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第十三話  懐かしむ想い再び

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 ちょうど、迅たちが先頭の四輪馬車を過ぎるところに声が掛かる。

 「ふふふっ。やっぱりレンカだ」

 馬車の窓からひょこっと顔出してきた女性が親し気に話しかけてきた。レンカが即座に反応し応える。

 「あーっ。なんかそんな気したんだよねー」

 レンカもわかった。という感じで馬車に歩み寄ると、馬車の扉のようなドアが開き、先程の女性が飛び出しレンカに抱き着いた。

「もーう。黙っていくことないじゃない」
「はははっ。わるいわるい……」

 どうやら二人は知り合いのようで暫し、抱きしめ合うと、思い出したかのように

「それで、このコがキクリちゃんね。こんにちは」

 一旦、再会の気持ちを落ち着かせたかのように、キクリに微笑み言葉をかける。
 キクリはレンカと抱きしめ合う二人を、側でジっと見ていた。
 恥じらいとぎこちなさが混じったように

「こんにちは……」
「かわいいっ」

 頭を撫でるようにその女性がしているとマーナから

「レンカ、もしかしてそちらの方は……」
「うん。ごめんごめん。あたしの幼馴染で龍国王女ソラリス」

 なんだってぇ! 龍国の王女? 幼馴染? 迅が混乱しているとマーナが近くまで歩み寄り

「お初にお目にかかります。王女様。エルフのマーナと申します」

 かしこまり挨拶しつつ、ミクルとラオを手招き、同様にしなさい。という風な仕草を見せる。

「おはちょー。ミクルもす」
「お発す。ラオともーす」

 と二人なりにやってのける。

 迅も遅ればせながらとしようとすると

「ごめんなさい。そんなことしなくていいんです。マーナ様。あと、ミクルちゃん、ラオ君こんにちは。ふふっ」

 と天使のような微笑みで畏まりかけた一同の気持ちを和らげた。
 
「迅といいます。はじめまして」
「こんにちは。迅さん」
 
 そのソラリスさんから立ち話もなんだから、ということで連結馬車の後方に乗らせていただく。周りの取り巻きの方々も、全て事情を知っているかの振る舞いで、こちらが恐縮してしまう程。

 馬車の中は思ったより広く、迅ら一行余裕で入れる部屋のようになっており、両側にソファー、中央にテーブルがある。控えめな外観からは想像できない煌びやかな装飾が施されている。全員乗り込むと馬車は前方へ走り出す。

 チビッコ達はさっそく窓側を陣地どり、窓から外を眺めていた。

 
「それで、まさかあたしを探してたの? 」

「当たり前でしょ。いきなりいなくなるんだもの。あなた、昔からそうなのよ! 」

「そうだったかな……で、韜晦トウカイ馬車? ……にしては目立つと思うよー。迅さんビビって何度もウチら見てたし……ふふっ」

 あらっ。気づかれましたか。ははっ。

「えーっ。ちゃんと地味にしてあるよ。ねえ、迅さんもそう思うでしょ? 」

 龍種族はこんな感じで皆フレンドリーなのだろうか。
 要するに王女は、内密にレンカを探していて、その為、護衛こそ付けるが、目立たない風に装っていたそう。

 なるほどいわれてみれば。実際、正式な移動ともなれば乗馬騎士が三十人は下らないし、歩兵騎士も何十人と就くそうだ。
 
 あらためてみる王女は、龍人という種なのだろうか、所々鱗らしきものが見受け、耳の後ろから珊瑚のような角が小さく生えている。髪の毛は金髪で金色の瞳、髪の毛は肩口で切りそろえてあり、うっすら日焼けしてある肌が、活発で行動派という印象だ。
 それから王女とレンカ、ときにはマーナも交え、最近の近況と迅らが向かう目的地の話などをする。

「きいたわよ。ザクローマでたんですって? でも海いったのよね。戻ってこないかしら」
「話伝わるの早いな? さすが龍国。……ソラリス。心配いらない。ザクローマは死んだから。……ここからの話はこれね」
「えっ?! 」
 
