57 / 77
3つの星
3つの星①
しおりを挟む
新しい季節の始まりを肌に感じたのも遠い記憶、警備の仕事とカメラアシスタントの業務をこなす日々は休みなく続き気が付けば夏も終わりに近づいていた。
目まぐるしく変わっていく環境に心が休まらない拓人は日中虚ろになることが増えた。そんな様子を北見は見逃さず執拗に注意をした。
警備の仕事を退職しアシスタントの仕事に専念できるようになると瑠香は拓人を度々遊びに誘いだした。ひどく疲れているときは誘いを断っていたが、そうするとしつこく電話をかけてくる。電話に出なければ面倒なことになるため結局会うことがほとんどだ。東京で晴喜以外に知り合いがいないことをわかっている瑠香は拓人の空いてる時間を見計らって電話をした。
瑠香には派手な遊びをする友人が多く、そこへ合流するためクラブへ行くことが増えた。以前ヘアカットを担当したあの男もクラブにいた。
コミュニケーションを取るのが苦手な拓人は隅の方で酒を飲んでいたが、疲れが溜まっていて酔いがまわるのが早く意識朦朧としながら立っているのがやっとだった。轟音のなか、近くで瑠香の声がした。
「大丈夫?」
「……もう、帰ります」
「えー、まだ11時だよ?明日も休みなんでしょ?」
久しぶりに取れた2連休だった。どれほど貴重なのか説明しようとしたが言葉が出て来ず瑠香の目を見た。そのとき、瑠香の友人の女が後ろから顔を出した。
「ねえ、この子瑠香の何なの?」
「えーっとぉ、彼氏」
「は、まじ?またタイプ変わったの?」
「うん、だって可愛いんだもん。今はこの子がめちゃくちゃタイプ」
瑠香はまたいつものように拓人の腕に抱きついた。
「……じゃないです」
瑠香の友人は拓人に耳を傾けた。
「え、何?」
「…彼氏じゃないです」
「瑠香、あんた彼女じゃないらしいよ」
「ふーん」
瑠香は余裕の顔つきで拓人の腕を引き唇を重ねた。
「あたしは彼女、わかった?」
拓人は朦朧としたまま瑠香を見下ろしている。
「おっ!こんなところでモデルが大丈夫か~?」
ハットを被った背の高い男が酒を片手に上機嫌で声を掛けてきた。瑠香は笑って答えた。
「みんな周り見えてないから大丈夫だって」
「それもそうだな。で、俺はバッチリ見たけど」
「事務所には黙っててよね」
「あいあい。人の恋愛とか興味ねーわ」
「彼女いないからって僻まないでよ」
「あ?ってかそいつ大丈夫かよ。やべー目してんぞ」
瑠香は拓人の顔を見上げた。腕を揺らすと拓人は虚ろな目のまま顔を近づけてきた。瑠香は目を閉じ待った。しかし、その後ずっしりとした衝撃がきて背中に痛みが走った。
目まぐるしく変わっていく環境に心が休まらない拓人は日中虚ろになることが増えた。そんな様子を北見は見逃さず執拗に注意をした。
警備の仕事を退職しアシスタントの仕事に専念できるようになると瑠香は拓人を度々遊びに誘いだした。ひどく疲れているときは誘いを断っていたが、そうするとしつこく電話をかけてくる。電話に出なければ面倒なことになるため結局会うことがほとんどだ。東京で晴喜以外に知り合いがいないことをわかっている瑠香は拓人の空いてる時間を見計らって電話をした。
瑠香には派手な遊びをする友人が多く、そこへ合流するためクラブへ行くことが増えた。以前ヘアカットを担当したあの男もクラブにいた。
コミュニケーションを取るのが苦手な拓人は隅の方で酒を飲んでいたが、疲れが溜まっていて酔いがまわるのが早く意識朦朧としながら立っているのがやっとだった。轟音のなか、近くで瑠香の声がした。
「大丈夫?」
「……もう、帰ります」
「えー、まだ11時だよ?明日も休みなんでしょ?」
久しぶりに取れた2連休だった。どれほど貴重なのか説明しようとしたが言葉が出て来ず瑠香の目を見た。そのとき、瑠香の友人の女が後ろから顔を出した。
「ねえ、この子瑠香の何なの?」
「えーっとぉ、彼氏」
「は、まじ?またタイプ変わったの?」
「うん、だって可愛いんだもん。今はこの子がめちゃくちゃタイプ」
瑠香はまたいつものように拓人の腕に抱きついた。
「……じゃないです」
瑠香の友人は拓人に耳を傾けた。
「え、何?」
「…彼氏じゃないです」
「瑠香、あんた彼女じゃないらしいよ」
「ふーん」
瑠香は余裕の顔つきで拓人の腕を引き唇を重ねた。
「あたしは彼女、わかった?」
拓人は朦朧としたまま瑠香を見下ろしている。
「おっ!こんなところでモデルが大丈夫か~?」
ハットを被った背の高い男が酒を片手に上機嫌で声を掛けてきた。瑠香は笑って答えた。
「みんな周り見えてないから大丈夫だって」
「それもそうだな。で、俺はバッチリ見たけど」
「事務所には黙っててよね」
「あいあい。人の恋愛とか興味ねーわ」
「彼女いないからって僻まないでよ」
「あ?ってかそいつ大丈夫かよ。やべー目してんぞ」
瑠香は拓人の顔を見上げた。腕を揺らすと拓人は虚ろな目のまま顔を近づけてきた。瑠香は目を閉じ待った。しかし、その後ずっしりとした衝撃がきて背中に痛みが走った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
日陰の下で笑う透明なへレニウム
たまかKindle
ファンタジー
※縦書きで読んで頂ければ幸いでございます。
花は、何処に生えるのか。
美しく逞しく咲こうとする花もコンクリートの上では咲けない。
花弁を開け、咲こうとも見えぬ場所では何も確認などできない。
都会からは、遥彼方にある自然に囲まれた島に一人、花を愛でる青年がいた。
ただ呑気にそして陽気にその島で暮らす彼。ただのんびりとうたた寝を謳歌する事が好きな彼が不慮の事故によりある世界に入り込んでしまう。
そこは、今まで暮らしてきた世界とはまるで違う世界‥‥異世界に勇者として召喚されてしまった。
淡々と訳のわからぬまま話が進むも何も上手くいかず。そしてあろう事か殺されたかけてしまう。そんな中ある一人の男に助けてもらい猶予を与えられた。
猶予はたったの10日。その短時間で勇者としての証明をしなければいけなくなった彼は、鍛錬に励むが‥‥‥‥
彼は我慢する。そして嘘を吐く。慣れたフリをしてまた作る。
見えぬ様、見せぬ様、抗おうとも。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる