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【3‐1】ステップアップ
リズのはなし
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「ねぇねぇ、いつもここでその板チョコクロワッサン食べてるね」
「うっせーなぁ。誰だ、お前?」
「どうしていつも一人で中庭に寝そべって食べてるの?」
「質問に答えろよ」
「僕はリズ・ハーテスだよ。君は?」
「……は?」
「ハ君?」
「ちげぇっ!!」
「ねぇねぇ、ずるいよ」
「お前がユッカのカレシか?」
「ん?」
「『ん?』じゃねーよ。どうも調子が狂うな、優等生」
「僕のこと知っているじゃないか、なーんだ。じゃあ君は誰なの? 面白いねっ!!」
カンカンカン……
「いけね、次の授業が始まる」
「あ、ねぇねぇ」
「あばよ、優等生!!」
「面白い人だなぁ……」
「あ、また今日もいた!! ハ君!!」
「ちげぇっつーのっ!!」
「じゃあ、板チョコ男?」
「勝手に変な名前つけんなっ!!」
「あっははは!! 面白いね、ケーシスさん」
「ぶっ……」
「何だ、お前。気持ち悪い奴だな」
「僕からしたら、毎日決まった時間に決まった場所で決まったもの食べてるケーシスさんの方が気持ち悪いよ? チョコが好きなの?」
「馬鹿が感染るぞ、向こうに行けよ、優等生」
「優等生が馬鹿と話してはいけないの?」
「馬鹿って言うなっ!! クソ野郎が!」
「自分で馬鹿だと言っていたじゃないか!」
「だぁーっ!!」
カンカンカン……
「ねぇ、予鈴鳴ったよ?」
「サボり」
「えぇーっ、いけないんだぁ。誰が学費を払ってくれていると思っているんだい?」
「俺んところ、金持ちなんだからいーの」
「勉強しないと卒業できないよ?」
「学校で学ぶことが全てじゃねーよ、優等生」
「そっか。それなら僕もサボろう」
「はーーーーーーーーーーあ?」
「友だちでしょ?」
「いつ、誰が、お前とっ!?」
「今、僕が、ケーシスさんとっ!!」
「いつもここで、一人でご飯食べてるってことは、ケーシスさんも友だちいないんでしょ?」
「魔法学校にいる男子は圧倒的に少ないからな。しゃーねーだろ」
「はい、これ」
「ブルーベリーチョコ?」
「フルーツのチョコっておいしいんだよ?」
「ほー……」
「よこしておいて食いたいって顔するのやめろよ」
「違うよ、一緒に食べたいんだ」
「ほらよ」
「わっ、ケーシスさん優しいっ!!」
「つーか、これ、お前がよこしたやつだろ。最初からそう言え」
「友だちと何か食べるって、楽しいじゃん?」
「さっき友だちになったばかりで馴れ馴れしいな」
「ねぇねぇ、どうして馴れ馴れしいといけないの?」
「お前は優等生と馬鹿の紙一重だな」
「いっそ僕は、馬鹿にでもなれればいいのに」
「お前、飛び級できるくらいの頭を持っているじゃねぇか。学年トップだろ?」
「一個上がると超激戦、ケーシスさんの学年になっちゃうじゃないか」
「跨いでくれ、頼むからっ!!」
「そしたら卒業してる」
「あーーーーーーーーーーったくもぉっ!!」
「誰かを待っているのはつらいよ」
「……?」
「今日はお前が先か。そんなことだろうとは思ったが」
「はー……」
「聞いたぜ。来年の卒論の仮文章、教頭に握り潰されたんだってな?」
「まぁね」
「当たり障りないことを書いとけばよかったのに、お前、暗殺でもされちまうんじゃねぇのか? 明らかに内容がヤバいだろ」
「人が知らないことに警笛を鳴らすのがいけないことなのかい?」
「内容がだよ。何だよ、世界の生贄って、邪神龍だなんて誰が信じるんだ、そんなおとぎ話を?」
「おとぎ話なんかじゃないよ」
