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【2‐5】導くもの
譲れない正義
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日が暮れて用意された部屋でゆっくりとしていた。何があったのはわからないが、大した怪我でもないのに、レスフィーナは憔悴しきって横になったままミティアと話している。ジェフリーが付き添ったが、以前のような声が大きく傲慢な彼女ではなかった。聞けば、彼女は数日前から自分がおかしくなった自覚を持っていたが相談できる人がいなかったと言っている。話をすることを諦めてしまい、遠ざけるように去ってしまったことがここで仇となった。
教会のシスターにして天空都市の人間。新地で誰が頼れるだろうか。レスフィーナは弱々しく、もう楽になりたいと言って来た。どう判断していいのかわからない。なぜなら、ミティアは母親のぬくもりなど覚えていないからだ。
ミティアは急に虚しくなって、泣くこともできなくなってしまった。
「自分勝手すぎない?」
どこまでも自分勝手で傲慢で人の意見を聞かない。いつも一方的過ぎて、呆れてしまう。だが、その意思は別の方向に向いていた。
「こうすれば、悲しくならないでしょう?」
「何を言っているの?」
その自分勝手はミティアを悲しませないためだとでも言いたいのだろうか。ジェフリーは付き添っているだけではなく、言葉を交わしていた。
「おばさんは、自分の死期が近いと悟っていたとでも言いたそうだな? それこそ自分勝手で傲慢な極みじゃないか?」
「この世界はあまりにも汚い思いで満ち溢れています。それでも、救いはあったはずなのに、地上の方は強いのですね。教会なんて、本当は必要なかったのかもしれません」
噛み合わない会話もレスフィーナの特徴。こちらから諦めてしまいそうになる。現実なんて、もっとつらいのに。
「天空都市が落ちたらこの世界は壊れてしまいます。救いの道がないのなら、もうあなたに託すしかありません」
レスフィーナは手を上げる。ミティアはその手を取った。冷たくて、消えてしまいそうなか細い声に嫌な予感を覚える。
「どうして天空都市は滅んだの?」
「あなたは『あの男』を知っているでしょう? あの男の存在は危険すぎます。そして、神を創り出そうとしている。リーチェ、あなたが止めて、天空都市もこの世界も秩序を保つのです……」
「あの男って……まさか、兄さん?」
ミティアは背筋が凍るような思いをした。なぜレスフィーナがルッシェナを知っているのか。天空都市と地上の秩序という発言も気になった。これは持っているどの情報と結びつくのだろうか。
レスフィーナはミティアの手を握った。か細い声を上げる。
「お別れです」
「待って、わたしはどうしたらいいの!?」
「わたくしのぶんまで、生きればいいのです、よ……」
急に手が暖かくなり、視界が白くなった。弾けたかに思えたがレスフィーナの存在はない。ミティアは両手を見つめてぼんやりとしている。
あまりにぼんやりとするものだから、ジェフリーはミティアの肩を持って軽く揺すった。
「何が起きたんだ? ミティアは大丈夫なのか?」
レスフィーナは消えた。もっと言い換えると、母親は消えてしまった。ミティアは今の状況を確認した。
和室に少しいいベッド。その中は空っぽだ。握っていた手は暖かいし、体に何か変化が起きたのかと言うと実感はない。ただ、声を出して泣けなかったのに、頬をスッと涙が伝った。ミティアは小さく頷いた。
「わたしは平気。だけど、何だか気持ちが暖かいのに悲しいの……」
親子としてまともな会話などほとんどしていないし、思い出に浸ることもできない。浸る思い出がそもそもミティアの中にはない。
「託すなんてずるいよね。自分は逃げちゃったみたいで……」
ミティアは目を擦って涙を潰した。
「わたしも死んじゃうときは、こうやって消えちゃうのかな」
言いながら苦笑いをするミティア。虚しくて、別れにもならなくて、でも悲しくて。
「それは考えないようにしよう。それより、いくら妄言だか狂言でも、おばさんが言っていたこと、全部は間違っていないはずだ。」
「そうだといいなぁ……」
ジェフリーは竜次と違って励ますのがうまい。人に希望を持たせる、一緒に寄り添ってくれることはありがたいだろう。
「こんなのは乗り越えないといけない一つにすぎない。俺が一緒で頑張れるといいんだけど」
「ん、ありがとう、ジェフリー」
ジェフリーはミティアの手を握って違和感を覚えた。ミティアはまだ『何か』を抱えたままだ。自分には打ち明けてくれない心の闇が気になって仕方がない。だが、ここで問い詰めても何もならないだろう。自分に器が足りていないことを悔いた。何度この思いをしただろう。本当に自分はミティアを支えてあげられているのだろうかと考え込んだ。自分も成長したいと強く思った。
縁談はもちろんなくなった。当然だろう。この件に関しては、あの兄妹に感謝しなくてはいけないかもしれない。
フィリップスの関係者には悪いが、安全の確認が取れ次第とんぼ返りとなった。これは沙蘭が提案したわけではない。竜次の株は上がったらしいが、彼は騒ぎの以前に自分自ら出向いて断りを入れていたからだ。こういうときだけはきちんとものを言う。
仲間に対しても、もう少し強く言えればいいのだが。
ことが落ち着いたら話すと言っていた圭馬は、客間の隅でしょげている。
ショコラが尻尾を下げ、気の毒そうに声をかける。
「圭馬チャン、ずっとこうしているつもりなのかなぁん?」
問い詰めたいが、落ち込んでいるのに責め立てても逆効果だ。
一同、何も会話がなく気まずい。誰かが怪我をしたわけではないが、素性の知れない相手に喧嘩を売られたのだ。苛立ちや思うところがあるかもしれない。
体力の消耗が激しかったサキは疲弊し、少し眠たそうだが座ってお茶を飲んでいる。
そのサキを気遣おうとするのは竜次。流行り空回りがさく裂した。
「そ、そうだ、サキ君羊羹でも食べませんか? 甘いものは元気になりますよ?」
竜次に指摘を入れたのはコーディだ。
「お兄ちゃん先生、これからご飯にした方が効率いいじゃん」
「うぐっ……」
これで剣を持たせたら強いなんて思えない。竜次は仲間の中では立場が弱い。
ぱたぱたと廊下で足音が鳴る。ミティアとジェフリーが戻った。少しは明るくなるかもしれない。
部屋に入るなり、ミティアが頭を下げる。
「遅くなりました。用事はもう済んだので大丈夫です。もう、沙蘭の人達に迷惑はかからないので安心してください」
ミティアは疲れたのか、息を深く吸って吐いた。座っていつもの表情だ。彼女が言った言葉にはいくつか意味があった。
