告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

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もはや駄菓子屋ではない

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 こんにちは、食堂で飯坂と根本に突撃を受けた日に「帰ったらチュー」を何とか逃げおおせた三波瀬名です。

 あれから1週間、何事も無く過ごしていました。
 まあ、事件なんてそうそう起きるわけではないからね。

 だ・が!

 事件じゃないけどマンションのエントランスから2階を見上げるとあら不思議、なーんか実家の近くにあった見覚えのあるお店が増えているではありませんか。(ババーン!!)

 初めてマンションに足を踏み入れた時に何で一区角空いてるんだろうなー、とは思ってたけど業者が作業をし始めて日が経つにつれ、見覚えがある感じになってきて嫌な予感が確信に変わった時、

 開店しました!







 駄菓子屋が!

 こんな高級マンションに駄菓子屋なんて正気か?

 絶対採算度外視だろ。てか、実家の近くから移転したの?

 よく分からない人に説明しよう。
 俺の実家の病院の近くに駄菓子屋がある。そこは駄菓子も売っているが、スーパーやコンビニで売っているお菓子までも置いている充実っぷり。
 不思議だなーと思っていたら、ついこの前伊月さんから母方の家が俺に会う為に作った店だと判明。どうりでお菓子を買う時はスーパーじゃなくてそこに連れて行かれたワケだ。あとなんていうか、うん。ちょっとおかしいなとは思ってたんだけど納得。

 なので伊月さんに渡りをつけてもらって開店前の駄菓子屋に今から突撃しまっす!もちろんこのマンションのオーナーである伊月さんも一緒さ。

「こんにちは~じいちゃん正気か~?」

「久しぶりなのに第一声が酷い!!」

 店の扉を開けると既にじいちゃんが数人と待ち構えていた。小さい頃から変わらず背筋をピンとさせ、白い顎髭を蓄えた優しそうな面立ち。まさかこの人がひいじいちゃんだったとは。

「酷いよ瀬名たーん!じいちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!」

「育ててもらってねぇし」

「あーん、瀬名たんが冷たい!反抗期⁉反抗期なの⁉」

 この会話でお分かり頂けるだろう。じいちゃん、客の俺に毎回こんな態度だったんだぜ。当時誰も何も言わないから当たり前だと思ってたけど、今考えるとおかしいよな。

「それで今日はどうしたのかな?じいちゃん瀬名たんの質問に答えちゃうぞ~」

 えいえいおーのポーズでにこやかに言ってるこの人、本当に鷹司家の前当主なんだよな?マジで?

「何でここに駄菓子屋が」

「もちろん瀬名たんの為にオープンしたんだよ!ほら、瀬名たんの好きなお菓子もあるよー」

 食い気味!しかも当たり前でしょ的な顔してるよ。後ろに控えてる人達も頷かないで。

 店内を見渡すと、子供が手に取れる範囲の下の段には駄菓子が置いてあり、中段にはスーパーやコンビニに置いてある定番のお菓子、上段にはマンションの住人を意識してかやや値が張るお菓子が置いてある。

「ほら、ここは瀬名たんの好きなお菓子を纏めてあるよ~」

 うん、気づいてた。レジ脇にデカデカと「オススメ」と書かれたコーナーに俺の好きなざくざくパンダやガレット、きなっこ餅が鎮座しているからな。でもケーキが置いてあるショーケースの上に置かなくてもいいんじゃないか?お客さん戸惑っちゃうよ?

 そしてケーキ!何故ここに俺の好きな店のケーキが置いてある⁉

「何でここにカズマアサミのケーキがあんの?」

「それは伊月くんがオーナーだからでっす!」

「ええっ!?」

 なんと俺が足繁く通うケーキ屋パティスリーカズマアサミはオーナーシェフの浅見和馬さんと伊月さんの共同経営の店らしい。伊月さん曰く「浅見氏は経営が壊滅的に下手くそ」なんだと。そういえば店が有名になったのはここ5年かもしれない。その頃から伊月さんが手腕を奮っていたとしたらかなりのやり手だ。

「ケーキ置いてるとか……もはや駄菓子屋じゃねぇ」

「それは瀬名たんの好きなお菓子を置いたらそうなっちゃったんだよ~」

 あん?何か?俺のせいなのか?俺が好きなら何でも置くのか?じゃあ激辛のお菓子ばかり好きになってやろうか⁉

「そもそも実家あっちの駄菓子屋はどうしたんだよ」

「あっちは息子にやらせてるから大丈夫」

 息子って当主に何やらせてんの⁉( ー`дー´)キリッとサムズアップしたっておかしいからな⁉

「あいつ美夜たんに会えるって喜んでたから大丈夫」

 だから( ー`дー´)キリッはいいから。

「鷹司家の前当主と現当主が何やってんの……」

「おっ、伊月くんから聞いたかね?そうだよ~じいちゃんが瀬名たんのひいじいちゃんだよ~」

 いや、今更キリリッとしたって声が間延びしてるから迫力無いからな。

「……おかしい。母さんはクールなのにじいちゃん達がこんなんだ」

「んー……多分瀬名と美夜さんにだけだと思うよ。いつも厳しいのにデレデレしてるから僕困惑してる」

 隣にいる伊月さんを見ると苦笑している。店に入ってから口数が少ないと思ったらそういう事か。なるほどと思っていたら入り口の扉が勢いよく開く。

「爺さん瀬名たんが来てるって⁉」

 見ると髪を少し乱しスリーピースのスーツを着た壮年の男性がいた。

「あっ、オジさん」

「はいっ!瀬名たんの伯父さんでっす!」

 ジ◯ジョばりの立ちポーズを決めているオジさんは実家の近くにある駄菓子屋でたまに店番をしていた人。俺の伯父だったかー。

 鷹司家ってこんなのしかいないのかなとちょっと遠い目になる俺。

「瀬名たんが番う人を連れて来るって聞いたから来ちゃったよ」

「え゙」

 驚いて伊月さんを見るとにっこりされた。いやにっこりはいいから。

「いやー瀬名たんの番が花ノ宮の嫡男なら安心じゃわい」

 え、じいちゃん急にお爺さん言葉使い始めてどうした⁉

「ええ、伊月くんは相当やり手ですし7年間瀬名たん一筋ですからね」

 真面目な顔して瀬名たん言うのやめい。

「だから鷹司本家は伊月くんと番うの全プッシュで応援するよ☆」

 バチコーンとウインクしながらサムズアップはやめてくれ。




 ダメだ、こっちの堀も埋まってやがる。
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