告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

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飯坂理久は話が通じない模様

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 ――――――――――飯坂理久

 伊月さんの『運命の番』であるΩにして拒否られた男。

 Ωらしいと言えばΩっぽい小柄な体型にさらさらな黒髪、色白で顔のパーツは小ぶり。前に飯坂兄から香ったフェロモンが微かに香る。確か俺と同い年だったが童顔なのだろう幼い顔をしている。

 が、平凡。

 ネックガードをしていなければ十人中十人がβと勘違いするような見た目。THE平凡。大事な事だからもう一度言う、THE平凡。

 それでも運命の番だから伊月さん本人には可愛く見えるのかと顔を見ると、"無"だった。

 表情からは何の感情も浮かべていない、無機質を見ているような顔。寧ろ人にそんな顔向けれるんだとちょっと慄く。

「理久っ!」

「わっ、やめろよ兄ちゃん!やっと会えたモガッ」

 慌てて来た飯坂兄に引き剥がされ口を塞がれて引きずられながら暴れている。一方伊月さんは秘書にフェロモン用の消臭剤を吹きかけられている。大丈夫かと腕を擦ると、項の辺りに顔を埋められて匂いを嗅がれてしまう。人前で嗅がれるの恥ずかしいけど、消臭剤を吹きかけるほど嫌だったんだろうと今は我慢する。

「さあ座りましょう」

 筒井さんに促され席に着く。
 先ほどの豪華な部屋とは違い、話し合いをするような作りになっていて大きなどでかいテーブルの片方に飯坂両親が座っており、飯坂弟を飯坂兄が羽交い締めにしながら暴れてテーブルを蹴らないように椅子を引いた状態で座っている。俺達はその向かいに、筒井さんは上座に書類をテーブルに広げながら着席した。

「ではこれより花ノ宮氏と飯坂家の話し合い……というより飯坂家による契約違反と名誉毀損、花ノ宮氏からの要望をお伝えします」

 分かりやすく肩を震わせた飯坂両親に飯坂兄が驚きの表情をしている。飯坂弟はきょとんとしているが。

「まずは契約内にある「故意に花ノ宮伊月氏に接触又は半径500m、フェロモンが届く距離の接近禁止」についてですが、過去何度も破り警告されていましたが最近悪化、自宅周辺の徘徊や大学の敷地内の侵入、フェロモンが嗅ぎ分けられるほどの接近、全て故意でなされています」

 そう言って日付つきの写真をみんなが見えるようにテーブルに並べていく。古い日付だと5年前、最近だと昨日だ。しかも最近のものは見たことがある場所、というか俺、写ってますけど⁉

「これって……」

「うん、公園を歩いた時だね。僕からは姿は見えなかったけどフェロモンが匂ってきたから場所を変えたよね」

 確かにあの時伊月さんが急に方向転換した時があったな……あの時か!俺は気づかなかったけど運命のフェロモンって遠くにいても匂うっていうからすぐに気づいたんだろうな。

 よくよく写真を見ると、伊月さんが写っているものは全て顔を顰めている。てか、もうこれストーカーじゃん!怖え!

「あとこれは契約外になりますが、兄・知久氏に頼み理久氏のフェロモンを纏わせ花ノ宮氏に近づき認識させたり、コンビニで三波瀬名氏にわざとぶつかりフェロモンを付け匂わせましたね」

「えっ?」

 コンビニコンビニ……どこでだ?

「ほら、ホテルの近くでフリスク買った時」

「あっ」

 そうだ、会計に並んでる時に後ろの人がぶつかってきてた。それに伊月さんがフェロモン臭いとか言って消臭剤かけてきたっけ。うわーうわー、怖気おぞけが走る!

「とりあえずここまでで申し開きはありますか?」

 飯坂両親は言わないのか言えないのか分からないが黙っている。

「えー、運命なんだから会いに行ったりフェロモンの嗅ぎ合いっこなんて当たり前でしょー」

 何言ってるのばりに首をかたむけ飯坂弟が言う。

「……5年前あなた方4人に契約の内容を詳しく説明し、厳守するサインをもらいましたよね?」

「あの時はぁ仕方なくサインしたけどやっぱ運命だもんお互い会いたいよね。伊月さんも僕に会いたいだろうし、だったらそれ無効でしょ?無理矢理運命を引き離されたんだもん会いに行くの当たり前だよね?伊月さんは家の人に止められて僕に会いたいのに会えなくて苦しんでるだろうから僕から会いに行ってあげたんだよ」

「「「………」」」

 絶句した。多分その場にいた飯坂家以外の人が。
 運命なのに引き離されたから契約は無し、伊月さんが自分の所に来れないなら僕が会いに行くの当たり前。ロミオとジュリエットか⁉

「理久、お前何言ってんだ?契約って約束だぞ。やってはいけないんだ、罰則だってあるんだぞ」

「何言ってんの兄ちゃん。運命を引き離す方が悪いんだよ。だからそんな悪い契約なんて守んなくていいんだよ」

 飯坂家で唯一飯坂兄が諭そうとするが、それを凌駕するトンデモ思考。伊月さんの運命の番やべぇ、めっちゃやべぇヤツじゃん!

 俺今目も口もOの字になってると思う。横を見ると伊月さんが苦々しい顔をしていた。

「ね、伊月さんもそう思うでしょ?僕達運命だもん、引き離せないよね」

 笑顔を向けられてテーブルの下で俺の手を握っていた伊月さんの手に力が入る。

「いいや、君は僕の運命の番だけどこの5年間一度も会いたいと思った事は無い。寧ろ会いたくないしフェロモンすら嗅ぎたくない」

「なんで⁉運命でしょ⁉照れてるの?それとも誰かにそう言えって言われたの?気にしないで、本当の事言っていいんだよ?」

 あ、これ話が通じなヤツだ。日本語話してるよな?外国語?お前宇宙人なのか?

「あ~もしもし~ちょっといいですか~」

 気の抜けた声で挙手しているのはテーブルの端に座っていた俺の父親だ。目の前に出されたお菓子を、この混沌としていたやり取りの中で全て食ってやがる。

「あのね、伊月くんの運命って2人いるんだよ」
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