二人の火照り遊び

山之辺アキラ

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1章

22.心と体のプチ露出 ◆

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「このままで行くの?」
「そうだよ。行きも帰りも裸だよ」
「でも……」

 美詠は尻込みした。
 乱れた髪をなおしに洗面所に行きたいが、それには廊下を通らなければならない。しかし廊下は片側全面がガラス張りと言っても差し支えないほど大きなガラス戸が並んでいて、庭から丸見えなのだ。

 拓斗は障子を少し開けて外をうかがっている。美詠は隣に身を潜めて聞いた。

「どう?」
「大丈夫だよ。誰もいないし、見られないよ」
「そう? そう?」

 彼の言うことは美詠にもわかる。この南側は近くに道路や人家がなく、庭と田畑があるだけだ。田畑の奥には家並みも見えるが、歩く人の姿はわからない。

「たっくんも一緒に行ってくれるんだよね?」
「うん、行くよ」
「たっくんに隠れながら歩いてもいい?」

 美詠は無意識につまんでいた袖をくいくい引いた。

「いいよ。じゃあ、いこう」
「う、うん」

 障子が大きく開けられて、むせるような陽光が広がった。
 庭の緑が陽をはじいている。芝生、花壇、低木の植え込み、それから背の高い庭木が少し。
 アイアンフェンスの向こうに田畑が広がっている。水田とネギ畑が大勢を占める青々とした夏の風景だ。

「少し暑いな」

 拓斗が言った。
 美詠も温度差を全身の肌で感じた。廊下へ踏み出した初めに肩と腕が、次に胸とお腹が、最後にお尻と脚が、湯のような光のなかに浸かった。おそらく外のほうが涼しいだろう。

 障子とガラス戸に挟まれた長い直線状の廊下は、庭に出たのと変わらない気分にさせられる開放的な空間設計になっている。そこはいま、日差しと床板の照り返しで息苦しいほどの明るさに満ちていた。

「ねえねえ」

 美詠はまた袖を引っ張った。

「ん?」
「手つないでもいい?」
「いいよ。はい」
「ありがとう」

 出された手を握る。ぎゅっとつながり合った。拓斗にひっついて歩く。

「ゆっくり歩くよ」
「うん」

 美詠は歩調を合わせるだけだ。彼がゆっくりと言えば、それに従うしかない。驚きは別になかった。美詠に裸で歩かせる距離を稼ぐために、わざと部屋の一番遠いところから彼は出たのだ。

 美詠はキョロキョロと辺りをうかがいながら歩を進める。気が気でなくて拓斗の肩に何度も自分の肩を重ねた。もしも誰かが庭に来たら、ひと目ですべてを見られてしまう。
 そんな中で、静けさは少しの救いになった。鼓膜を揺さぶるものといえば足音と心音くらいのものだ。