用事は済んだ。暴れ騒いでいたシスターのレスフィーナと話し終えた。だが、付き添っていたジェフリーの表情から、満足のいく結果ではなかったのかもしれない。どちらかと言うと、ミティアが気丈に振る舞っている方がすごいかもしれない。
もう一つ、沙蘭の人達に迷惑がかからないと断言している。その言葉で察しはつくが、本当にそうだとしたら、物悲しいだろう。それでも、ミティアは顔を上げて出されたお茶をいただいている。
ふと、空気が重いことを察知したのか、ミティアはお茶を置いた。
部屋の隅でしょげている圭馬をミティアが襲う。尻尾を掴んで、無理矢理、抱きかかえた。
「みぎぃっ!? な、何、するんだよぉっ!!」
当然だが、圭馬はじたばたと暴れる。皆が、ミティアが抱え込んでいるうしろ姿をじっと見守っていた。
次第に圭馬がおとなしくなっていく。圭馬が見上げると、ミティアが物悲しい表情でじっとしているのが目に入った。
「お姉ちゃん?」
「大丈夫だよ……」
ミティアが右手を引いて圭馬を撫で始めた。圭馬の苦しみや悲しみを和らげようとする行動だ。自分だってつらいはずなのに。
「ボ、ボクは大丈夫だから!! あの、その、話すから心配しないで」
圭馬はもぞもぞと抜け出し、床に転がり落ちた。耳も手も、素振りが大げさでバタバタとさせている。
「あぁ、えっと、その、お姉ちゃんが元気じゃないと、みんなが元気にならないじゃないか。ボクより自分の心配しなよっ!!」
圭馬なりの気遣いのようだ。ミティアにとってはそんなつもりはないのだろうが、圭馬が元気になってくれてよかったと笑顔を見せた。ミティアにとって自分は二の次。仲間や大切な人を優先する。
「まったく、そんな顔されたらコッチが落ち込んでるの、馬鹿馬鹿しいじゃないか」
ぶつくさ言いながら、圭馬がテーブルの上に降臨する。いつもの偉そうな圭馬だ。
「言っておくけど、全然現実的じゃないから、信じてもらえないかもしれないよ?」
圭馬が一同の顔色をうかがっている。
魔法を使えるわけでもない、ただの剣豪と医者というステイタスだけでここまで来た竜次が両手をひらひらとさせて苦笑いをする。
「もう魔法だとか、邪神龍がとか、禁忌の魔法って時点で現実的なものは諦めているので大丈夫ですよ」
気が付いたら竜次は一番の一般人だった。彼は魔法というものに縁がない。ただ、立場的な状況では一般人とは言い難い。
一時的に微妙な空気になったが、圭馬は言葉を選びながら話し出した。
「んと、まず、あの二人はこの世界の……この時系列の人じゃないって話したらいいかな。ボクが住んでたお屋敷を覚えているかい?」
幻獣の森の話になり、思い返しが始まった。
キッドは構造を思い出す程度には覚えているようだ。
「あの立派なエントランスにシャンデリア、部屋がいっぱいあって、地下もあって、迷子になりそうなお屋敷よね?」
圭馬は深く頷いた。
「そ、あれの持ち主。あの周辺に村があったんだよね。とうの昔にみんな出て行って、地図から消滅した小さい村。あの兄妹のパパママは平和の神様を呼び起こそうとして、邪神龍を呼び出してしまった。壊滅したんだけど、まぁそれは置いておいて……」
この話は長くなりそうだと、圭馬が自制を掛けた。
「お兄ちゃんの方はルシフ、妹の方はエルリミエーナ。ルシフ兄ちゃんは白兄ちゃんのお弟子だったんだよね。ボクは契約者にして種族を越えた友だち。魔法学校も大魔導士の試験も工面してくれた大地主さん」
いったん言葉を切ったものの、『大地主』という単語に竜次とジェフリーが表情を引きつらせている。
「ねぇ、ジェフ、嫌な予感がしませんか?」
「同じことを考えていた。その先は言わなくていい」
何となく想像がついたところで、ジェフリーは竜次の言葉を塞いだ。
圭馬は首を傾げながら再び言う。
「まぁ、その、何となくは合ってると思うから詳しく説明する必要はないかもしれないね。問題はここから」
なぜか圭馬はサキに向き合った。
「あの人は禁忌の魔法に近いものに手を出した。力に溺れた者の末路だと言っていい。それは時間を捻じ曲げるものだった。彼を信じられなくなってしまった白兄ちゃんは契約を破棄し、読心術を得た。裏切りってやつだね」
アイラに言われた『力に溺れるな』という意味がこれだったのかもしれない。そう言えば、アイラのもとには圭白がいる。だとしたらその言葉の意味はそこから来ているものだ。圭白が読心術を使うのも納得がいく。
また一つわからなかったことがつながった。
「時間軸を捻じ曲げて色んな世界に言っているのだと思うけれど、それは歴史を変えてしまうかもしれない危険なことなのに理由がわからない。正義の味方ゴッコなのかもしれないけど。ルシフ兄ちゃんは正義感が強いから」
「圭馬さん、その方達は何年前の方なのですか?」
「んんんー……千年は行ってないはず。沙蘭はまだ存在していなかった頃だね」
しかし妙だ。ティアマラントたちは裏切ったとまでいう人が残した屋敷に住んでいた。
他にもおかしな点はある。
「昔はもっとどこでも魔力が供給されて、お屋敷や湖周辺みたいな聖域なんてなくてもボクたちは外で人の姿のまま歩くことができた。それが今や世界的な魔力は衰えてろくに歩けもしない。契約して魔力をもらっていないと、外の世界で倒れて魔界に強制送還されちゃうんだよね」
圭馬は疑問に思っていたことを見透かしたように続きを言った。このことについて、ショコラも付け加えるように言う。
「そりゃあ、さっきのあの魔導士は格上じゃろう。昔の方が魔法使いは強かったもんなぁん?」
「なぁババァ、この子の未来を打ち砕くような言い方はやめなよ」
「圭馬チャン、目的は瘴気の魔物なのぉ? 我々で倒せるのぉん?」
ショコラは尻尾を揺らす。圭馬の答えを試すような態度だ。
「邪神龍は人々の住む場所を壊したり人を食べたりする。物理的というか、見て取れる破壊行動だね。それに対し、瘴気の魔物は心の闇に潜み、人から生きる気力を奪うんだ。同じような存在でも、瘴気の魔物は本性がわからないし目で見えない。大きなものに引き寄せられるかもしれないけど、実体を掴むのが難しい。だからハッキリ言うけど、キミたちだけじゃ封じることも倒すことも難しいと思う」
ショコラはじっと圭馬を見ている。多分まだ何かを吐かせたいのだろう。
「圭馬チャン、それだけではなかろうなぁん?」
「そうだね。ルシフ兄ちゃんたちが力なら、キミたちは連携プレーという技を持っている。手を組めば確実に……とは行かないだろうなぁ、はぁ……」
ミティアを利用しようとしていたし、いい気はしない。圭馬は耳を下げて、項垂れている様子だった。
ミティアは皆に問う。
「でも、これから先、またぶつかってしまうかもしれない。そうしたら、わたしたちはどうするのが一番いいんだろう?」
心優しいミティアにとって、衝突は避けたいというのが本音だ。それはクディフに向けられた殺意の刃にも言えるが、彼女は利用されようとも、殺されそうになっても理由があるからと考えている。一般的には殺意を向けられた人にいい気はしないはずなのに、彼女は違う。それが甘さであり、お人好しと言われても仕方がないかもしれない。
