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二がんばり目~ドSコンビの同級生~
第5話 ペット就任
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朝、森本は教室のベランダに出て登校してくる生徒たちを眺めながら虎谷のことを考えていた。
そこに水野がやって来て、顔を覗き込んでくる。
「今日は難しそうな顔してる…やっぱり部に入ってくれそうな奴なんてそうそう見付かんないよなぁ」
「うーん…いるようないないような…」
「はぁ?なんだよその曖昧な感じ」
「…陽平は虎谷って人知ってる?
ネクタイの色が青だったから一年だと思うんだけど」
「げっ!虎谷って、めちゃくちゃヤンキーな奴だろ!?俺ますますお前のこと理解できない…」
「ほっといてよ!てか虎谷くんのこと知ってるの?何組?」
「おいおい、マジでやめとけって!怪我でもしたらどうすんだよ」
「大丈夫だよ!お願い!」
「なっ!……はぁぁ、お前…」
水野は森本を虎谷と接触させなくなかったが、あまりの必死さに負けて話し始めた。
「五組だよ。
俺たち二組だから体育の授業ん時も被んないもんなー、奇数組の連中は気が気でなかったらしいぜ」
「なんで?」
「逆になんでこんなことも知らないんだよ!
イジメだってさ。なんでもあいつ、ターゲットを決めたらそいつが潰れるまでイジメ抜くらしい」
森本はバレー部での一件を思い出し、恐らくそれは本当なのだろうと眉をひそめて呟いた。
「なんでそんなことするんだろう…」
「俺が知るわけないだろ、とにかくそんな奴と関わるなんて自殺行為だぜ」
「うん…でもやっぱり噂だけじゃ分かんないから、もう少し様子を見てみる」
「マジ…?」
そのことが事実だとしても、バスケ部設立のために少しの希望も捨てたくない。
例え自分が傷付いても好きなことが出来るなら構わないと思っていた。
ーーー
森本は昼休みに早速五組に向かってみた。
ちょうど教室から出てきた虎谷とその友達を見つけ、声をかける。
「虎谷くん!」
「あー…顔面ボールの」
特に興味がなさそうな声色で返し、ダルそうに壁に寄りかかって森本を見下ろす虎谷。
それに反し興味津々な様子で身を乗り出したのは、不良そうなわりに人当たりの良い顔をした友達。
「なに?こいつ新しいペット?」
「ちげーよ、昨日言ってたやつだよ」
「俺、森本空汰!名前言ってなかったよね」
「へー!こいつが…小さいねー、空汰くん。
俺は望月 千紘。」
望月はへらへら笑いながら、自分よりはるかに小さい三橋の頭をぐしゃぐしゃと弄り回して自己紹介を返した。
「わ、やめて」
「…んで、何しに来たわけ?」
「部活のこと、もう一回話したくて」
「あーバスケ?…いいぜ、別に」
「え、ほんと!?」
「渚、バレーの次はバスケ?」
あの時とはうって変わった態度に驚きつつ嬉しそうな森本だったが、それを尻目に望月は何か含みのある笑いをしている。
「ただ…お前が俺のペットになってくれるならな」
「ぺ、ペット?」
予想外の条件に脳が追い付かない。
「あぁ。俺の言うことには絶対服従、尻尾振って媚びてればそれでいい」
「こび…」
具体的なことが何も分からず、さすがの森本もつい考えてしまう。
それを見た虎谷は更に条件を加えた。
「なら、試しに一週間続けられたら入ってやるよ」
「うん!それならがんばる!」
期限つきならがんばれると即答する森本。
それがどんなにキツイことなのか想像もせずに。
「あーあ、やめた方がいいと思うけどなぁ」
望月は相変わらず笑顔でこっそり呟いてみるも、森本には聞こえていなかった。
「じゃあ連絡先これだから、またねー」
あらかじめ用意していた紙を虎谷に渡し、周囲の不穏な眼差しにも気付かず教室に戻って行く。
「なーんかイジメ甲斐のありそうな奴。さて、何日もつかあいつらと賭けてこよーっと」
「賭けられるくらい長くもってくれればいいけどな」
二人は楽しげに屋上へと向かった。
そこに水野がやって来て、顔を覗き込んでくる。
「今日は難しそうな顔してる…やっぱり部に入ってくれそうな奴なんてそうそう見付かんないよなぁ」
「うーん…いるようないないような…」
「はぁ?なんだよその曖昧な感じ」
「…陽平は虎谷って人知ってる?
