おもいでにかわるまで

名波美奈

文字の大きさ
上 下
191 / 267
第四章

第百九十話

しおりを挟む
「動物好きなの?てか俺も手伝ってもいいかな?」

「いいけど・・・。」

瞳と共同での仔牛のミルクやりは奇妙な疑似体験に感じて勇利はドキドキしっぱなしだった。

それから勇利が滞在中の2週間の間に、勇利の努力の甲斐あって勇利と瞳は仲良くなった。瞳は大学では農作物の品種改良、遺伝子操作について研究していく方向性で、更には将来は海外で働く事も視野に入れていると勇利に話してくれた。

自分でレールを敷いて走る姿勢はかっこ良く、勇利が惹かれてしまうのも無理はない。それに勇利だって海外には相当興味があった。

そんな将来の展望図を、二人でこっそり北海道の星屑の下で語り合ったのは、勇利が地元に戻る前の日の夜の事で、そしてそれとは対称的に勇利は地元に帰る当日まで、水樹の事は一度も思い出さなかった。

勇利には自覚がある。水樹はおそらく自分の事が好きだ。そして勇利も水樹をかわいい後輩だとは思っている。でもそろそろ水樹を前に進めてあげないといけない頃だとも思う。

日程通りファームステイを終えると、勇利は水樹にクッキーのお土産を用意し北海道を離れた。そして帰りの飛行機を降りて在来線での帰宅途中に‘明日の夜飯でもどう?’と水樹にメッセージを送信した。そしてその会った時に、もう美化した俺なんかは忘れて、現実を見て自分らしい恋をするようにさとしてあげようと思う。

確かに今まで自分に彼女が出来ても特に水樹に報告もしなかったし一途過ぎる彼女の気持ちに勘付きながらも何年も放置してきた。でも今回勇利が初めてこんなアクションを起こすのは、‘瀬名瞳’が将来、‘宇野瞳’として名前を変える事になるであろう未来図が、もうこの時既に見えつつあるからなのかもしれないからだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

三度目の庄司

西原衣都
ライト文芸
庄司有希の家族は複雑だ。 小学校に入学する前、両親が離婚した。 中学校に入学する前、両親が再婚した。 両親は別れたりくっついたりしている。同じ相手と再婚したのだ。 名字が大西から庄司に変わるのは二回目だ。 有希が高校三年生時、両親の関係が再びあやしくなってきた。もしかしたら、また大西になって、また庄司になるかもしれない。うんざりした有希はそんな両親に抗議すべく家出を決行した。 健全な家出だ。そこでよく知ってるのに、知らない男の子と一夏を過ごすことになった。有希はその子と話すうち、この境遇をどうでもよくなってしまった。彼も同じ境遇を引き受けた子供だったから。

君からの君へのプレゼント

平沼敬
青春
制作 平沼敬 偏差値六〇超えのそこそこいい高校に通っている河野想には、何もなかった。それでも、学校には通わなければならない。席につき授業を受けるも、身が入らない。なんとか終わらせて昼休み、一人で食べる冷えた弁当は味がしない。その後帰宅すると、一枚の写真が目に入って、そこには僕と一人の女性が写っていて―― 僕は走り出す。彼女のため、そして罪を償うため。

処理中です...