237 / 267
第四章
第二百三十六話
しおりを挟む
「怪我してないよね?」
「怪我してるのは水樹ちゃんでしょ?」
「あっ・・・。そうだね・・・。はは・・・。」
明人と別れたと友達に報告しないのは、まだ認めたくなかったからだ。でも礼にはきちんと報告しようと思う。
「あのね、明人君に・・・。」
声が詰まって涙が出る。でもこうやって報告する事は水樹にとって大義があった。
「振られた・・・。」
「嘘・・・別れたの?」
水樹はコクっと頷き、結局泣いた。振られてから3週間が過ぎても、何も前に進んでいない。でもそれは違う。前になんて進まない。水樹はあの頃に戻りたいのだ。
「ごめん。もう少ししたら泣き止むから。ごめんね。」
苦しくて、苦しくて、明人が大好きだった。
「あっ・・・。」
水樹は体に大きな礼の両腕の温もりを感じた。
「泣いたっていいじゃん。気にする事ないよ。一人分の涙くらい僕が吸収するよ。だって人にはあえて表情があるんだもの。涙はね、水樹ちゃんの悲しみを僕に知らせる為にあるんだ。」
泣いてもいいの?ほんとに?とうっ、うっ、と礼の温もりの中で泣いた。
「僕、大きくなったでしょ?手もこんなに長い。水樹ちゃん頑張れ。大丈夫だよ。努力すれば不安は期待に変わるよ。そして希望になる。希望はね、心の一番深い所にあるんだよ。」
返事は出来ずにもっと泣き続けたが、初めて他人に吐き出したおかげで、少しだけ気持ちがスッキリしていくのを感じていた。
「僕達が30歳になった時、もし二人とも独身だったら結婚しようか。」
「あはは。凄いプロポーズだね。わかった。そうする。」
礼のおかげで涙が減っていき、ありがとうと伝えた。そしてそう励ました前田礼は、大学卒業後に起業し、23歳でクラスで一番に結婚する事になる。
水樹はまだ明人の事をどうやって受け入れれば良いかのかわからないけれど、なんとか頑張ろうとおまじないのように唱えた。そして次の日、担任の先生に呼び出され、以前に見学に行った博物館から再び連絡があったと教えて貰った。他の人を探したけれど、良い人が見つからず、働いている外国人のスタッフが水樹を覚えてくれていて指名してくれたと先生が教えてくれた。
「その話、お受けします。未熟者ですがよろしくお願いしますとお伝え下さい。」
水樹は思った。自分は周りに生かされている。だから無理せずに少しだけ歩こう。と。
それでも明人には卒業までにもう一度だけ気持ちを伝えたい。そしてそれで終わりにしようと決心した。
「怪我してるのは水樹ちゃんでしょ?」
「あっ・・・。そうだね・・・。はは・・・。」
明人と別れたと友達に報告しないのは、まだ認めたくなかったからだ。でも礼にはきちんと報告しようと思う。
「あのね、明人君に・・・。」
声が詰まって涙が出る。でもこうやって報告する事は水樹にとって大義があった。
「振られた・・・。」
「嘘・・・別れたの?」
水樹はコクっと頷き、結局泣いた。振られてから3週間が過ぎても、何も前に進んでいない。でもそれは違う。前になんて進まない。水樹はあの頃に戻りたいのだ。
「ごめん。もう少ししたら泣き止むから。ごめんね。」
苦しくて、苦しくて、明人が大好きだった。
「あっ・・・。」
水樹は体に大きな礼の両腕の温もりを感じた。
「泣いたっていいじゃん。気にする事ないよ。一人分の涙くらい僕が吸収するよ。だって人にはあえて表情があるんだもの。涙はね、水樹ちゃんの悲しみを僕に知らせる為にあるんだ。」
泣いてもいいの?ほんとに?とうっ、うっ、と礼の温もりの中で泣いた。
「僕、大きくなったでしょ?手もこんなに長い。水樹ちゃん頑張れ。大丈夫だよ。努力すれば不安は期待に変わるよ。そして希望になる。希望はね、心の一番深い所にあるんだよ。」
返事は出来ずにもっと泣き続けたが、初めて他人に吐き出したおかげで、少しだけ気持ちがスッキリしていくのを感じていた。
「僕達が30歳になった時、もし二人とも独身だったら結婚しようか。」
「あはは。凄いプロポーズだね。わかった。そうする。」
礼のおかげで涙が減っていき、ありがとうと伝えた。そしてそう励ました前田礼は、大学卒業後に起業し、23歳でクラスで一番に結婚する事になる。
水樹はまだ明人の事をどうやって受け入れれば良いかのかわからないけれど、なんとか頑張ろうとおまじないのように唱えた。そして次の日、担任の先生に呼び出され、以前に見学に行った博物館から再び連絡があったと教えて貰った。他の人を探したけれど、良い人が見つからず、働いている外国人のスタッフが水樹を覚えてくれていて指名してくれたと先生が教えてくれた。
「その話、お受けします。未熟者ですがよろしくお願いしますとお伝え下さい。」
水樹は思った。自分は周りに生かされている。だから無理せずに少しだけ歩こう。と。
それでも明人には卒業までにもう一度だけ気持ちを伝えたい。そしてそれで終わりにしようと決心した。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説




隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

🌊 海の未来 🌊 ~それは魚の未来。わたしたちの未来~
光り輝く未来
現代文学
水産会社に勤務する入社6年目の幸夢美久(こうむ・みく)は、上司からいきなり「アラスカへ飛べ!」と命じられる。しかし、サーモンの買い付けに失敗し、傷心のまま日本に帰ることになる。
それでも、帰国して提出した報告書『持続可能な幸福循環』が社長の目に止まり、更に、その内容が官庁主催の研究会で紹介されると、一気に注目を浴びることになる。そして、多くの関係者を巻き込んだ議論に発展し、日本の漁業の未来に大きな一石を投じることになる。
一方、私生活においても大きな変化が現れる。二人の男性から次々にプロポーズされたのだ。思い悩む彼女が選んだ相手は……、

私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる