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伊月の運命は・・・
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会見が終わり、元の部屋に戻って来る。忙しなく動いていたスタッフも、余裕が戻ったのか先ほどよりゆっくり後片付けをしている。
「ふぃ~やっと終わったぁ」
父親がソファーに深く座りずずずっとお茶を飲みながらだらけている。その隣には神楽の兄新羅さんが座っており、俺と伊月さんは向かいのソファーに座っている。それはそれはみっちりとくっついて。
「騙し討ちとは卑怯なり」
「なんの事かな~」
「えっ、ああ……」
驚いた顔をした新羅さんだったが、察したようで「それはダメですね」と父親に言い伊月さんも頷くが、伊月もだからな。
「それなら驚いただろう。ああ私は祐善寺新羅、神楽の兄だ。瀬名くんの事は神楽と伊月くんから聞いているよ。写真で見るより美人だねぇ」
神楽に似てはいるが、少し厳つめな笑顔で手を差し出されたのでこちらも手を……出しかけたら伊月さんが新羅さんの手を握ってしまった。
「うーん、私は瀬名くんと握手したかったんだけどなぁ」
苦笑する新羅さんにすみませんと謝る。何してんだと伊月さんを睨めばにっこりされるがにっこりすれば許されると思うなよ。
そういう思いで軽く太ももをつねると嬉しそうにされてしまった。ダメだこりゃ。
早々に諦めた俺は温くなってしまったお茶を飲む。視界の端に出されたお菓子を口いっぱいに頬張っている父親が見えたが無視だ無視。
「伊月様、弁護士の筒井氏が到着しました」
伊月さんの秘書がソファーの後ろから声をかけると扉からアタッシュケースを持った50代くらいの男性が入って来た。銀縁のメガネにグレーのスーツを着たシュッとした人でいかにも「デキる男!」という風貌だ。
「花ノ宮様、祐善寺様お久しぶりです」
「筒井先生今日は宜しくお願いします」
近くに来て礼をする弁護士先生は、新羅さんとも面識があるようで挨拶をしている。
筒井さんは花ノ宮家が抱える弁護士事務所で所長をしているらしい。印象通り仕事ができる人で、特に難しい案件を担当しているそうだ。そしてスタッフの1人だと思っていた人がどうやら筒井さんの部下で、会見時に何かあった時の為に控えていたらしく、今は筒井さんの後ろに立っている。
でも会見は終わったのに「今日は宜しく」とはなんだ?疑問に思って首を傾げたら「不思議そうな顔可愛い」と頬にチュッチュとキスしてきた。父親以外が驚いた顔してるぞ、やーめーれー!
「あの伊月くんが……」
「もっ……そういうのは家でモガッやってよねー」
父親こそ口にお菓子入ったまま喋るな!お里が知れるぞ。
「……こちらが伊月様のお相手ですね。お連れするんですか?」
「うん、そのつもり」
いち早く我に返った筒井さんが「お連れするんですか?」って言ってるけどどこに?
筒井さんに向かい首を傾げると「ちょっと、今可愛い顔してるでしょ!」と今度は頭の後ろに唇が何度も落ちてくる。またかよ、エンドレスか。なんだ、倒れてタガが外れたのか?前以上にグイグイくるな!
「コホン……お戯れはそこまでに。あちらも待っていますよ」
おおっ、筒井さんの一言で伊月さんがピタリと止まった。アンタやっぱデキる男だね!
「ハァ、面倒臭いけど僕と瀬名の為だ行こうか」
「ちょっ、ちょっと待った!」
「どうしたの?」
振り返り伊月さんを見上げるときょとんとしている。その顔可愛いな。ってちがーう!
「これからどこ行くんだ?誰と会うの?俺、何も聞かされてないんだけど⁉」
今はっきりと分かった。伊月さんは大事な事を俺に話さない。それが何故かは分からないけど、聞かされず行き当たりばったりになるこっちの身になってほしい。
「今から飯坂家族と話し合いをするんだよ」
「はあ⁉今から⁉」
「そう、抑制剤が完成して発表したこのタイミングが1番効果的だからね」
「会見もそうだけどもっと早く言ってくれよ!何も分からないで連れて来られて混乱するだろ!」
「ごめんね」
「そんな顔しても許しません!帰ったら説教デス!」
ぷいっと顔をそむけるもぎゅうぎゅうと抱き締めすりすりするあたり反省はしてない模様。2回目のダメだこりゃ。
「伊月様、参りますよ」
突っ込むのを諦めた筒井さんがメガネのブリッジをクイッと上げ促す。さすがにまずいと思ったのか腕の力が抜けたので立ち上がり、伊月さんの腕を取って立たせる。筒井さんは既に廊下に出ていたので慌てて部屋を出る。長い廊下をSPに囲まれ何故か腰に腕を回されながら歩いて行くと、角を曲がった先に黒いスーツの人が2人扉の前に待機している。どうやら飯坂家族はそこの部屋に詰め込まれているようだ。
筒井さんがノックをし、無言で扉を開け部屋に入る。寸前まで何も聞かされなかったのは不満だが、前に書類で見た時に写真が載ってなかったので、伊月さんの運命の相手・飯坂理久がどんな顔をしているのかには興味がある。やっぱり飯坂兄に似ているのだろうか。
俺と伊月さんも部屋に入ると目の前にいる筒井さんで見えないが、「こらっ」「まてっ!」とドタンバタン音が聞こえ、慌てた筒井さんの横を通り越し、どん!と伊月さんに誰かが抱きついた。
「伊月さん!僕の運命!やっと会いに来てくれたんですね!」
驚いて抱きついている人物を見ると俺よりも10cmほど低く小柄で目をキラキラさせて伊月さんを見ている。
