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序章
7.お医者さんごっこ ◆
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ほのかに立つ石鹸の香り。
拓斗が手をマッサージしている。
長い指の先にある爪は、白い縁を少しだけ残して綺麗な肌色をみせている。
指先の感覚が鋭い彼は指をなるべく良い状態に保ちたいのだ。爪が何かを引っかける感触も嫌う。
日に何度か自分の手指をほぐす彼の動きは、こなれて落ち着いている。
しかし薄く笑っている顔が、少女には爪を研ぐ狼のように見えた。
「やっぱり脱がすんだよね……」
薄笑いが自分へ向けられているように感じる美詠は落ち着かない。
横座りになった手でワンピースの裾をぴったり押さえている。
服を着て、手洗いに行って、少し熱が引いたら、恥ずかしさが膨れあがってしまった。
自らスカートをめくってみせた最初の勢いは影も形もない。
純白の西洋紫陽花も桃色に染まれば趣は変わる。
蜜を含めば香りは変わり、雨が降れば夏日の熱は冷める。
裾を必死に押さえる手で、少女は心に防壁を立てている。
しかし急ごしらえの、中が透けて見える薄い壁。
狼の欲を煽り、壊しがいを感じさせるだけの、ちゃちな守りだ。
そんな彼女に彼が突きつける言葉はひとつしかない。
「脱がすよ」
狼の放つ悪魔の笑いは揺らがない。
爪も牙も研ぎ終えた少年は、ワンピースを押さえる少女の手に自分の手を重ねた。優しく触れながら、言葉をもって拘束する。
「みよみちゃんは脱がなきゃいけないんだよ」
約束をした美詠の負い目を吊るし上げる言葉の鎖。
重なった少年の手が、逃げ場がもうないことを少女に悟らせる。
ちゃちな防壁の中が檻へと変わった。
羊は自身が作った檻の中で追い込まれ、その身で狼を満足させるしか先がない。
それでもただで食べられたくない羊は、最後に一矢の抵抗を放った。
「じゃあ……そしたら、じゃあね……」
「ん?」
「お医者さんならいいよ」
「うん?」
「たっくんがお医者さんなら私を脱がしてもいいよ」
「んー?」
狼は手を離して動きをとめる。
瞳に映る羊の顔をじっと見つめて理解した。
「医者だぞ、俺は」
”お医者さんごっこ”という名のエッチな遊び。魅力的な提案だ。
「うん。じゃあ……いいよ」
イタズラ羊が後ろ足で、ぴょんと、ひと跳ねした。
二人で目を笑わせあって、うなずきあう。
「みよみちゃんは患者さんだな」
「私、病気じゃないよ」
「いや、そうだけど」
拓斗はあやうく噴きそうになった。ここで何でそうくるのかが分からない。
「なら、みよみちゃんは何役になるのさ」
「私は私だよ」
俺だけ役者になれってか。拓斗は笑う。
「わかった、わかった。そのままでいいよ。そしたら、みよみちゃんは病気じゃないのに身体を調べられちゃう子ね」
「えー、なんで」
「女の子だからだよ。女の子は身体を調べられるもんなんだよ」
「……いじわるだ。やっぱりたっくんってそう言うんだ、“女の子は”って」
拓斗の口が白い歯を見せる。
「そうだよ、俺そういうの好きだから。女子は裸にされるんだよ。それで恥ずかしいことされるんだよ」
「男子は?」
「男子はやる側だからなんにも」
そっちが何かやれるならやってみろというオーラが出ている。有無を言わせない気配が美詠の心をチクチク責める。
「みよみちゃん、悔しそうな顔してるよ」
「だってずるいもん」
「そうだよ、俺はずるいよ。怖くなっちゃった?」
「…………」
黙っていると拓斗の手が肩にのった。
立とう、と言われて美詠は一緒に立った。
心の中まで見通して、心臓をつかむような視線に射られている。抱かれそうなほど近い距離から。
「じゃあ脱がすよ。俺は先生だから、みよみちゃんも『です』『ます』って言って話すんだよ。あと先生の言うことは絶対聞くこと」
「うん、わかった……」
一度でコツを覚えた手が背中へまわり、ファスナーをおろした。肩から服に手が入り、美詠の腕や腰に触れながらワンピースを足元まで下ろした。
