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再生
再生①
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目が覚めると知らない場所にいた。ベッドの柵をみて病院だと気が付いた。
さっきはでかい雷が鳴っていた、もしかして俺は雷に打たれたのか?……
それならついでに殺してくれればよかったのに。なんで生きてんだ、俺は。
無気力なまま暫く天井を見ていた。そのうち看護師が入ってきて血圧を測りだした。
「青谷さん、今日は具合どうですか?」
看護師は血圧を測り終えるとベッドの脇からボードを取り出して布団の上に置いた。
青谷って誰だ?―――――
ボードにはひらがなが書いてある。どうしてここにいるのか聞こうとした、でも、喉がつっかえておかしくなる、声が出ない。ボードの意味を理解した。
文字を指して看護師に聞いた。
お れ の な ま え は ?
看護師は訝しげな顔で言った。
「アオタニレンですよ」
「…」
「他に気になることはありますか?」
「…」
何が起きているのかわからない。全く聞き覚えのない名前。返事をしないでいると看護師は血圧計を抱えて僅かにカーテンを開けた。
「じゃ、また」
トイレに行こうとベッドから足を下した。車椅子が置いてあるのを見てまさかと思った。地面のスリッパを履き立ち上がろうとした、力が入らない。仕方なく柵に掴まり勢いをつけて立ち上がった。それと同時に体が急激に重くなりバランスを崩しかけて車椅子に手を伸ばした。
大きな音を立てて車椅子が壁にぶつかった。転倒して肘を痛めた。
「大丈夫ですか?」
向かいのベッドから人が出てきて俺に聞く。答えられずただ蹲った。
「看護師さん呼ぶからちょっと待ってて」
そう言ってその人はナースコールを押した。
少しして看護師が2人来た。脇を抱えられてベッドに座った。
「青谷さん、どこか痛いところないですか?」
「…」
看護師は病衣の袖をまくった。
「あ、やっぱり打ってる。これじゃ痛いわよね」
その後も頭や膝を確認された。
「どこ行こうとしたの?トイレ?」
「…」
「ちょっとベッドで横になってて」
その後、医者が来て俺に聞いた。今朝のご飯は何が出たか、昨日は誰が面会に来たか、他にも聞かれたけど何もわからない。
反応せずにいると医者は小さく頷いた。それからまたいくつかの質問を受けた、答える気になれずベッドの柵をただ見つめた。
夜になり、静まり返った病室で考えた。浮かんで来るのは死の決意だった。どうすれば死ねるか、ここが病院なら方法はこれしかない。何階から飛び降りれば確実に死ねる?―――――
そして翌日には実行した。結果は失敗に終わった。この不自由な足のせいでもたついてしまったからだ
。看護師に見つかって俺は非常階段の手すりから引き剥がされた。
面倒なことに翌日からいろんな人物が訪ねてきた。死ぬなんて考えるな、心臓のことだってこれから治療していけば良くなるかもしれない、そんな言葉をかけられた。
そしてある夜、女の子が訪ねてきた。先に来ていた男をリクと呼んだ。また人が来た、そう思って顔も見ずに壁一点を見ていた。男が出ていき話しかけてくるその子は俺に差し入れを渡した。ひとりになりたい、その意思を伝えるため一瞬顔を見た。それからボードを取り出して、でていってと指した。その子が部屋を出て行ってからふと思った。見覚えがある、確か……
でも、そんなことはどうだっていい。思い出したところでなんの意味もない。
俺にはもう、生きる理由がない―――――
さっきはでかい雷が鳴っていた、もしかして俺は雷に打たれたのか?……
それならついでに殺してくれればよかったのに。なんで生きてんだ、俺は。
無気力なまま暫く天井を見ていた。そのうち看護師が入ってきて血圧を測りだした。
「青谷さん、今日は具合どうですか?」
看護師は血圧を測り終えるとベッドの脇からボードを取り出して布団の上に置いた。
青谷って誰だ?―――――
ボードにはひらがなが書いてある。どうしてここにいるのか聞こうとした、でも、喉がつっかえておかしくなる、声が出ない。ボードの意味を理解した。
文字を指して看護師に聞いた。
お れ の な ま え は ?
看護師は訝しげな顔で言った。
「アオタニレンですよ」
「…」
「他に気になることはありますか?」
「…」
何が起きているのかわからない。全く聞き覚えのない名前。返事をしないでいると看護師は血圧計を抱えて僅かにカーテンを開けた。
「じゃ、また」
トイレに行こうとベッドから足を下した。車椅子が置いてあるのを見てまさかと思った。地面のスリッパを履き立ち上がろうとした、力が入らない。仕方なく柵に掴まり勢いをつけて立ち上がった。それと同時に体が急激に重くなりバランスを崩しかけて車椅子に手を伸ばした。
大きな音を立てて車椅子が壁にぶつかった。転倒して肘を痛めた。
「大丈夫ですか?」
向かいのベッドから人が出てきて俺に聞く。答えられずただ蹲った。
「看護師さん呼ぶからちょっと待ってて」
そう言ってその人はナースコールを押した。
少しして看護師が2人来た。脇を抱えられてベッドに座った。
「青谷さん、どこか痛いところないですか?」
「…」
看護師は病衣の袖をまくった。
「あ、やっぱり打ってる。これじゃ痛いわよね」
その後も頭や膝を確認された。
「どこ行こうとしたの?トイレ?」
「…」
「ちょっとベッドで横になってて」
その後、医者が来て俺に聞いた。今朝のご飯は何が出たか、昨日は誰が面会に来たか、他にも聞かれたけど何もわからない。
反応せずにいると医者は小さく頷いた。それからまたいくつかの質問を受けた、答える気になれずベッドの柵をただ見つめた。
夜になり、静まり返った病室で考えた。浮かんで来るのは死の決意だった。どうすれば死ねるか、ここが病院なら方法はこれしかない。何階から飛び降りれば確実に死ねる?―――――
そして翌日には実行した。結果は失敗に終わった。この不自由な足のせいでもたついてしまったからだ
。看護師に見つかって俺は非常階段の手すりから引き剥がされた。
面倒なことに翌日からいろんな人物が訪ねてきた。死ぬなんて考えるな、心臓のことだってこれから治療していけば良くなるかもしれない、そんな言葉をかけられた。
そしてある夜、女の子が訪ねてきた。先に来ていた男をリクと呼んだ。また人が来た、そう思って顔も見ずに壁一点を見ていた。男が出ていき話しかけてくるその子は俺に差し入れを渡した。ひとりになりたい、その意思を伝えるため一瞬顔を見た。それからボードを取り出して、でていってと指した。その子が部屋を出て行ってからふと思った。見覚えがある、確か……
でも、そんなことはどうだっていい。思い出したところでなんの意味もない。
俺にはもう、生きる理由がない―――――
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