告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない

ネコフク

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どうやら俺は勘違いしていたようです

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 どうも、父親に売られた三波瀬名です。

 父親からマンションに引っ越す許可を取った伊月さん達の行動は早かった。
 速攻俺と神楽の退寮手続きを済ませ、父親との被験者契約の辞退届けを出し(これがあったから父親が『2人は童貞処女』と断言した。というかハタチ過ぎても治験してたのか……)土曜日である今、寮の荷物は新居に運び込まれ俺は神楽と一緒にとあるマンションの前にたたずんでいる。

「デカい……」

 これって遥か上に最上階があるマンション、所謂いわゆる一等地に建つタワマンというヤツではあるまいか。神楽の実家のエグい豪邸も震えたけど、洗練された外観、一等地のはずなのに広大な敷地、それを取り囲む外観を損なわない塀、いたる所に付いている防犯カメラ……かなりビビるんですけど⁉

「やあ、待ってたよ」

 エントランスからいつもよりラフな格好をした伊月さんと良規さんが出迎えてくれる。タイミングが良いなと思ったけど、寮まで運転手さん付きの車が迎えに来たから連絡がいってたんだろう。

「コレカラヨロシクオネガイシマス」

「ははっ、そんなに固くならなくていいよ」

 それはムリ。だって俺父親に売られてドナドナされた気分だもん。

 あれから父親に物申したけど、「7年前から莫大な寄付を受けていて治験にも協力してもらってるのにNOは言えない。それにαはこれって決めたら一途だからあきらメロン☆」ですと。

 そもそも知り合ってから殆んど先輩後輩の接触しかして来なかったのに急に距離を詰められたら戸惑いしかないんだけど?それにいつもパーソナルスペースの外にいた人が、今めっちゃ俺の腰に腕を回して誘導してるんですが?

 伊月さんの誘導のもと入口からエントランスに入ると、2階まで吹き抜けになっており、両脇にテーブルとソファーがいくつも置いてある。ソファーの脇には観葉植物が配置されて落ち着いた雰囲気を出している。床は大理石だろうか艶々していて汚れ一つ見当たらない。正面にはカウンターがあり、コンシェルジュらしき人が2人制服を来て立っている。

「コンシェルジュを紹介しよう。笠原と真鍋だ。他にもいるけど、高層階は彼らが受持っている。クリーニングや発情期ヒートの時の買い物、荷物の受け取りをしてくれる」

「祐善寺様、三波様、笠原と真鍋でございます」

「これからお世話になりますっ」

 綺麗な所作で礼をされ、慌ててペコリと頭を下げる。こんな庶民に頭を下げてもらってすみません。

「2階にはスーパーとコンビニが入っていてエレベーターかそこの階段から行くことが出来るよ。そして3階から5階には内科や耳鼻科など病院が入っていて、バース性も配慮されているから行きやすいと思うよ」

 2階を見ると高級スーパーの隣にいい気分なコンビニがあり、何ともシュールな感じがする。
 しかしスーパーにコンビニ、病院もあるなんてマンションから出ないで生活できそうだ。

「他の階にはプレイルームやカフェ、ゲストルームやパーティールームがあるから後で案内するね。まずは部屋に行こう」

 腰をがっしりホールドされコンシェルジュがいるフロントの左側にあるエレベーターの脇のカードリーダーにカードをかざすとポンと扉が開き、乗ると29階にスムーズに昇っていく。おおっ、これは普通のエレベーターより早いんじゃないか?エレベーターの内側には階数を押すボタンもないし、さっきのカードに記録されてるんだろうなぁ。なんてハイテク!