美詠は再び下着姿で立たされた。服を剥ぐ手はキャミソールにもかかってめくったが、途中でやめて元に戻した。
「……キャミはいいの?」
「うん、いいや。女の子は体を冷やしちゃいけないって聞いたことあるし、そこは残しといて」
「そうなんだ」
緊張で固まりかけていた顔がほつれる。
「それくらい大丈夫だけど」「冷やしちゃいけないところは全部出させられます」などの言葉が一瞬頭をよぎったくらい、気遣われたことが嬉しくて、安心もした。イジワルになっても彼の中は“たっくん”だった。
「あのイスって使えるの?」
遊びの舞台を探していた拓斗は部屋の隅に目をとめた。
座椅子がひとつ置いてある。
ぽつんと、と言うには座面も背もたれも厚いクッションで存在感が大きい。
「あれはお父さんのだから……」
「使うと怒られる?」
「んーん。でもあそこでするのって、なんかちょっと」
美詠は苦笑する。
「なら、みよみちゃんの座布団をイスに敷けばいいよ。そしたらみよみちゃんのイスになるから大丈夫だよ」
変わった理屈だ。
しかし美詠は不思議とその気になった。この世は昔からそういう決まりごとになっている気がした。拓斗の言葉は魔法のように、そうだと思わせる力があった。
「じゃあそうするね」
「そしたらあのイスに座って」
「うん」
座布団を敷いて座ると、言われたとおり座椅子が自分のものになった。
魔法使いが前でにこやかに見下ろしている。
その和やかで場違いな笑みが、美詠に手足をすぼめさせた。
自分の家なのに、これではまるで自分がお客さんだった。
「本当にお医者さんに何かされるみたい」
「本当にされるんだよ。ここは俺の病院だから」
「病院の先生なんだ」
「そうそう。はい、目をつぶって」
「うん」
美詠は目を閉じた。拓斗の声が聞こえる。
ここは病院です。俺は医者です。先生です。わかったら、みよみちゃんは目を開ける。
美詠は目を開けた。
診察室に自分がいて、白衣を着た先生が前にいた。
先生は椅子を指して説明した。
「それはみよみちゃんを捕まえるための、みよみちゃん専用のイスです。みよみちゃんはもう逃げられません。パンツを脱がされて身体を調べられます」
座椅子が冷酷な診察台に切り替わった。
この診察台は美詠に残酷な仕打ちをするところ。
女の子の一番恥ずかしい部分に辱めを与えるところ。
魔法の言葉に美詠は胸と心を踏みつけられた。
しかし潰されはしなかった。踏まれた裏で少し反発する。
「先生」
「はい、なんですか」
「先生はどうしてパンツを脱がして身体を調べるんですか」
先生の顔が薄く笑う。
「決まりだからですね。この病院は女の子の身体を調べる病院です。みよみちゃんは検査に選ばれた子です。女の子だから当然おまんこを調べられます。みよみちゃんのパンツを脱がしておまんこを調べるのは病院の決まりです。先生が好きなだけ調べます。おとなしくしていてくださいねー」
先生の言葉が美詠の下腹部を踏みつける。
子宮と卵巣をぎゅっと踏んで、少女の性ホルモンを無理やり分泌させた。
産道を通ったそれが蜜穴からにじみ出た。
分泌物が薄く広がった粘膜を、言葉はもう一度踏みつける。秘唇も肉の蕾も丁寧に踏み潰した。
「う、うう、ううう……」
小さな反発が招いた結果に美詠はうめいた。
これから行われることはこの世界の決定事なのだ。
それ以上の理由はなくて当然のように行われるのだ。
あなたがどう思おうと関係ありませんよと、先生の目が言っている。
「パンツを脱がします。お尻を持ち上げてください」
先生の手がショーツにかかった。
美詠は腰を浮かせる。そこでハッとした。
もしショーツに愛液の湿りがあったら――。
さっきトイレで拭いたショーツの内側に、今またついてしまっていたら。それを見られたら。
見つけてほしくない。
お漏らしと勘違いされたくない。
汚いと思われたくない。
時間をかけて脱がされたら、それを見つけられてしまうかもしれない。
焦りが美詠の視界をぐちゃぐちゃにした。
ところが心配をよそに拓斗の脱がし方は素早く、あっという間にショーツをおろした。美詠も膝を曲げてそれを助けた。
