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三がんばり目~色男に色仕掛け~
第31話 色仕掛け
しおりを挟む数日後の放課後、森本は菊地と視聴覚室にいた。
女装で色仕掛け作戦の準備のためだ。
「…この制服、誰から借りたんですか…。」
誰のとも知れぬ女子の制服を着ながら、鼻歌混じりに化粧を施す菊地へ疑問をぶつけた。
「頼れるトモダチからね。
森本くんこそ、まさか学校で女装したいなんてね~。」
「したいってわけじゃ…。
だってあの先輩の連絡先も知らないし、こうするしかないじゃないですか。」
「面白いからいいんだけどね。…よし、出来たよ。」
鏡を渡されるとあの時の自分が現れ、やるしかないと意気込みながらお礼を言う。
「ありがとうございます!
これであの人にオッケーもらってきます!」
「それはいいけど、ちゃんと可愛く誘惑しなくちゃダメだよ?」
「う…、分かってます…。」
もちろん色仕掛けなどしたこともされたこともない森本は、菊地にいろいろ教えてもらった。
その内容を思い出すと少し顔が赤くなる。
「がんばってね。」
「はい…!行ってきます!」
応援されるとよりやる気が出たのか森本は元気に去っていった。
「最近転校してきた人ってどこにいるか分かりますか?」
二年生の教室へ行ってみたが星場の姿は見えず、教室内にいた生徒へ聞く森本。
不思議なことに女装すると自分じゃない人間になった気持ちになり、見知らぬ上級生にも臆せず話すことが出来る。
「あぁ、星場のこと?
たぶん美術室じゃね、美術部の女子騒いでたし。」
それを聞くと礼もそこそこに美術室へと向かった。
教室前で中を覗くと女子に囲まれる星場の姿があり、深呼吸をして入り込んでいく。
「すみません、星場先輩とお話ししたいんですが…。」
「…一年生だね、どうしたの?」
名前を呼ばれると星場は立ち上がり森本の近くに寄ってきてくれた。
自分に気づいていないようで、この前とは少し違う物腰の柔らかさを感じる。
「あの、出来れば二人きりになれるところで…。」
「いいよ。
皆ごめんね、また遊びに来るから。」
そう言うと不満そうな女子に微笑みかけてなだめると、森本の肩を抱いて準備室へ移動した。
「ここなら、二人きりだよ?」
「…先輩、あの…っ!!」
森本は足を一歩踏み出すと無造作に床に転がっていた木材につまずいてしまい、受け止めようとした星場を押し倒した。
「はは、すごい積極的だね。
僕を襲おうとしてるの?」
「ち、ちが…!
その、星場先輩は私のことどう思いますか…?」
つい強く否定しかけたが自分が女装していることを思い出し、少し恥ずかしそうに問いかける。
「…可愛い子だと思うよ。
何故か初めて会った気がしない…。」
その言葉にどぎまぎするが、星場が微笑みながら頬を撫でてきたので大丈夫そうだと続ける。
「嬉しいです…。
私、先輩のこと喜ばせたくて。」
そう言うと森本は思い切って抱き締めた。
星場はそんな行動にも動揺していないのか、優しく頭を撫でて受け入れている。
まだまだ余裕そうな様子に、大胆な行動へと移っていく森本。
少しはだけているシャツの間に顔を埋め、鎖骨辺りにキスを落とし舌を這わせた。
「っ…そんなことしていいの?」
「ダメ、ですか…?」
緊張と恥ずかしさで潤んだ瞳で星場を見つめると、むしろ嬉しそうな顔で額にキスを返してくる。
「全然。年下の子に襲われるのは初めてだから、新鮮。」
相当な場数を踏んでいるのか、年下でない女性にはあるようだ。
そう考えると高校生らしからぬ色気にも納得だった。
森本はもっと激しい行為をしなくてはダメだと、ベルトへ手をかける。
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