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第二十一話  鍛錬再開

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 その女性は極上というにふさわしい、顔のパーツ一つ一つがはっきりとした主張を放ち、彫りの深い顔立ち、メリハリのあるボディーライン。髪は艶のある黒髪が腰近くまで流れていた。そしてそれを際立だせるのがスマイル。

「流石っすね。社長! いや深くは聞きません。そんな野暮なコト……」

「ジンさん、だいぶ飲んでます? 彼女は同僚ですよ」

「ドーリョーって何でしたっけ? 愛人の隠語かなんかでしたか」

「プっ。アっハハハっ おもしろい方ね」

 おおっ見かけに反して豪快にお笑いになられる。レンカみたいなギャップパターンか?

「いや、ははっ。社長も暫くなんですよね」

「ええ。今日あたりジンさんいるかと思いましてね」

「イエスっ。サイキック? 」

 ダメだ……変な酔い方してるな。

「なにかありましたか? 」

 マジサイキックじゃなかと?

「えっ。いえいえ……社長、図々しいんですけどまた貰えませんか」


「いいですよ……どうぞ」



 社長からの案でカウンターからテーブルに席を移し、三人で飲むことになる。

「今日は遅いですね。前もこのくらいでしたっけ? 」

「ええ。今日は彼女も一緒でしたのでね。あまり早いと目立つでしょう」
「確かにです! 」

 わかった。社長秘書みたいな感じだろう。それにしても絵に描いたような二人だなぁ。

「ではあらためて、乾杯」
「「乾杯」」

 ◇

「ハハハっ。愉快な人だなぁ」

「アハハっ。ホントね」

「社長、まだまだっスよ。これからこれから。カラオケとかあるといんすけどねえ」
「それはどういったものなんです? 」

「ああ、ただ歌うってだけなんですけど、そういえばこの世界って音楽ありますか? ないわけないよな」

「音楽ありますよ。ただ、今の感じだと……娯楽的なものは少ないですね。主に儀式的な感じでしょうか」

「ジンさん、この世界って言い回し癖? 」
「あいやー。んなこといいました俺。この国の間違いっス。ははっ」
「フフフっ。変なの」

「でも社長、こんな別嬪さんと一緒なら仕事はかどりまくりじゃないすか。ベスさん切れ者って感じしますし」
「わかっちゃいますう? フフっ」

「わかりますよ。人見てきてますから。その自信たっぷりな雰囲気出せないですもん、普通。社長もですよ。お二人只もんじゃない! 」

「そうですかな。ジンさんもなかなかですよ。……それで何があったんです? 」
「えっ」

 さすが。トップを走る人に間違いなく備わるというあれですね。『ザ・洞察力』

「水臭いじゃないですか」

「いや、たいしたことないっすよ。ただ……世界のみんなが笑える日がくればいいなぁ。って」

「いや大きく出ましたねえ」

「漠然としすぎよ。ということはその逆なことがあった様ね……」

「流石キレッキレすぎるぜお嬢さん。まっそんなとこさ」

「確かにおぼろげとしてますが、私も同じく思う一人ですよ。彼女もね」

 めちゃくちゃ嬉しい、同じ人族で。しかも俺にはわかる。この人本気で思っているって。


 ◇


「エルフの国って遠いんですか? 」

「遠いといえば遠いですね」

「いや、今バタバタしてるんすけど、も少ししたら行く予定なんですよ」

「ほう。ではしばらくは会えないですかな」

「えっ? そんな遠いんですか」

「ちょっと待ってジンさん、一人じゃないでしょ? 」

「ええ。仲間のエルフの里帰りの付き添いすけど」

「えーっ結婚するんだ! 」
「はい? 」

「だってそうゆうことだよね。クロフォード? 」
「ん。……そうだったかな」

「ちょっとすみません。話が見えないっス」

「エルフの国は他種族は入れないのよ。あそこは閉鎖的っていうか。フェアリー妖精ドリアード精霊、ニンフとか……確か五つを一つの民族とした考え方で、それ以外のとにかく部外者を拒むの。それは差別的なことじゃなく、国を守るためらしいけどね。例外を除けば……」

「五つ……五家なんとかですか」

「そうそうそれ、五つで完結しちゃうからそれ以外は必要ない……とか、そんな感じよ」

「その例外ってもしかして……」
「そうね。結婚とか、あとなにかしら……今言ったように差別をする種族じゃないから、他種族でも家族になれば入れるのよ。あんまり聞かないけどね」

 ……嵌められたのか。ってそれは独身貴族の俺には願ってもないしマーナさんだし……んんん。ダメだ頭がまわらん。

「いや、そうゆうんじゃないと思いますよ。緊急事態みたいな感じなんで……」

「穏やかじゃないですね。なんですかそれは。是非聞きたいですな」

 んんん。社長とベスさんに話していいのか。いや……もしかしたら人国の行く末にかかわる話だからなぁ。でもどうなるんだ? まさか戦争まで発展することはないだろうな……


 ◇


「じゃあクロフォード社長とベスさん、ご馳走様でしたぁ! 」

「それではジンさん……」
「ジンでいいっすよ、社長ー。なんですかクロフォードって! 名前までかっちょ良すぎっす」

「ハハハっ。ではジン君、次はエルフの国から帰ってきた後だね」
「じゃーねぇ。ジンさん、また飲もーね! 」



 宿に戻った迅は落ちるように眠る。

「迅さん、朝ですよ」
「はい。……ざいます」

 寝たなぁ……昨日……ダメだ後半記憶なし。まっいいだろう。

「レンカさんは暫くかかりそうですもんね」
「そうね。今日はどうしますか? 」

「俺は何もなければ、落ち着いたらこれ行ってきますけど」

 と剣を素振りする様をする。

「あっ。じゃあ今日私付き合いますよ。子供達つれて」
「えっ? 」

「飛び道具にも慣れた方がいいんじゃないですか」
「なるほど……いいですね」

 朝の食事と支度を終えた迅らは近くの河原につく。都市中心周りをカーブを描くように走る大きな川で、流れは緩く生活用水に必要な川だ

 迅らは河原の拓けた場所で、マーナと距離をとる。チビッコ達は土手の上から眺めていた。
 マーナが、鏃の代わりに親指大の圧縮した砂袋を先端につけた矢を用意してくれて、それを迅に向けて放つ。

 まずは迅の横を射ってもらうが想像以上の速さに驚く。
 これ鏃かえても当たったら相当な衝撃だぞ……

「マーナさん、ここ狙えますか? 」

 と体の中心を指さす。迅は興味半分真面目半分でやってみたかった。時代劇でみる剣で矢を弾くのを。

「いきますよ」

『スン』
「ゔっ」

 矢がみぞおちにヒットし前に屈み込む迅。横を過ぎるのと、正面から向かってくるのではまた違う体感に驚く。当たった衝撃と痛みもさることながら、まるで反応出来ないことに唖然とする。

「はははっ。これは凄い! マーナさん続けてください。どこでもいいです」
「……いきますよ」
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