ジェフリーも疑問に思った。
「真っ向から争うのはおかしいかもしれないな。向こうにも目的があったみたいだし、もう手出しをして来ない、喧嘩を売る相手を間違えたって言っていたし」
聞いた覚えのあるものを並べる。キッドは指摘を入れた。
「また対立したら、話して通じるのかしら」
「キッドは説得や交渉が苦手そうだよな」
「あたしはあんたともわかり合えないわ……」
二人がお互いに皮肉をぶつけて、苦笑いをするくらいには空気が和んだ。もちろんこんなものは喧嘩でも何でもない。
竜次は肩を落とした。
「まぁ、次があって、あちらが歩み寄る気があれば……というところでしょうか。あまり干渉してはいけないようですし、そうなると難しいですね」
自分がこの先同行しないかもしれない引っ掛かりを残しながら、何となく話を合わせる。
変なまとまり方にローズが口元を歪ませた。
「野良犬に噛み付かれた気分デス」
あまり戦えないローズからすると、衝突は避けたいところだ。
それぞれが頭を悩ませている中、もっとも落ち込んでいたのはサキだった。コーディが気遣う。
「元気ないじゃん。お疲れ?」
サキは俯き、顎に指を滑らせながら小難しい顔をしていた。少し危機感を持ったようだ。それもそうだろう。明らかに力の差が見えていた。
「うん、まぁ、僕って格上の魔導士と戦ったことがないから。何か手を打たないとまずいかなって思っただけ。僕一人でできることなんて、小さいけどね」
「うわっ、向上心の塊がなんか言ってる」
「圭馬さんは力に溺れた者の末路と言っていました。魔法を間違ったことに使うのは許せないと思います。何か理由があるのかもしれないけれど。譲れない正義は誰にでもあるだろうから」
サキはコーディのからかいを流し、自分なりの理解を示した。彼が言うように、個々の正義が存在する。振り方次第で良し悪しになる事は誰しもわかっていた。
「さて、と……」
竜次がまとめるようにして手を叩く。皆が注目した。
「さっき私が出前を取っておいたので、これから持って来ますね。新しいお茶淹れておいてくださいな?」
何かの間違いかとジェフリーは眉をひそめる。
「え、兄貴がご馳走?」
竜次の足取り軽く、部屋を出て行く。それをキッドが慌てて追った。
ミティアまで追い駆けて行った。仕方なく残された者で部屋を片付け、テーブルも広くする。
玄関口の下駄箱で大きなお盆を持とうとしている竜次。キッドが慌てて駆けつけた。
「竜次さんっ!!」
手伝いに来ただけではないようだ。キッドの表情が強張っている。
「お、おかしいよ、竜次さん。もしかして、本当に?」
「本当にとは?」
竜次は薄ら笑みを浮かべている。キッドが何を言いたいのかを知っていて、惚けているようにも捉えられる。キッドは問い詰めた。
「ここに、沙蘭に残るの? お別れなの……?」
竜次はキッドの質問に手を止め、振り返った。キッドのうしろにもう一人、ミティアが何の話をしているのかと動揺している。
竜次は首を振ってため息をついた。
「ご飯くらい、美味しく食べましょう? 手伝っていただけますか? ミティアさんも」
ミティアに小皿とお漬物の盛り合わせを渡す。
キッドはお盆に重箱を乗せて持った。それでも、竜次のことが気になる。
「竜次さん?」
「早く運びましょう。冷めちゃいますよ?」
竜次はキッドの質問には答えないまま、お盆と食器を手渡す。お盆には漆器の重箱が人数分ある。甘っぽい匂いが食欲をそそるが、質問の答えが気になって仕方ない。
食卓を囲む。竜次は何事もなかったかのように振る舞った。
「沙蘭の名物でもあります、鰻重ですよ。おかわりはありませんので、味わって食べてくださいねっ!!」
やけににこにことしていて気味が悪いくらいだ。
見た目や香りを楽しんでいる皆の中でいち早く、割り箸をパキッと音を立てて裂き重箱に突き刺したのがジェフリーだった。甘いタレのしみ込んだご飯と、パリッとした皮の白身を大口にかき込んでいる。
すかさず竜次が注意をした。
「ジェフ、いただきますくらい言いなさい」
「心の中で言った」
ジェフリーは箸も置かず、もぐもぐと駱駝のように頬を動かしている。どうやら、好物のようだ。
コーディが指摘をする。
「うわっ、ジェフリーお兄ちゃん、品がないよ? そんなにおいしいの?」
コーディは手を合わせて小声でいただきますと言う。箸を付け始めた。
「んふっ!? なにこれ、おいしい!!」
割り箸を握る手がぶるぶると大袈裟に震えている。
ローズは山椒を振って、さらに香りを堪能してから箸を付け始めた。
「何年振りでしょうかネ。高級品じゃないデスカ」
サキも噛み締めながら、感動している。痩せ細った体を確実に刺激した。
「沙蘭は本当においしいものがたくさんで困ってしまいます。ちらし寿司だっておいしかったのに……」
この白身と御飯の絶妙なほくほく感がたまらなく至福だ。
普段ならここでもっと食が進みそうな声がするはずなのに、その本人はおとなしい。
ミティアは箸が進んでおらず、明らかに様子がおかしい。今回はもう一人、キッドも落ち込んでいる様子だった。
その原因とも言える竜次は、露骨なまでににこにことしていた。
「食べている時は暗い話をしない、でしたっけ? 誰が決めたわけでもありませんが」
暗い話をしない。いつから、こうなったのだろうか。おいしいはずなのに、どこか悲しい。
ミティアとキッドにとっては、もしかしたらこれが竜次を含めた最後の晩餐かもしれないと憂鬱だった。
男性陣が先にお風呂をいただきに行った。もう沙蘭では自分の家のように寛げるのがありがたい。食べ物もおいしいし、街の人も城の人も、もちろん城主も優しい。
間違ってはいないが自分の家のようにだらけている竜次。足も伸ばしてお風呂でリラックスとは旅をする者には至高だ。そんな緩んだ調子でうっかりボロを吐いた。
「楽しかったなぁ」
竜次がため息にも似た息をつく。ジェフリーとサキは揃って怪訝な表情を浮かべた。圭馬とショコラも耳を立てている。
「兄貴、まさか、旅を降りるのか?」
ジェフリーが察する。竜次は解れた髪を上げ直しながら答えた。
「私の居場所はここだと思っていました。私みたいに道を誤らないよう、見て支えることが存在意義だと思い込んでいました。魔法も使えないただの人間の私が、これ以上付いて行っても足手まといでしょう?」
虚しく木霊する別れの言葉。当然だが、ジェフリーは納得しない。
「本心じゃないくせに!」
「えぇ、そうです。本心ではありません。本当は最後まで一緒にいたい」
「責任を放棄するのか? 兄貴はそんないい加減な奴じゃない」
ジェフリーの声が低くなる。拳を震わせていた。
クディフにミティアを託された初めの頃を思い出した。『関わった以上、最後まで責任を取れ』確か、そう言われた。
