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恭也
恭也⑧
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急いで携帯電話を手に取り画面を見た、メールが入っている。遥人君からだ。
タケルさん来ましたよ
まだしばらくうちで働いてくれるみたいです
店が終わったら夕夏さんとこ行くって言ってます
タケルとまた会える―――
連絡ありがとう、とだけ打って送信した。
掃除の続きをしていると再配達を依頼した母からの荷物が届いた。かなり重い。段ボール箱を開けると10キロのお米と手作りの保存食が入っていた。ビニールに包まれた何かが内側に貼り付けてある。
「手紙?…」
宛名が私になっている。裏面を見て口が開いた。
湯浅啓太・入江花絵
中身は結婚式の招待状だった。新郎の名前には見覚えがない。式の日程は来年の4月3日になっている。花絵の結婚相手が誰なのか、母は度々言おうとしていた。あの時私は聞きたくなくて電話を切った。隆平かもしれないと思ったからだ。
今更どんな顔をして会えばいいのかわからない。出欠の返信ハガキを封筒に戻そうとして、小さなカードが入っているのを見つけた。淡いピンク色のカードに黒いインクでメッセージが書いてある。
夕夏へ
結婚する事になりました、来てくれたら嬉しいです。
―――なんで逃げるんだよ
まだ地元にいたとき隆平から言われた言葉が耳の奥で聞こえた。
タケルが来るならと思って買い出しに出掛けた。妹がこれからどうするつもりなのかそればかり気になる。実家に無理矢理戻すような事だけはして欲しくない。そんな心配をしながらこういうところを妹はお節介と言っているのだと気が付き自分を恥じた。もしかして、柳瀬さんと安西さんの事も私が勝手に心配しているだけで本当は介入すべき事ではないのかもしれない。
いろいろ考えているとナオさんとの約束が今日だということを思い出した。そしてメールを送った。
急用ができたので今日の約束行けなくなりました。
違う日に変えてもらえますか?
夜8時をまわり、タケルが店を出たことを遥人君がメールで教えてくれた。インターホンが鳴って急いでテレビをつけて玄関へ向かった。ドアの覗き穴を見るとちゃんとタケルが立っていた。
「おかえり」
「ただいま」
タケルは嬉しそうに笑う。
「ご飯作ってあるから食べよう」
「ありがとう。明日仕事だよね、食べたらすぐ帰るから」
「うん… タケルは明日も遥人君のお店行くの?」
自分の声が不自然に高い。
「明日は休みなんだ」
「へえ、何するの?」
「特に何も」
「そうなんだ。じゃあ夜は家にいる?」
無意識にした質問にはっとした。
「うん、なんで?」
「別に理由はないけど。そういえばどう?今の部屋」
「知らない人の家って感じ。何も思い出せない」
「そうだよね。そんな急に変わる訳ないよね」
タケルは立ち上がって料理を運ぶのを手伝ってくれた。2人分の皿がテーブルに並ぶのを見てなんだかほっとした。
「いただきます」
タケルは美味しいと言って箸をすすめる。妹の事を聞くつもりだったのに空気を壊してしまうような気がして言い出せない。そしてベッドに置いてある携帯電話が鳴り始めた。
「出ないの?」
タケルが言うので仕方なく画面を見た。母からだった。
「後で掛けるからいいよ」
再び箸を手に取った、携帯電話は鳴り続けている。
「出たほうがいいよ」
タケルに促されて箸を置いた。電源を切っておけば良かったと後悔した。
タケルさん来ましたよ
まだしばらくうちで働いてくれるみたいです
店が終わったら夕夏さんとこ行くって言ってます
タケルとまた会える―――
連絡ありがとう、とだけ打って送信した。
掃除の続きをしていると再配達を依頼した母からの荷物が届いた。かなり重い。段ボール箱を開けると10キロのお米と手作りの保存食が入っていた。ビニールに包まれた何かが内側に貼り付けてある。
「手紙?…」
宛名が私になっている。裏面を見て口が開いた。
湯浅啓太・入江花絵
中身は結婚式の招待状だった。新郎の名前には見覚えがない。式の日程は来年の4月3日になっている。花絵の結婚相手が誰なのか、母は度々言おうとしていた。あの時私は聞きたくなくて電話を切った。隆平かもしれないと思ったからだ。
今更どんな顔をして会えばいいのかわからない。出欠の返信ハガキを封筒に戻そうとして、小さなカードが入っているのを見つけた。淡いピンク色のカードに黒いインクでメッセージが書いてある。
夕夏へ
結婚する事になりました、来てくれたら嬉しいです。
―――なんで逃げるんだよ
まだ地元にいたとき隆平から言われた言葉が耳の奥で聞こえた。
タケルが来るならと思って買い出しに出掛けた。妹がこれからどうするつもりなのかそればかり気になる。実家に無理矢理戻すような事だけはして欲しくない。そんな心配をしながらこういうところを妹はお節介と言っているのだと気が付き自分を恥じた。もしかして、柳瀬さんと安西さんの事も私が勝手に心配しているだけで本当は介入すべき事ではないのかもしれない。
いろいろ考えているとナオさんとの約束が今日だということを思い出した。そしてメールを送った。
急用ができたので今日の約束行けなくなりました。
違う日に変えてもらえますか?
夜8時をまわり、タケルが店を出たことを遥人君がメールで教えてくれた。インターホンが鳴って急いでテレビをつけて玄関へ向かった。ドアの覗き穴を見るとちゃんとタケルが立っていた。
「おかえり」
「ただいま」
タケルは嬉しそうに笑う。
「ご飯作ってあるから食べよう」
「ありがとう。明日仕事だよね、食べたらすぐ帰るから」
「うん… タケルは明日も遥人君のお店行くの?」
自分の声が不自然に高い。
「明日は休みなんだ」
「へえ、何するの?」
「特に何も」
「そうなんだ。じゃあ夜は家にいる?」
無意識にした質問にはっとした。
「うん、なんで?」
「別に理由はないけど。そういえばどう?今の部屋」
「知らない人の家って感じ。何も思い出せない」
「そうだよね。そんな急に変わる訳ないよね」
タケルは立ち上がって料理を運ぶのを手伝ってくれた。2人分の皿がテーブルに並ぶのを見てなんだかほっとした。
「いただきます」
タケルは美味しいと言って箸をすすめる。妹の事を聞くつもりだったのに空気を壊してしまうような気がして言い出せない。そしてベッドに置いてある携帯電話が鳴り始めた。
「出ないの?」
タケルが言うので仕方なく画面を見た。母からだった。
「後で掛けるからいいよ」
再び箸を手に取った、携帯電話は鳴り続けている。
「出たほうがいいよ」
タケルに促されて箸を置いた。電源を切っておけば良かったと後悔した。
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