告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

文字の大きさ
上 下
27 / 66

伊月の運命は・・・

しおりを挟む
 会見が終わり、元の部屋に戻って来る。忙しなく動いていたスタッフも、余裕が戻ったのか先ほどよりゆっくり後片付けをしている。

「ふぃ~やっと終わったぁ」

 父親がソファーに深く座りずずずっとお茶を飲みながらだらけている。その隣には神楽の兄新羅しんらさんが座っており、俺と伊月さんは向かいのソファーに座っている。それはそれはみっちりとくっついて。

「騙し討ちとは卑怯なり」

「なんの事かな~」

「えっ、ああ……」

 驚いた顔をした新羅さんだったが、察したようで「それはダメですね」と父親に言い伊月さんも頷くが、伊月アンタもだからな。

「それなら驚いただろう。ああ私は祐善寺新羅、神楽の兄だ。瀬名くんの事は神楽と伊月くんから聞いているよ。写真で見るより美人だねぇ」

 神楽に似てはいるが、少し厳つめな笑顔で手を差し出されたのでこちらも手を……出しかけたら伊月さんが新羅さんの手を握ってしまった。

「うーん、私は瀬名くんと握手したかったんだけどなぁ」

 苦笑する新羅さんにすみませんと謝る。何してんだと伊月さんを睨めばにっこりされるがにっこりすれば許されると思うなよ。
 そういう思いで軽く太ももをつねると嬉しそうにされてしまった。ダメだこりゃ。

 早々に諦めた俺は温くなってしまったお茶を飲む。視界の端に出されたお菓子を口いっぱいに頬張っている父親が見えたが無視だ無視。

「伊月様、弁護士の筒井氏が到着しました」

 伊月さんの秘書がソファーの後ろから声をかけると扉からアタッシュケースを持った50代くらいの男性が入って来た。銀縁のメガネにグレーのスーツを着たシュッとした人でいかにも「デキる男!」という風貌だ。

「花ノ宮様、祐善寺様お久しぶりです」

「筒井先生今日は宜しくお願いします」

 近くに来て礼をする弁護士先生は、新羅さんとも面識があるようで挨拶をしている。

 筒井さんは花ノ宮家が抱える弁護士事務所で所長をしているらしい。印象通り仕事ができる人で、特に難しい案件を担当しているそうだ。そしてスタッフの1人だと思っていた人がどうやら筒井さんの部下で、会見時に何かあった時の為に控えていたらしく、今は筒井さんの後ろに立っている。

 でも会見は終わったのに「今日は宜しく」とはなんだ?疑問に思って首を傾げたら「不思議そうな顔可愛い」と頬にチュッチュとキスしてきた。父親以外が驚いた顔してるぞ、やーめーれー!

「あの伊月くんが……」

「もっ……そういうのは家でモガッやってよねー」

 父親お前こそ口にお菓子入ったまま喋るな!お里が知れるぞ。

「……こちらが伊月様のお相手ですね。お連れするんですか?」

「うん、そのつもり」

 いち早く我に返った筒井さんが「お連れするんですか?」って言ってるけどどこに?

 筒井さんに向かい首を傾げると「ちょっと、今可愛い顔してるでしょ!」と今度は頭の後ろに唇が何度も落ちてくる。またかよ、エンドレスか。なんだ、倒れてタガが外れたのか?前以上にグイグイくるな!

「コホン……お戯れはそこまでに。あちらも待っていますよ」

 おおっ、筒井さんの一言で伊月さんがピタリと止まった。アンタやっぱデキる男だね!

「ハァ、面倒臭いけど僕と瀬名の為だ行こうか」

「ちょっ、ちょっと待った!」

「どうしたの?」

 振り返り伊月さんを見上げるときょとんとしている。その顔可愛いな。ってちがーう!

「これからどこ行くんだ?誰と会うの?俺、何も聞かされてないんだけど⁉」

 今はっきりと分かった。伊月さんは大事な事を俺に話さない。それが何故かは分からないけど、聞かされず行き当たりばったりになるこっちの身になってほしい。

「今から飯坂家族と話し合いをするんだよ」

「はあ⁉今から⁉」

「そう、抑制剤が完成して発表したこのタイミングが1番効果的だからね」

「会見もそうだけどもっと早く言ってくれよ!何も分からないで連れて来られて混乱するだろ!」

「ごめんね」

「そんな顔しても許しません!帰ったら説教デス!」

 ぷいっと顔をそむけるもぎゅうぎゅうと抱き締めすりすりするあたり反省はしてない模様。2回目のダメだこりゃ。

「伊月様、参りますよ」

 突っ込むのを諦めた筒井さんがメガネのブリッジをクイッと上げ促す。さすがにまずいと思ったのか腕の力が抜けたので立ち上がり、伊月さんの腕を取って立たせる。筒井さんは既に廊下に出ていたので慌てて部屋を出る。長い廊下をSPに囲まれ何故か腰に腕を回されながら歩いて行くと、角を曲がった先に黒いスーツの人が2人扉の前に待機している。どうやら飯坂家族はそこの部屋に詰め込まれているようだ。

 筒井さんがノックをし、無言で扉を開け部屋に入る。寸前まで何も聞かされなかったのは不満だが、前に書類で見た時に写真が載ってなかったので、伊月さんの運命の相手・飯坂理久がどんな顔をしているのかには興味がある。やっぱり飯坂兄に似ているのだろうか。

 俺と伊月さんも部屋に入ると目の前にいる筒井さんで見えないが、「こらっ」「まてっ!」とドタンバタン音が聞こえ、慌てた筒井さんの横を通り越し、どん!と伊月さんに誰かが抱きついた。

「伊月さん!僕の運命!やっと会いに来てくれたんですね!」

 驚いて抱きついている人物を見ると俺よりも10cmほど低く小柄で目をキラキラさせて伊月さんを見ている。

 これが伊月さんの運命の番の飯坂理久……




 飯坂兄とは違いごくごく平凡な容姿だった。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

処理中です...