必要以上に人と関わらないようにして生きて来た。それが、人と関わることで経験を得て、今では自分の将来についても考えている。
ミティアが普通の女の子として歩める道を探す。その目的が移り変わり、今や世界を救うに発展した。歩んで来た道、出会った人、大切な仲間、得た友だち。何も失っていいものはない。
ジェフリーは正直、竜次が旅を降りるのは全力で阻止したかった。
竜次が旅の一行から離脱するのを止めたかったのは、サキも同じだった。
「僕は先生にどれだけ助けられたかわかりません。正直に言いますが、心細いです」
「サキもこう言ってるだろ? 考え直した方がいい」
「だから、姉さんたちは元気がなかったのかぁ」
サキはようやくここで、二人が気落ちしていた理由を知った。
竜次はあくまでもまだ、そのつもりであることを強調した。
「まだ全員に話したわけではありませんが、最終的な決定は明日に出します。それまではいつも通りにしていたいのです。よろしくお願いします」
熟考したい思いは伝わってくれた。そうだと信じたい。
言い争いにならなくてよかったが、以前のジェフリーなら簡単に言い争っていただろう。それこそ、大人になってくれたものだ。
思わず笑顔が綻んだ。
「ジェフ、あなたが弟でよかった。形はどうあれ、これまでありがとう」
竜次が湯船から身を上げた。
「色々見たいものがあるので、今日は戻りません。お二人はちゃんと休みなさいね」
正姫やマナカたちとも話すのだろう。もしかしたら、ケーシスの話をしておくのかもしれない。立場上、竜次は話すことがたくさんあるだろう。
残されたジェフリーとサキ、使い魔たちで話が始まる。
「沙蘭は好きです。でも、居心地がよすぎる気がしますね」
「明日は大図書館に行きたいって顔をしてるな?」
「僕の考えていたこと、よくわかりましたね」
ジェフリーはサキの性格を理解している。好奇心と向上心の塊だ。
「ボク、お寿司食べたい」
「いいのぉん、わしも食べたいわぁ」
呑気なものだ。竜次のことは二の次になっている。
思い詰めた様子だったが、そんなに重要視していなかった。きっと思い直してくれる。
ここまで築いたものを信じているからこそ、ジェフリーたちは深く触れなかった。
借り物だがこれも着慣れててしまった浴衣。
正姫たちにケーシスとサテラの話をした。初めは驚かれたが、父親が新しい道を歩み始めたことをうれしがっていた。
長らく消息不明だったのに、真っ当に生きると父親が行動を起こしている。そのうち顔を見せに来るだろうと思うがそれも楽しみに胸を馳せていた。
もっと凝った話をするのかと思っていたが、これから先、沙蘭は定期船を増便するらしく忙しいようだ。観光や物流、利便性の向上を前々から計ってはいたが、遂に踏み出したらしい。
街も国も変わりつつある。
いつまでも変わらないのは自分だけ。思いや意識こそ変わったかもしれないが、どこか置いて行かれてしまった孤独感は拭えない。
一度死んだあの日から、周りは目まぐるしく変わって行った。自分が死んだところで時間は止まらない。日はまた昇り沈む。
自分が何かを変える力があるのなら、どんなにいいだろうか。
話も早々に終わってしまい、竜次は北殿の自室に足を運んだ。召使いを雇っているのは知っている。部屋の私物や窓の縁にも埃が積もっていないし定期的に換気しているようだ。窓を少し開けるも、冷え込んできたせいもあってすぐに閉めてしまった。
「こんなに寒かったかなぁ……」
放っておけばそれなりの身分だった。日当たりもよければ風通しもいい部屋。街も見下ろせて、海も見えて景色も悪くない。
そう言えば棚の整理は全然していない。何かジェフリーにあげてしまってもいいような気もする。経済学とかそういった類の難しい本は絶対にないと思って避けてあるが、剣術の本は無造作に入っている。
あげたところで読むのかはまた別の話なのだが。
本を何冊か取り出していると、扉をノックされた。
城の者は会議と言っていたし、仕事もある。竜次は誰だろうと疑問に思いながら扉を開ける。すると、浴衣を着たキッドだった。髪の毛が乾ききっていないのか、普段よりボリュームがなく、慣れていないと別人のように思える。
竜次は驚きの声を上げた。
「えぇっ、クレア? ここは私の部屋ですよ!?」
「や、ここかなって」
キッドはわざわざ探しに来たようだ。竜次は困った様子で棚に本を戻し、向き直った。
「ここは離れなので寒いです。話でしたらもっと暖かいところへ行きましょう?」
「別にここでいいです」
「あのねぇ、男性の部屋に入るってことは……」
注意の途中でキッドは抱きついた。わざわざ来たのだ。彼女なりの正義を持って。
「あたしの話を聞いて……」
キッドは涙声で額を小突いた。彼女は全身を震わせている。
「あたしはミティアと一緒にルッシェナさんと戦います。さっき話し合ったの。だから勇気をください!! もう絶対に迷ったりしないように!」
「勇気、ねぇ……」
竜次はキッドの手を解かせた。
「私は何もできませんよ? 魔法が使えるわけでもない」
「そんな理由で逃げないで。すごくわがままなのはわかっているわ。だけど、ここまで一緒に頑張れたんだから、これからもあたしと一緒にいてほしい」
やはり呼び止められた。竜次はこの予想をしていたが、こんなに強く言われるとは思ってもいなかった。どう返したらいいのかわからない。誤魔化すのはおかしい。竜次は素直に今の考えを言う。
「その、ですね、まだ迷いがあって、考えています」
「迷ってるなら、今ここで決断して!! あたしと一緒じゃ嫌ですか?」
キッドは浴衣の襟元を摘まみながら食い下がる。その手が微かに震えている。自分は覚悟を決めた。だから一緒にいてほしい。都合のいい言葉かもしれないが、今のキッドの素直な気持ちだ。
竜次は首を振って否定した。
「いいえ。クレアと一緒で嫌だったことは、一つもありません」
竜次はキッドの手を取った。
「私は、あなたがその人をまだ好きなら、これ以上苦しんでほしくなかった。傷付くのが見ていられなくて、遠ざければ時間が癒してくれると思った。私はあなたに何もしてあげられないから。だから一緒にここに残らないかと勧めました」
「こういうときは、あたしの気持ちをわかってよ!! あたしがどんな気持ちでここに来たと思っているの!?」
キッドは顔を上げる。涙で濡らした頬が赤い。
「あたしは別れたくない!!」
「クレ……んっ…………」
キッドは勢い深く唇を重ねた。だが、それだけではない。息が詰まるように深く、深く、求めあうような深さだった。離すのが惜しいほどに。
やっと離れたと思ったら、お互いに息が上がっている。いわゆる、フレンチキスだ。これを許す相手は、もはや友人という関係ではない。
竜次は息を整えながらキッドを抱きしめる。思いがつながった。重なった。今はただ、手放したくない思いが強かった。
