27 / 38
第二十七話 終わりの始まり
しおりを挟む
会議も終わったことだし、これからどうするんだろう、と思っているとクリスとマルクが走って迅らを呼び戻しにくる。
迅はマーナとともに案内され通された部屋の中をみて、そこが何するところなのかを把握する。部屋中央にある見覚えのある色を発しながら回る球体。
「今きます」
クリスの声とともに球体がカラフルな色を放ちだし、久しぶりの声を聞く。
「おーい。聞こえる? マー姉、迅さん」
「久しぶりね、レンカ。迅さんもここにいるわ」
「クリスさんから聞いたわ。やったね! マー姉」
「ほとんど私は何もしてないんだけど。そうね。まずは第一歩ね」
「さっそくなんだけど、迅さんだけでも戻れない? 」
「なにかあったの? 」
「帝国の対応が不気味だって、この前話ししたけど、すぐにでも動きそうなの。それと関係あるかわからないけど、キクリの様子がおかしいのよ。『あああ……泣いている……多くの……泣いている』っていって突然泣き出したの。迅さんわかる? 」
……キクリのチカラが透視関連だと、仲間のエボーが苦しんでるのが視えたのか。それとも未来視のようなもので、今後どこかで起こりえるビジョンが視えたのか……
「レンカさん、キクリに、苦しんでるのは人族か、それ以外かわかるか聞けますか、それと場所とか……」
通話の途中で急に声と共に球体の色が消える。会話していない時の落ち着いた色さえ消え、振動とともに誰もが想像だにしていなかった音が響く。
「聞こえるか…………とるに足らぬものを殺したぐらいで、こそこそと嗅ぎまわりおって…………我は帝王デブロス……魔法をこなせるからと我を下にみよるなよ。……準備は整った。我の前に跪くならば受け入れよう。拒むのならば容赦せぬ。どのような方法でも構わぬ。二日後までに返答せい」
一方的に割り込み話し、一方的に通話をきった。
「な…………」
その場の者全員が絶句する。
……よくない状況だ。先手を取るつもりが後手に回りつつある。
それが切っ掛けで慌ただしく事態は急変していく。なにぶん距離のある帝国への対策にも、準備するだけで時を要し、無情にも時は流れ、三日後の朝、突然にそれは起こる。
龍国、神聖国、亜人国、エルフ国同時に攻撃を受ける。
その砲弾は空から突然姿を現し、つぎつぎとエルフ国内に被弾し、地鳴りと共に轟音が響く。通信により、他国も同様攻撃を受けていると聞き、迅とマーナが長老の部屋へ向かい、到着していた時だった。
「喝ああああっつっ!!!! 」
「「カアアアァッツ!! 」」
長老の咆哮ともとれる掛け声と、続く重鎮らにより、障壁の輪のようなものが幾重にも広がっていく。それはひろがるに連れ、木々や大地の精を吸収するかのように厚みをおび、里全体に拡がり超巨大な結界を完成させた。
「マーナ。そして迅とやら。行ってきなさい。ここにいても終わりがないぞよ。大丈夫じゃ暫しの退屈しのぎにはもってこい……だでの。ふぉっふぉっふぉっ」
『ひょっひょっだいじょぶじゃ』『いってこい』……
最低限の軍を残し、迅、マーナらは旅団を引き連れ出発する。
外から見るその結界は砲弾を防いでいた。はじくというより一旦威力を吸収してそのまま落とす感じにみえた。
なるほど……壁で受けるというよりネットだな。確かにそのほうが持続しそうではあるが、あの爺さん、一瞬の間にこの判断と結界。恐るべし……
一角の馬に乗り、クリスの背中に振り落とされぬよう、しがみつきながら迅は考える。
あの砲弾はテレポートしてきてるんだな。しかも他国同時に……『ヤな噂』とはエボーを使った軍事力か……これはエボーの軍隊がいてもおかしくないな。考えたくはないが人体実験などオハコだろ、人族なら。
考えているうちに川岸まで到着していた。
嘘だろ。ここまで馬走ったの? どうやって。と振り返ると次々と馬に乗ったエルフが到着する。よく見ると藪の中を、豹のように体をしならせ躍動している馬をみる。俺の知ってる馬じゃない……
