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第三章
第百四十五話
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「瞬ちゃん一緒に帰ろう。」
「うん。」
そしてグランドからほぼ全員が引き払ってから、瞬介は礼に誘われやっと帰り始めた。
「瞬ちゃん大丈夫?」
「うん。」
礼と瞬介もまた、親友なのだった。
「瞬ちゃん何持ってるの?」
「これ?今年のハンドの緊急連絡先。まあキャプテンとか俺とか水樹ちゃんは念の為に超個人情報教えあってるけどね。」
「そうなんだ。」
「今日ここで水樹ちゃんに渡すつもりでいたんだ。最近水樹ちゃんもあんまりクラブに顔出さなくなったしね。」
「もう僕達も4年だもんね。忙しいよ。」
「うん・・・。ねえ、水樹ちゃん落ち込んでなかった?」
「大丈夫だよ。歴史に残る名勝負だったって、またおかしな事言いながら戻って行ったよ。」
良かった。と瞬介は安心したけれど、でも今はまだ気持ちが暗かった。
「瞬ちゃん大活躍だったね。」
「うん・・・。あっ・・・。」
そして二人は少し横に逸れた洗い場の所で水樹と明人が話しているのを目撃したのだった。
「長谷川さんて言うんでしょ?」
「うん。そうだよ?」
「いつから同じクラスなの?」
「この4月からだよ。」
「え・・・?」
「どうかした?」
「1ヶ月も経ってないのにこんなに馴染んでて、長谷川さんて凄いんだね。」
「うーん。凄いのは長谷川さんをうまく巻き込んだ水樹ちゃんじゃないかな。」
「そっか・・・。なんかわかるよ。」
瞬介は水樹の事を凄い女の子だと思っている。何故なら、あんな強面の聖也とも簡単に仲良くなって可愛がられていたし、瞬介が意識し過ぎてなかなかうまく話す事の出来なかった勇利とも最初から打ち解けていたからだ。
それに自分だっていつも明るくて一生懸命で時々抜けていて優しい水樹にすぐに好感を持った。それは多分礼も同じだ。瞬介はもう一度二人を見ると、胸が痛くなったのを認めて目を背けた。
彼女のそばにはいつも誰かがいた。クラスメート、先輩、瞬介や礼にその明人だってそうだ。見ているだけじゃ何も変わらない。そしてため息混じりに礼に尋ねた。
「ねえ礼。愛される人って、いつも同じだね。」
「そんな事ないよ・・・。」
「運命の人って、本当に全員にいるのかなあ。こんな俺にも・・・。」
「うーん・・・。瞬ちゃんは自分が好き?」
「ううん。特に今日はそうでもない。」
「うーん・・・。あのさ。今違うクラスの僕達が、あの受験の日に出会った事はすなわち運命だった。」
瞬介はとりあえず頷いた。
「瞬ちゃんが瞬ちゃんを愛した時、誰かが瞬ちゃんを愛するでしょう。」
よくわからないままに瞬介は笑った。
「ぷっ。神様のお告げですか?」
礼には頭が上がらない。ありがとう。と感謝してから瞬介は、よし!と気合を入れ直した。
「うん。」
そしてグランドからほぼ全員が引き払ってから、瞬介は礼に誘われやっと帰り始めた。
「瞬ちゃん大丈夫?」
「うん。」
礼と瞬介もまた、親友なのだった。
「瞬ちゃん何持ってるの?」
「これ?今年のハンドの緊急連絡先。まあキャプテンとか俺とか水樹ちゃんは念の為に超個人情報教えあってるけどね。」
「そうなんだ。」
「今日ここで水樹ちゃんに渡すつもりでいたんだ。最近水樹ちゃんもあんまりクラブに顔出さなくなったしね。」
「もう僕達も4年だもんね。忙しいよ。」
「うん・・・。ねえ、水樹ちゃん落ち込んでなかった?」
「大丈夫だよ。歴史に残る名勝負だったって、またおかしな事言いながら戻って行ったよ。」
良かった。と瞬介は安心したけれど、でも今はまだ気持ちが暗かった。
「瞬ちゃん大活躍だったね。」
「うん・・・。あっ・・・。」
そして二人は少し横に逸れた洗い場の所で水樹と明人が話しているのを目撃したのだった。
「長谷川さんて言うんでしょ?」
「うん。そうだよ?」
「いつから同じクラスなの?」
「この4月からだよ。」
「え・・・?」
「どうかした?」
「1ヶ月も経ってないのにこんなに馴染んでて、長谷川さんて凄いんだね。」
「うーん。凄いのは長谷川さんをうまく巻き込んだ水樹ちゃんじゃないかな。」
「そっか・・・。なんかわかるよ。」
瞬介は水樹の事を凄い女の子だと思っている。何故なら、あんな強面の聖也とも簡単に仲良くなって可愛がられていたし、瞬介が意識し過ぎてなかなかうまく話す事の出来なかった勇利とも最初から打ち解けていたからだ。
それに自分だっていつも明るくて一生懸命で時々抜けていて優しい水樹にすぐに好感を持った。それは多分礼も同じだ。瞬介はもう一度二人を見ると、胸が痛くなったのを認めて目を背けた。
彼女のそばにはいつも誰かがいた。クラスメート、先輩、瞬介や礼にその明人だってそうだ。見ているだけじゃ何も変わらない。そしてため息混じりに礼に尋ねた。
「ねえ礼。愛される人って、いつも同じだね。」
「そんな事ないよ・・・。」
「運命の人って、本当に全員にいるのかなあ。こんな俺にも・・・。」
「うーん・・・。瞬ちゃんは自分が好き?」
「ううん。特に今日はそうでもない。」
「うーん・・・。あのさ。今違うクラスの僕達が、あの受験の日に出会った事はすなわち運命だった。」
瞬介はとりあえず頷いた。
「瞬ちゃんが瞬ちゃんを愛した時、誰かが瞬ちゃんを愛するでしょう。」
よくわからないままに瞬介は笑った。
「ぷっ。神様のお告げですか?」
礼には頭が上がらない。ありがとう。と感謝してから瞬介は、よし!と気合を入れ直した。
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