二人の火照り遊び

山之辺アキラ

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1章

25.見えない鎖

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 美詠は障子に足を向けて四つん這いにさせられた。
 まるでお尻が日に照らされているかのように感じて、顔が一段と赤くなる。

「もうちょっとお尻あげて、脚も開いて」
「こ、こう?」
「おっ、ちょうどいいね。お尻の穴もおまんこもバッチリ見えるよ」
「……恥ずかしいよう」
「ふふふふ」

 拓斗は笑いながら美詠の前に移動すると、顔を向けながらしゃがみこんだ。

「みよみちゃんはいくら恥ずかしくてもいいんだよ」

 にこやかで涼しい目。落ち着いた口調。
 従わせる立場の余裕がうかがえる笑み。

「うう……」

 美詠は耳まで真っ赤になってうめいた。
 彼が優雅であればあるほど自分はみじめで可哀想に思えた。
 彼の顔を見ていると胸が苦しくて手足が震えるほどだった。

 得体のしれない感情に身を突かれる目は、とても前を向いていられずに下へ逃げた。
 そこにはしゃがんだ拓斗の、これ見よがしに開いた脚が待っていた。
 股間が大きく膨らんでいる。

「みよみちゃん」
「はいっ」

 美詠はゴムがはじけたように顔をあげた。
 イタズラ少年が笑っていた。

「ダメだろ。そんなとこ見ちゃ」
「でも……見えちゃう……」
「そういうときは目つぶるとか、あっち向かなきゃ。俺が恥ずかしいだろ」
「……たっくんだって私のいっぱい見てるのに」

 従順になろうとする一方で、心のどこかではくすぶっている反発の気持ち。
 それがつい口に出た。

 するとイタズラ少年の顔が変わった。
 口は笑ったまま目がすわった。

「俺がいっぱい見てるからなに?」

 一瞬のうちに現れた鋭利な凄み。
 少女の小さな抵抗ですら見逃さずに切り刻む視線の刃だ。
 美詠は何も言えなくなった。

「俺はみよみちゃんにいくら恥ずかしいことしてもいいんだよ。でもみよみちゃんが俺にするのはダメだよ」
「はい……」
「なんでダメだか分かる?」
「……女の子だから?」
「そうそう。女の子はされるほう。なんかしちゃダメ。分かった?」
「うん」

 みじめに切り刻まれた心。
 だのになぜだか美詠の身体は芯を熱く尖らせた。

「よしよし」

 拓斗の手が優しく頭と頬を撫でる。
 撫でられた顔は「えへ」と改心した子犬のような表情をみせた。
 その頬をさらに撫でてから彼は言う。

「よし、じゃあボール遊びだけどさ」
「うん」
「みよみちゃんの背中にボールをのせるから、それを落とさないようにして。俺がイタズラするけど3分頑張って」
「えー……たっくんに何かされたら絶対落としちゃう」
「そんなにキツイことしないし、落としても最初からやり直しにはしないよ。残り時間はジョイキャッチのタイマーで計るから、そうだなあ、落としたら10秒だけ時間を元に戻すってことにしよう」

 ジョイキャッチは万能タイマーとしても使えるのである。
 時間を設定したら残り時間も経過時間も同時に表示。カウントを途中で止めて、時間の増減や記録、再設定などの操作も簡単だ。

「それってボールいっぱい落としたらずっと3分のまま?」
「いや、そんなにイタズラしまくらないよ。で、もし1分落とさなかったらご褒美を一つあげる。2分なら二つ、3分までいったら三つあげる」
「ご褒美? なになに?」

 美詠は声を大きくはずませた。
 気持ちはすでに体ごと拓斗に飛びついている。

「なにがいい?」
「私が決めていいの?」
「いいよ。みよみちゃんが嬉しくなかったらご褒美にならないし、俺が遊べるのあと30分くらいだしさ。けど何でもお願いを聞くわけじゃないよ。ここで出来ないことはダメ。俺が許さないこともダメ」
「うん。分かったあ」

 美詠は希望を三つ言った。三つともあっさり認められた。

 拓斗は笑う。
「ご褒美にわざわざしなくても良くない? それ」

 美詠も笑う。
「いいの。ご褒美でいいの」

「へー、なるほどなー。じゃあ、いくよ」
「はあい」

 弓のように反った背中にゴムボールがのった。
 ボールの安定感はかなりのものだ。何事もなければ達成は簡単だろう。

 ――カタッ。

 不意に障子が音を立てた。
 美詠はビックリして後ろを振り向いた。
 閉まったままの障子の前でジョイキャッチを持った拓斗がイジワルに笑っている。

「ボール落としたね」
「あ……」
「15秒いったのにな。5秒からやり直しだ」
「あう」
「ボール置き直すよ。はい、頑張って」

 タイマー再開。
 ジョイキャッチの本体からコントローラーがはずされた。
 カウントを止めるだけなら本体全部を持ち歩く必要はないのだ。

 コントローラーを持った拓斗は美詠の真後ろにしゃがみ込んだ。
 持ち上がったお尻と開いた股の鑑賞である。
 この気配を察した美詠の背中は少し震えた。ボールが揺れた。

