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3つの星
3つの星①
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新しい季節の始まりを肌に感じたのも遠い記憶、警備の仕事とカメラアシスタントの業務をこなす日々は休みなく続き気が付けば夏も終わりに近づいていた。
目まぐるしく変わっていく環境に心が休まらない拓人は日中虚ろになることが増えた。そんな様子を北見は見逃さず執拗に注意をした。
警備の仕事を退職しアシスタントの仕事に専念できるようになると瑠香は拓人を度々遊びに誘いだした。ひどく疲れているときは誘いを断っていたが、そうするとしつこく電話をかけてくる。電話に出なければ面倒なことになるため結局会うことがほとんどだ。東京で晴喜以外に知り合いがいないことをわかっている瑠香は拓人の空いてる時間を見計らって電話をした。
瑠香には派手な遊びをする友人が多く、そこへ合流するためクラブへ行くことが増えた。以前ヘアカットを担当したあの男もクラブにいた。
コミュニケーションを取るのが苦手な拓人は隅の方で酒を飲んでいたが、疲れが溜まっていて酔いがまわるのが早く意識朦朧としながら立っているのがやっとだった。轟音のなか、近くで瑠香の声がした。
「大丈夫?」
「……もう、帰ります」
「えー、まだ11時だよ?明日も休みなんでしょ?」
久しぶりに取れた2連休だった。どれほど貴重なのか説明しようとしたが言葉が出て来ず瑠香の目を見た。そのとき、瑠香の友人の女が後ろから顔を出した。
「ねえ、この子瑠香の何なの?」
「えーっとぉ、彼氏」
「は、まじ?またタイプ変わったの?」
「うん、だって可愛いんだもん。今はこの子がめちゃくちゃタイプ」
瑠香はまたいつものように拓人の腕に抱きついた。
「……じゃないです」
瑠香の友人は拓人に耳を傾けた。
「え、何?」
「…彼氏じゃないです」
「瑠香、あんた彼女じゃないらしいよ」
「ふーん」
瑠香は余裕の顔つきで拓人の腕を引き唇を重ねた。
「あたしは彼女、わかった?」
拓人は朦朧としたまま瑠香を見下ろしている。
「おっ!こんなところでモデルが大丈夫か~?」
ハットを被った背の高い男が酒を片手に上機嫌で声を掛けてきた。瑠香は笑って答えた。
「みんな周り見えてないから大丈夫だって」
「それもそうだな。で、俺はバッチリ見たけど」
「事務所には黙っててよね」
「あいあい。人の恋愛とか興味ねーわ」
「彼女いないからって僻まないでよ」
「あ?ってかそいつ大丈夫かよ。やべー目してんぞ」
瑠香は拓人の顔を見上げた。腕を揺らすと拓人は虚ろな目のまま顔を近づけてきた。瑠香は目を閉じ待った。しかし、その後ずっしりとした衝撃がきて背中に痛みが走った。
目まぐるしく変わっていく環境に心が休まらない拓人は日中虚ろになることが増えた。そんな様子を北見は見逃さず執拗に注意をした。
警備の仕事を退職しアシスタントの仕事に専念できるようになると瑠香は拓人を度々遊びに誘いだした。ひどく疲れているときは誘いを断っていたが、そうするとしつこく電話をかけてくる。電話に出なければ面倒なことになるため結局会うことがほとんどだ。東京で晴喜以外に知り合いがいないことをわかっている瑠香は拓人の空いてる時間を見計らって電話をした。
瑠香には派手な遊びをする友人が多く、そこへ合流するためクラブへ行くことが増えた。以前ヘアカットを担当したあの男もクラブにいた。
コミュニケーションを取るのが苦手な拓人は隅の方で酒を飲んでいたが、疲れが溜まっていて酔いがまわるのが早く意識朦朧としながら立っているのがやっとだった。轟音のなか、近くで瑠香の声がした。
「大丈夫?」
「……もう、帰ります」
「えー、まだ11時だよ?明日も休みなんでしょ?」
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「ねえ、この子瑠香の何なの?」
「えーっとぉ、彼氏」
「は、まじ?またタイプ変わったの?」
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瑠香はまたいつものように拓人の腕に抱きついた。
「……じゃないです」
瑠香の友人は拓人に耳を傾けた。
「え、何?」
「…彼氏じゃないです」
「瑠香、あんた彼女じゃないらしいよ」
「ふーん」
瑠香は余裕の顔つきで拓人の腕を引き唇を重ねた。
「あたしは彼女、わかった?」
拓人は朦朧としたまま瑠香を見下ろしている。
「おっ!こんなところでモデルが大丈夫か~?」
ハットを被った背の高い男が酒を片手に上機嫌で声を掛けてきた。瑠香は笑って答えた。
「みんな周り見えてないから大丈夫だって」
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「彼女いないからって僻まないでよ」
「あ?ってかそいつ大丈夫かよ。やべー目してんぞ」
瑠香は拓人の顔を見上げた。腕を揺らすと拓人は虚ろな目のまま顔を近づけてきた。瑠香は目を閉じ待った。しかし、その後ずっしりとした衝撃がきて背中に痛みが走った。
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