足から抜かれたショーツが椅子の脇へ除けられる。拓斗はそれに目をやりもしなかった。興味が美詠の体に移っていたのだ。
(よかったあ……)
安堵した体が背もたれに沈む。
座る前から傾いていたリクライニングの背もたれだ。滑り台で寝ているような格好になった。
服とは異なる肌触りが腰にもお尻にも当たっていることに気がついて、美詠の意識はこの場に一気に引き戻された。
あられもない姿の下半身を拓斗がしげしげと見ていた。
太ももと鼠蹊部の描くYの文字の中央に、くっきり現れた縦の割れ目。それは一目で分かるほど深く体の内側に食い込んだ亀裂とも見えるし、左右から身を寄せ合う淫肉の隙間とも見える。
美詠は突き刺るような視線をそこに感じた。
常夏のビーチで浴びる紫外線のように上から刺さって、肌をじりじり焦がす視線。腰を動かしても粘着質についてくる。
拓斗は見とれていた、シンプルに美しい一本のラインに。
なだらかな下腹部から目を下げていくと、そのラインが突如現れるのだ。
全身と比べればわずかな長さのラインなのに目を惹きつけてやまない鮮烈さ。股に刻まれた、たった一本の短い直線が、この身体の性が女であることを証明し、強烈に主張している。
そこから彼が感じるものは愛らしさだった。
「可愛いなー」
口からぽろりとこぼれた本音に美詠の胸はびくんと震えた。拓斗から可愛いと聞いたのは初めてだった。
「えっ。ほんと? そう? そうなの?」
「ほんとだよ。びっくりした。可愛いよ、みよみちゃんのおまんこ」
「はうっ」
美詠は跳ねる心臓を両手で押さえた。拓斗の目つきと声に愛がにじんでいる。
「みよみちゃん、起きないでそのまま寝てて」
「うん……」
寝かされる、ただそれだけのことにも恥ずかしさを感じながら、美詠は起こしかけた身体を背もたれに戻す。
すると熱く焦がされた下半身の肌に、むずがゆい刺激が走った。
拓斗の指が一本スジをなぞっている。ショーツとは違う、直の刺激。
「ひゃああああっ」
美詠は膝を曲げて縮みあがる。その膝がむんずとつかまれた。
「脚を開いてください」
「ええええっ」
「えええじゃないですよ。先生ですよ」
「あ……」
「はい、目をつぶって」
「は、はい」
目を閉じる。視界が暗闇に閉ざされた。声が聞こえる。
みよみちゃんは、ここでおまんこを調べられる女の子。先生の言うことは絶対です。指示には全部従うこと。返事は「はい」だけ。わかったら目を開けて。
目を開くと美詠は診察台にのせられていた。
膝をつかんだ先生がイジワルな顔をしている。
「脚を開いてください」
「はい」
美詠は合わせていた膝を開いた。
座椅子の肘置きにすぐぶつかった。
「もっと開いてください」
「え、もうムリ……です」
「脚を上げて」
「……?」
意味が分からないまま脚を上げる。
すると脚はさらに高く持ち上げられて、ぐいっと大きく開かれた。
「やああああっ」
美詠は叫んだ。
肘置きの上に脚をのせられてしまったのだ。
動くことのできない強制開脚。脚を閉じようとしても、せいぜい肘置きのクッションを凹ませるだけ。
おまけにお尻の穴が正面を向いている。恥ずかしい部分が恥ずかしいポーズですべて見えてしまっているうえに、微笑をたたえた顔がその部分を見下ろしている。
美詠は言葉が出ない口をパクパクさせて喘いだ。
こんなに恥ずかしい格好を、生まれてこのかた想像したことがなかった。
こんな目にあわされるなど、数秒前まで思ってもみなかった。
「良い格好ですね」
「いやぁぁぁ、もぅぅ」
顔を覆おうとして、今度は手が捕まった。体の脇へ退けられる。
「手はそこです。動かしてはダメですよ」
「……恥ずかしい…………です」
「おまんこをちゃんと出させるために、女の子はこの格好にさせるのが決まりです」
「ひ……ひどい、こんなの……」
むせび泣く小さな女の子のようなか弱い声に甘い湿り気が含まれている。
性本能を刺激する成分だ。先生の表情がおそろしく意地の悪いそれへと変貌する。
「そんな声を出してもダメです。みよみちゃんのおまんこ調べを始めます」
「あああああ……」
見下ろす先生の顔も、声も、指も、どこもかしこも楽しげだ。
