ゴールドレイン

小夏 つきひ

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3つの星

3つの星⑥

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「何やってるんですか」
瑠香にそう言ったとき拓人はすでにカメラへ手を伸ばしていた。しかし瑠香はそれを素早く交わしカメラのボタンをカチカチと押している。
「何このカメラ、草とか川しか写ってないじゃん。それにおんなじ花ばっかり」
直後、瑠香の左手首は拓人にきつく握られた。カメラは奪い取られ冷たい怒りの視線が瑠香を一瞬怯ませた。
「……暇だから見てただけでしょ。そんなに怒らなくても」
瑠香は手を振り払い顔をそむけた。拓人はカメラを棚の引き出しにしまったが、眉間はまたすぐにひきつった。
「これってあれでしょー?星見るやつ」
瑠香は窓際に置いてある天体望遠鏡から布を剥いでレンズを覗いている。
拓人はその場に立ったまま言った。
「勝手に物触るのやめてください」
「なんで?壊そうとしてる訳じゃないしいいじゃん」
「……」
瑠香はレンズから目を離して拓人を見た。やはりあの視線を向けたままだった。
「その顔やめてくれる?帰国してわざわざ会いに来てんのに、感じ悪」
拓人は床に落ちている布を無言で拾うと瑠香の前を遮るようにして望遠鏡に掛けた。目も合わさず淡々とテーブルの上を片付ける姿を見て瑠香はまたしてもあの感情が湧いていくのを感じた。しかしそれを表には出さず平常心を装った。
「帰る。フライトで疲れたし」
瑠香は鞄を手にするとさっさと部屋を出て行った。拓人は気に留めず台所の戸棚からカップ麺を取り出してヤカンに火をかけた。


それから日が経ち瑠香は度々部屋を訪れてはいたがしつこく電話やメッセージを送ってくることはなくなった。
部屋にいても携帯を見ているだけで会話もなく、拓人からすると何をしに来ているのかと疑問に思うのだった。
ある夜、拓人はいつもより早くベッドに入った。瑠香がいるため付けっぱなしにしていたテレビは突如音が消えて部屋は静まり返った。
ベッドが沈み目を開けると瑠香が体を跨いで座っていた。
瑠香は徐々に顔を近付けてくる。長い髪が顔にかかり間もなく唇が触れそうな時、拓人は額に乗せていた自分の手首を口元に下ろして拒んだ。
時が止まったように瑠香は動かなくなった。
「……もういい」
微かに聞こえた声に滲んでいたのは寂しさでも怒りでもなく無に近い感情だった。
ベッドの軋む音がしたあと暫くして玄関のドアがバタンと閉まった。拓人は重い瞼をそのままにしてやがて眠った。

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