おもいでにかわるまで

名波美奈

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第二章

第九十四話

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「間宮・・・。」

勇利が一言呟いた後、聖也と勇利は目を合わせて頷き、水樹達を探して駆け寄った。彼女達の姿はまだ遠くて何を話しているか内容は聞こえないが、その一触即発の緊張感に嫌な予感がし、聖也は焦った。

そしてようやく二人の声を確認出来る距離まで近付いた時、聖也は何よりも先にショックを受けたのだった。

これは水樹なのか?と目を疑う。水樹は酷く怒り悲しみ、聖也の知らない顔で自分の気持ちを一生懸命に叫んでいた。

勇利の為ならこんなにも感情をあらわにするのか?とドクンドクンと鼓動が大きくなり、嫌な汗が一筋背中に流れた。

そしてその時聖也は、全ての事を悟った。

水樹が勇利に勧誘されて入部した事、勇利の前では拗ねておどけて一番良く笑う事、夏の大会で何故か持っていた勇利からの入部届けの切れ端、そして何より聖也が水樹に好きだと伝えた時の良くわからなかった涙の理由。

点と点だった事象が繋がり一本の線となる。そう、いつだって水樹は勇利を見ていたのだ。

水樹、お前は勇利の事が・・・?

例えそうでも人には色々な過去があり、水樹は聖也の横にいる事をあの時選んだ。それにとにかく今は喧嘩を止めなければと聖也は思った。

「間宮さんは自分勝手ですよっ。苦しいのは、宇野さんの方なのにっ・・・。」

「は!?なんでそんなに怒ってんの!?水樹ちゃんには何も関係ないでしょ!?それに男女の事ってそんな単純じゃないじゃん?男の事なんて何も知らないような純情そうな顔したって私には通用しないからっ。」

仁美の言う事は図星で正論で水樹は唇をつぐむ。その後水樹は叫ばずに仁美を見つめ落ち着いて言った。

「それでも間宮さんは、宇野さんも新しい彼氏さんも傷付けて振り回しています。間宮さんは一体何を望んでいるのですか。何より少しも幸せそうじゃないじゃないですか。」

「なっ!?うっるさいっ、あんたに何がわかんのよっ、もう私と勇利の事は放っておいて。」

聖也が躊躇している間に、仁美はテーブルの紙コップを掴み水樹に投げつけようとした。
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