ネクタイの色が青だったから一年だと思うんだけど」
「げっ!虎谷って、めちゃくちゃヤンキーな奴だろ!?俺ますますお前のこと理解できない…」
「ほっといてよ!てか虎谷くんのこと知ってるの?何組?」
「おいおい、マジでやめとけって!怪我でもしたらどうすんだよ」
「大丈夫だよ!お願い!」
「なっ!……はぁぁ、お前…」
水野は森本を虎谷と接触させなくなかったが、あまりの必死さに負けて話し始めた。
「五組だよ。
俺たち二組だから体育の授業ん時も被んないもんなー、奇数組の連中は気が気でなかったらしいぜ」
「なんで?」
「逆になんでこんなことも知らないんだよ!
イジメだってさ。なんでもあいつ、ターゲットを決めたらそいつが潰れるまでイジメ抜くらしい」
森本はバレー部での一件を思い出し、恐らくそれは本当なのだろうと眉をひそめて呟いた。
「なんでそんなことするんだろう…」
「俺が知るわけないだろ、とにかくそんな奴と関わるなんて自殺行為だぜ」
「うん…でもやっぱり噂だけじゃ分かんないから、もう少し様子を見てみる」
「マジ…?」
そのことが事実だとしても、バスケ部設立のために少しの希望も捨てたくない。
例え自分が傷付いても好きなことが出来るなら構わないと思っていた。
ーーー
森本は昼休みに早速五組に向かってみた。
ちょうど教室から出てきた虎谷とその友達を見つけ、声をかける。
「虎谷くん!」
「あー…顔面ボールの」
特に興味がなさそうな声色で返し、ダルそうに壁に寄りかかって森本を見下ろす虎谷。
それに反し興味津々な様子で身を乗り出したのは、不良そうなわりに人当たりの良い顔をした友達。
「なに?こいつ新しいペット?」
「ちげーよ、昨日言ってたやつだよ」
「俺、森本空汰!名前言ってなかったよね」
「へー!こいつが…小さいねー、空汰くん。
俺は望月 千紘。」
望月はへらへら笑いながら、自分よりはるかに小さい三橋の頭をぐしゃぐしゃと弄り回して自己紹介を返した。
「わ、やめて」
「…んで、何しに来たわけ?」
「部活のこと、もう一回話したくて」
「あーバスケ?…いいぜ、別に」
「え、ほんと!?」
「渚、バレーの次はバスケ?」
あの時とはうって変わった態度に驚きつつ嬉しそうな森本だったが、それを尻目に望月は何か含みのある笑いをしている。
「ただ…お前が俺のペットになってくれるならな」
「ぺ、ペット?」
予想外の条件に脳が追い付かない。
「あぁ。俺の言うことには絶対服従、尻尾振って媚びてればそれでいい」
「こび…」
具体的なことが何も分からず、さすがの森本もつい考えてしまう。
それを見た虎谷は更に条件を加えた。
「なら、試しに一週間続けられたら入ってやるよ」
「うん!それならがんばる!」
期限つきならがんばれると即答する森本。
それがどんなにキツイことなのか想像もせずに。
「あーあ、やめた方がいいと思うけどなぁ」
望月は相変わらず笑顔でこっそり呟いてみるも、森本には聞こえていなかった。
「じゃあ連絡先これだから、またねー」
あらかじめ用意していた紙を虎谷に渡し、周囲の不穏な眼差しにも気付かず教室に戻って行く。
「なーんかイジメ甲斐のありそうな奴。さて、何日もつかあいつらと賭けてこよーっと」
「賭けられるくらい長くもってくれればいいけどな」
二人は楽しげに屋上へと向かった。
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