そこから舟に乗るものと、乗馬したまま河に入る者もいて思わず
「クリスさん、あれあのまま行くんすか? 」
「ええ。流れほとんどありませんから」
「えっ、そうゆう問題……っすか」
大旅団は問題なく河を渡ると用意していた馬車を準備し、時間をかけずまた走り出す。その時は迅は、馬車にマーナと一緒にさせてもらう。
「ほかの国もですけど、レンカさん、チビッコら大丈夫ですかね」
「ええ。レンカが付いてますから、大丈夫ですよ。……迅さんあの攻撃。どうすればああなるのかわかりますか? 」
「なんとなくですけど。ちなみに魔法ではああゆう使い方は出来ないんですか? 確か魔人使ってましたよね。転移魔法でしたか」
「転移魔法は高度な魔法です。あの魔人ですら、広範囲に移動出来なかったでしょ? 国から国へなんて異常です」
「そうですか。その転移魔法のような能力があるみたいなんです。テレポーテーションって、前話したと思うんですけど。ただそれをどうやってるのかはわからないです。……魔法で言えば術者が現場にいるんですよね、こうゆう場合。でも里近辺にはいないって話ですし」
「それはいないですね。精霊も私たちも、悪意を感知できませんでした」
「悪意じゃなかったらどうなんです? 」
「どうゆうことです? 」
「例えば機械とか、自我のない操り人形とか」
「無理です」
「止めて下さい! 」
「迅さん? 」
「可能性あります。全軍で向かうのは危険です。戦力分けるべきです。今なら余裕で間に合う。そして戻ったら他国にも伝えるんです。砲弾近くに、機械か自我を持たない兵士がいるかもしれないことを」
迅はマーナとともに案内され通された部屋の中をみて、そこが何するところなのかを把握する。部屋中央にある見覚えのある色を発しながら回る球体。
「今きます」
クリスの声とともに球体がカラフルな色を放ちだし、久しぶりの声を聞く。
「おーい。聞こえる? マー姉、迅さん」
「久しぶりね、レンカ。迅さんもここにいるわ」
「クリスさんから聞いたわ。やったね! マー姉」
「ほとんど私は何もしてないんだけど。そうね。まずは第一歩ね」
「さっそくなんだけど、迅さんだけでも戻れない? 」
「なにかあったの? 」
「帝国の対応が不気味だって、この前話ししたけど、すぐにでも動きそうなの。それと関係あるかわからないけど、キクリの様子がおかしいのよ。『あああ……泣いている……多くの……泣いている』っていって突然泣き出したの。迅さんわかる? 」
……キクリのチカラが透視関連だと、仲間のエボーが苦しんでるのが視えたのか。それとも未来視のようなもので、今後どこかで起こりえるビジョンが視えたのか……
「レンカさん、キクリに、苦しんでるのは人族か、それ以外かわかるか聞けますか、それと場所とか……」
通話の途中で急に声と共に球体の色が消える。会話していない時の落ち着いた色さえ消え、振動とともに誰もが想像だにしていなかった音が響く。
「聞こえるか…………とるに足らぬものを殺したぐらいで、こそこそと嗅ぎまわりおって…………我は帝王デブロス……魔法をこなせるからと我を下にみよるなよ。……準備は整った。我の前に跪くならば受け入れよう。拒むのならば容赦せぬ。どのような方法でも構わぬ。二日後までに返答せい」
一方的に割り込み話し、一方的に通話をきった。
「な…………」
その場の者全員が絶句する。
……よくない状況だ。先手を取るつもりが後手に回りつつある。
それが切っ掛けで慌ただしく事態は急変していく。なにぶん距離のある帝国への対策にも、準備するだけで時を要し、無情にも時は流れ、三日後の朝、突然にそれは起こる。
龍国、神聖国、亜人国、エルフ国同時に攻撃を受ける。
その砲弾は空から突然姿を現し、つぎつぎとエルフ国内に被弾し、地鳴りと共に轟音が響く。通信により、他国も同様攻撃を受けていると聞き、迅とマーナが長老の部屋へ向かい、到着していた時だった。
「喝ああああっつっ!!!! 」