「これは、同意?」
「同意じゃなかったら、どうするんですか?」
「勘弁してください。今は、自制ができそうにもない」
「ふふっ」
虫の声も少なくなって来た沙蘭で、夜が深まる。
霧が掛かった空に朧月が輝いた。一雨来るかもしれない。
教会のシスターにして天空都市の人間。新地で誰が頼れるだろうか。レスフィーナは弱々しく、もう楽になりたいと言って来た。どう判断していいのかわからない。なぜなら、ミティアは母親のぬくもりなど覚えていないからだ。
ミティアは急に虚しくなって、泣くこともできなくなってしまった。
「自分勝手すぎない?」
どこまでも自分勝手で傲慢で人の意見を聞かない。いつも一方的過ぎて、呆れてしまう。だが、その意思は別の方向に向いていた。
「こうすれば、悲しくならないでしょう?」
「何を言っているの?」
その自分勝手はミティアを悲しませないためだとでも言いたいのだろうか。ジェフリーは付き添っているだけではなく、言葉を交わしていた。
「おばさんは、自分の死期が近いと悟っていたとでも言いたそうだな? それこそ自分勝手で傲慢な極みじゃないか?」
「この世界はあまりにも汚い思いで満ち溢れています。それでも、救いはあったはずなのに、地上の方は強いのですね。教会なんて、本当は必要なかったのかもしれません」
噛み合わない会話もレスフィーナの特徴。こちらから諦めてしまいそうになる。現実なんて、もっとつらいのに。
「天空都市が落ちたらこの世界は壊れてしまいます。救いの道がないのなら、もうあなたに託すしかありません」
レスフィーナは手を上げる。ミティアはその手を取った。冷たくて、消えてしまいそうなか細い声に嫌な予感を覚える。
「どうして天空都市は滅んだの?」
「あなたは『あの男』を知っているでしょう? あの男の存在は危険すぎます。そして、神を創り出そうとしている。リーチェ、あなたが止めて、天空都市もこの世界も秩序を保つのです……」
「あの男って……まさか、兄さん?」
ミティアは背筋が凍るような思いをした。なぜレスフィーナがルッシェナを知っているのか。天空都市と地上の秩序という発言も気になった。これは持っているどの情報と結びつくのだろうか。
レスフィーナはミティアの手を握った。か細い声を上げる。
「お別れです」
「待って、わたしはどうしたらいいの!?」
「わたくしのぶんまで、生きればいいのです、よ……」
急に手が暖かくなり、視界が白くなった。弾けたかに思えたがレスフィーナの存在はない。ミティアは両手を見つめてぼんやりとしている。
あまりにぼんやりとするものだから、ジェフリーはミティアの肩を持って軽く揺すった。
「何が起きたんだ? ミティアは大丈夫なのか?」
レスフィーナは消えた。もっと言い換えると、母親は消えてしまった。ミティアは今の状況を確認した。
和室に少しいいベッド。その中は空っぽだ。握っていた手は暖かいし、体に何か変化が起きたのかと言うと実感はない。ただ、声を出して泣けなかったのに、頬をスッと涙が伝った。ミティアは小さく頷いた。
「わたしは平気。だけど、何だか気持ちが暖かいのに悲しいの……」
親子としてまともな会話などほとんどしていないし、思い出に浸ることもできない。浸る思い出がそもそもミティアの中にはない。
「託すなんてずるいよね。自分は逃げちゃったみたいで……」
ミティアは目を擦って涙を潰した。
「わたしも死んじゃうときは、こうやって消えちゃうのかな」
言いながら苦笑いをするミティア。虚しくて、別れにもならなくて、でも悲しくて。
「それは考えないようにしよう。それより、いくら妄言だか狂言でも、おばさんが言っていたこと、全部は間違っていないはずだ。」
「そうだといいなぁ……」
ジェフリーは竜次と違って励ますのがうまい。人に希望を持たせる、一緒に寄り添ってくれることはありがたいだろう。
「こんなのは乗り越えないといけない一つにすぎない。俺が一緒で頑張れるといいんだけど」
「ん、ありがとう、ジェフリー」
ジェフリーはミティアの手を握って違和感を覚えた。ミティアはまだ『何か』を抱えたままだ。自分には打ち明けてくれない心の闇が気になって仕方がない。だが、ここで問い詰めても何もならないだろう。自分に器が足りていないことを悔いた。何度この思いをしただろう。本当に自分はミティアを支えてあげられているのだろうかと考え込んだ。自分も成長したいと強く思った。
縁談はもちろんなくなった。当然だろう。この件に関しては、あの兄妹に感謝しなくてはいけないかもしれない。
フィリップスの関係者には悪いが、安全の確認が取れ次第とんぼ返りとなった。これは沙蘭が提案したわけではない。竜次の株は上がったらしいが、彼は騒ぎの以前に自分自ら出向いて断りを入れていたからだ。こういうときだけはきちんとものを言う。
仲間に対しても、もう少し強く言えればいいのだが。
ことが落ち着いたら話すと言っていた圭馬は、客間の隅でしょげている。
ショコラが尻尾を下げ、気の毒そうに声をかける。
「圭馬チャン、ずっとこうしているつもりなのかなぁん?」
問い詰めたいが、落ち込んでいるのに責め立てても逆効果だ。
一同、何も会話がなく気まずい。誰かが怪我をしたわけではないが、素性の知れない相手に喧嘩を売られたのだ。苛立ちや思うところがあるかもしれない。
体力の消耗が激しかったサキは疲弊し、少し眠たそうだが座ってお茶を飲んでいる。
そのサキを気遣おうとするのは竜次。流行り空回りがさく裂した。
「そ、そうだ、サキ君羊羹でも食べませんか? 甘いものは元気になりますよ?」
竜次に指摘を入れたのはコーディだ。
「お兄ちゃん先生、これからご飯にした方が効率いいじゃん」
「うぐっ……」
これで剣を持たせたら強いなんて思えない。竜次は仲間の中では立場が弱い。
ぱたぱたと廊下で足音が鳴る。ミティアとジェフリーが戻った。少しは明るくなるかもしれない。
部屋に入るなり、ミティアが頭を下げる。
「遅くなりました。用事はもう済んだので大丈夫です。もう、沙蘭の人達に迷惑はかからないので安心してください」
ミティアは疲れたのか、息を深く吸って吐いた。座っていつもの表情だ。彼女が言った言葉にはいくつか意味があった。
用事は済んだ。暴れ騒いでいたシスターのレスフィーナと話し終えた。だが、付き添っていたジェフリーの表情から、満足のいく結果ではなかったのかもしれない。どちらかと言うと、ミティアが気丈に振る舞っている方がすごいかもしれない。
もう一つ、沙蘭の人達に迷惑がかからないと断言している。その言葉で察しはつくが、本当にそうだとしたら、物悲しいだろう。それでも、ミティアは顔を上げて出されたお茶をいただいている。
ふと、空気が重いことを察知したのか、ミティアはお茶を置いた。
