おもいでにかわるまで

名波美奈

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第一章

第七話

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グランドには他にも1年生の見学者が来ていた。単身で乗り込んだ勇利は珍しく人見知りをしてしまい、一人黙って練習開始前の部員達の様子を観察していた。すると、しばらくして軽快な足音と共に昼休みに勧誘してきた正木が来た。

タッタッタ・・・。その足音だけでも正木の運動神経の良さが伝わる。

「おー!皆来てくれたんだ。まじ大歓迎。お、お前もちゃんと来たな。」

正木は笑っている。

「あ、あれだよね。まだ来てないんだよね鈴宮夏子マネージャーさん。実験とかかも。あの人毎日は来ないんだよね。でも、今日は来るって部長に聞いたんだ。だからそこのベンチにでも座ってさ、ゆっくり見学してってよ。」

きれいな名前だな。どんな女性ひとなんだろう。

と、勇利の膨らむ妄想と同時に練習が始まった。

最初はランニング、そして柔軟、軽めのダッシュにキャッチボール、開始から30分程経過しただろうか。

さすが5年制の学校なだけあって、5年生ともなれば15歳の勇利にとってはただのおじさんに見える。勇利は練習見学というより人間観察に没頭していた。だから、ある女性が近付くまで気がつかなかった。

「あー、1年生来てんじゃーん。超いい感じー。皆かわいいー。」

誰だこの女の人は?ま、さ、か・・・。

「マネージャーの鈴宮です。よろしくね。」

あー・・・。はいはいそういうことね、そうなのね正木さん騙したのね・・・。と勇利は我に返った。今現れたマネージャーの涼宮夏子は確かにグラマーではあったが、ついでにウエストの膨らみもかなりグラマーだった。

肝っ玉母さん・・・。正木の野郎・・・。

とがめるつもりで正木の方を向くと、ちょうど正木にボールが回っていた。
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