これが伊月さんの運命の番の飯坂理久……
飯坂兄とは違いごくごく平凡な容姿だった。
「ふぃ~やっと終わったぁ」
父親がソファーに深く座りずずずっとお茶を飲みながらだらけている。その隣には神楽の兄新羅さんが座っており、俺と伊月さんは向かいのソファーに座っている。それはそれはみっちりとくっついて。
「騙し討ちとは卑怯なり」
「なんの事かな~」
「えっ、ああ……」
驚いた顔をした新羅さんだったが、察したようで「それはダメですね」と父親に言い伊月さんも頷くが、伊月もだからな。
「それなら驚いただろう。ああ私は祐善寺新羅、神楽の兄だ。瀬名くんの事は神楽と伊月くんから聞いているよ。写真で見るより美人だねぇ」
神楽に似てはいるが、少し厳つめな笑顔で手を差し出されたのでこちらも手を……出しかけたら伊月さんが新羅さんの手を握ってしまった。
「うーん、私は瀬名くんと握手したかったんだけどなぁ」
苦笑する新羅さんにすみませんと謝る。何してんだと伊月さんを睨めばにっこりされるがにっこりすれば許されると思うなよ。
そういう思いで軽く太ももをつねると嬉しそうにされてしまった。ダメだこりゃ。
早々に諦めた俺は温くなってしまったお茶を飲む。視界の端に出されたお菓子を口いっぱいに頬張っている父親が見えたが無視だ無視。
「伊月様、弁護士の筒井氏が到着しました」
伊月さんの秘書がソファーの後ろから声をかけると扉からアタッシュケースを持った50代くらいの男性が入って来た。銀縁のメガネにグレーのスーツを着たシュッとした人でいかにも「デキる男!」という風貌だ。
「花ノ宮様、祐善寺様お久しぶりです」
「筒井先生今日は宜しくお願いします」
近くに来て礼をする弁護士先生は、新羅さんとも面識があるようで挨拶をしている。
筒井さんは花ノ宮家が抱える弁護士事務所で所長をしているらしい。印象通り仕事ができる人で、特に難しい案件を担当しているそうだ。そしてスタッフの1人だと思っていた人がどうやら筒井さんの部下で、会見時に何かあった時の為に控えていたらしく、今は筒井さんの後ろに立っている。
でも会見は終わったのに「今日は宜しく」とはなんだ?疑問に思って首を傾げたら「不思議そうな顔可愛い」と頬にチュッチュとキスしてきた。父親以外が驚いた顔してるぞ、やーめーれー!
「あの伊月くんが……」
「もっ……そういうのは家でモガッやってよねー」
父親こそ口にお菓子入ったまま喋るな!お里が知れるぞ。
「……こちらが伊月様のお相手ですね。お連れするんですか?」
「うん、そのつもり」
いち早く我に返った筒井さんが「お連れするんですか?」って言ってるけどどこに?
筒井さんに向かい首を傾げると「ちょっと、今可愛い顔してるでしょ!」と今度は頭の後ろに唇が何度も落ちてくる。またかよ、エンドレスか。なんだ、倒れてタガが外れたのか?前以上にグイグイくるな!
「コホン……お戯れはそこまでに。あちらも待っていますよ」
おおっ、筒井さんの一言で伊月さんがピタリと止まった。アンタやっぱデキる男だね!
「ハァ、面倒臭いけど僕と瀬名の為だ行こうか」
「ちょっ、ちょっと待った!」
「どうしたの?」
振り返り伊月さんを見上げるときょとんとしている。その顔可愛いな。ってちがーう!
「これからどこ行くんだ?誰と会うの?俺、何も聞かされてないんだけど⁉」
今はっきりと分かった。伊月さんは大事な事を俺に話さない。それが何故かは分からないけど、聞かされず行き当たりばったりになるこっちの身になってほしい。
「今から飯坂家族と話し合いをするんだよ」
「はあ⁉今から⁉」
「そう、抑制剤が完成して発表したこのタイミングが1番効果的だからね」
「会見もそうだけどもっと早く言ってくれよ!何も分からないで連れて来られて混乱するだろ!」
「ごめんね」
「そんな顔しても許しません!帰ったら説教デス!」
ぷいっと顔をそむけるもぎゅうぎゅうと抱き締めすりすりするあたり反省はしてない模様。2回目のダメだこりゃ。
「伊月様、参りますよ」
突っ込むのを諦めた筒井さんがメガネのブリッジをクイッと上げ促す。さすがにまずいと思ったのか腕の力が抜けたので立ち上がり、伊月さんの腕を取って立たせる。筒井さんは既に廊下に出ていたので慌てて部屋を出る。長い廊下をSPに囲まれ何故か腰に腕を回されながら歩いて行くと、角を曲がった先に黒いスーツの人が2人扉の前に待機している。どうやら飯坂家族はそこの部屋に詰め込まれているようだ。
筒井さんがノックをし、無言で扉を開け部屋に入る。寸前まで何も聞かされなかったのは不満だが、前に書類で見た時に写真が載ってなかったので、伊月さんの運命の相手・飯坂理久がどんな顔をしているのかには興味がある。やっぱり飯坂兄に似ているのだろうか。
俺と伊月さんも部屋に入ると目の前にいる筒井さんで見えないが、「こらっ」「まてっ!」とドタンバタン音が聞こえ、慌てた筒井さんの横を通り越し、どん!と伊月さんに誰かが抱きついた。
「伊月さん!僕の運命!やっと会いに来てくれたんですね!」
驚いて抱きついている人物を見ると俺よりも10cmほど低く小柄で目をキラキラさせて伊月さんを見ている。
これが伊月さんの運命の番の飯坂理久……
飯坂兄とは違いごくごく平凡な容姿だった。
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