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二がんばり目~ドSコンビの同級生~
第8話 榎本の想い
しおりを挟むペット4日目
昼休み、森本は虎谷の命令で売店に来ていた。
人気メニューはすぐ売り切れてしまうため、休憩時間が始まったばかりの今が一番混雑している。
「こ、これじゃ買えないよ~…」
いつもは登校途中にコンビニで昼食を買ったものを食べているため、ほとんど売店に来ない森本はあまりの人に困惑した。
がんばって割り込んでみたものの、注文の声が通らず揉みくちゃになっていく。
「わ!?」
そんな中力強い腕に引き寄せられ、とある人物の体にぶつかった。
「ってて…」
「悪い。そんなに強くしたつもりはなかったんだが…」
「え、榎本くん??」
声がする方を見上げると、榎本がいた。
今度は優しく肩を抱き、 周囲の生徒から守ってくれている。
「何が欲しいんだ?」
聞き取りやすいように耳元で言われ、くすぐったさに肩をすぼめる森本。
複数のメニューを伝えると、大きな声で注文してくれた。
身長も高く大柄な榎本の声はよく通るし目立っていた。
「…ありがとう」
無事品物を受け取った二人は虎谷たちがいる屋上へ向かった。
「榎本くんのおかげで虎谷くんたちのお昼買えたし、本当に助かったよ~!」
「そうか…」
なんだか少し複雑な表情をしている榎本。
そんな様子を見て森本は、元気を出して欲しい気持ちと感謝の気持ちから、お礼をしたいと考えていた。
「あ!榎本くん、これあげる!」
ポケットから取り出したのは猫のストラップ。
「なんだ、急に」
「昨日の帰り、ガチャガチャ引いたらシークレット出たんだ!
榎本くん動物好きそうだし、今日のお礼。」
「…なんで知ってるんだよ……」
「実はケータイの待ち受けとかご飯のとき動物の動画流してるのとか見てたんだ…っ!わわ」
それ以上喋るなという気持ちで森本の髪をぐしゃぐしゃにしてやり、
ストラップを無造作に受け取った。
「へへ、良かった。」
昨日のことを全てではないが、早川から聞いていた榎本は無邪気に笑う森本を見て、胸が締め付けられた。
「森本…俺、お前のことが」
込み上げた気持ちを抑えきれず、言葉にしようとした瞬間ー。
「おっせーよ!てか、なーんでエノも一緒なわけ??」
「っ!早川…」
後ろから声をかけられ冷静になった榎本。
多少のイラつきを声色に乗せるが早川は気にしない。
「ごめん!売店で時間かかっちゃって」
「早くしねーとタニがうるせーぞ」
そして隣を早川に奪われ二人の時間は終わってしまう。
榎本はため息をついて窓の外を眺めた。
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