで今回の発情期大変だったんたからな」
「えっ?」
伊月さんが腰に埋めていた頭を上げ驚いた顔をしている。うん、俺も驚いたよ。
「毎日のように風呂場であんなことするからヒートの時思い出して大変だった……おわっ!」
正座している態勢から押し倒され、鼻先が付きそうなくらいに顔を寄せられる。
「それで……僕が渡したスウェットは使ったの?」
「……」
「使ったんだね」
無言は肯定だ。伊月さんは真っ赤になって横を向いている俺の頬にチュッとリップ音をさせキスをし、嬉しそうにしている。
「それで?」
「……」
「せーな、何が大変だったの?聞きたいなぁ」
「擦っても何かが足りなくて……伊月さんに持たされたスウェットの匂いを嗅いだらイケて……風呂場の事を思い出して疼いて……いつもよりヒートが辛くて……」
最後はゴニョゴニョ……今回の発情期マジキツかった。
「その時ココは弄ったの?」
「ひゃっ!」
するりと下に潜らせた指先が尻の間を撫でる。
「ココ瀬名の指で搔き回したりディルド入れてズコズコしたの?」
「入れてないっ!指も入れたこと……ない……」
「ああっ、瀬名っ!」
「んんっ」
横を向いていたのに顔をクイッとされかぶりつくように口づけられる。びっくりしてしまったせいで舌もやすやすと絡め取られ翻弄される。角度を変えながら貪られ上手く息が出来ず口内から溢れた唾液が口端から伝う頃、やっと離れていく。離れた唇が唾液で濡れ艶めかしい。
唾液を飲み込み上がった息を整える。気づかなかったが目が潤んでいるのか伊月さんの顔が少しぽやんとして見える。
「……俺ファーストキスだったのに」
「僕もだよ」
「責任取れよな」
「えっ」
「毎日あんなことされて意識しない方がおかしいだろ。それに発情期明けに連絡が取れなかったのが不安でしょうがなかった」
「ごめん……」
「倒れてたならしょうがないよ。でも会えた時噂と連絡がなかった不安と淋しさが解れて……それに運命の相手があんなので凄い憤った。全然伊月さんの事を見ていない、俺の方が中身も見てるし知ってるのにって。ああ、好きなんだなって」
「本当に?本当に僕の事好きになってくれた?」
「うん。それじゃなくてもあれだけ外堀埋められたら逃げられねぇよな」
「瀬名……!僕は7年前から瀬名だけ見てる。瀬名だけが好き。僕の瀬名になってくれる?」
「うん」
「毎日瀬名のナカに入れてくれる?番って結婚して子供を産んでくれる?」
「欲望と先の事を同時に言うんじゃねぇ!」
「被験期間来週で終わるよね。そうしたらたくさんセックスしようね。それはもう色んな場所と体位で!」
「オイコラ、股間ゴリゴリ押し付けてくるんじゃねぇ!」
あれ、俺早まった?
ーーーーーーーーーー
やっと瀬名と伊月が両思いになりました。
ナガカッタネー。話数はあるけど二ヶ月しか進んでないという(笑)
まだ初エッチもしていないのでまだ続きます。
~ちょっとだけ補足~
理久は会見1時間前に抑制剤とだけ言われ運命の番専用抑制剤を飲まされています。なので会見時後ろで見ていた時や話し合いの時には既に薬が効いている状態だったのにあんな感じ。怖いですね~
伊月に関しては開発中から飲んで試しています。自分で人体実験w
薬の研究が進むにつれ理久のフェロモンが効かなくなっているのを肌で体感しています。
筒井さん処理って言っちゃったよ。とりあえずご愁傷さまと心の中で言っとく。しかし結局上善の娘に関しては全く思い出せなかったなぁ。
「契約の反故に嘘の噂流布による名誉毀損……こちらは訴訟を起こすつもりです」
「そんな……!」
飯坂両親は青ざめているがそりゃそうだろう。長年ストーキングしてるし息子を唆してたんだから。
「伊月様に対する長期に渡る付きまとい、フェロモンテロともいえる行為、悪意を持って噂を流す、悪質ですから。ただ……」
ちらりと飯坂弟に視線を向ける。
「ただ、先ほどまでの言動を鑑み、精神鑑定を理久氏に受けてもらいます」
「はあ⁉僕は正常だっつーの!」
やだ飯坂弟、筒井さんにまで歯を剥き出しに威嚇してるんですけど⁉大人しそうな見た目とギャップがありすぎて怖い。
「はいはーい、運命の番に拒絶された子って精神的に不安定になる子が多いんだよ。メンタルケア受けたのかなぁ?」
「えっ……あの……」
父親の言葉に飯坂両親が挙動不審になっている。もうそれだけで行っていないのが分かる。
「契約時にその話もして上乗せでお金をお渡ししたはずですが?」
