白銀の狐は異世界にうっかり渡り幸せになる

ネコフク

文字の大きさ
上 下
25 / 35
うっかり渡っちゃった編

華炎と黒曜と??

しおりを挟む
 ドーーーーーーーン!!

「おい黒曜!そっちにミスリルゴーレムが行ったぞ!」

「分かってる」

 シャッ!

 スパン

 ドゴン!

「あー足りねぇ!」

「もっと来い」

 次々と襲い来るゴーレムを手に持つ棒や槍を軽く振り、ほぼ一撃で屠る2人。息も切らせず全滅させる姿は人ならざる覇気を纏っている。

「あっさり終わってつまんねぇ。次は飛竜の巣を殲滅しに行こうぜ」

「ああ」

 山になったゴーレムの残骸の上から赤い羽を広げ飛び立つ少年と、それに続き軽く地を蹴り浮き移動する少年。

 およそ魔獣を狩る格好とはいえない赤と黒のちょいダサジャージを着ている。普通そこは鎧などの戦闘スタイルだろうに、ちょっとコンビニ行って来ると言わんばかりの格好である。いや、寧ろ家でゴロゴロして母親に煙たがれるタイプのやつだ。

 飛竜の巣に到着すると敵と判断した飛竜が滑空し攻撃しようとするが、赤い羽を炎に変え一回転すると広範囲に炎が広がり飛竜の羽を焼き尽くしボトボトと地面に落ち、飛び立つ前の飛竜と共に波打つ闇に飲まれていく。

「チッ、コイツらも弱ぇな。もっと骨のあるヤツはいないのか?」

「仕方ないだろう。創造神がいない世界でここが一番魔獣が強いんだ」

 棒を左右に振りながら不満を口にしているのは鳳凰族の華炎。赤い髪と羽を持つ少し気の強そうな将来イケメンに育つであろう。

 もう一人は龍神族の黒曜。黒髪黒目の口数が少なめの精悍なイケメンになりそうな少年だ。

 2人共見た目がまだ7、8歳ほどだがしっかりと筋肉がつき醸し出す雰囲気が人とは違う事が分かる。

「これじゃあストレス発散にもならねぇ」

「確かに。でも神域で暴れるわけにはいかないからな」

「あーあー主神が玉藻を間違えて渡らせるから」

 2人がこの場所にいる理由、それは仲が良かった玉藻が間違えて渡った事にブチ切れ、鳳凰族の族長で華炎の父親である炎舞が「ここなら何をしてもいい」と言われたからだ。そこで玉藻に会えなくなったイライラを魔獣にぶつけまくっていた。

「・・・・・・むっ、嫌なヤツの気配」

 不機嫌さが増した華炎が睨むと大きな岩の上の空間が歪みそこから1人の少年が出てくる。
 華炎や黒曜と同じくらいの少年は背にコウモリのような羽を持ち、黒髪から赤い目を覗かせ不敵に笑っている。

「よお久しぶり」

 親しい人に向けるような言い方ではあるが、3人の間にはピリリとした空気が流れている。

「何でお前がここに来るんだよマモン」

「もちろん玉藻に会いに・・・・・・って弱っちいヤツの代わりに渡ったんだっけなぁ」

 ニヤニヤとするマモンに舌打ちをする。華炎にとっては玉藻にちょっかいを出す敵でしかない。

「そんな事言いに来たのかよ」

「いいや、お前達の悔しがる顔を見に来たんだよ。俺玉藻が渡った世界に降りる事になってなぁ」

「なっ・・・・・・!!」

「おっとやめとけ、お前達だけじゃ俺に勝てないぜ」

「くっ・・・・・・」

 戦闘態勢を取るも負けが見えている現状にギリッと奥歯を鳴らし睨みつける。少年の姿をしているが魔人であるマモンは華炎や黒曜よりも長い時を生きている。しかも魔界でも"強欲"の名を持つ7魔人、族長と肩を並べる力を持っているのだ。

「そもそもお前ぐらいの実力のヤツが行くような世界じゃないだろ!あそこは高次元になる予定なんだぞ!」

 華炎が言う通り低次元のしかも平和な世界にマモンほどの実力者が行くという事は滅ぼすという事を意味する。

「だって玉藻がいるじゃん?だから今度の魔族襲来スタンピードの指揮をちょちょいと交代してもらったんだよ」

 ちょちょいと交代と言っているが絶対殺して成り代わったと確信を持って睨みつける。

「何が目的なんだ?」

「言ったろ、玉藻がいるから。今は白っこくて可愛いけど成体になったら美人になるだろ。孕ませてじゃんじゃん俺の子を産んでもらうんだよ」


「ハッ、させるかよ!」

 華炎がマモンに突くように素早く向けると棒が伸びるがさらりとかわされ、その動作に合わせるよう間合いを詰めた黒曜が槍を横に一閃するも体が黒く霧散する。

「ハハッ悔しいか、悔しいだろ。俺には勝てない、制約があって玉藻のいる世界には行けない。ナイナイだらけだもんな。あー、お前らの悔しがる顔見れたから行くわ」

「「待てっ!!」」

 既に半分歪んだ空間に体を入れていたマモンは、バカにするように舌を出し笑い中指を立てながら消えていく。

 残された華炎と黒曜はその場で棒と槍で地面を突くと振動が起き、次第に大きくなっていく。

「この世界が崩壊する前に戻るぞ」

「ああ、主神や族長に報告しないとな」




 ※華炎と黒曜が武器で地面を突いた時に、神力を打ち付けて地下の奥深いところにある核を壊した事で世界自体が存在を保てなくなり崩壊・消滅します。
 どの世界も同じですが、高次元になるほど核が硬いので壊すのが大変です。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜

𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。 だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。 そこで出逢った簫 完陽に料理人を料理を教えてもらうことに。 そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?! 料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風お料理物語、ここに開幕!

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

悪役令嬢のペットは殿下に囲われ溺愛される

白霧雪。
BL
旧題:悪役令嬢のポチは第一王子に囲われて溺愛されてます!? 愛される喜びを知ってしまった―― 公爵令嬢ベアトリーチェの幼馴染兼従者として生まれ育ったヴィンセント。ベアトリーチェの婚約者が他の女に現を抜かすため、彼女が不幸な結婚をする前に何とか婚約を解消できないかと考えていると、彼女の婚約者の兄であり第一王子であるエドワードが現れる。「自分がベアトリーチェの婚約について、『ベアトリーチェにとって不幸な結末』にならないよう取り計らう」「その代わり、ヴィンセントが欲しい」と取引を持ち掛けられ、不審に思いつつも受け入れることに。警戒を解かないヴィンセントに対し、エドワードは甘く溺愛してきて…… ❁❀花籠の泥人形編 更新中✿ 残4話予定✾ ❀小話を番外編にまとめました❀ ✿背後注意話✿ ✾Twitter → @yuki_cat8 (作業過程や裏話など) ❀書籍化記念IFSSを番外編に追加しました!(23.1.11)❀

処理中です...