部屋の隅でしょげている圭馬をミティアが襲う。尻尾を掴んで、無理矢理、抱きかかえた。
「みぎぃっ!? な、何、するんだよぉっ!!」
当然だが、圭馬はじたばたと暴れる。皆が、ミティアが抱え込んでいるうしろ姿をじっと見守っていた。
次第に圭馬がおとなしくなっていく。圭馬が見上げると、ミティアが物悲しい表情でじっとしているのが目に入った。
「お姉ちゃん?」
「大丈夫だよ……」
ミティアが右手を引いて圭馬を撫で始めた。圭馬の苦しみや悲しみを和らげようとする行動だ。自分だってつらいはずなのに。
「ボ、ボクは大丈夫だから!! あの、その、話すから心配しないで」
圭馬はもぞもぞと抜け出し、床に転がり落ちた。耳も手も、素振りが大げさでバタバタとさせている。
「あぁ、えっと、その、お姉ちゃんが元気じゃないと、みんなが元気にならないじゃないか。ボクより自分の心配しなよっ!!」
圭馬なりの気遣いのようだ。ミティアにとってはそんなつもりはないのだろうが、圭馬が元気になってくれてよかったと笑顔を見せた。ミティアにとって自分は二の次。仲間や大切な人を優先する。
「まったく、そんな顔されたらコッチが落ち込んでるの、馬鹿馬鹿しいじゃないか」
ぶつくさ言いながら、圭馬がテーブルの上に降臨する。いつもの偉そうな圭馬だ。
「言っておくけど、全然現実的じゃないから、信じてもらえないかもしれないよ?」
圭馬が一同の顔色をうかがっている。
魔法を使えるわけでもない、ただの剣豪と医者というステイタスだけでここまで来た竜次が両手をひらひらとさせて苦笑いをする。
「もう魔法だとか、邪神龍がとか、禁忌の魔法って時点で現実的なものは諦めているので大丈夫ですよ」
気が付いたら竜次は一番の一般人だった。彼は魔法というものに縁がない。ただ、立場的な状況では一般人とは言い難い。
一時的に微妙な空気になったが、圭馬は言葉を選びながら話し出した。
「んと、まず、あの二人はこの世界の……この時系列の人じゃないって話したらいいかな。ボクが住んでたお屋敷を覚えているかい?」
幻獣の森の話になり、思い返しが始まった。
キッドは構造を思い出す程度には覚えているようだ。
「あの立派なエントランスにシャンデリア、部屋がいっぱいあって、地下もあって、迷子になりそうなお屋敷よね?」
圭馬は深く頷いた。
「そ、あれの持ち主。あの周辺に村があったんだよね。とうの昔にみんな出て行って、地図から消滅した小さい村。あの兄妹のパパママは平和の神様を呼び起こそうとして、邪神龍を呼び出してしまった。壊滅したんだけど、まぁそれは置いておいて……」
この話は長くなりそうだと、圭馬が自制を掛けた。
「お兄ちゃんの方はルシフ、妹の方はエルリミエーナ。ルシフ兄ちゃんは白兄ちゃんのお弟子だったんだよね。ボクは契約者にして種族を越えた友だち。魔法学校も大魔導士の試験も工面してくれた大地主さん」
いったん言葉を切ったものの、『大地主』という単語に竜次とジェフリーが表情を引きつらせている。
「ねぇ、ジェフ、嫌な予感がしませんか?」
「同じことを考えていた。その先は言わなくていい」
何となく想像がついたところで、ジェフリーは竜次の言葉を塞いだ。
圭馬は首を傾げながら再び言う。
「まぁ、その、何となくは合ってると思うから詳しく説明する必要はないかもしれないね。問題はここから」
なぜか圭馬はサキに向き合った。
「あの人は禁忌の魔法に近いものに手を出した。力に溺れた者の末路だと言っていい。それは時間を捻じ曲げるものだった。彼を信じられなくなってしまった白兄ちゃんは契約を破棄し、読心術を得た。裏切りってやつだね」
アイラに言われた『力に溺れるな』という意味がこれだったのかもしれない。そう言えば、アイラのもとには圭白がいる。だとしたらその言葉の意味はそこから来ているものだ。圭白が読心術を使うのも納得がいく。
また一つわからなかったことがつながった。
「時間軸を捻じ曲げて色んな世界に言っているのだと思うけれど、それは歴史を変えてしまうかもしれない危険なことなのに理由がわからない。正義の味方ゴッコなのかもしれないけど。ルシフ兄ちゃんは正義感が強いから」
「圭馬さん、その方達は何年前の方なのですか?」
「んんんー……千年は行ってないはず。沙蘭はまだ存在していなかった頃だね」
しかし妙だ。ティアマラントたちは裏切ったとまでいう人が残した屋敷に住んでいた。
他にもおかしな点はある。
「昔はもっとどこでも魔力が供給されて、お屋敷や湖周辺みたいな聖域なんてなくてもボクたちは外で人の姿のまま歩くことができた。それが今や世界的な魔力は衰えてろくに歩けもしない。契約して魔力をもらっていないと、外の世界で倒れて魔界に強制送還されちゃうんだよね」
圭馬は疑問に思っていたことを見透かしたように続きを言った。このことについて、ショコラも付け加えるように言う。
「そりゃあ、さっきのあの魔導士は格上じゃろう。昔の方が魔法使いは強かったもんなぁん?」
「なぁババァ、この子の未来を打ち砕くような言い方はやめなよ」
「圭馬チャン、目的は瘴気の魔物なのぉ? 我々で倒せるのぉん?」
ショコラは尻尾を揺らす。圭馬の答えを試すような態度だ。
「邪神龍は人々の住む場所を壊したり人を食べたりする。物理的というか、見て取れる破壊行動だね。それに対し、瘴気の魔物は心の闇に潜み、人から生きる気力を奪うんだ。同じような存在でも、瘴気の魔物は本性がわからないし目で見えない。大きなものに引き寄せられるかもしれないけど、実体を掴むのが難しい。だからハッキリ言うけど、キミたちだけじゃ封じることも倒すことも難しいと思う」
ショコラはじっと圭馬を見ている。多分まだ何かを吐かせたいのだろう。
「圭馬チャン、それだけではなかろうなぁん?」
「そうだね。ルシフ兄ちゃんたちが力なら、キミたちは連携プレーという技を持っている。手を組めば確実に……とは行かないだろうなぁ、はぁ……」
ミティアを利用しようとしていたし、いい気はしない。圭馬は耳を下げて、項垂れている様子だった。
ミティアは皆に問う。
「でも、これから先、またぶつかってしまうかもしれない。そうしたら、わたしたちはどうするのが一番いいんだろう?」
心優しいミティアにとって、衝突は避けたいというのが本音だ。それはクディフに向けられた殺意の刃にも言えるが、彼女は利用されようとも、殺されそうになっても理由があるからと考えている。一般的には殺意を向けられた人にいい気はしないはずなのに、彼女は違う。それが甘さであり、お人好しと言われても仕方がないかもしれない。
ジェフリーも疑問に思った。
「真っ向から争うのはおかしいかもしれないな。向こうにも目的があったみたいだし、もう手出しをして来ない、喧嘩を売る相手を間違えたって言っていたし」
聞いた覚えのあるものを並べる。キッドは指摘を入れた。
「また対立したら、話して通じるのかしら」