「それは……」
「もし精神鑑定を受けて問題があればこちらも考えましょう」
「「………」」
筒井さんの提案に飯坂両親は黙ってしまった。頭の中でそろばんを弾いているんだろうな。息子が鑑定を受けて余計な事を話して不利にならないかとか。
「精神鑑定はオススメするよーというか受けた方がいい。言動からいって通常生活に支障が出てるはずだから」
「何言ってんだお前!僕は正常だ!」
「いや、おかしいよお前。花ノ宮先輩は別なヤツを選んだんだ諦めろよ」
「兄ちゃんこそ何言ってんの?伊月さんは僕の事が好きなんだよ!今は違うってみんなに言わされてるだけで伊月さんだって運命の番である僕の匂いが好きだし項を噛みたいはずさ!」
やべぇ、飯坂兄が諭してもトンデモ理論を展開させてやがる。
「匂い……匂いねぇ。ねえ飯坂理久くん、今僕の匂い分かる?」
「分かるよ、だって運命の番の匂いだもん!」
得意気に鼻を膨らませてスーハーしている姿がちょっとだけ面白い。
「で、匂いを嗅いだ感想は?」
「うん、良い匂い!」
「それだけ?」
「それだけだけど?」
「体調や気持ちの変化は?」
「そんなの無いよ」
伊月さんの問いにきょとんとする飯坂弟。質問の意味が分かっていないようだ。
「うん、効いてる。君ね、本能が今僕を『運命の番』と認識していないよ」
「はあ⁉そんな事ないよ!」
「だって君、さっき匂いを嗅いでも体調や気持ちに変化が無かったよね?」
そう、さっきの質問の答えは、フェロモンに誘発される運命の番の本能が働かなかったと自分で証明したも同然だった。
「え?何で?だって僕達運命でしょ?」
「忌々しいがそうだね。でも今体は初めて会った時のような衝動は無いはずだよ」
「……」
「そこで聞くけど君は僕の事を好き?」
「好きだよ!だって運命の番だもん!」
「それ以外」
「えっ?」
「『運命の番』という事を抜かしたら僕のどこが好きなの?」
「顔!お金持ち!医学部!頭がいいんでしょ?」
「他は?」
「……」
「分からないよね?だってこの距離で会うの2度目だからね。君が知ってる事なんてネットや世間で知られているものだけ。そんな好き、アイドルや芸能人を好きって言うのと何が違うのかな?」
飯坂弟は本能が求める事さえなければ運命なんてこんなものだと言われているのに気づいているだろうか。そして伊月さんの中身を見ていないし、知ろうともしていないのを。
「あのねー、運命の番だからって幸せになるんじゃないんだよね。相手が既婚者だった場合、家庭を壊して周りを不幸にするし、出合った衝動で番になってから性格が合わなくて別れる事もあるんだよ。お互い好きな人がいるのに本能で惹かれて苦しむ時もある。幸せなカップルばかりじゃないのが現実なの。だからこその今日発表した『運命の番専用抑制剤』なんだよねぇ」
ピラリと父親が薬のシートを取り出し見せる。普通の抑制剤と違い青みがかった錠剤、伊月さんが俺と居たいが為に開発した執念と執着の結晶。
「今伊月くんと君はこの抑制剤を飲んでいる。運命というしがらみが無い状態なんだよ。それでも君は伊月くんの事が好きでいられるの?」
「僕は……」
戸惑いと混乱で言葉がでないんだろう、先ほどの勢いは無くなりテーブルを見つめ動かない。
「……もうこれ以上の話し合いは今日は無理そうなので後日また席を設けましょう。あなた達は息子さんの事をもっと真剣に考えた方がいい」
筒井さんの鶴の一声でその場はお開きになり、後日飯坂家から精神鑑定を受ける連絡が来たらしい。
「伊月さんここに座って下さい」
あれから一度荷物を取りに大学へ行きマンションへ帰って来た俺は、リビングの3人がけのソファーに正座で座りポンポンと伊月さんに座るように促す。
真正面に神妙な顔で座った伊月さんに俺は今から説教をする!会見や話し合いで疲れているだろうが後回しにはできない。
「伊月さん」
「はい」
「俺はこれから説教をします」
「はい」
ぐっと背筋を伸ばし聞く態勢の伊月さんの後ろにおろおろする大藤さんが見えるが気にしない。
「伊月さんは何故俺に大事な事を話してくれないの?そんなに俺信用出来ない?」
「違うっ、違うよ!」
「抑制剤の事は別にいいんだけど、今日の会見や話し合いも直前まで知らなかったし、マンションや交流会なんかも言わなかったよね?何で?」
じっと伊月さんを見つめると、目を細め「やっぱり瀬名の緑は綺麗だね」って何言い出すんだよ!
