がんばり屋の森本くん

しお子

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五がんばり目~ヤンデレ君にご注意~

第48話 依存

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「っ…あれ………ここ、どこ…?」

森本が目を覚ました。

室内に視線を巡らせると、マンションの一室だろうか見知らぬ部屋の内装に首を傾げる。

「なんで俺、こんなところに…」

頭が霞がかった様にはっきりしない。
とりあえず体を起こすが異様に重たく感じた。

ガチャッ

「…?」

ドアの方を見ると男が立っていた。
あの時に見た、高身長の男だ。

「…折戸くんは!?」

気絶する前のことを思い出した森本はベッドから飛び降りて男の元へ駆ける。
しかしあの時の痺れがまだ残っていて力が入らず足がもつれてしまう。

「っ!」

転ぶ、そう覚悟していたが男にしっかり抱きとめられていた。

「まだ動いちゃダメだよ…」

心配そうにこちらを覗き込む態度に、森本は苛立ちを覚えた。

「あなたのせいじゃないですか…!
 折戸くんはどこにいるの?!」

「あいつなら無事だよ。
 俺の後輩がちゃーんと家に届けてくれたってさ」

ドアから運転手の男が現れ、折戸の安否を教えた。

「ほ、ほんとに?」

「本当。だってこいつの目的、お前だもん」

「目的…?」

言っている意味が分からないと、自分を抱き締めて離さない男の顔を見上げた。

男にしては長い髪の隙間から見える素顔は、森本からしても明らかに若く見えた。

「そうだよ、空汰くん」

鋭い目が、細められる。

「なんで、俺の名前知って…」

「そんなの決まってるよ。
 僕たち、友達でしょ?」

そう言って取り出されたスマホには、小野寺と森本のトーク画面が写っていた。

「…っっ!?」

それを見て森本は初めてこの男が小野寺だと認識した。
今まで容姿を見たことも、声を聞いたことも無かったため気づくことが出来なかった。

「ど、どうしてこんなこと…」

「どうして…?
 そう聞きたいのはこっちだよ」

「…え?」

「どうして僕を見捨てようとしたの…?
 あの人が言ってたんだ。
 君はもう僕に会いに来てくれないって」

「そんなこと俺、」

言ってない、そう口にする前に小野寺が遮る。

「だから僕、考えたんだ。
 …君を僕のものにしちゃおうって」

「な、何言ってるのかわかんないよ、涼真くん…」

恐ろしいことを幸せそうに語る小野寺に、森本は困惑した表情を浮かべた。

その頬を優しい手付きで撫でながら小野寺は言った。

「理解出来なくていいんだ。
 これから身を持って体験するんだから」





「やっ!離して、怖いよ…!」

小野寺は運転手が部屋から出ていくと森本をベッドへ運んだ。
そのまま寝かせようとする小野寺の手を森本は払いのけた。
そしてそのまま逃げようとしたが力強くベッドへ押さえつけられてしまう。

「大人しくしててくれたら、付けないでおこうと思ってたのに…」

そう言いながら取り出したのはベルトのようなものが4つ付いた拘束具。
そんな物が目に入り、森本はより怖がってしまう。

「涼真、くん…?」

「安心して、痛いことは絶対しないから」

「や、やだやだ!!」

森本は激しく嫌がった。
しかし身長差のある2人に揉み合いは成立しない。

「あんまり暴れたら怪我しちゃうよ」

右手首を掴み容易に装着すると、その対になっている方を右足首へ取り付けた。
そうなってしまえばあとの作業は簡単で、森本は四肢を拘束された。

これでは抵抗するどころか歩くことさえ出来ない。

「あ、服脱がせるの忘れちゃった」

「っ…服…?」

「しょーがない、切っちゃおう」

「や…涼真くん…!」

ハサミがスラックスに添えられ、冷たい刃先が肌に当たる。
身動きの取れない状態でそんなことをされれば誰だって体は萎縮する。

「動いちゃだめだよ?」

部屋に布を切る音だけが響く。
森本は声も出せず、ただ息を殺して耐えるしかなかった。

「…良かった、上手く切れたよ」

スラックスだけではなくシャツも切り捨てられ、森本は何も身にまとうものがなくなってしまった。

そんな姿を見た小野寺は愛おしそうに体を撫でる。

「りょ、涼真くん…俺、涼真くんを見捨てる気なんて無いよ?
 今日だって、涼真くんに会いに行こうとしてて」

「そんなの知らない…。
 僕がどんな気持ちであの部屋で待ってたか、友達の多い君には分からないんだ!」

「確かにこの前は行けなくて本当にごめんって思ってる…。でも、それは風邪を引いてたからってメッセージで送ったじゃん!」

森本はとにかく話を聞いてほしいと願いながら言い放つ。

「だって、嘘かもしれない」

「嘘?」

「僕から離れる為の嘘かもしれないじゃないか」

「そんな嘘、つくわけない…」

もう何を言っても無駄だった。
小野寺は自分の勝手な思い込みを正そうとはしない。
それが本当だと思ってるからだ。

森本もそう理解すると弱々しく否定しながら涙を流した。

「僕には君しかいない、でも君が僕をいらないと言うのなら…こうするしかないよね」




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