「みよみちゃんと、そろそろお別れかー。寂しいな」

 するとお尻がぴくっと動いた。ボールの揺れが大きくなる。
 拓斗は股の割れ目にそっと顔を近づける。

「女の子のおまんこって、なんか口みたいだよな。これってキスできるのかな」
「やあん」

 デリケートな部分に声が響いた。美詠の体はびくびくっと震えた。
 秘所からお尻、背中まで一斉に揺れてボールが転がり落ちた。

「あーあ。23秒までいったのに13秒からだ」
「ううう」

 拓斗は後ろから横へ移ってボールをのせた。
 ボールを安定させている背中の反りが美しい。

 彼は頭からお尻までのラインを惚れ惚れと見つめながら息を止め、こっそり唇を近づけた。
 背中にキスしてしまうほど接近して言う。

「きれいな裸だなー」
「ひゃあっ」

 肌に吹きかかった声に背筋が震えた。
 ポトリと畳を叩く音がする。

「ボールが落ちたよ。29秒までいったけど19秒からやり直し。1分って大変だね」
「いじわるう」
「ほらほら、いくよ」
「……うん」

 ボールをのせて拓斗は立つ。
 立って再び背中を見下ろす。
 服をすべて剥いだ裸の体が目に楽しい。
 自分は服を着ていて、女の子の美詠にはいっさいの着衣を許さない。普通なら有り得ないこと。なのにか、だからか、彼はそこに気持ちが高ぶり、体が熱くなる。
 こんな目に合わされながらも一生懸命に四つん這いを続ける彼女の姿に、彼は言葉ではうまく言い表せないほどの気持ちを抱いてしまう。

 少年の形の良い唇が微笑んだ。
 微笑んで、髪に隠れる耳に近づいた。

 彼は伝える。

「好きだよ」
「はうっ」

 凹んでいた背中が膨らんで、ボールが勢いよく転がり落ちた。
 彼はそれをうまくキャッチした。

「あーあ、また落とした」
「落としちゃうよお……」
「10秒引いて30秒っと。折り返し地点じゃん。ボール置いたよ。はい、頑張れー」
「うう……」

 美詠はうめく。
 彼の口調はまったくの他人事。
 気遣いのカケラも込めない事務的な言いぐさ。
 あなたはただのオモチャですよと言葉の裏で言っている。そんな顔が目に浮かぶ。

 しかし何を思おうと、何を思われようと、美詠は耐える。
 ボールが揺れないように背をしっかり反らせ、顔を前へ向けてじっとする。

 すると胸の下で声がした。

「下から見る体もエロいね」
「きゃあっ」

 覗きこまれていた。

 驚いた腕がカクッと曲がって体が落ちた。
 胸の先端が彼の頬とくっついた。
 その刺激が胸全体に広がった。

「あうう」

 美詠は慌てて体を起こした。コロコロと畳を転がるボールが見える。

「今のはさすがに気付いてると思ったんだけどな。46秒からやりなおし」

 体を起こして拓斗はタイマーを操作した。
 拾ったボールを美詠に戻す。

「はい、つぎ」
「うん……」

 予想よりずっと遠い1分。
 美詠の下半身は泣きそうだった。
 体の中がくすぶって、くすぶって、仕方ないのだ。

 美詠はずっと裸でいても羞恥に慣れるということがない。開き直ることもできない。
 なのに四つん這いだ。いや、四つん這いどころか、今でもまだ”女の子の部分”を示す単語を聞くだけで彼女は恥ずかしい。拓斗の声でそれを聞くと、声で触られているような気持ちになって下腹部がむずむずしてしまう。

 そんな場所に熱い吐息がかけられた。

「みよみちゃんのおまんこ美味しそう」
「やんっ」

 ボールの落下、六回目。
 美詠は顔を真っ赤にして後ろを振り向く。

「美味しそうってなーにー? 食べるのー?」
「うーん? 食べたいのかな。うん、そうかもね。食べちゃおうかな。かぷっと」
「やだあ。だめぇ。食べないでえ」
「あはは。惜しいね、55秒まできてたよ。1分いったら一回目クリアにしてあげるよ。あと15秒がんばれー」
「ああん。もう」

 再開、そして到達。
 美詠はようやく一つめのご褒美の権利を手に入れた。

 仕切り直しでタイマーをリセットして拓斗は言う。

「次は触るよ」

 それは長い1分を経験した身体をギクリとさせるのに十分な宣告だった。
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