「やめとけって。魔法の話でも書いておけっての」
「シルバーリデンスって人が書いた日記があってね、今日も放課後に重要書物のある大図書館に行くんだ。許可はもうもらってある」
「多分、今日はもうその日記とやらは見つからないと思うぞ」
「止めたって無駄さ。僕は、この真実をちゃんと発表したいんだから!」
「死なない程度に頑張ってくれ」
「もちろんそのつもりさ!!」
「お前が消されなければいいな」
「今日は一段と元気ねぇな?」
「ケーシスさんの言う通りだった。僕は引き下がることにしたよ」
「ずいぶんあっさりと、だな」
「両親とユッカがどうなってもいいのかと脅された。誰にも言うなって」
「…………」
「僕は触れてはいけないものに触れてしまったらしい」
「お前がぶっ殺されなくてよかったな」
「納得なんてしていない。いつか、ちゃんと社会に出られたら、調べる時間はいくらでもあると思うんだ。それまでは、我慢する」
「俺も興味があることが出て来たんでな、立派な卒論と同時に大図書館の隅っこにでも忍ばせておくさ」
「興味があること?」
「お前って怪我とか病気、したことはあるか?」
「風邪ならしょっちゅうだけど?」
「まぁ、いいや」
「例えばだが、絶対に風邪をひかない体ってほしくないか?」
「言っていることが難しいね」
「絶対に病気をしない体ってほしくないか?」
「ケーシスさん、病気なの?」
「こんなことを考えるなんて、頭の病気かもしれないけどな」
「貫きたい正義ってあるよね」
「正義なんてものじぇねぇよ。ただ、一緒に老いて死にたい奴がいるだけさ」
「僕もユッカとちゃんと付き合ったらわかるかな?」
「お前、幼馴染なんだろ?」
「家が隣だっただけさ。ユッカとはケーシスさんだって幼馴染なんでしょ?」
「あいつとは何かと縁があるが、気が強くてかなわねぇ」
「あはは、そうだね。でも面倒見はいいんだ。僕を弟のように接してくれる」
「……」
「どうしたの、ケーシスさん?」
「とんだニブチン野郎が!!」
「うっせーなぁ。誰だ、お前?」
「どうしていつも一人で中庭に寝そべって食べてるの?」
「質問に答えろよ」
「僕はリズ・ハーテスだよ。君は?」
「……は?」
「ハ君?」
「ちげぇっ!!」
「ねぇねぇ、ずるいよ」
「お前がユッカのカレシか?」
「ん?」
「『ん?』じゃねーよ。どうも調子が狂うな、優等生」
「僕のこと知っているじゃないか、なーんだ。じゃあ君は誰なの? 面白いねっ!!」
カンカンカン……
「いけね、次の授業が始まる」
「あ、ねぇねぇ」
「あばよ、優等生!!」
「面白い人だなぁ……」
「あ、また今日もいた!! ハ君!!」
「ちげぇっつーのっ!!」
「じゃあ、板チョコ男?」
「勝手に変な名前つけんなっ!!」
「あっははは!! 面白いね、ケーシスさん」
「ぶっ……」
「何だ、お前。気持ち悪い奴だな」
「僕からしたら、毎日決まった時間に決まった場所で決まったもの食べてるケーシスさんの方が気持ち悪いよ? チョコが好きなの?」
「馬鹿が感染るぞ、向こうに行けよ、優等生」
「優等生が馬鹿と話してはいけないの?」
「馬鹿って言うなっ!! クソ野郎が!」
「自分で馬鹿だと言っていたじゃないか!」
「だぁーっ!!」
カンカンカン……
「ねぇ、予鈴鳴ったよ?」
「サボり」
「えぇーっ、いけないんだぁ。誰が学費を払ってくれていると思っているんだい?」
「俺んところ、金持ちなんだからいーの」
「勉強しないと卒業できないよ?」
「学校で学ぶことが全てじゃねーよ、優等生」
「そっか。それなら僕もサボろう」
「はーーーーーーーーーーあ?」
「友だちでしょ?」
「いつ、誰が、お前とっ!?」
「今、僕が、ケーシスさんとっ!!」