「キッドは説得や交渉が苦手そうだよな」
「あたしはあんたともわかり合えないわ……」
二人がお互いに皮肉をぶつけて、苦笑いをするくらいには空気が和んだ。もちろんこんなものは喧嘩でも何でもない。
竜次は肩を落とした。
「まぁ、次があって、あちらが歩み寄る気があれば……というところでしょうか。あまり干渉してはいけないようですし、そうなると難しいですね」
自分がこの先同行しないかもしれない引っ掛かりを残しながら、何となく話を合わせる。
変なまとまり方にローズが口元を歪ませた。
「野良犬に噛み付かれた気分デス」
あまり戦えないローズからすると、衝突は避けたいところだ。
それぞれが頭を悩ませている中、もっとも落ち込んでいたのはサキだった。コーディが気遣う。
「元気ないじゃん。お疲れ?」
サキは俯き、顎に指を滑らせながら小難しい顔をしていた。少し危機感を持ったようだ。それもそうだろう。明らかに力の差が見えていた。
「うん、まぁ、僕って格上の魔導士と戦ったことがないから。何か手を打たないとまずいかなって思っただけ。僕一人でできることなんて、小さいけどね」
「うわっ、向上心の塊がなんか言ってる」
「圭馬さんは力に溺れた者の末路と言っていました。魔法を間違ったことに使うのは許せないと思います。何か理由があるのかもしれないけれど。譲れない正義は誰にでもあるだろうから」
サキはコーディのからかいを流し、自分なりの理解を示した。彼が言うように、個々の正義が存在する。振り方次第で良し悪しになる事は誰しもわかっていた。
「さて、と……」
竜次がまとめるようにして手を叩く。皆が注目した。
「さっき私が出前を取っておいたので、これから持って来ますね。新しいお茶淹れておいてくださいな?」
何かの間違いかとジェフリーは眉をひそめる。
「え、兄貴がご馳走?」
竜次の足取り軽く、部屋を出て行く。それをキッドが慌てて追った。
ミティアまで追い駆けて行った。仕方なく残された者で部屋を片付け、テーブルも広くする。
玄関口の下駄箱で大きなお盆を持とうとしている竜次。キッドが慌てて駆けつけた。
「竜次さんっ!!」
手伝いに来ただけではないようだ。キッドの表情が強張っている。
「お、おかしいよ、竜次さん。もしかして、本当に?」
「本当にとは?」
竜次は薄ら笑みを浮かべている。キッドが何を言いたいのかを知っていて、惚けているようにも捉えられる。キッドは問い詰めた。
「ここに、沙蘭に残るの? お別れなの……?」
竜次はキッドの質問に手を止め、振り返った。キッドのうしろにもう一人、ミティアが何の話をしているのかと動揺している。
竜次は首を振ってため息をついた。
「ご飯くらい、美味しく食べましょう? 手伝っていただけますか? ミティアさんも」
ミティアに小皿とお漬物の盛り合わせを渡す。
キッドはお盆に重箱を乗せて持った。それでも、竜次のことが気になる。
「竜次さん?」
「早く運びましょう。冷めちゃいますよ?」
竜次はキッドの質問には答えないまま、お盆と食器を手渡す。お盆には漆器の重箱が人数分ある。甘っぽい匂いが食欲をそそるが、質問の答えが気になって仕方ない。
食卓を囲む。竜次は何事もなかったかのように振る舞った。
「沙蘭の名物でもあります、鰻重ですよ。おかわりはありませんので、味わって食べてくださいねっ!!」
やけににこにことしていて気味が悪いくらいだ。
見た目や香りを楽しんでいる皆の中でいち早く、割り箸をパキッと音を立てて裂き重箱に突き刺したのがジェフリーだった。甘いタレのしみ込んだご飯と、パリッとした皮の白身を大口にかき込んでいる。
すかさず竜次が注意をした。
「ジェフ、いただきますくらい言いなさい」
「心の中で言った」
ジェフリーは箸も置かず、もぐもぐと駱駝のように頬を動かしている。どうやら、好物のようだ。
コーディが指摘をする。
「うわっ、ジェフリーお兄ちゃん、品がないよ? そんなにおいしいの?」
コーディは手を合わせて小声でいただきますと言う。箸を付け始めた。
「んふっ!? なにこれ、おいしい!!」
割り箸を握る手がぶるぶると大袈裟に震えている。
ローズは山椒を振って、さらに香りを堪能してから箸を付け始めた。
「何年振りでしょうかネ。高級品じゃないデスカ」
サキも噛み締めながら、感動している。痩せ細った体を確実に刺激した。
「沙蘭は本当においしいものがたくさんで困ってしまいます。ちらし寿司だっておいしかったのに……」
この白身と御飯の絶妙なほくほく感がたまらなく至福だ。
普段ならここでもっと食が進みそうな声がするはずなのに、その本人はおとなしい。
ミティアは箸が進んでおらず、明らかに様子がおかしい。今回はもう一人、キッドも落ち込んでいる様子だった。
その原因とも言える竜次は、露骨なまでににこにことしていた。
「食べている時は暗い話をしない、でしたっけ? 誰が決めたわけでもありませんが」
暗い話をしない。いつから、こうなったのだろうか。おいしいはずなのに、どこか悲しい。
ミティアとキッドにとっては、もしかしたらこれが竜次を含めた最後の晩餐かもしれないと憂鬱だった。
男性陣が先にお風呂をいただきに行った。もう沙蘭では自分の家のように寛げるのがありがたい。食べ物もおいしいし、街の人も城の人も、もちろん城主も優しい。
間違ってはいないが自分の家のようにだらけている竜次。足も伸ばしてお風呂でリラックスとは旅をする者には至高だ。そんな緩んだ調子でうっかりボロを吐いた。
「楽しかったなぁ」
竜次がため息にも似た息をつく。ジェフリーとサキは揃って怪訝な表情を浮かべた。圭馬とショコラも耳を立てている。
「兄貴、まさか、旅を降りるのか?」
ジェフリーが察する。竜次は解れた髪を上げ直しながら答えた。
「私の居場所はここだと思っていました。私みたいに道を誤らないよう、見て支えることが存在意義だと思い込んでいました。魔法も使えないただの人間の私が、これ以上付いて行っても足手まといでしょう?」
虚しく木霊する別れの言葉。当然だが、ジェフリーは納得しない。
「本心じゃないくせに!」
「えぇ、そうです。本心ではありません。本当は最後まで一緒にいたい」
「責任を放棄するのか? 兄貴はそんないい加減な奴じゃない」
ジェフリーの声が低くなる。拳を震わせていた。
クディフにミティアを託された初めの頃を思い出した。『関わった以上、最後まで責任を取れ』確か、そう言われた。
必要以上に人と関わらないようにして生きて来た。それが、人と関わることで経験を得て、今では自分の将来についても考えている。
ミティアが普通の女の子として歩める道を探す。その目的が移り変わり、今や世界を救うに発展した。歩んで来た道、出会った人、大切な仲間、得た友だち。何も失っていいものはない。
ジェフリーは正直、竜次が旅を降りるのは全力で阻止したかった。
