おもいでにかわるまで

名波美奈

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第三章

第百三十五話

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水樹の気持ちに気付かないふりをして、水樹がこれ以上自分に深入りしてこないようにと、なるべくすきを見せないように勇利はずっと接してきた。一体自分は何様?は置いておくとして、水樹とは絶対に恋愛関係にはならないつもりだった。でもこう何年も一途に思われてみると、勇利だって鬼畜ではないわけで、だからこの水樹の事をどうにかしてあげないと、という気持ちくらい生まれてきてはいた。

ただそれが今の所勇利には難しかった。

いっその事、‘好きです。’と伝えてくれたら勇利だって、 YESまたはNOをそこで初めて考えて、示す事が出来る。でも、水樹が動かない限り何もしないと言うのが過去から今日に至り、とっくに出している勇利の結論だった。

友達のままで終わらせて、もっと大人になった時、聖也や瞬介、皆でまとめて生涯繋がっていたい。ただ、夏に自分の受験が終わり一段落すれば、水樹からご飯くらいは誘ってくれてもいいんだよ、と勇利は思っていた。

そして、勇利と言葉を交わした後の明人は和木と教室に戻った。

「D組の奴らも練習してましたね。あいつら超打ちそう。タッチー大丈夫ですかね。」

「内野は俺が全部捕るよ・・・。」

「さらっとめっちゃイケメンな事言ってますよ。」

明人はスポーツ後の爽快感も手伝って笑いながら歩いていた。

「おう明人、和木、俺も青春のダイアリーの仲間に入れろよ。」

「堀田さん。今日も超絶面白いっす!」

明人は素通りした。そして明人が教室の席に着くと、水樹はまだ戻ってきてはいなかったけれど、そんな事は気にせず窓を開け、下敷きをうちわ代わりにして自分を扇いだ。

それから授業開始数分前、水樹が着席した。水樹はキャップ帽を脱いで髪を一つにまとめていて首元が涼しそうだった。

「今日は暑いですね。それに筋肉痛が酷いです。」

「あっ、おっ・・・。」

俺もだよ・・・。言う訳がない。

何の前触れもなく急に振り向いて話し掛けてきた水樹に、明人は慌て過ぎてまともな返事が出来なかった。
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