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第二章
第九十三話
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「おい、気安く触んなよ。」
「睨まないでよ。わかってるよ。別に俺は水樹ちゃんの事何とも思ってないよ。ただのかわいい後輩で妹でそれ以上は何もない。これからもね。」
勇利は瞬きもせずに聖也を見る。そして勇利の言いたい事は聖也にも良くわかった。男は男同士の親友との絆が大切でとてつもなく太い為、そこに女のいざこざを滅多に介入させたりしないのだ。
「コートに戻んなくていいの?」
「ああ。抜けるって了承得てきたから。んじゃ俺水樹探しに行ってくるわ。」
「俺も行くよ。」
「おう。」
そして聖也は勇利とバレー部の部室を出て、水樹のいるであろう食堂に向かった。ただ、今日のゴタゴタのせいか、歩きながら聖也はネガティブになった。
聖也は先に卒業する。そしてその未来を想像すると、自分のいないこの場所が少しだけ寂しかった。そんな聖也に勇利は無神経にたたみかける。
「聖也君もう5年生だね。」
「ああ。」
「進路どうすんの?」
「ああ・・・。」
「聖也君頭いいじゃん。もちろんうちの附属大学じゃなくて外の大学受験するんでしょ?」
勇利の言う通り、そろそろ本気で受験に向き合わなければならない時期になってきていた。聖也は元々は附属ではない外の大学を受けるつもりであったが、ただ、聖也の家から通える東京の国立大が受かるかは難しいレベルにいた。それに聖也の人生において一番重要な事が他にもある。
「下手したら遠距離になっちゃうかもね・・・。」
「附属の大学に進んでから別の大学院に行く事も出来るから。」
それでもその時水樹はまだここの5年生だ。聖也は二十歳の水樹を思い描き、その姿がどれほど大人びて綺麗になっている事だろうと誇らしかった。そしてその時その水樹の横で微笑んでいる男は、絶対にこの自分しかありえない。
「俺は外の大学を受験する。そう家族とも約束してるし。だからまた色々教えてよね。」
勇利と受験の話をしながら歩き食堂の入り口付近に着くと、奥の方から喧嘩声が聞こえた。その様相に、聖也と勇利はそれぞれの思いで一瞬固まった。
「睨まないでよ。わかってるよ。別に俺は水樹ちゃんの事何とも思ってないよ。ただのかわいい後輩で妹でそれ以上は何もない。これからもね。」
勇利は瞬きもせずに聖也を見る。そして勇利の言いたい事は聖也にも良くわかった。男は男同士の親友との絆が大切でとてつもなく太い為、そこに女のいざこざを滅多に介入させたりしないのだ。
「コートに戻んなくていいの?」
「ああ。抜けるって了承得てきたから。んじゃ俺水樹探しに行ってくるわ。」
「俺も行くよ。」
「おう。」
そして聖也は勇利とバレー部の部室を出て、水樹のいるであろう食堂に向かった。ただ、今日のゴタゴタのせいか、歩きながら聖也はネガティブになった。
聖也は先に卒業する。そしてその未来を想像すると、自分のいないこの場所が少しだけ寂しかった。そんな聖也に勇利は無神経にたたみかける。
「聖也君もう5年生だね。」
「ああ。」
「進路どうすんの?」
「ああ・・・。」
「聖也君頭いいじゃん。もちろんうちの附属大学じゃなくて外の大学受験するんでしょ?」
勇利の言う通り、そろそろ本気で受験に向き合わなければならない時期になってきていた。聖也は元々は附属ではない外の大学を受けるつもりであったが、ただ、聖也の家から通える東京の国立大が受かるかは難しいレベルにいた。それに聖也の人生において一番重要な事が他にもある。
「下手したら遠距離になっちゃうかもね・・・。」
「附属の大学に進んでから別の大学院に行く事も出来るから。」
それでもその時水樹はまだここの5年生だ。聖也は二十歳の水樹を思い描き、その姿がどれほど大人びて綺麗になっている事だろうと誇らしかった。そしてその時その水樹の横で微笑んでいる男は、絶対にこの自分しかありえない。
「俺は外の大学を受験する。そう家族とも約束してるし。だからまた色々教えてよね。」
勇利と受験の話をしながら歩き食堂の入り口付近に着くと、奥の方から喧嘩声が聞こえた。その様相に、聖也と勇利はそれぞれの思いで一瞬固まった。
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