ゴールドレイン

小夏 つきひ

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咲⑦

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月見草、咲は桃色の花の名をそう教えてくれた。
じゃあねと言って手を振る咲に小さく手を振り返し家路についた。

玄関のドアを開けると多重子の靴と大きなバッグがおいてあった。拓人は嫌な予感がした。
手を洗おうと洗面所へ向かうと多重子が腕組をして部屋から出てきた。
「ただいま」
「あんた、ええ身分やなあ。どこほっつき歩いてたんか知らんけど、飯食うて風呂入って寝るだけなんて」
拓人は俯いた。
「その俯く癖やめ、子供んときのあいつにそっくりで腹立つ。あんたに家の掃除させるわ。こっち来い」
多重子は歩き出した。掃除道具を入れている扉を開き、バケツと雑巾を出した。
「これで床拭きして、そのあとは風呂洗いに行け。トイレもな」
「はい」
多重子は居間の方へ行った。拓人はバケツに水を汲み玄関の床から拭き始めた。多重子に文句を言われるかもしれないと思い隅々まで拭いていると時間がかかった。
バケツの汚れた水を捨て雑巾を洗い、元あったところへ戻しにいった。様々な掃除道具が置いてあるなかで懐中電灯を見つけた。大きさ違いで4つあった。拓人は自分の部屋の蛍光灯が切れかかっていることを思い、多重子が見ていないか確認してから懐中電灯を1つ取った。それをこっそり部屋へ置いてから風呂掃除をしに行った。
すべての掃除を終わらせると疲れて部屋の畳へ寝転んだ。喉が渇いたため水を飲みに台所へ歩いていくと多重子の声がした。
「ほんまあの血筋はそっくりやわ。のんびりしよって」
「あんまりでかい声で言うなよ」
由雄だ。
「別に聞こえてもいいやろ」
「お前が疲れてイライラするのもわかるけど、あの子まだ小学生やぞ」
「あんた、孫にはえらい優しいんやね。健司のときは見て見ぬふり決め込んでたのに」
「……」
「そんなんやったら孝太こうたを気遣ってやってほしいわ。未だに周りの子と遊んでるの見んのやから」
「盆と正月しかおらんのに、そりゃ仲良くなれんやろ」
「ちーがーう。あの話、子供らの間でも広まってるんよ。かわいそうに。そもそもあの小娘がいらんこと言わんかったらあんな事にならんかったのに」
「もうその話はやめろ」
拓人はまたしても入るタイミングを失った。多重子はまだ怒りのおさまらない様子で話している。
「拓人、今日ずっと外で遊んでたんやろ?まったく、自分らの家片付けたってんのに何を調子に乗ってぬくぬく過ごしてるんやろか。健司もろくな親じゃないな」
拓人は一瞬にして青ざめた。そして、この間多重子が話していた内容を思い出そうとした。
「あー、とことん疲れたわ。やっと仏壇処分できた」
その言葉で何が起きているのかわかった。拓人は焦りと興奮の入り混じった状態で多重子の前に飛び出した。
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