「ドキドキしてる?」

 拓斗が横目で見ている。

「してる……」
「俺もしてる」
「たっくんもなんだ」

 美詠の脚の震えが大きくなった。胸にも股にもお尻にも陽が当たっている。ここは裸でいて良い場所ではない。普段ならあっという間に端まで歩ける床が果てしなく長い。

 一歩、また一歩。床を踏む足がカクカク揺れだした。手を握っていなければ、うずくまってしまうかもしれない。息も荒くなっている。肩も胸も大きく上下している。

「もうちょっとだよ」
「うん」

 ガラス戸の並びが終わって、外から見られない場所に入った。

「終わりだ」

 声を聞いて美詠は腰が落ちた。握っていた拓斗の手を放し、床にぺたんとお尻をついた。

「おー、どうした」
「ドキドキしてもうだめぇ」

 手がへなへなと床に落ちる。

「洗面所すぐそこだよ」
「歩けないよお」

 わめく美詠を見て拓斗の頬がゆるんでいる。昼前に彼が植物園で見た幼児に似ているのだ。

「本当に赤ちゃんになっちゃったぞ。抱っこしてあげようか」
「してー」

 美詠は両手を伸ばす。目を細めた少年はその身体をひょいと抱き上げた。太ももの下に手をもっていって身体を支える。

「なんでこんなに軽いんだ」
「うふふ」

 オレンジ色の襟から伸びる首に美詠は手を回した。首筋の匂いをかぎながら、さっき聞きそびれたことを口にする。

「たっくん良い匂いがする。お風呂はいった?」
「あー、午前中に温泉いってきたんだよ。それかな」
「それだあ。いいなー」

 頬ずりしながら髪や肩の匂いもかぐ。頭の後ろも、首の後ろも、肩も背中も、すりすり、すりすりと、目いっぱいかいだ。

「ん~~」
「すげー動くなあ」

 拓斗は呆れて笑っている。

「みよみちゃん、じつは元気だろ。歩けるだろ」
「歩けないー」
「ほんとかな」
「ほんとー」

 美詠は首を抱いてぎゅっとしがみついた。
 そのまま洗面所に運ばれる。
「電気どれ?」と聞かれたのでパネルに並んだスイッチを押した。
 明るくなった鏡の中に二人の姿が鮮明に映っている。

「やっぱ赤ちゃんじゃん」

 拓斗がまた笑った。

「ついたぞ。ほら、降りる」
「うー」
「髪なおすんだろ」

 拓斗は手を片方離した。美詠は肩にしがみついてがんばった。
 ならばともう一方も手を離した。美詠は脚をからませてがんばった。

「コアラかよー」
「うん」
「しょうがないな」

 あきらめた調子で拓斗は言った。
 が、美詠の下に手をもぐらせて、女の子の割れ目に向けて指を突き上げた。
 無防備にぱっくり開いた脚の間はひとたまりもない。もっとも敏感な部分に指は一瞬で到達した。