「瀬名に……瀬名に拒否されると思ったから。だって瀬名面倒くさがりでしょ?特に面倒が起こりそうなものは嫌がりそうだし」
確かに。事前に知らされていたら会見にすら行かなかった自信がある。でも理由を聞いたら行く!……多分。
「お……俺だってきちんと話してくれたら行くよ!じゃあマンションは?」
「サプライズ」
「サプライズが過ぎる!!」
マンション一室ならまだしも1棟はおかしいだろ!その感覚は庶民とセレブの違いなのか⁉誰か教えてくれ!
「今度からきちんと言って。俺、教えてもらえないの嫌だから」
「嫌いにならない?」
「そんなんで嫌いになるわけないだろ。寧ろ言われない方が嫌いになる」
「分かった」
「次、もしかして伊月さん俺の事体から落とそうとしてた?」
離れているとはいえ大藤さんが同じリビングの空間に居るので顔を寄せ小声で話す。
「……」
無言は肯定だ。そりゃ話し合いの時動揺してたもんな。こっちの方が今、大問題なんだよ。
「いや、裸の付き合いをして距離を縮めようとしただけで……」
(嘘くさい……)
「へえ……距離を縮めようとしたら他の人にも同じ事するんだ」
「違うっ、違うよ瀬名!あんな事するの瀬名にだけだよ!7年間拗らせてるのに他の人にやるわけないでしょ!」
俺の冷めた目に気づいたのか腰に抱きついてぐりぐりと頭を押し付けてくる。拗らせている自覚はあるんだな。
「あれのせいで今回の発情期大変だったんたからな」
「えっ?」
伊月さんが腰に埋めていた頭を上げ驚いた顔をしている。うん、俺も驚いたよ。
「毎日のように風呂場であんなことするからヒートの時思い出して大変だった……おわっ!」
正座している態勢から押し倒され、鼻先が付きそうなくらいに顔を寄せられる。
「それで……僕が渡したスウェットは使ったの?」
「……」
「使ったんだね」
無言は肯定だ。伊月さんは真っ赤になって横を向いている俺の頬にチュッとリップ音をさせキスをし、嬉しそうにしている。
「それで?」
「……」
「せーな、何が大変だったの?聞きたいなぁ」
「擦っても何かが足りなくて……伊月さんに持たされたスウェットの匂いを嗅いだらイケて……風呂場の事を思い出して疼いて……いつもよりヒートが辛くて……」
最後はゴニョゴニョ……今回の発情期マジキツかった。
「その時ココは弄ったの?」
「ひゃっ!」
するりと下に潜らせた指先が尻の間を撫でる。
「ココ瀬名の指で搔き回したりディルド入れてズコズコしたの?」
「入れてないっ!指も入れたこと……ない……」
「ああっ、瀬名っ!」
「んんっ」
横を向いていたのに顔をクイッとされかぶりつくように口づけられる。びっくりしてしまったせいで舌もやすやすと絡め取られ翻弄される。角度を変えながら貪られ上手く息が出来ず口内から溢れた唾液が口端から伝う頃、やっと離れていく。離れた唇が唾液で濡れ艶めかしい。
唾液を飲み込み上がった息を整える。気づかなかったが目が潤んでいるのか伊月さんの顔が少しぽやんとして見える。
「……俺ファーストキスだったのに」
「僕もだよ」
「責任取れよな」
「えっ」
「毎日あんなことされて意識しない方がおかしいだろ。それに発情期明けに連絡が取れなかったのが不安でしょうがなかった」
「ごめん……」
「倒れてたならしょうがないよ。でも会えた時噂と連絡がなかった不安と淋しさが解れて……それに運命の相手があんなので凄い憤った。全然伊月さんの事を見ていない、俺の方が中身も見てるし知ってるのにって。ああ、好きなんだなって」
「本当に?本当に僕の事好きになってくれた?」
「うん。それじゃなくてもあれだけ外堀埋められたら逃げられねぇよな」
「瀬名……!僕は7年前から瀬名だけ見てる。瀬名だけが好き。僕の瀬名になってくれる?」
「うん」
「毎日瀬名のナカに入れてくれる?番って結婚して子供を産んでくれる?」
「欲望と先の事を同時に言うんじゃねぇ!」
「被験期間来週で終わるよね。そうしたらたくさんセックスしようね。それはもう色んな場所と体位で!」
「オイコラ、股間ゴリゴリ押し付けてくるんじゃねぇ!」
あれ、俺早まった?
ーーーーーーーーーー
やっと瀬名と伊月が両思いになりました。
ナガカッタネー。話数はあるけど二ヶ月しか進んでないという(笑)
まだ初エッチもしていないのでまだ続きます。
~ちょっとだけ補足~
理久は会見1時間前に抑制剤とだけ言われ運命の番専用抑制剤を飲まされています。なので会見時後ろで見ていた時や話し合いの時には既に薬が効いている状態だったのにあんな感じ。怖いですね~
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