美詠の身体に刻まれた女の子の性器をイジメたくて仕方ないのだ、仁島拓斗先生は。
拓斗が手をマッサージしている。
長い指の先にある爪は、白い縁を少しだけ残して綺麗な肌色をみせている。
指先の感覚が鋭い彼は指をなるべく良い状態に保ちたいのだ。爪が何かを引っかける感触も嫌う。
日に何度か自分の手指をほぐす彼の動きは、こなれて落ち着いている。
しかし薄く笑っている顔が、少女には爪を研ぐ狼のように見えた。
「やっぱり脱がすんだよね……」
薄笑いが自分へ向けられているように感じる美詠は落ち着かない。
横座りになった手でワンピースの裾をぴったり押さえている。
服を着て、手洗いに行って、少し熱が引いたら、恥ずかしさが膨れあがってしまった。
自らスカートをめくってみせた最初の勢いは影も形もない。
純白の西洋紫陽花も桃色に染まれば趣は変わる。
蜜を含めば香りは変わり、雨が降れば夏日の熱は冷める。
裾を必死に押さえる手で、少女は心に防壁を立てている。
しかし急ごしらえの、中が透けて見える薄い壁。
狼の欲を煽り、壊しがいを感じさせるだけの、ちゃちな守りだ。
そんな彼女に彼が突きつける言葉はひとつしかない。
「脱がすよ」
狼の放つ悪魔の笑いは揺らがない。
爪も牙も研ぎ終えた少年は、ワンピースを押さえる少女の手に自分の手を重ねた。優しく触れながら、言葉をもって拘束する。
「みよみちゃんは脱がなきゃいけないんだよ」
約束をした美詠の負い目を吊るし上げる言葉の鎖。
重なった少年の手が、逃げ場がもうないことを少女に悟らせる。
ちゃちな防壁の中が檻へと変わった。
羊は自身が作った檻の中で追い込まれ、その身で狼を満足させるしか先がない。
それでもただで食べられたくない羊は、最後に一矢の抵抗を放った。
「じゃあ……そしたら、じゃあね……」
「ん?」
「お医者さんならいいよ」
「うん?」
「たっくんがお医者さんなら私を脱がしてもいいよ」
「んー?」
狼は手を離して動きをとめる。
瞳に映る羊の顔をじっと見つめて理解した。
「医者だぞ、俺は」
”お医者さんごっこ”という名のエッチな遊び。魅力的な提案だ。
「うん。じゃあ……いいよ」
イタズラ羊が後ろ足で、ぴょんと、ひと跳ねした。
二人で目を笑わせあって、うなずきあう。
「みよみちゃんは患者さんだな」
「私、病気じゃないよ」
「いや、そうだけど」
拓斗はあやうく噴きそうになった。ここで何でそうくるのかが分からない。
「なら、みよみちゃんは何役になるのさ」
「私は私だよ」
俺だけ役者になれってか。拓斗は笑う。
「わかった、わかった。そのままでいいよ。そしたら、みよみちゃんは病気じゃないのに身体を調べられちゃう子ね」
「えー、なんで」
「女の子だからだよ。女の子は身体を調べられるもんなんだよ」
「……いじわるだ。やっぱりたっくんってそう言うんだ、“女の子は”って」
拓斗の口が白い歯を見せる。
「そうだよ、俺そういうの好きだから。女子は裸にされるんだよ。それで恥ずかしいことされるんだよ」
「男子は?」
「男子はやる側だからなんにも」
そっちが何かやれるならやってみろというオーラが出ている。有無を言わせない気配が美詠の心をチクチク責める。
「みよみちゃん、悔しそうな顔してるよ」
「だってずるいもん」
「そうだよ、俺はずるいよ。怖くなっちゃった?」
「…………」
黙っていると拓斗の手が肩にのった。
立とう、と言われて美詠は一緒に立った。
心の中まで見通して、心臓をつかむような視線に射られている。抱かれそうなほど近い距離から。
「じゃあ脱がすよ。俺は先生だから、みよみちゃんも『です』『ます』って言って話すんだよ。あと先生の言うことは絶対聞くこと」
「うん、わかった……」
一度でコツを覚えた手が背中へまわり、ファスナーをおろした。肩から服に手が入り、美詠の腕や腰に触れながらワンピースを足元まで下ろした。
美詠は再び下着姿で立たされた。服を剥ぐ手はキャミソールにもかかってめくったが、途中でやめて元に戻した。
「……キャミはいいの?」
「うん、いいや。女の子は体を冷やしちゃいけないって聞いたことあるし、そこは残しといて」