「ひゃあっ」

 美詠の脚がほどけてずり落ちる。

「立てるじゃん」
「いじわるううう」
「いじわる?」

 拓斗は美詠に触れた人差し指を立ててみせた。しっかりと濡れている。

「コレどういうこと」
「……しらない」

 美詠はブラシを取って髪をなおす。すると隣で拓斗が濡れた指を舐めだした。見せつけるように鏡の中から視線を送っている。

「ああん、いじわる」
「そうだよ」

 ちゅぱっ……。

 音を立てて舐めとった。

「でも、みよみちゃんも意地悪されたいんだからいいじゃん」

 唾液で濡れた指が、横から美詠の胸のつぼみに近づいていく。
 美詠は両手を上げたままの格好で、ブラシの手を止めて見守った。もうちょっとで指が届きそうになって、

「うそだよ」

 拓斗は手を引っこめて指を洗った。石けんをつけてよく洗い、これ見よがしにパンパンと音を立ててタオルで手をふく。

 美詠は鏡の中の拓斗に一瞬むくれて見せてから、何食わぬ顔で髪を整えた。
 内巻きの毛先が、ふわりと肩にかかる。拓斗がそれを手にとった。

「髪まとめる?」
「ん?」
「また崩れちゃうじゃん。せっかくきれいにしてもさ」

 遠慮がちな手つきで拓斗は髪を触っている。

「たっくんは髪留めたほうが好き?」
「いや、このままが好きかな。似合ってるし」

 鏡を見ながら二人は話す。

「うふ、ありがとう。じゃあこのままにするね。ぐちゃぐちゃになったらまた直せばいいから」
「めんどくさくない?」
「めんどくさくないよ」

 美詠は口を笑わせる。

「俺その顔好き」
「笑った顔のこと?」
「うん」

 えへ、と美詠は照れた。もう一度「えへ」と笑った。

「ありがとう。私もたっくんの笑った顔が好きー」
「おー、ありがとう。こんな感じ?」

 涼しげだった目がにこやかに笑う。

「それも好き。たっくん、いろんな笑いかたするから、どれって言えないけど」
「そんなに笑ってる? あんまり覚えてないんだけどな」
「笑ってるよ」

 そうかな。拓斗は首をかしげた。

「みよみちゃんはいつも俺の好きな顔を見てるんだな」
「そうそう」

 拓斗はまた首をかしげる。

「それ俺の真似した?」
「したー」
「どろぼーめ」
「あ、ほら、また笑った」
「ああ、こういう感じか」

 鏡の顔を見て納得する。

「今のは、みよみちゃんが可愛いって思って笑ったな」
「えへ、そうなんだ」
「考えたらエッチなことしてるときも笑ってるから、みよみちゃんと遊んでるときは結構笑ってんだな、俺」
「うん、エッチのときずっと笑ってるよ。すっごいイジワルな顔して笑ってるよ」
「みよみちゃんは俺のその顔見てドキドキしてるもんな」
「え……そ、そっかな。私してるかな」
「まあエッチのときは俺が好きなことばっかりしてるから顔に出るよ」
「たっくんが好きなことって?」
「みよみちゃんだけ裸にして恥ずかしがらせたり――」

 拓斗は美詠と少し離れて横に並んだ。二人ともなんとか鏡に映りきっている。

「ほら、こうやって見るとさ、俺はちゃんと服着てんのに、みよみちゃんは裸んぼうで全部見えてるじゃん」
「う、うん」

 拓斗はオレンジ色の半袖シャツを着て紺のハーフパンツをはいている。足元は見えないが今日もスニーカーソックスだ。学校の教室で見かけたら派手な色かもしれないが、彼が着ていると違和感がない。サッカーなどして遊んでいても似合うだろう。

 対して美詠は一糸もまとわぬ格好だ。日焼けのない肌は生まれたままの姿を思わせる。胸も、お尻も、女の子の縦すじも、すべてが見えている。恥ずかしくても隠すことは許されていない。

 拓斗は言う。

「俺は恥ずかしいから脱がないけど、みよみちゃんにはたくさん恥ずかしい思いさせんの好きなんだよ」
「うん」
「それに俺も一緒に脱いじゃったらあんま偉そうな感じしないしさ。エロいことしてるときも俺は着てるほうが好きなんだよな」
「あは、そう思うんだ」
「思うよ。女の子のみよみちゃんだけを裸にするからエロいんだよ」
「たっくん、こういうとき“女の子”って意識させるの好きだよね」
「そうそう、それも好きだよ。男子は脱がないで偉そうにしてて、女子は裸にされて可哀想なのが好きだな。みよみちゃんは女子だから裸にされちゃうし、言うこと聞かないといけないし、逆らったらお仕置きされるんだよ」
「うん」
「おまんこにヒドイことすんのも好きだし。おまんこってやっぱ女の子の部分だから、そこにヒドイことしたくなるし」
「うん」
「みよみちゃんのおまんこを叩いたし、踏んづけたし、次はどんなヒドイことしようか考えんの楽しいよ。みよみちゃんはそんなに悪いことしてないのに、お仕置きで重い罰にすんのも可哀想で好きだしなー」
「うん」
「みよみちゃんがこういうのエッチって話すのを聞くのも好きだな。無理やり服を脱がされるのエッチって聞いたし今度そうしようかな」
「うん」
「みよみちゃん、うんって言ってばっかでおとなしいけどドキドキしてるだろ」
「たっくんがエッチなこと言うから……」
「ドキドキしてていいよ。みよみちゃんがドキドキするから俺もドキドキして楽しいんだよ」
「ほんとだ」

 拓斗のハーフパンツが一部分だけ大きく膨らんでいる。
 言われたら鏡越しでもわかるし、横に目を落とせばあからさまだ。

「そんなとこ見ちゃダメだろ。俺が恥ずかしいだろ」
「ええ……たっくんがドキドキしてるって言うからだよ……」
「それでも見ないように頑張んないと。女子が男子の股見るのはダメなんだよ。男子が彼女のおまんこ躾けるのはいいけど」
「はあい……ごめんなさい」
「フフ、ちゃんとごめんなさいが言えたから軽いお仕置きで許してあげるよ。手を後ろで組んで」
「はい」

