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封筒
封筒⑱
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「よーし次行こう!」
「だめだよ~今日はもう解散。電車無くなっちゃうよ」
3次会を提案するパーマヘアに智香がストップを掛けた。
「ごめん、こいつは俺が連れて帰るから。じゃ、今日はありがとう」
長谷川先輩が解散を示した、パーマヘアが電話番号をまだ交換してないと子供のように駄々を捏ね出したので智香は携帯電話を出して細い腕を伸ばした。顔では笑っているものの、嬉しそうではない。さっきまであれだけ楽しそうに騒いでいてもノリに合わせていただけで本命は後ろにいたのだ。
「ゆっかちゃん、今度2人でご飯でも行こうか」
長谷川先輩が堂々と誘った。
「タイミングが合えば・・」
前にいる智香の背中に目が付いている気がした。
私と智香以外はそれぞれ違う電車だと言うので駅前まで見送ることにした。
「またな~!」
パーマヘアが名残惜しそうに連れて行かれるのを智香と見送った。人混みに消えていくのを確認して手を振るのをやめた智香が私を見た。
「ねえ、長谷川先輩とご飯行ったりしないよね」
「行かないよ。適当に断っとく」
「ぜっっったいに行っちゃ駄目だからね」
「はいはい。長谷川先輩を狙う気はさらさらないんだから安心して」
「それはそうだけど・・ まさか長谷川先輩が夕夏に番号聞くなんて思わなかった」
智香は頬を膨らませ、私が歩き出すと腕を掴んできた。いつもより高いヒールを履いてきて疲れたらしい。
「あの中で唯一空いてそうなのが私だったからじゃない?」
重い左腕を首で引っ張りながら駅を目指した。
「あのパーマ、酔い過ぎ。さりげに腰に手回してきてほんとキモかった」
「楽しそうだったじゃない」
「んなわけないでしょ。あれは長谷川先輩に見せつける為だよ」
「わかってたよ。好きならそんな回りくどい事しなくても長谷川先輩と話せばいいのに」
「それじゃ駄目なのよ。普段当たり前のように傍にいる女の子が他の男と仲良くしてるのを見たら意識しない?」
「どうかな。最近はそんな相手いないし想像できない」
「もお~、夕夏も恋愛しなよ。誰か紹介しようか?」
「いいよ、そんな気分じゃない」
気の抜けた返事をすると智香はやれやれといった顔をした。階段を降りて地下鉄の改札を抜けると大きな赤いマークが見えた。
「私トイレ行きたい」
「ここで待ってるね」
入り口で立っていると花火大会のポスターが目に入った。安西さんを花火に誘ってみようか考えた。いい気分転換になれば柳瀬さんとの事もうまくいくかもしれない。そういえば安西さんが楽しそうに笑っているのをしばらく見ていない。誰かさんのストーカー行為がマリッジブルーと重なり安西さんを苦しめている。
「お待たせー」
智香が戻って来た。長いストレートな髪をヘアクリップでざっくりとまとめている。
「智香は反対側のホームだよね」
「うん。今日は来てくれてありがとう」
それと、と続けて長谷川先輩からの誘いはくれぐれも断るようにと念を押してきた。しつこいと言い返すと笑って私の肩を叩いた。
「じゃあね」
手を振りながら階段を降りる智香の足元が気になって仕方ない。あんなに高いヒールでよそ見をできるのがすごいと思った。横山さんのヒールを思い出した、あれは制服の規定範囲内なのか。思い出すと瞬時にムカムカする。
花火大会のポスターを携帯電話で撮った。
「8月5日、来週か」
花火大会に行くなんて久しぶりだ。長野に引っ越してきてから初めての花火。安西さんが頷くのを願ってメールにポスターの写真を添付し送信した。次に携帯電話はメールを受信し、開くと「長谷川 直人」と表示された。
「だめだよ~今日はもう解散。電車無くなっちゃうよ」
3次会を提案するパーマヘアに智香がストップを掛けた。
「ごめん、こいつは俺が連れて帰るから。じゃ、今日はありがとう」
長谷川先輩が解散を示した、パーマヘアが電話番号をまだ交換してないと子供のように駄々を捏ね出したので智香は携帯電話を出して細い腕を伸ばした。顔では笑っているものの、嬉しそうではない。さっきまであれだけ楽しそうに騒いでいてもノリに合わせていただけで本命は後ろにいたのだ。
「ゆっかちゃん、今度2人でご飯でも行こうか」
長谷川先輩が堂々と誘った。
「タイミングが合えば・・」
前にいる智香の背中に目が付いている気がした。
私と智香以外はそれぞれ違う電車だと言うので駅前まで見送ることにした。
「またな~!」
パーマヘアが名残惜しそうに連れて行かれるのを智香と見送った。人混みに消えていくのを確認して手を振るのをやめた智香が私を見た。
「ねえ、長谷川先輩とご飯行ったりしないよね」
「行かないよ。適当に断っとく」
「ぜっっったいに行っちゃ駄目だからね」
「はいはい。長谷川先輩を狙う気はさらさらないんだから安心して」
「それはそうだけど・・ まさか長谷川先輩が夕夏に番号聞くなんて思わなかった」
智香は頬を膨らませ、私が歩き出すと腕を掴んできた。いつもより高いヒールを履いてきて疲れたらしい。
「あの中で唯一空いてそうなのが私だったからじゃない?」
重い左腕を首で引っ張りながら駅を目指した。
「あのパーマ、酔い過ぎ。さりげに腰に手回してきてほんとキモかった」
「楽しそうだったじゃない」
「んなわけないでしょ。あれは長谷川先輩に見せつける為だよ」
「わかってたよ。好きならそんな回りくどい事しなくても長谷川先輩と話せばいいのに」
「それじゃ駄目なのよ。普段当たり前のように傍にいる女の子が他の男と仲良くしてるのを見たら意識しない?」
「どうかな。最近はそんな相手いないし想像できない」
「もお~、夕夏も恋愛しなよ。誰か紹介しようか?」
「いいよ、そんな気分じゃない」
気の抜けた返事をすると智香はやれやれといった顔をした。階段を降りて地下鉄の改札を抜けると大きな赤いマークが見えた。
「私トイレ行きたい」
「ここで待ってるね」
入り口で立っていると花火大会のポスターが目に入った。安西さんを花火に誘ってみようか考えた。いい気分転換になれば柳瀬さんとの事もうまくいくかもしれない。そういえば安西さんが楽しそうに笑っているのをしばらく見ていない。誰かさんのストーカー行為がマリッジブルーと重なり安西さんを苦しめている。
「お待たせー」
智香が戻って来た。長いストレートな髪をヘアクリップでざっくりとまとめている。
「智香は反対側のホームだよね」
「うん。今日は来てくれてありがとう」
それと、と続けて長谷川先輩からの誘いはくれぐれも断るようにと念を押してきた。しつこいと言い返すと笑って私の肩を叩いた。
「じゃあね」
手を振りながら階段を降りる智香の足元が気になって仕方ない。あんなに高いヒールでよそ見をできるのがすごいと思った。横山さんのヒールを思い出した、あれは制服の規定範囲内なのか。思い出すと瞬時にムカムカする。
花火大会のポスターを携帯電話で撮った。
「8月5日、来週か」
花火大会に行くなんて久しぶりだ。長野に引っ越してきてから初めての花火。安西さんが頷くのを願ってメールにポスターの写真を添付し送信した。次に携帯電話はメールを受信し、開くと「長谷川 直人」と表示された。
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