「「カアアアァッツ!! 」」
長老の咆哮ともとれる掛け声と、続く重鎮らにより、障壁の輪のようなものが幾重にも広がっていく。それはひろがるに連れ、木々や大地の精を吸収するかのように厚みをおび、里全体に拡がり超巨大な結界を完成させた。
「マーナ。そして迅とやら。行ってきなさい。ここにいても終わりがないぞよ。大丈夫じゃ暫しの退屈しのぎにはもってこい……だでの。ふぉっふぉっふぉっ」
『ひょっひょっだいじょぶじゃ』『いってこい』……
最低限の軍を残し、迅、マーナらは旅団を引き連れ出発する。
外から見るその結界は砲弾を防いでいた。はじくというより一旦威力を吸収してそのまま落とす感じにみえた。
なるほど……壁で受けるというよりネットだな。確かにそのほうが持続しそうではあるが、あの爺さん、一瞬の間にこの判断と結界。恐るべし……
一角の馬に乗り、クリスの背中に振り落とされぬよう、しがみつきながら迅は考える。
あの砲弾はテレポートしてきてるんだな。しかも他国同時に……『ヤな噂』とはエボーを使った軍事力か……これはエボーの軍隊がいてもおかしくないな。考えたくはないが人体実験などオハコだろ、人族なら。
考えているうちに川岸まで到着していた。
嘘だろ。ここまで馬走ったの? どうやって。と振り返ると次々と馬に乗ったエルフが到着する。よく見ると藪の中を、豹のように体をしならせ躍動している馬をみる。俺の知ってる馬じゃない……
そこから舟に乗るものと、乗馬したまま河に入る者もいて思わず
「クリスさん、あれあのまま行くんすか? 」
「ええ。流れほとんどありませんから」
「えっ、そうゆう問題……っすか」
大旅団は問題なく河を渡ると用意していた馬車を準備し、時間をかけずまた走り出す。その時は迅は、馬車にマーナと一緒にさせてもらう。
「ほかの国もですけど、レンカさん、チビッコら大丈夫ですかね」
「ええ。レンカが付いてますから、大丈夫ですよ。……迅さんあの攻撃。どうすればああなるのかわかりますか? 」
「なんとなくですけど。ちなみに魔法ではああゆう使い方は出来ないんですか? 確か魔人使ってましたよね。転移魔法でしたか」
「転移魔法は高度な魔法です。あの魔人ですら、広範囲に移動出来なかったでしょ? 国から国へなんて異常です」
「そうですか。その転移魔法のような能力があるみたいなんです。テレポーテーションって、前話したと思うんですけど。ただそれをどうやってるのかはわからないです。……魔法で言えば術者が現場にいるんですよね、こうゆう場合。でも里近辺にはいないって話ですし」
「それはいないですね。精霊も私たちも、悪意を感知できませんでした」
「悪意じゃなかったらどうなんです? 」
「どうゆうことです? 」
「例えば機械とか、自我のない操り人形とか」
「無理です」
「止めて下さい! 」
「迅さん? 」
「可能性あります。全軍で向かうのは危険です。戦力分けるべきです。今なら余裕で間に合う。そして戻ったら他国にも伝えるんです。砲弾近くに、機械か自我を持たない兵士がいるかもしれないことを」
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
最強魔導師エンペラー
ブレイブ
ファンタジー
魔法が当たり前の世界 魔法学園ではF~ZZにランク分けされており かつて実在したZZクラス1位の最強魔導師エンペラー 彼は突然行方不明になった。そして現在 三代目エンペラーはエンペラーであるが 三代目だけは知らぬ秘密があった
腐った伯爵家を捨てて 戦姫の副団長はじめます~溢れる魔力とホムンクルス貸しますか? 高いですよ?~
薄味メロン
ファンタジー
領地には魔物が溢れ、没落を待つばかり。
【伯爵家に逆らった罪で、共に滅びろ】
そんな未来を回避するために、悪役だった男が奮闘する物語。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる