おもいでにかわるまで

名波美奈

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第二章

第百十ー話

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そして更にまた1年が経過し、水樹はまもなく4年生に進級しようとしていた。

そのある昼休み、水樹はお弁当を食べる前にする事があった。先ず礼がロッカーに行く為に席を立つと、水樹は俊敏に近寄った。

「礼、礼礼、礼礼礼礼!」

「あ、水樹ちゃん。で、今年は何くれるの?」

「あははっ。バレてる。」

「毎年の事だからね。」

「礼はね、毎年沢山チョコ貰うでしょ?だから甘くない物はどうかなって。」

「えー、超嫌な予感。」

「はい!特製の駄菓子セットー。」

「出たあ。僕は普通のチョコが欲しかったけどね。」

「それは、本命さんに貰って下さい。」

本当は一つだけ手作りが入っていて、礼は気付いてくれるだろうか。

「今からクラブの人に渡しに行くの?」

「うん。次は瞬ちゃんと、他の皆と、それから・・・。」

「勇利さんでしょ?」

「こらっ。それは内緒だよっ。」

「はあ、面倒くさっ。もう今日そのまま告っちゃえばいいじゃん。何年片思いしてるの。」

「うっ。あのね、まだ駄目なの。」

「まだ?」

「勇利さん、彼女がいない時でも私に何かしてくる事はなくて。だから脈はないんだ。ふられて気まずくなるくらいなら、ずっとこのままでいる。」

「僕はいけると思うけどね。」

「ほんと!?そう見える!?嬉しいー。じゃあわかった。礼にだけ教えるね。来年の夏、勇利さんが引退したら告白しようって決めてるの。それならふられても勇利さんが卒業するまで残り半年だし、なんとか我慢できるかなって。」

「もうバレてると思うけど。」

「きょ、今日のチョコだって、本命だってバレないように渡すんだから大丈夫だよ。」

「へー。」

礼は薄ら笑いをしている。

「じゃあ瞬ちゃんの教室に行ってくるね。」

水樹はほんとは勇利に早く告白したかった。でもふられる事を恐れていた。それに友達としてなら近くにらいれる。そのポジションでい続けられる事は、とても贅沢かもしれないしまだ失いたくはない。

もちろん水樹は勇利に彼女ができる度に、密かにショックを受け続けてきたのも事実で、他の人とは付き合えるのに、自分ではどうして駄目なんだろうと傷付いてもいた。それを気にしてしまえば落ち込むのだ。

そして瞬介の教室に着き、ドアからひょこっと顔を出して中の様子を伺った。水樹は瞬介のクラスは苦手だ。水樹のクラスと違い男子しかいないので雰囲気や匂いが独特でとても近寄り難いのだ。それに今も何人かと目が合ったけれど、目を逸らされて終わりだった。だから水樹は仕方なく声を出して瞬介を呼んだ。

「瞬ちゃーんっ。」

水樹が大声で呼ぶと、教室内にいた全員が一斉にギョロリと目玉を水樹へ向けたのだった。
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