白銀の狐は異世界にうっかり渡り幸せになる

ネコフク

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うっかり渡っちゃった編

玉藻、子狐になる

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「ところでその神様の名前は何と言うのかな?」

「かみさまはかみさまだよ。とうさまはあるじとかしゅしんっていってた!」

 王の問いに名前を知らないという玉藻。知らないのか元々無いのか・・・・・・名を持たない神などいるものなのかと王は首を捻る。

「タマモは神様と一緒に住んでたの?凄いね!」

「ちがうよ。かみさまはきゅうでんにすんでて、ぼくたちはまわりにすんでたの」

「へえ、みんなタマモみたいに耳や尻尾があるの?」

「んー、つのとかはねがあるヒトもいるよ。ともだちはね、はねがあってとべるの!」

 ジークフリートに聞かれ話していた玉藻の耳と尻尾が急にぺしょりと垂れ、悲しそうな顔になる。

「どうしたの?」

「あのね、しんいきからまほうじんでわたっちゃったからもどれないの。おにいたまやともだちにあえなくなっちゃった」

 ここに来てしまった為に家族や友達に会えなくなった事を思い出してしまい、みるみるとその大きな瞳に涙が溜まっていき慌てる3人。

「わっ、わっ、泣かないで!」

「ハンカチハンカチ!」

「ほら~美味しいお菓子だよー」

 ハンカチやお菓子を差し出されても一度悲しみから昂った感情は、玉藻の中で大きく膨らみ限界を超えて弾けてしまう。

「「「えっ⁉」」」

 3人が驚いたのも無理は無い。涙を溢す直前、体が光を放ち弾けたと思ったら目の前にいた玉藻がいなくなったのだ。・・・・・・否、服だけ残して。

「タマモ⁉」

 慌てて辺りを見渡すが玉藻はおらず、こんもりとした服だけが・・・・・・服が動いた。
 モゾモゾと動く服からひょっこり顔を出したのは、玉藻の髪色と瞳の色を持った白銀の子狐だった。

「かっわ・・・・・・ってタマモ⁉」

「みぃー」

「まさか」

「いいえ父上、僕が庭で聞いた鳴き声と一緒です!絶対タマモです!」

 熱弁するジークフリートのももに両前足を乗せ、みぃーみぃー鳴き9本ある尻尾をゆらゆらと揺らす姿に王妃がソファーの背もたれに倒れ込む。

「王妃どうしたのだ!」

「へ・・・・・・陛下、わたくし子狐の可愛さに尊死するやもしれませぬ」

 恍惚とした王妃の表情にあ、そういえば可愛いの大好きだったと王はそっとしておく事に。

 可愛いのが大好き過ぎて部屋がピンクのフリフリお花畑仕様の住人、王妃27歳。まだまだ心は乙女、きゅるーんとした子狐玉藻にノックアウト。

 尊死しかけている王妃を見つめみぃーと鳴き首を傾げる玉藻を、撫でたい衝動に駆られながらも王は頭を回転させ、図書室から持って来た本を思い出す。

 それは代々王族のみ閲覧できる本で、建国に至る事柄が記述されている。

「たしかこの章のどこかに・・・・・・」

 テーブルに本を広げパラパラと捲り指を止める。そこには女神アマンベールの事が絵と一緒に記されていた。

「ジークこれを見なさい。ここには女神アマンベール降臨が記されているのだ。それによると『女神アマンベールは背に翼を持つ姿で異なる世界からこの地へ降り立ち争いを収める。そして戦で弱った地を青い炎を纏う鳥になり、恵みの雨を降らし豊かな土地へと変える』と」

「タマモと似ていますね」

「そうだ、事実神殿の塔におられる女神アマンベールは別世界の住人だった本人が話しておる」

「では女神にタマモの事を聞いたら何か分かるかもしれませんね!」

「ああ、明日にでも神殿に謁見を申し入れてみよう。・・・・・・ところでタマモはいつ元の姿に戻るのだろうか」

 王とジークフリートが話をしている間に眠くなったのか丸くなりぷーぷー寝てしまった玉藻を見て「そのうち戻るよな?」と少し不安になる2人だった。
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