「そうなんだ」
緊張で固まりかけていた顔がほつれる。
「それくらい大丈夫だけど」「冷やしちゃいけないところは全部出させられます」などの言葉が一瞬頭をよぎったくらい、気遣われたことが嬉しくて、安心もした。イジワルになっても彼の中は“たっくん”だった。
「あのイスって使えるの?」
遊びの舞台を探していた拓斗は部屋の隅に目をとめた。
座椅子がひとつ置いてある。
ぽつんと、と言うには座面も背もたれも厚いクッションで存在感が大きい。
「あれはお父さんのだから……」
「使うと怒られる?」
「んーん。でもあそこでするのって、なんかちょっと」
美詠は苦笑する。
「なら、みよみちゃんの座布団をイスに敷けばいいよ。そしたらみよみちゃんのイスになるから大丈夫だよ」
変わった理屈だ。
しかし美詠は不思議とその気になった。この世は昔からそういう決まりごとになっている気がした。拓斗の言葉は魔法のように、そうだと思わせる力があった。
「じゃあそうするね」
「そしたらあのイスに座って」
「うん」
座布団を敷いて座ると、言われたとおり座椅子が自分のものになった。
魔法使いが前でにこやかに見下ろしている。
その和やかで場違いな笑みが、美詠に手足をすぼめさせた。
自分の家なのに、これではまるで自分がお客さんだった。
「本当にお医者さんに何かされるみたい」
「本当にされるんだよ。ここは俺の病院だから」
「病院の先生なんだ」
「そうそう。はい、目をつぶって」
「うん」
美詠は目を閉じた。拓斗の声が聞こえる。
ここは病院です。俺は医者です。先生です。わかったら、みよみちゃんは目を開ける。
美詠は目を開けた。
診察室に自分がいて、白衣を着た先生が前にいた。
先生は椅子を指して説明した。
「それはみよみちゃんを捕まえるための、みよみちゃん専用のイスです。みよみちゃんはもう逃げられません。パンツを脱がされて身体を調べられます」
座椅子が冷酷な診察台に切り替わった。
この診察台は美詠に残酷な仕打ちをするところ。
女の子の一番恥ずかしい部分に辱めを与えるところ。
魔法の言葉に美詠は胸と心を踏みつけられた。
しかし潰されはしなかった。踏まれた裏で少し反発する。
「先生」
「はい、なんですか」
「先生はどうしてパンツを脱がして身体を調べるんですか」
先生の顔が薄く笑う。
「決まりだからですね。この病院は女の子の身体を調べる病院です。みよみちゃんは検査に選ばれた子です。女の子だから当然おまんこを調べられます。みよみちゃんのパンツを脱がしておまんこを調べるのは病院の決まりです。先生が好きなだけ調べます。おとなしくしていてくださいねー」
先生の言葉が美詠の下腹部を踏みつける。
子宮と卵巣をぎゅっと踏んで、少女の性ホルモンを無理やり分泌させた。
産道を通ったそれが蜜穴からにじみ出た。
分泌物が薄く広がった粘膜を、言葉はもう一度踏みつける。秘唇も肉の蕾も丁寧に踏み潰した。
「う、うう、ううう……」
小さな反発が招いた結果に美詠はうめいた。
これから行われることはこの世界の決定事なのだ。
それ以上の理由はなくて当然のように行われるのだ。
あなたがどう思おうと関係ありませんよと、先生の目が言っている。
「パンツを脱がします。お尻を持ち上げてください」
先生の手がショーツにかかった。
美詠は腰を浮かせる。そこでハッとした。
もしショーツに愛液の湿りがあったら――。
さっきトイレで拭いたショーツの内側に、今またついてしまっていたら。それを見られたら。
見つけてほしくない。
お漏らしと勘違いされたくない。
汚いと思われたくない。
時間をかけて脱がされたら、それを見つけられてしまうかもしれない。
焦りが美詠の視界をぐちゃぐちゃにした。
ところが心配をよそに拓斗の脱がし方は素早く、あっという間にショーツをおろした。美詠も膝を曲げてそれを助けた。
足から抜かれたショーツが椅子の脇へ除けられる。拓斗はそれに目をやりもしなかった。興味が美詠の体に移っていたのだ。
(よかったあ……)
安堵した体が背もたれに沈む。
