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罰ゲーム 前編
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「はぁ?あんな奴のこと好きになるわけないだろ。魅力もねぇし、これといった特技もねぇ。罰ゲームで付き合っただけの鈍臭いだけのノロマじゃねぇかよ。早く別れたいぜ。」
全身から血の気が引いていくのが分かる。
ひど~いと女子特有の甲高い声で、全くひどいと思っていなさそうな笑い声が響く。
教室で僕、田城真司のことをノロマと言っているのは、学園のプリンスと呼ばれていて、僕の恋人の神山裕貴だ。
罰ゲーム…
不思議と悲しさも怒りも感じなかった。
あぁ、やっぱり…だって僕と彼で釣り合うわけが無いんだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
告白は向こうからだった。
今思うと、なんで罰ゲームと気づかなかったのか。
でもそんな思考に至らないレベルには僕は彼が好きだったのだ。
告白される前から彼のことは気になっていた。
きっかけは授業の発表で同じグループになったときに、笑顔で頑張ろうなって言ってくれたこと。
我ながらちょろいと思う。
そんなこんなで付き合い始めた僕達だったが、キスはおろか、ハグだって、手を繋ぐことだってしたことがなかった。
なんだ…よく考えたら分かることじゃないか。
神山君はきっと根っからのノーマルなんだろう。
……早く開放してあげなくちゃ。
スマホを取り出して、見慣れたメッセージ画面を開く。
大事な話があるからいつでもいいから図書室裏に来てほしい。
そう言って教室をあとにする。
賑やかな教室から、「えー呼び出し入ったんだけど…だる…」と神山くんの声が聞こえてきたのは聞こえないふりをした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
図書館裏で待っていると、少し慌てた様子で笑顔で神山くんがやってきた。
「田城くんどうしたの?大事な話って何?」
あぁ、この笑顔の下で僕を嫌っているのだろう。
そう思うと、吐きそうになったが、なんとか耐えた。
僕がなかなか喋らないせいか、神山くんは不思議そうだ。
「あ、あのね…」
少し震えた自分の声が、なんだかすごく嫌に感じた。
「なに?」
神山くんが笑顔で答える。
こういうところをみると、やっぱり好きだなと、分かれる決意が鈍ってしまう。
でも、大好きな神山くんには幸せになってほしい。
「僕と…わ、別れてほしいんだ。」
「は…?」
神山くんの声色が数段下がった気がした。
「じゃ…僕からはもう話しかけないから…」
とその場をあとにしようとすると手首を掴まれた。
「待ってよ!俺の何が駄目だった!!言ってよ!直すから!」
なんでそんなに必死なんだろう。
そんな彼を見つめ、僕は微笑んだ。
「罰ゲームなんでしょ、僕と付き合ったの」
彼の目が大きく見開かれる。
「さっき教室で聞いちゃったんだ。ごめんね、盗み聞きなんかしちゃって。」
「ち、違…」
「遠慮しなくても大丈夫だよ~。今思うと、僕なんかと神山くんが釣り合うわけないもんね。」
神山くんは口をパクパクさせている。
顔は真っ青になっている。風邪だろうか。
「ごめんね、今まで付きあわせちゃって。これからは本当に好きな人と幸せになってね。」
そう言うと僕は駆け出した。
後ろで
「待って」
と、呼び止める声が聞こえたけど、神山くんの口から別れ話は聞きたくなかったから聞こえないふりをしてそのまま家に帰った。
自分の部屋に入ってベッドに倒れ込む。
ふと、これまでの神山くんとの思い出が蘇った。
歩くときは必ず車道側を歩いて、僕がそんなにしなくても大丈夫だよと言うと、田城くんは可愛いから、と言ってくれた。
調子が悪い日は必ず電話をくれて、励ましてくれた。
それも全て罰ゲームの内容だったんだろう。
そう思うと、涙がポタポタと枕を濡らした。
そこで初めて、悲しいという感情にいきついた。
全身から血の気が引いていくのが分かる。
ひど~いと女子特有の甲高い声で、全くひどいと思っていなさそうな笑い声が響く。
教室で僕、田城真司のことをノロマと言っているのは、学園のプリンスと呼ばれていて、僕の恋人の神山裕貴だ。
罰ゲーム…
不思議と悲しさも怒りも感じなかった。
あぁ、やっぱり…だって僕と彼で釣り合うわけが無いんだから。
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告白は向こうからだった。
今思うと、なんで罰ゲームと気づかなかったのか。
でもそんな思考に至らないレベルには僕は彼が好きだったのだ。
告白される前から彼のことは気になっていた。
きっかけは授業の発表で同じグループになったときに、笑顔で頑張ろうなって言ってくれたこと。
我ながらちょろいと思う。
そんなこんなで付き合い始めた僕達だったが、キスはおろか、ハグだって、手を繋ぐことだってしたことがなかった。
なんだ…よく考えたら分かることじゃないか。
神山君はきっと根っからのノーマルなんだろう。
……早く開放してあげなくちゃ。
スマホを取り出して、見慣れたメッセージ画面を開く。
大事な話があるからいつでもいいから図書室裏に来てほしい。
そう言って教室をあとにする。
賑やかな教室から、「えー呼び出し入ったんだけど…だる…」と神山くんの声が聞こえてきたのは聞こえないふりをした。
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図書館裏で待っていると、少し慌てた様子で笑顔で神山くんがやってきた。
「田城くんどうしたの?大事な話って何?」
あぁ、この笑顔の下で僕を嫌っているのだろう。
そう思うと、吐きそうになったが、なんとか耐えた。
僕がなかなか喋らないせいか、神山くんは不思議そうだ。
「あ、あのね…」
少し震えた自分の声が、なんだかすごく嫌に感じた。
「なに?」
神山くんが笑顔で答える。
こういうところをみると、やっぱり好きだなと、分かれる決意が鈍ってしまう。
でも、大好きな神山くんには幸せになってほしい。
「僕と…わ、別れてほしいんだ。」
「は…?」
神山くんの声色が数段下がった気がした。
「じゃ…僕からはもう話しかけないから…」
とその場をあとにしようとすると手首を掴まれた。
「待ってよ!俺の何が駄目だった!!言ってよ!直すから!」
なんでそんなに必死なんだろう。
そんな彼を見つめ、僕は微笑んだ。
「罰ゲームなんでしょ、僕と付き合ったの」
彼の目が大きく見開かれる。
「さっき教室で聞いちゃったんだ。ごめんね、盗み聞きなんかしちゃって。」
「ち、違…」
「遠慮しなくても大丈夫だよ~。今思うと、僕なんかと神山くんが釣り合うわけないもんね。」
神山くんは口をパクパクさせている。
顔は真っ青になっている。風邪だろうか。
「ごめんね、今まで付きあわせちゃって。これからは本当に好きな人と幸せになってね。」
そう言うと僕は駆け出した。
後ろで
「待って」
と、呼び止める声が聞こえたけど、神山くんの口から別れ話は聞きたくなかったから聞こえないふりをしてそのまま家に帰った。
自分の部屋に入ってベッドに倒れ込む。
ふと、これまでの神山くんとの思い出が蘇った。
歩くときは必ず車道側を歩いて、僕がそんなにしなくても大丈夫だよと言うと、田城くんは可愛いから、と言ってくれた。
調子が悪い日は必ず電話をくれて、励ましてくれた。
それも全て罰ゲームの内容だったんだろう。
そう思うと、涙がポタポタと枕を濡らした。
そこで初めて、悲しいという感情にいきついた。
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