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四がんばり目~惚れたあの娘は男のコ~
第35話 折戸とバスケ
しおりを挟む森本は星場から入部届けを受け取り折戸と合流していた。
女の子から連絡があったらしく、星場とは用事が終わってすぐに別れた。
「あのさ、せっかくならどこか寄らない?」
「…いい、ですよ。」
本当はバレる可能性があるためすぐ帰りたかったが良い言い訳も浮かばず、それを考えている時間にも耐えられないため行くことにした。
「ソラちゃんは行きたいとこある?」
「えっと、じゃあマックで…。」
そして二人はマックの店内にいた。
「ソラちゃん遠慮しすぎ、このくらい奢るのに。」
「あはは…。」
ただでさえ女装で騙してるようなものなのにそこまでしてもらったら申し訳なさすぎる。
「てかさ、念のために聞くけど本当に星場となんもなかった?」
「う、ほんとだよ!」
「おっかしーな…。
俺めっちゃ鼻良いから分かるんだけど、スゲーエロい匂いするんだよね。
ソラちゃんから。」
「っ!? ゲホッゲホッ!!」
「ごめん!! あー女の子に何言ってんだよ俺…。」
察しが良すぎるというか本当に鼻が利くのか、指摘されたことに驚きすぎてポテトが喉につまる。
折戸はそれに焦り、何度も謝りながら背中を軽く叩いてくれた。
「あれ?お前、折戸じゃねーか。」
突然声をかけてきたのは大学生くらいの3人組。
その3人を見た瞬間、折戸の表情が一変した。
「…ソラちゃん、出よう。」
「おいおい逃げんのか?」
「お前のせいでこっちは推薦つぶれたんだぞ。」
「一言あってもいいんじゃねえか?」
「あんたらのせいで、俺はバスケ出来なくなったんだ。
お互い様だろ。」
「なんだと!?」
どうやら知り合いのようだが見るからに不穏な空気が流れている。
一人に詰め寄られた折戸は臆せず身構え、手を出されたら確実に喧嘩になるだろう。
「ま、待って!
何があったか知らないけど、折戸くんダメだよ!
一緒に出よう?」
「なんだ、彼女か?
あーそういえばお前のせいで彼女とも別れることになったんだよなあ。」
視線を森本に移した男がいやらしく笑った。
「その子に手出したらマジで潰す…。」
「てめぇ…!」
「折戸くん!!」
グイッ!
「っ!ソラちゃん!?」
「あ!逃げやがった!!」
いよいよキレる寸前だった折戸の手を森本は素早く掴んで店内から出ていった。
3人組の一人が追いかけようとしたが、仲間に止められる。
「やめとけ、そんなことより良い考えがある…。」
「はぁっ、はぁっ、…。」
「そ、ソラちゃん、足早…。」
二人は人目の多いところまで走り、奴らが追ってこないことを確認すると立ち止まった。
折戸は森本の足の早さに驚きながら肩で息をする。
「…折戸くん!!
バスケやってたの!?」
息を整えるのもそこそこに開口一番森本は目を輝かせて聞いていた。
「そこ…?
はぁあ…、中学までだよ。今はテニス部。」
「なんでやめちゃったの?」
「やめたんじゃなくて、学校に部活なかったし。」
「あのね、もし…もし、部活始まるとしたら入らない?」
「…入らない。」
折戸は小さく呟くように答えた。
「なんで…?」
「テニス部の方がモテそうじゃん?」
つい森本は問いかけてしまった。
すると困ったように笑いながら、恐らく本当ではない理由を言う折戸。
「てか台無しになっちゃったなー。
そうだ。今度本格的にデートしない?」
「折戸くん…。」
この話はもうしたくないと言わんばかりに話題を変えられるがどこか憂いを帯びた表情にそれ以上は追求できなかった。
「次で最後!
その後会うかどうかはソラちゃんが決めていいからさ。」
「…うん。」
過去に何があったか、バスケをしなくなった原因を聞けるかもしれないと思い森本は頷くのだった。
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