 とレンカが顔前に指を立て、内緒のポーズをとり驚くソラリスに話を続ける。

「確かにザクローマはいたんだ。……突然現れて暴れ狂ってた。うちらが目を付けられマー姉とあたしで全力であらがったよ。ディストラ壊滅級はだてじゃないね。死ぬ思いでチビッコらとも逃げて逃げて、逃げ回って万策尽きた。絶対絶命よ……」
 
 話を黙って聞いていたソラリスの表情が揺れる。

「うちら全員喰われる。って思った時、突然現れたの……その男は何食わぬ顔して目の前のザクローマの首を刎ねたわ。……今思えばその時からね。……惚れちゃったの。その男に」

「えええっ! 」
「ちょっとレンカ、あんたいつもの仕返し? 逸れてるよっ」
 
 急角度な話の連続に、ソラリスは目をパチクリさせ、マーナは、まったく……という表情だ。

「ふふっ。ごめんごめん、それでその大魔獣を倒した大英雄が、この迅さんなんだよ」

「えええええっ!!! 」

 ソラリスがあらためて迅を見つめる。

「ははっ。なんか倒しちゃったみたいで……」

 突然のソラリスの大声に、警護が一時騒然としたのだが、束の間、落ち着きを取り戻したソラリスに合わせ、話は続いた。

「そう。魔人がね……」

「でも、ソラリス様、その魔人、単独での行いのようでしたのでそれに関しての脅威は今後ないかと思います」

「そうなんですね……いずれにしても皆さん、ご無事でなによりでした。迅様。私からもお礼を述べさせていただきます。レンカを、みんなを、龍国を助けていただきありがとうございます」

「えええっ。やめてください。そんなことするの。日々自分も助けられていますから! 」

 ◇

「そうゆうことだから、このことは内緒でね。ソラリス」
「お父様にも? 」
「んんん。……それは、もし、迅さんの力が必要になった時があれば、あたしと一緒に迅さんかけつけるから。ねっいいでしょ。迅さん! 」
「もちろんです。何でも力になります! 」

 ◇

 それからレンカ、ソラリスで積もり積もった話を続けていた。

 しばらく走り続けること数刻、街並みが見え始め

「レンカ、本当にサクラバまででいいの? 」
「うん。ありがとね。キリないし、あんたも戻らないとヤバいでしょ」
「また戻って、必ず知らせるのよ」
「当たり前じゃん。ソラリス会いに戻ってくるよ。……それで最後に……」

 というとレンカはソラリスの耳元で

「陛下に……」

 と囁き、ソラリスを抱きしめた。


 本来ならば山々を尾根を沿っての予定だったのだが、馬車での移動に、大幅に時間と距離を短縮することができた。
 目的地のアーマンナルト神聖国へはまだまだ先だが、大分近づいたようだ。

 サクラバという街の中央で迅ら一行は降ろしてもらい、ソラリスらと別れた。



「ははぁ。なるほど街だな」

 今まで見てきた村とは違い、街並みが整理されいる印象だ。木造もあるが石とレンガの石造りの家も見られ、場所によっては道にも石が敷き詰められていて、村よりも人通りというか、住人が多い。

 すでに神聖国に入ったかのように、様々な種族が見受けられる。道沿いには店が立ち並び、奥には施設的なものがあった。

 こんなに整備されているとは思わなかった迅は、賑わう人並みに圧倒されていた。
 
 マーナも初めての街なのか声を掛けてくれる

「大丈夫ですか? 迅さん」
「えっ。ははっ。賑わってますねぇ」
「そうですね。活気のある街みたいですね」

 なんか知らない街に到着するとなんともいえない高揚感に包まれるなぁ……
 チビッコ達をみると同じ感情なのか、皆表情が豊かになっていた。


 ソラリスと別れ、感傷的にみえたレンカからいつものように元気な声が掛かる。

「じゃあ、みんないくよ! まずはうまいご飯と宿さがしだね! 」
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