「いつもここで、一人でご飯食べてるってことは、ケーシスさんも友だちいないんでしょ?」
「魔法学校にいる男子は圧倒的に少ないからな。しゃーねーだろ」
「はい、これ」
「ブルーベリーチョコ?」
「フルーツのチョコっておいしいんだよ?」
「ほー……」
「よこしておいて食いたいって顔するのやめろよ」
「違うよ、一緒に食べたいんだ」
「ほらよ」
「わっ、ケーシスさん優しいっ!!」
「つーか、これ、お前がよこしたやつだろ。最初からそう言え」
「友だちと何か食べるって、楽しいじゃん?」
「さっき友だちになったばかりで馴れ馴れしいな」
「ねぇねぇ、どうして馴れ馴れしいといけないの?」
「お前は優等生と馬鹿の紙一重だな」
「いっそ僕は、馬鹿にでもなれればいいのに」
「お前、飛び級できるくらいの頭を持っているじゃねぇか。学年トップだろ?」
「一個上がると超激戦、ケーシスさんの学年になっちゃうじゃないか」
「跨いでくれ、頼むからっ!!」
「そしたら卒業してる」
「あーーーーーーーーーーったくもぉっ!!」
「誰かを待っているのはつらいよ」
「……?」
「今日はお前が先か。そんなことだろうとは思ったが」
「はー……」
「聞いたぜ。来年の卒論の仮文章、教頭に握り潰されたんだってな?」
「まぁね」
「当たり障りないことを書いとけばよかったのに、お前、暗殺でもされちまうんじゃねぇのか? 明らかに内容がヤバいだろ」
「人が知らないことに警笛を鳴らすのがいけないことなのかい?」
「内容がだよ。何だよ、世界の生贄って、邪神龍だなんて誰が信じるんだ、そんなおとぎ話を?」
「おとぎ話なんかじゃないよ」
「やめとけって。魔法の話でも書いておけっての」
「シルバーリデンスって人が書いた日記があってね、今日も放課後に重要書物のある大図書館に行くんだ。許可はもうもらってある」
「多分、今日はもうその日記とやらは見つからないと思うぞ」
「止めたって無駄さ。僕は、この真実をちゃんと発表したいんだから!」
「死なない程度に頑張ってくれ」
「もちろんそのつもりさ!!」
「お前が消されなければいいな」
「今日は一段と元気ねぇな?」
「ケーシスさんの言う通りだった。僕は引き下がることにしたよ」
「ずいぶんあっさりと、だな」
「両親とユッカがどうなってもいいのかと脅された。誰にも言うなって」
「…………」
「僕は触れてはいけないものに触れてしまったらしい」
「お前がぶっ殺されなくてよかったな」
「納得なんてしていない。いつか、ちゃんと社会に出られたら、調べる時間はいくらでもあると思うんだ。それまでは、我慢する」
「俺も興味があることが出て来たんでな、立派な卒論と同時に大図書館の隅っこにでも忍ばせておくさ」
「興味があること?」
「お前って怪我とか病気、したことはあるか?」
「風邪ならしょっちゅうだけど?」
「まぁ、いいや」
「例えばだが、絶対に風邪をひかない体ってほしくないか?」
「言っていることが難しいね」
「絶対に病気をしない体ってほしくないか?」
「ケーシスさん、病気なの?」
「こんなことを考えるなんて、頭の病気かもしれないけどな」
「貫きたい正義ってあるよね」
「正義なんてものじぇねぇよ。ただ、一緒に老いて死にたい奴がいるだけさ」
「僕もユッカとちゃんと付き合ったらわかるかな?」
「お前、幼馴染なんだろ?」
「家が隣だっただけさ。ユッカとはケーシスさんだって幼馴染なんでしょ?」
「あいつとは何かと縁があるが、気が強くてかなわねぇ」
「あはは、そうだね。でも面倒見はいいんだ。僕を弟のように接してくれる」
「……」
「どうしたの、ケーシスさん?」
「とんだニブチン野郎が!!」
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