白銀の狐は異世界にうっかり渡り幸せになる

ネコフク

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うっかり渡っちゃった編

ここは魔法が使える世界

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 玉藻は王妃に連れられ王宮に入り、長い廊下を歩き奥の奥、王族と限られた者しか入る事の出来ない区域にある一室に通される。

 ジークフリートと一緒に通された部屋は明るく、ソファーやテーブル、茶器セットは豪華だが落ち着いて暖かみのある雰囲気が漂っている。

「さあ、お座りなさいな」

 そう促されジークフリートに手を引かれた玉藻はそのままソファーに隣同士でちょこんと座るが、知らない部屋で落ち着かないのか、メイドがお茶を用意している間ずっともじもじしている。

「タマモ、このお菓子美味しいから食べてごらん」

 手拭きタオルで手を拭いてあげたジークフリートが、小さな花の形をしたクッキーを一つ玉藻の口元に持っていく。急な動作に警戒するが、すぴすぴと嗅いで甘く美味しそうな匂いしかしないのでパクリと口に入れる。

「・・・・・・!おいしい~」

 パッと目を輝かせ両手で桃色の頬を押さえる玉藻に、王妃は持っていた扇子で顔を隠し悶え、お茶を用意していたメイドはガチャリとティーポットを落とす。

「天使・・・・・・耳と尻尾が生えた天使がおる」

「王妃様ぁ、私にも見えますぅ~」

 ぷるぷる震える王妃達に気づかず玉藻は尻尾を揺らしもっとという目でジークフリートを見る。

「ふふっ、食べる姿も可愛いね。僕が食べさせてあげるね」

 そう言って次々と色んなクッキーやケーキを食べさせてもらっていると、脇に分厚い本を抱えた王が部屋に護衛と共に入室し、王妃の隣に腰を掛ける。

「待たせたな・・・・・・はうっ、天使・・・!って王妃どうしたのだそんなに目を見開いて!」

 座った目の前には美味しそうにお菓子を食べる玉藻、隣には目を見開いている王妃に王は驚く。

「すみませぬ、今目の前の光景を目に焼き付けておりました」

 いつも優雅に微笑む王妃の目力に少し慄きながら片手を上げ指示を出すと護衛とお茶を用意し終わったメイドが出て行く。

「あー・・・・・・コホン、いいかな」

 注目!とばかりに咳払いをし自分に意識を向けさせる。

「さて、タマモの事を聞きたいのだがいいかな?」

 お菓子を食べて落ち着いたのか庭園に居たときのように震えず玉藻はこくこくと頷く。

「タマモはさっきシンイキから来たと言っていたが詳しく教えてくれないか?」

「えっとね、しんいきにはね、かみさまがいてそこにぼくたちもすんでるんだよ」

「住む・・・・・・住んで何してるのだ?」

「かみさまにつかえてるの!あといせかいにわたったりするの」

「神に仕える・・・・・・御使い・・・・・・」

 俄かに信じがたいが、やはり玉藻は神と何らかの関係があるのだろう。もっと詳しく聞かなければ確信は持てないが、図書室から持ってきた本が謎を解いてくれそうだ。

「ふーん。じゃあなんでタマモはあんなとこにいたの?」

 ジークフリートのもっともな質問に玉藻はへにょりと眉尻を下げる。

「わたりのまでかみさまがころんで、だっこされてたぼくがぽーんってまほうじんにおちたの。そうしたらあそこにいたの」

 どうやら神が転んだ拍子に、抱きかかえられていた玉藻が魔法陣で飛ばされたという事らしい。

「転移魔法陣か。それが本当ならどこか違う場所から転移してきたという事か」

「転移魔法は隣国の魔法使いを合わせても数人、各国で管理されております。しかも神を語る不届き者など居ましょうか」

 この世界では魔法は当たり前、貴族に魔力が高い者が多いが、平民も普通に生活魔法くらいは使える。その中で膨大な魔力を持つ魔法使いは国に囲われ日々研究をしている。特に転移魔法は悪用されると大事になる為、厳しく管理されている。

「でもさ、転んでタマモを魔法陣に落とすってそれ本当に神様?」

 それはそうだ、神といえば全知全能で完璧なものだと誰もが思っているのだ。

「うん、かみさまはちょっとどじっこぞくせいがあるんだよっておにいたまがいってた!」

「ドジっ子属性・・・・・・」

「それで転移させられてものう」

「ドジの神様?」

「ちがうよ。かみさまのいちばんえらいひと!」

「「「!?」」」

 その時「神々の頂点がそれでいいのか?」と玉藻以外思ったが口に出さなかったという。
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