 へーほーふーんとキョロキョロしていたらくすりと伊月さんに笑われてしまった。恥ずかしくなって俯くと腰を抱いていない方の手で髪を梳くように撫でられてしまった。





「三波様お待ちしておりました」

「祐善寺様お久しぶりでございます」

「……!!」

 29階に着き扉が開くと、執事らしき人が2人にこやかに出迎えてくれるが、まさか誰かいると思っていなかった俺は心の中だけで悲鳴を上げたのは褒めてくれてかまわない。
 右側に立っているのが良規さんの執事の古川さん、左側に立っているのが伊月さんの執事の大藤さん、2人共オールバックのロマンスグレーなオジサマだ。

「どうぞこちらへ」

 軽く礼をしながら手を指す方へ伊月さんと歩いて行く。行くがチョットマッテ!

「あっ、あのっ!何で神楽と別々なんですか?」

 焦りながら伊月さんを見るとキョトンとしている。

 え、別々に話を聞くより2人で聞いた方が良くない?話を聞いたら寮みたいに一人部屋に行くんだろ?

「あれ、言ってなかったっけ?瀬名は僕と、神楽は良規と住むんだよ」

「聞いてませんが!?」

 驚いて神楽の方を見ると、良規さんに腕をがっちりホールドされた神楽が諦めた顔をしてこちらをみていた。

(あっ、あれは察してた顔だ。いつ察したんだ?)

 神楽はマンションの下に着いた時どんな顔していただろう。嬉しい顔?悲しい顔?……ダメだ、タワマンに圧倒されて憶えてない。

「さあ行くよ」

 俺と神楽はお互いを見ながら連れて行かれる。耳にはドナドナの歌が物悲しく流れている気がした。




「どうぞ」

「……ありがとうございます」

 エレベーターから降りた階には4邸しかなく、そのうちの一つのリビングに通されやたらふかふかのソファーに座ると、大藤さんが手際よく紅茶を淹れ2つ並べて置く。どうしてその並びかは当たり前のように伊月さんが俺の隣に座っているからだ。

 伊月さんがティーソーサーを持ち紅茶を飲むのを見て俺も口に運ぶ。ちらりと横を盗み見ると伏せた目を縁取る金茶の睫毛まつげにすっと通った鼻、カップに口付ける形の良い薄い唇……絵になりすぎる男がここにいた……!

 横顔すら今までじっくり見たことがなかったなぁと思っていたら「見すぎ」とクスクス笑われてしまう。おおぅ、不躾に見てしまった。

 慌てて紅茶をゴクゴクと飲むと、鼻に抜ける香りと優しい味わいに少し心が落ち着く。ふう、と一つ息を吐くと隣に座る伊月さんを見る。

「あの……色々聞きたいことがあるんですが」

「うん、なに?」

「俺寮みたいに部屋をあてがわれると思ってたんですけど……」

「ああ、言うの忘れてたね。瀬名は今日から僕とここに住むんだよ」

 にっこり言う伊月さんにこれは確信犯だと悟る。確かに「僕のマンションから通いなよ」とは言われたけど一人暮らしだとか一緒に住むとか言われていない。これは確認しなかった俺が悪い。しかしここ絶対億ションって言われる部類のマンションだよな?

「俺こんなに凄いトコだって知らなくて……家賃を払えるかどうか……」

「家賃?ここマンションだからいらないよ」

「えっ?ボクノマンション?」

「そう、マンション丸々僕の持ち物だから。瀬名が過ごしやすいように作ったから安心して」

「1棟丸々!?」

 この部屋だけじゃなくて全部⁉スーパー、コンビニ、病院全て俺のため⁉ナニソレコワイ、安心できる要素がない!

「あれ、気に食わなかった?じゃあ別のマンションに移……」

「ここでいいです!!」

 ひぃ~、今別のマンションって言ったぁ!まさかと思うけどそっちも伊月さんの持ち物なんじゃ……事実を知りたくないから聞かない!
 ああ、マイスイートハート神楽は大丈夫だろうか。

「あの……神楽は……」

「神楽は良規と一緒だから大丈夫。部屋も隣だからすぐ会えるし大学も一緒に行けるよ」

 そっちも安心できる要素がなかった!
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