白銀の狐は異世界にうっかり渡り幸せになる

ネコフク

文字の大きさ
上 下
5 / 35
うっかり渡っちゃった編

神めっちゃ怒られる

しおりを挟む
 ジークフリートが両親に玉藻を紹介している同じ頃・・・・・・


 ここ宮殿にある円卓の間。8つのうち背もたれが高い豪華な椅子に神が座り、他の椅子には鳳凰、狼、虎、狐、亀、龍、鹿の一族の長が着席している。

 皆一様に難しい顔をしており、特に神狐族の族長は後ろに金剛を待機させ神を睨んでいる。もちろん金剛も睨んでいる。

「急に呼び出して悪いな。実は困った事になってん。我のちょっとした手違いで玉藻が間違って渡ってもうてな」

「手違いなんて綺麗なものではないでしょう。主神がコケた拍子に、でしょうが」

「たまたまだもん」

 自分の失態を誤魔化そうとしたのに速攻バラされ神、拗ねる。

「またコケたんですか。そのドジっ子属性どうにかしてくれません?」

 呆れ顔の鳳凰一族の長、炎舞に言われ神はうっと言葉に詰まる。

「階段を登ればコケる、積まれた書類をばら撒いたと思ったら周辺の書類も雪崩が起こす、散歩すれば池に落ちる・・・・・・オマエ本当はドジの神?」

「ドジの神ってなんやねん。我、神々の頂点、ゴッドオブゴッドよ?もっと敬われていい存在やん」

「敬っていますよ。敬う以上に呆れてますが」

 燃えるような赤い髪を揺らめかせ言う炎舞に一同頷く。眷属として主たる神を皆敬ってはいるが、適当な行動が多いので苦労が絶えず、ぞんざいになってしまうのは仕方ないだろう。

「酷いなぁ」

「13回」

「えっ」

「13回、主神が今までに渡りの間でコケてやらかした回数だ」

 回数を言われきょとんとしたであろう神に神虎族の族長、猛虎が「忘れたとは言わせねぇ」と睨む。

「13回中5回、説明する前に渡る者をコケて魔法陣に投げ落としたのを忘れたとは言わせねぇよ。ああ、そういえば危うく主神が渡りそうになった事もあったな。酷いのは肩叩きの棒を魔法陣に落としてそれだけ異世界に行ってしまった事もあったなぁ」

 短く刈った白髪はくはつをぶわりと立たせ挑発するように話す。

「アレお気に入りやったのにショックだったわ。虎の手の形で肉球付きやってん」

「いや、そのせいで神虎族うちの者が渡れなかったんだぞ!異世界の争いをおさめる為に渡ったのが肩叩き棒って。向こうの神が「肩叩き棒で何すればいいんだ!」ってぶっ倒れたんだぞ!」

 飄々と言う神に猛虎は怒りを隠さない。

「怒りを抑えろ猛虎、あれでも一応神々の頂点に立つお方だ。いくら不出来でも礼節は弁えろ」

「炎舞お前も大概酷いで。我、神なのになぁ」

「今は昔の事をほじくり返している場合ではない!うちの可愛い可愛い玉藻がクソ神のせいで渡ってしまったんだ」

 話が逸れていくのをイライラとしながら聞いていた神狐族の長、安寿が腕を組み尻尾を膨らませ威嚇する。

「たまたま今回の渡りは平和な国だったから良かったものの、もし戦禍の真っ只中だったら大変な事になっていたのだぞ!主神、反省!そして仕事しろ!」

「どさくさに紛れて仕事せかさんといてぇな。我だって反省しとるよ。玉藻は我のお気に入りだったしな」

 いじいじしている神を放っておきつつ皆頭を悩ませる。悩む理由は渡った先に迎えに行ったり、姿を現し干渉する事は禁じられており、それを破ると存在を消され回帰する事が出来なくなってしまう為、下手な事が出来ないからだ。

「猛虎よ、肩叩きの棒を送った世界はどうなったのだ?」

「ああ、あっちの世界の神がヤケを起こしてな、それに色々能力を付与して無理矢理最強の武器にしてたぞ」

 それはヤケ過ぎるだろうと皆思ったが、自分達の主がやらかした事なので口に出しては言わない。

「肩叩き棒が最強武器なんて不憫やなぁ」

「「「「お 前 が 言 う な!」」」」

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜

𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。 だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。 そこで出逢った簫 完陽に料理人を料理を教えてもらうことに。 そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?! 料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風お料理物語、ここに開幕!

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...