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五がんばり目~ヤンデレ君にご注意~
第42話 森本の災難
しおりを挟む「進捗具合はどんな感じ?」
数日後の放課後、松城に呼び出された森本は数学準備室にいた。
「えと、LIKEでやり取り出来るようになりました!
部屋越しに俺が声かけないと返信はこないけど…。」
「なるほど。でも少しでもコミュニケーション取れるようになって良かった。
今日呼び出したのはそれを聞きたかったのと、ちょっと手伝ってほしいことがあったんだ。」
「なんですか?」
「これ、洗うの手伝ってくれないかな。」
準備室に入った時から気になっていた水槽のことだった。
「…何に使ったんですか?」
「僕じゃなくて、生物の先生がね。
頼まれちゃったんだ。」
森本は松城の人の良さそうな雰囲気に、職員室であった出来事は純粋に心配されていたのかと心を許し始めていて、小野寺の件に関係ないことでも快く手伝うことにした。
「…ひっ!? 先生!かかってる!水!!」
「あ、ごめんごめん!」
松城が勢いよく出した水が水槽の縁に当たり横にいた森本へ直撃すると、春と言えどまだ冷たい水に驚いて声を上げた。
気を取り直して洗い進めていたが風に当たると少し寒く感じ、終わる頃にはすっかり体が冷えてしまっていた。
「ありがとう。
すごく助かったよ」
しかし嬉しそうに礼を言われると気にならなくなるのだった。
そしてそれが終わると例のごとく小野寺の家へ向かう森本だったが、駅へ歩いている最中ににわか雨に遭遇しさらにびしょ濡れになってしまう。
「うぅ…今日は災難だよぉ!」
ここからだとコンビニに行くよりも駅の方が近かったため、半泣き状態で走り出した森本。
「…空汰ちゃん!」
「星場先輩…」
まるで捨てられた犬のような森本を発見した星場はそばにいた女子から離れ駆け寄った。
「あーあ、こんなに濡れちゃって。」
持っていたハンカチで顔を拭いてやるも頭から水が垂れてくるためキリがない。
「ありがとうございます…。
いいんですか?あの人」
「うん。傘がないから駅まで送ってほしいって言われただけだからいーの。
てか、空汰ちゃんてこっち方面なの?」
「あ、今日は寄るところがあって…」
そのまま森本は事情を話した。
「そうだったんだ。
じゃあ今日は僕も一緒に行ってもいい?」
「でも雨降ってるしほんとに駄弁るだけだからつまらないかもしれないですよ?」
「だからだよ!
君傘持ってないみたいだし、あんまり油断してると体調崩すよ?」
「は、はい…」
心配してくれている星場に面食らいながら甘えることにした森本。
そして二人で小野寺宅へ出向くのだった。
「涼真くん!
今日はねバスケ部員になる予定の先輩連れてきたんだ!」
「どうもー。」
「………。」
「あれ、涼真くーん?
…おかしいな、いつもならメッセージで返してくれるのに。」
「やっぱり僕来ちゃまずかったかな。
ごめんね、突然お邪魔しちゃって…」
最近はドアの前で声をかければメッセージのやり取りが出来ていたのに星場が来てしまったせいか、その後も声をかけたり話をしたりしてみるも一度も返事が返ってくることはなかった。
しばらく粘ってみたが一切反応がなかったため、仕方なく二人は帰っていく。
そして翌日、森本は濡れた服を着て過ごしていたため体が冷えきり風邪を引いてしまうのだった。
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