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第二章
第六十六話
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「あの、私今日はこのまま家に帰りますね。明日の朝は電車で学校に通います。」
言い終えると水樹はキョロキョロ辺りを見渡し何かを探し出した。
「どした?」
「近くに電車の駅があるのかなって。」
「えっ・・・。」
何言ってんだよ馬鹿野郎・・・。
「みーずき。もしも俺の事が世界で一番嫌いな先輩じゃないんだったら、俺に家まで送らせてくれないかな。」
「そんなっ。いつも沢山お世話になっているのに、そんな事だったら私、バチが当たってしまいますよ。」
聖也はほっとして、そして今度は何も語らない背中で走り出す。
丁寧に運転していても水樹を乗せて走るのは緊張した。万が一にでも怪我をさせるわけにはいかない。そして聖也はおそらく水樹の家の近くであろう公園で停車し確認した。
「家あの辺だろ?」
「そうなんですけど、でも家の前までバイクでは行きにくいです。すみませんがここでお別れしてもいいですか?」
水樹からヘルメットと上着を受け取りながら聖也は言った。
「ここから歩いて送るよ。」
その時携帯電話の振動に気が付いた。
「ごめん、勇利だわ。おう、あー、任せろって。今水樹を送ってる所。うっせーなお前と一緒にすんなよ。お前こそどうせ仁美ちゃんと一緒にステージ観てたんだろ。おー。じゃな。」
電話中に突然下を向き、水樹の目が泳いだように見えたが、聖也の気のせいかもしれない。
「今日は本当にありがとうございました。クラブ、早く戻ってきて下さいね。」
「あっ・・・。」
嬉しかった。それから聖也は沈黙した後やっと今日の最後に一番言いたい事が言えた。
「試合、負けちゃってごめんな。かっこいい所見せたかったのに、逆にかっこ悪くなってほんとごめんな。」
そして負けた悔しさが蘇り、それでも込み上げてきたものはなんとか抑えたけれど、詰まってしまった声をどうしも隠せなかった。
言い終えると水樹はキョロキョロ辺りを見渡し何かを探し出した。
「どした?」
「近くに電車の駅があるのかなって。」
「えっ・・・。」
何言ってんだよ馬鹿野郎・・・。
「みーずき。もしも俺の事が世界で一番嫌いな先輩じゃないんだったら、俺に家まで送らせてくれないかな。」
「そんなっ。いつも沢山お世話になっているのに、そんな事だったら私、バチが当たってしまいますよ。」
聖也はほっとして、そして今度は何も語らない背中で走り出す。
丁寧に運転していても水樹を乗せて走るのは緊張した。万が一にでも怪我をさせるわけにはいかない。そして聖也はおそらく水樹の家の近くであろう公園で停車し確認した。
「家あの辺だろ?」
「そうなんですけど、でも家の前までバイクでは行きにくいです。すみませんがここでお別れしてもいいですか?」
水樹からヘルメットと上着を受け取りながら聖也は言った。
「ここから歩いて送るよ。」
その時携帯電話の振動に気が付いた。
「ごめん、勇利だわ。おう、あー、任せろって。今水樹を送ってる所。うっせーなお前と一緒にすんなよ。お前こそどうせ仁美ちゃんと一緒にステージ観てたんだろ。おー。じゃな。」
電話中に突然下を向き、水樹の目が泳いだように見えたが、聖也の気のせいかもしれない。
「今日は本当にありがとうございました。クラブ、早く戻ってきて下さいね。」
「あっ・・・。」
嬉しかった。それから聖也は沈黙した後やっと今日の最後に一番言いたい事が言えた。
「試合、負けちゃってごめんな。かっこいい所見せたかったのに、逆にかっこ悪くなってほんとごめんな。」
そして負けた悔しさが蘇り、それでも込み上げてきたものはなんとか抑えたけれど、詰まってしまった声をどうしも隠せなかった。
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