おもいでにかわるまで

名波美奈

文字の大きさ
上 下
134 / 267
第三章

第百三十三話

しおりを挟む
「駄目だよ。水樹ちゃんにはもう心に決めた人がいるんだから、無理にゴタゴタを起こさない方がいいよ。」

「なんだよそれ。どっかのお嬢でいいなずけでもいるのかよ?」

「まあね。とにかく、水樹ちゃんで面白がっても誰も得しないし、面白半分で好色な目で見たら僕怒るから。」

慣れてはいないけれど、礼は礼の思う一番凄んだ顔で睨んでみた。

「まあまあまあまあ。まあこうやって色々言ってるけど、本人目の前にしたらそんな喋れないしね。」

「ほんとそれ。」

練習のせいで汗が額を流れる。礼は黙って皆の後をついていき、考え事をした。

自分は水樹と友達だから、こうやって時々男子から探りを入れに来られる事はよくあった。そして礼はその度に、無意味な血が流れないようにと、上手く牽制してきた。

水樹には1年生の頃から変わらずに好きな人がいる事を礼は知っている。ただ水樹はその想いの強さに気付く前に聖也と付き合った。あの頃、聖也が水樹を思えば思う程気持ちのすれ違いが大きくなり、結果として聖也から別れを告げた。その時水樹が自分の前で大泣きした姿を礼は今でも忘れていない。

礼はもう少し考える。礼は水樹が幸せになるなら、別に相手は誰だって良かった。水樹は勇利が初恋で、そのせいで自分の気持ちに変に頑なに鍵をかけてしまっていると礼は思う。

もっと楽に開放して視野が広がれば、この世界に無限に転がっているワクワクやドキドキ達が、早く見つけて貰いたくてこんなにも自己主張している事に気が付く事が出来るはずだ。

そしてそれは他にも言えるのだった。礼は瞬介を思い出した。礼だって自分達3人の均衡に気が付かない訳はない。そして礼は水樹以上に瞬介が心配だった。それでも決めるのは他の誰でもなくて、水樹であり瞬介で、それを礼はうまく舵を取りながら見守っている。

そこに恋がなければ皆幸せなはずなのに気持ちは膨らむばかりで、最後はブラックホールにでもなるのだろうかと礼は思う。

でも誰かを好きだという気持ちを他の誰が否定できるというのだ。例えば礼が、天地創造の神だったとしても、好きな人を自分の事以上に思う尊さには絶対に敵うわけがないのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...