 拓斗は壁にかかっているタオルを抜き取った。薄くて長い手ぬぐいだ。背中で組んだ美詠の手首をそれで縛る。

「お仕置きのお縛り」
「あう」
「俺が許すまでこのままだよ」
「はい……」
「脚ひらいて。俺の手が入るくらい」
「はい」

 美詠のひらいた脚に拓斗はお尻側から手を入れて秘唇を広げ、秘めやかな蕾を剥き出しにさせた。
 人差し指を美詠にちらつかせながら言う。

「みよみちゃん、何されるかもうわかってそうだね」
「うん……エッチなお豆に罰もらうんでしょ……」
「そんな感じ」

 拓斗は美詠の前側から指を挿しこんだ。割れ目の底に指を這わせながら、剥き出しの蕾を目指す。

「あああ……」
「じっとしてて」
「は、はいいい」

 指は粘膜の細い筋をなぞっている。中に女の子の芯が通っている筋だ。
 拓斗の指はつぷつぷと奥へ入っていき、筋の終端に着いた。ひときわ目立って尖ったつぶを押し倒す。

「ああっ!!」
「がんばって立ってて」

 硬い尖りの感触を拓斗はよく確かめる。
 つるんつるんと、指がすべった。

「ふぅぅぅぅっっっ……!」

 美詠の腰が砕けそうなほどガクガクいっている。縛った手首が苦しそうにこすり合っている。
 拓斗は動きをとめて、指を当てているだけの状態にした。

「今回はがんばったじゃん。まだ立ってて偉い」
「あ、あは……はぃぃ……」
「みよみちゃん、手を縛られてて、エッチ豆んとこも広げられてて、すっげえ恥ずかしい格好だから、すぐ座っちゃうと思ってたよ」
「ああ……」
「そう聞いたらつらくなった?」

 美詠はコクコクと頭をうなずかせた。

「なら聞くよ。お仕置きは伸びるけど、いまイキたい? それともイケなくていいから、お仕置きを終わりにしてもらいたい?」

 美詠はすぐには答えなかった。
 熱くなった息を三回吐いたあとに答えた。

「たっくんの……」
「うん」
「……好きなようにされたい」
「おお」

 拓斗も熱い息を吐きだした。

「いいね、言いなりじゃん」
「言いなりだよ……」
「みよみちゃんはもう完全に俺のものなんだな」
「うん」
「そしたら俺のものになった印をつけてあげるよ」

 拓斗は美詠から手を離した。指についた愛液で戯れに糸を作りながら指示する。

「みよみちゃんの前にしゃがむから少し後ろに下がって。脚は今よりもうちょっと開いて」
「はい」

 美詠は言われたとおりに下がって脚をひらいた。
 刺激を中断された蕾の芯が秘唇の中でじくじくとくすぶっている。
 閉じた秘唇が作る一本すじを、拓斗は手前から奥へ向けて指でなぞった。秘所の端で指をとめて大きな円も描いた。

「今の文字なんだと思う?」
「……ゼロ?」
「違うな。数字じゃない、平仮名だよ。もう一回いくよ」
「ああん」

 お尻の穴が切なそうに動いているのを見ながら、拓斗は一本すじを倍の時間をかけて奥までなぞったあと、すじ全体を囲むようにぐるりと円を描いた。

「“の”の字?」と美詠は答えて、
「当たり」と拓斗は笑った。

「俺“の”だから“の”の印だよ」
「“の”の印……」
「そうそう。この印を描いたから、みよみちゃんは俺“の”。印付けたところがおまんこだから、みよみちゃんのおまんこも俺“の”」
「やぁん、そんなとこに付けるのエッチ」
「消えないように印いっぱい付けとくよ」
「あう……」

 美詠の秘所に”の”の字が何度も何度も描かれる。
 印を描かれるたびに「俺の」と言われた。
 最後に蕾の芯をひと突きされて、そこにも小さな“の”の印。
 美詠は立ったまま軽く達した。
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