竜次が旅の一行から離脱するのを止めたかったのは、サキも同じだった。
「僕は先生にどれだけ助けられたかわかりません。正直に言いますが、心細いです」
「サキもこう言ってるだろ? 考え直した方がいい」
「だから、姉さんたちは元気がなかったのかぁ」
サキはようやくここで、二人が気落ちしていた理由を知った。
竜次はあくまでもまだ、そのつもりであることを強調した。
「まだ全員に話したわけではありませんが、最終的な決定は明日に出します。それまではいつも通りにしていたいのです。よろしくお願いします」
熟考したい思いは伝わってくれた。そうだと信じたい。
言い争いにならなくてよかったが、以前のジェフリーなら簡単に言い争っていただろう。それこそ、大人になってくれたものだ。
思わず笑顔が綻んだ。
「ジェフ、あなたが弟でよかった。形はどうあれ、これまでありがとう」
竜次が湯船から身を上げた。
「色々見たいものがあるので、今日は戻りません。お二人はちゃんと休みなさいね」
正姫やマナカたちとも話すのだろう。もしかしたら、ケーシスの話をしておくのかもしれない。立場上、竜次は話すことがたくさんあるだろう。
残されたジェフリーとサキ、使い魔たちで話が始まる。
「沙蘭は好きです。でも、居心地がよすぎる気がしますね」
「明日は大図書館に行きたいって顔をしてるな?」
「僕の考えていたこと、よくわかりましたね」
ジェフリーはサキの性格を理解している。好奇心と向上心の塊だ。
「ボク、お寿司食べたい」
「いいのぉん、わしも食べたいわぁ」
呑気なものだ。竜次のことは二の次になっている。
思い詰めた様子だったが、そんなに重要視していなかった。きっと思い直してくれる。
ここまで築いたものを信じているからこそ、ジェフリーたちは深く触れなかった。
借り物だがこれも着慣れててしまった浴衣。
正姫たちにケーシスとサテラの話をした。初めは驚かれたが、父親が新しい道を歩み始めたことをうれしがっていた。
長らく消息不明だったのに、真っ当に生きると父親が行動を起こしている。そのうち顔を見せに来るだろうと思うがそれも楽しみに胸を馳せていた。
もっと凝った話をするのかと思っていたが、これから先、沙蘭は定期船を増便するらしく忙しいようだ。観光や物流、利便性の向上を前々から計ってはいたが、遂に踏み出したらしい。
街も国も変わりつつある。
いつまでも変わらないのは自分だけ。思いや意識こそ変わったかもしれないが、どこか置いて行かれてしまった孤独感は拭えない。
一度死んだあの日から、周りは目まぐるしく変わって行った。自分が死んだところで時間は止まらない。日はまた昇り沈む。
自分が何かを変える力があるのなら、どんなにいいだろうか。
話も早々に終わってしまい、竜次は北殿の自室に足を運んだ。召使いを雇っているのは知っている。部屋の私物や窓の縁にも埃が積もっていないし定期的に換気しているようだ。窓を少し開けるも、冷え込んできたせいもあってすぐに閉めてしまった。
「こんなに寒かったかなぁ……」
放っておけばそれなりの身分だった。日当たりもよければ風通しもいい部屋。街も見下ろせて、海も見えて景色も悪くない。
そう言えば棚の整理は全然していない。何かジェフリーにあげてしまってもいいような気もする。経済学とかそういった類の難しい本は絶対にないと思って避けてあるが、剣術の本は無造作に入っている。
あげたところで読むのかはまた別の話なのだが。
本を何冊か取り出していると、扉をノックされた。
城の者は会議と言っていたし、仕事もある。竜次は誰だろうと疑問に思いながら扉を開ける。すると、浴衣を着たキッドだった。髪の毛が乾ききっていないのか、普段よりボリュームがなく、慣れていないと別人のように思える。
竜次は驚きの声を上げた。
「えぇっ、クレア? ここは私の部屋ですよ!?」
「や、ここかなって」
キッドはわざわざ探しに来たようだ。竜次は困った様子で棚に本を戻し、向き直った。
「ここは離れなので寒いです。話でしたらもっと暖かいところへ行きましょう?」
「別にここでいいです」
「あのねぇ、男性の部屋に入るってことは……」
注意の途中でキッドは抱きついた。わざわざ来たのだ。彼女なりの正義を持って。
「あたしの話を聞いて……」
キッドは涙声で額を小突いた。彼女は全身を震わせている。
「あたしはミティアと一緒にルッシェナさんと戦います。さっき話し合ったの。だから勇気をください!! もう絶対に迷ったりしないように!」
「勇気、ねぇ……」
竜次はキッドの手を解かせた。
「私は何もできませんよ? 魔法が使えるわけでもない」
「そんな理由で逃げないで。すごくわがままなのはわかっているわ。だけど、ここまで一緒に頑張れたんだから、これからもあたしと一緒にいてほしい」
やはり呼び止められた。竜次はこの予想をしていたが、こんなに強く言われるとは思ってもいなかった。どう返したらいいのかわからない。誤魔化すのはおかしい。竜次は素直に今の考えを言う。
「その、ですね、まだ迷いがあって、考えています」
「迷ってるなら、今ここで決断して!! あたしと一緒じゃ嫌ですか?」
キッドは浴衣の襟元を摘まみながら食い下がる。その手が微かに震えている。自分は覚悟を決めた。だから一緒にいてほしい。都合のいい言葉かもしれないが、今のキッドの素直な気持ちだ。
竜次は首を振って否定した。
「いいえ。クレアと一緒で嫌だったことは、一つもありません」
竜次はキッドの手を取った。
「私は、あなたがその人をまだ好きなら、これ以上苦しんでほしくなかった。傷付くのが見ていられなくて、遠ざければ時間が癒してくれると思った。私はあなたに何もしてあげられないから。だから一緒にここに残らないかと勧めました」
「こういうときは、あたしの気持ちをわかってよ!! あたしがどんな気持ちでここに来たと思っているの!?」
キッドは顔を上げる。涙で濡らした頬が赤い。
「あたしは別れたくない!!」
「クレ……んっ…………」
キッドは勢い深く唇を重ねた。だが、それだけではない。息が詰まるように深く、深く、求めあうような深さだった。離すのが惜しいほどに。
やっと離れたと思ったら、お互いに息が上がっている。いわゆる、フレンチキスだ。これを許す相手は、もはや友人という関係ではない。
竜次は息を整えながらキッドを抱きしめる。思いがつながった。重なった。今はただ、手放したくない思いが強かった。
「これは、同意?」
「同意じゃなかったら、どうするんですか?」
「勘弁してください。今は、自制ができそうにもない」
「ふふっ」
虫の声も少なくなって来た沙蘭で、夜が深まる。
霧が掛かった空に朧月が輝いた。一雨来るかもしれない。
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