座る前から傾いていたリクライニングの背もたれだ。滑り台で寝ているような格好になった。
服とは異なる肌触りが腰にもお尻にも当たっていることに気がついて、美詠の意識はこの場に一気に引き戻された。
あられもない姿の下半身を拓斗がしげしげと見ていた。
太ももと鼠蹊部の描くYの文字の中央に、くっきり現れた縦の割れ目。それは一目で分かるほど深く体の内側に食い込んだ亀裂とも見えるし、左右から身を寄せ合う淫肉の隙間とも見える。
美詠は突き刺るような視線をそこに感じた。
常夏のビーチで浴びる紫外線のように上から刺さって、肌をじりじり焦がす視線。腰を動かしても粘着質についてくる。
拓斗は見とれていた、シンプルに美しい一本のラインに。
なだらかな下腹部から目を下げていくと、そのラインが突如現れるのだ。
全身と比べればわずかな長さのラインなのに目を惹きつけてやまない鮮烈さ。股に刻まれた、たった一本の短い直線が、この身体の性が女であることを証明し、強烈に主張している。
そこから彼が感じるものは愛らしさだった。
「可愛いなー」
口からぽろりとこぼれた本音に美詠の胸はびくんと震えた。拓斗から可愛いと聞いたのは初めてだった。
「えっ。ほんと? そう? そうなの?」
「ほんとだよ。びっくりした。可愛いよ、みよみちゃんのおまんこ」
「はうっ」
美詠は跳ねる心臓を両手で押さえた。拓斗の目つきと声に愛がにじんでいる。
「みよみちゃん、起きないでそのまま寝てて」
「うん……」
寝かされる、ただそれだけのことにも恥ずかしさを感じながら、美詠は起こしかけた身体を背もたれに戻す。
すると熱く焦がされた下半身の肌に、むずがゆい刺激が走った。
拓斗の指が一本スジをなぞっている。ショーツとは違う、直の刺激。
「ひゃああああっ」
美詠は膝を曲げて縮みあがる。その膝がむんずとつかまれた。
「脚を開いてください」
「ええええっ」
「えええじゃないですよ。先生ですよ」
「あ……」
「はい、目をつぶって」
「は、はい」
目を閉じる。視界が暗闇に閉ざされた。声が聞こえる。
みよみちゃんは、ここでおまんこを調べられる女の子。先生の言うことは絶対です。指示には全部従うこと。返事は「はい」だけ。わかったら目を開けて。
目を開くと美詠は診察台にのせられていた。
膝をつかんだ先生がイジワルな顔をしている。
「脚を開いてください」
「はい」
美詠は合わせていた膝を開いた。
座椅子の肘置きにすぐぶつかった。
「もっと開いてください」
「え、もうムリ……です」
「脚を上げて」
「……?」
意味が分からないまま脚を上げる。
すると脚はさらに高く持ち上げられて、ぐいっと大きく開かれた。
「やああああっ」
美詠は叫んだ。
肘置きの上に脚をのせられてしまったのだ。
動くことのできない強制開脚。脚を閉じようとしても、せいぜい肘置きのクッションを凹ませるだけ。
おまけにお尻の穴が正面を向いている。恥ずかしい部分が恥ずかしいポーズですべて見えてしまっているうえに、微笑をたたえた顔がその部分を見下ろしている。
美詠は言葉が出ない口をパクパクさせて喘いだ。
こんなに恥ずかしい格好を、生まれてこのかた想像したことがなかった。
こんな目にあわされるなど、数秒前まで思ってもみなかった。
「良い格好ですね」
「いやぁぁぁ、もぅぅ」
顔を覆おうとして、今度は手が捕まった。体の脇へ退けられる。
「手はそこです。動かしてはダメですよ」
「……恥ずかしい…………です」
「おまんこをちゃんと出させるために、女の子はこの格好にさせるのが決まりです」
「ひ……ひどい、こんなの……」
むせび泣く小さな女の子のようなか弱い声に甘い湿り気が含まれている。
性本能を刺激する成分だ。先生の表情がおそろしく意地の悪いそれへと変貌する。
「そんな声を出してもダメです。みよみちゃんのおまんこ調べを始めます」
「あああああ……」
見下ろす先生の顔も、声も、指も、どこもかしこも楽しげだ。
美詠の身体に刻まれた女の子の性器をイジメたくて仕方ないのだ、仁島拓斗先生は。
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