おもいでにかわるまで

名波美奈

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第四章

第二百四十六話

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4階に上がり、ドアをノックし入室した。

「失礼します。」

「おー!久しぶりだねー元気にしてたのかー?それに雰囲気変わったねー。」

「そうですか?」

「卒業してから何年経ったっけ?」

「7年ですかね。僕も28になりました。」

「そっかそっか懐かしいねー。でもなんでだろうおかしいな、まるで昨日の事のように感じる。それに君の事は忘れられないしね。ほんとによく卒業できたもんだよね。」

「あの頃は心配と迷惑掛けっぱなしで、お恥ずかしい限りです。」

「そんなこと言える様になってるんだね。時の流れって恐ろしいよ。俺も白髪が増えるはずだ。」

「まだまだお若いですよ。それにしても僕そんな酷かったでしたっけ?」

「酷い酷い。」

「あはは。あの時は卒業出来る様にもう一度配慮して下さってありがとうございます。きちんと終わりを迎えたから、新しく始められたのかな、と思っています。」

「そうだったねー。他の皆が卒業した後、課題を提出したり一人で学校に通ってテスト受けに来たんだもんね。」

「あの時は退学してもいいと本気で思っていたんですけど、退学してたらそのままグレてこもったままになっていたかもしれません。先生のおかげです。ありがとうございました。まあ、実際その後1ヶ月はこもったんですけどね。」

「ははは。そんな美談ではないんだよね。俺は忙しかったし長谷川が卒業してもしなくても、もうどっちでもいいかなって思ってたんだけど、そうそう、とある女子学生が偉く長谷川の卒業の事気にしててね。」

明人は苦々しく笑った。

「卒業式の前もここへ来てくれてさ、あの時に入れてくれたコーヒーとチョコがやたらと美味しくてそのお礼って所だね。クラス代表だった雑用係のお節介の立花さん、覚えてる?」

「はい・・・。」

「二人は付き合ってるのかと勘繰ってたよ。ほんと長谷川にとって立花はなんだったの?」

「そうですね・・・。なんだったんですかね、先生。」

「ははは!あの時の立花と同じ事言ってるよ。彼女がポロポロ泣くからよく覚えてるんだよね。」

明人は話題を変えた。

「あの、電話で聞いた僕宛の郵便って?」

「おー、これこれ。差出人が不明で怪しいけど、大丈夫?」

明人は大きい封筒の上の部分を少し破り、おそるおそる中身を確認して愕然とした。
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