48 / 58
五がんばり目~ヤンデレ君にご注意~
第48話 依存
しおりを挟む「っ…あれ………ここ、どこ…?」
森本が目を覚ました。
室内に視線を巡らせると、マンションの一室だろうか見知らぬ部屋の内装に首を傾げる。
「なんで俺、こんなところに…」
頭が霞がかった様にはっきりしない。
とりあえず体を起こすが異様に重たく感じた。
ガチャッ
「…?」
ドアの方を見ると男が立っていた。
あの時に見た、高身長の男だ。
「…折戸くんは!?」
気絶する前のことを思い出した森本はベッドから飛び降りて男の元へ駆ける。
しかしあの時の痺れがまだ残っていて力が入らず足がもつれてしまう。
「っ!」
転ぶ、そう覚悟していたが男にしっかり抱きとめられていた。
「まだ動いちゃダメだよ…」
心配そうにこちらを覗き込む態度に、森本は苛立ちを覚えた。
「あなたのせいじゃないですか…!
折戸くんはどこにいるの?!」
「あいつなら無事だよ。
俺の後輩がちゃーんと家に届けてくれたってさ」
ドアから運転手の男が現れ、折戸の安否を教えた。
「ほ、ほんとに?」
「本当。だってこいつの目的、お前だもん」
「目的…?」
言っている意味が分からないと、自分を抱き締めて離さない男の顔を見上げた。
男にしては長い髪の隙間から見える素顔は、森本からしても明らかに若く見えた。
「そうだよ、空汰くん」
鋭い目が、細められる。
「なんで、俺の名前知って…」
「そんなの決まってるよ。
僕たち、友達でしょ?」
そう言って取り出されたスマホには、小野寺と森本のトーク画面が写っていた。
「…っっ!?」
それを見て森本は初めてこの男が小野寺だと認識した。
今まで容姿を見たことも、声を聞いたことも無かったため気づくことが出来なかった。
「ど、どうしてこんなこと…」
「どうして…?
そう聞きたいのはこっちだよ」
「…え?」
「どうして僕を見捨てようとしたの…?
あの人が言ってたんだ。
君はもう僕に会いに来てくれないって」
「そんなこと俺、」
言ってない、そう口にする前に小野寺が遮る。
「だから僕、考えたんだ。
…君を僕のものにしちゃおうって」
「な、何言ってるのかわかんないよ、涼真くん…」
恐ろしいことを幸せそうに語る小野寺に、森本は困惑した表情を浮かべた。
その頬を優しい手付きで撫でながら小野寺は言った。
「理解出来なくていいんだ。
これから身を持って体験するんだから」
「やっ!離して、怖いよ…!」
小野寺は運転手が部屋から出ていくと森本をベッドへ運んだ。
そのまま寝かせようとする小野寺の手を森本は払いのけた。
そしてそのまま逃げようとしたが力強くベッドへ押さえつけられてしまう。
「大人しくしててくれたら、付けないでおこうと思ってたのに…」
そう言いながら取り出したのはベルトのようなものが4つ付いた拘束具。
そんな物が目に入り、森本はより怖がってしまう。
「涼真、くん…?」
「安心して、痛いことは絶対しないから」
「や、やだやだ!!」
森本は激しく嫌がった。
しかし身長差のある2人に揉み合いは成立しない。
「あんまり暴れたら怪我しちゃうよ」
右手首を掴み容易に装着すると、その対になっている方を右足首へ取り付けた。
そうなってしまえばあとの作業は簡単で、森本は四肢を拘束された。
これでは抵抗するどころか歩くことさえ出来ない。
「あ、服脱がせるの忘れちゃった」
「っ…服…?」
「しょーがない、切っちゃおう」
「や…涼真くん…!」
ハサミがスラックスに添えられ、冷たい刃先が肌に当たる。
身動きの取れない状態でそんなことをされれば誰だって体は萎縮する。
「動いちゃだめだよ?」
部屋に布を切る音だけが響く。
森本は声も出せず、ただ息を殺して耐えるしかなかった。
「…良かった、上手く切れたよ」
スラックスだけではなくシャツも切り捨てられ、森本は何も身にまとうものがなくなってしまった。
そんな姿を見た小野寺は愛おしそうに体を撫でる。
「りょ、涼真くん…俺、涼真くんを見捨てる気なんて無いよ?
今日だって、涼真くんに会いに行こうとしてて」
「そんなの知らない…。
僕がどんな気持ちであの部屋で待ってたか、友達の多い君には分からないんだ!」
「確かにこの前は行けなくて本当にごめんって思ってる…。でも、それは風邪を引いてたからってメッセージで送ったじゃん!」
森本はとにかく話を聞いてほしいと願いながら言い放つ。
「だって、嘘かもしれない」
「嘘?」
「僕から離れる為の嘘かもしれないじゃないか」
「そんな嘘、つくわけない…」
もう何を言っても無駄だった。
小野寺は自分の勝手な思い込みを正そうとはしない。
それが本当だと思ってるからだ。
森本もそう理解すると弱々しく否定しながら涙を流した。
「僕には君しかいない、でも君が僕をいらないと言うのなら…こうするしかないよね」
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる