63 / 267
第二章
第六十二話
しおりを挟む
色気の無い校舎が1年で一番派手に装飾される日、それは文化祭である。文化祭は前夜祭と後夜祭を含めて3日間で構成されており、そして今日は2日目の土曜日だ。
ただ、あまり学校行事に参加しない学生、特に高学年にとっては代休の月曜日も数えれば4連休のようなもので、聖也もその緩い学生の内の一人で相違なかった。
今、仮免中の聖也は、午前中は教習所に行った。そして午後は自室のベッドに横になりながら携帯電話をチェックし、一週間前勇利から貰ったメッセージを再読した。
‘報告遅くなったけど、彼女が出来たよ。またお勧めの遊び場所とか教えて下さいよろしく’
‘あと、水樹ちゃんが聖也君はどうしてるのかって心配してた。だからいつまでも腐ってないで早く戻れよな!’
1年の頃からかわいがった勇利が嬉しそうで自分も嬉しいのは確かだ。そして、仁美は勇利にとって初めての彼女であり、その初めての彼女が片思いをしていた女だなんて、一体どれだけ徳を積んでんだよ、と皮肉半分に笑った。
それに比べて今の自分はどうだという。
試合で怪我をした後、隠れるように手術をし、それからリハビリに通って教習所にも通い詰め、をなんとなくな言い訳にして逃げた。
特に水樹に会うのが怖い。あんなに究極にかっこつけたのに、結果があれで心底最悪な気分であるし思い出したくもない。好きな女を笑顔にするどころか泣かせてしまったのだ。
でも、でも水樹はこんな情けない自分を気にしてくれていると知ってしまうと抑圧していた愛しさが蘇ってくる。
会いてーな、顔が見たいよ、水樹・・・。
聖也は、明日ハンド部で出店しているせんべいでも食いに行くか、と考えるだけで何もせず、そのままベッドで眠りについた。
しかし、浅い眠りのうちに振動する携帯電話に起こされてしまい、横になったままの気だるい動作でゆっくり画面を見た。
なんだ?クラスのやつ?
眠いのもあり不機嫌に電話に出た。
「うっせーよ何だよ。」
「まだキレないでくれる?聖也今どこ?あのさ、聖也が設計したソーラーカーが調子悪いんだよね。」
そして聖也は事情を聞き取ると、クラスの連中の様子を見る為に学校に行く準備を始めた。
もう一つ持って行くか・・・。
部屋を出る時にふと胸のあたりがザワッとしたような気がして、聖也は几帳面に棚に収納してあるそれを持って出ていった。
ただ、あまり学校行事に参加しない学生、特に高学年にとっては代休の月曜日も数えれば4連休のようなもので、聖也もその緩い学生の内の一人で相違なかった。
今、仮免中の聖也は、午前中は教習所に行った。そして午後は自室のベッドに横になりながら携帯電話をチェックし、一週間前勇利から貰ったメッセージを再読した。
‘報告遅くなったけど、彼女が出来たよ。またお勧めの遊び場所とか教えて下さいよろしく’
‘あと、水樹ちゃんが聖也君はどうしてるのかって心配してた。だからいつまでも腐ってないで早く戻れよな!’
1年の頃からかわいがった勇利が嬉しそうで自分も嬉しいのは確かだ。そして、仁美は勇利にとって初めての彼女であり、その初めての彼女が片思いをしていた女だなんて、一体どれだけ徳を積んでんだよ、と皮肉半分に笑った。
それに比べて今の自分はどうだという。
試合で怪我をした後、隠れるように手術をし、それからリハビリに通って教習所にも通い詰め、をなんとなくな言い訳にして逃げた。
特に水樹に会うのが怖い。あんなに究極にかっこつけたのに、結果があれで心底最悪な気分であるし思い出したくもない。好きな女を笑顔にするどころか泣かせてしまったのだ。
でも、でも水樹はこんな情けない自分を気にしてくれていると知ってしまうと抑圧していた愛しさが蘇ってくる。
会いてーな、顔が見たいよ、水樹・・・。
聖也は、明日ハンド部で出店しているせんべいでも食いに行くか、と考えるだけで何もせず、そのままベッドで眠りについた。
しかし、浅い眠りのうちに振動する携帯電話に起こされてしまい、横になったままの気だるい動作でゆっくり画面を見た。
なんだ?クラスのやつ?
眠いのもあり不機嫌に電話に出た。
「うっせーよ何だよ。」
「まだキレないでくれる?聖也今どこ?あのさ、聖也が設計したソーラーカーが調子悪いんだよね。」
そして聖也は事情を聞き取ると、クラスの連中の様子を見る為に学校に行く準備を始めた。
もう一つ持って行くか・・・。
部屋を出る時にふと胸のあたりがザワッとしたような気がして、聖也は几帳面に棚に収納してあるそれを持って出ていった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説




隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる