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第140話 割りと普通な
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日差しは強く焼け付くよう。
その強い日差しを青々とした木々が遮り、熱せられた空気は湖面を駆け抜けてきたひんやりとした涼風がかき消してくれる。
大きな湖……。
三色そぼろ弁当を食べながら大きな湖を眺める。
直径は1キロ以上……。
形は上空から見た限り円形状……。
そして、湖の中央には小島がある。
小さな……。
どのくらいだろうか……。
数十メートルくらいか?
緑に覆われた小島……。
まーるい、半球体……、まるで人工物のような……、グレーのコンクリートのような突起物、柱も見える……。
「うーん……」
予想通り、空中衝突に関連する何らの手がかりだろうか。
「東園寺、この場所にも名前を付けておいたほうがいいんじゃないのか?」
和泉がお弁当を食べながら話を振る。
「そうだな……、何がいいだろうか……」
東園寺もお弁当を食べながら、遠くの小島を見ながら答える。
「いつも通り、割と普通なナビーフィユリナ記念オアシスとかいいんじゃないか?」
と、人見が答える。
また始まった……、私をネタにした名前……、馬鹿にしやがって……。
「賛成、いい名前だと思うよ」
佐々木まで賛同する。
「それじゃ、決定だな、この場所は、割と普通なナビーフィユリナ……」
「はんたい、はんたーい!」
東園寺の言葉を遮って大きな声で言う。
「なんだ、ナビーフィユリナ……、反対するなら何か代案を出せ……」
とか、彼が言う……。
「だ、代案?」
「そうだ、反対なら、何か他の名前を出せ」
「う……、きゅ、急に言われも……」
と、考え込む。
「うーん……」
何かいい名前……。
「ないなら、割と普通なナビーフィユリナ記念オアシスでいくぞ……」
あ!
「ここはオアシス! つまり、ユートピア、理想郷! そこから取って、シャングリラにしよう! そうしよう!」
なんとかアイデアを捻り出す。
「おお……」
「ラグナロクに続いてシャングリラ……」
「東園寺が好きそうなネーミングだ……」
「いいな……、シャングリラ……」
予想外に好評。
「よし、それではこのオアシスの名称をシャングリラとする」
と、東園寺がそう言ってくれる。
「賛成、異議なし!」
「いいね、シャングリラ」
「ナビーのネーミングセンスには脱帽だよ」
「えへん」
褒められて鼻高々。
「ここはシャングリラ……」
改めて綺麗な湖を見る。
うん、いいね。
自然と笑みがこぼれる。
やがて、昼食も終り、私たちは後片付けを始める。
「よいしょっと」
空の弁当箱を白くまのリュックサックに片付け、それをシャペルが座っている横に置く。
「見張っててね」
「ピポロポ」
と、私に言葉にそう返事してくれる。
「それでは探索を始めるか」
東園寺も後片付けを終えそう話す。
「どうする、東園寺? 先にあの島を調べるか? それとも湖の外周におかしなものがないか調べるか?」
と、人見が言う。
「そうだな……、まず、湖の外周からやるか、もしかすると、人が住んでいるかもしれんからな」
「ああ、わかった……」
「じゃぁ、やるか、二手に分かれて調べよう、俺と人見は右から、和泉と佐々木は左から行ってくれ」
「おう」
「了解」
と、役割分担も済み、それぞれが探索に出掛ける。
「あれ、私は?」
「ナビーフィユリナ、おまえはここで荷物の見張りでもしていてくれ、どうせ、この大きさだ、すぐ終わる」
「はぁい」
返事をして、シャペルの隣に座り、
「いってらっしゃぁい」
と、声をける。
みんなが手を振って応えてくれる。
その背中を見送る。
見えなくなると、今度は周囲の砂浜を見る。
その砂を手ですくい、風に流す。
さらさらとキメの細かい砂漠の砂だ……。
木陰になる場所にはか細い草花がまばらに生えている……。
「うーん……」
さらに、ぼんやりと、湖の中央にある半球体の小島を眺める。
「どう見ても、人工物だよね、あれ」
「ピポロポ」
その言葉にシャペルも同意してくれる。
生い茂る草木の間から光が漏れる。
おそらく、なんらかの金属が太陽の光を反射しているものと思われる。
「よし」
私は立ち上がり、お尻に付いた砂や枯れ草を払う。
そして、波打ち際まで歩いていく。
小さな波が寄せては返し、寄せては返す……。
相変わらず、小さな魚が泳いでいる姿を見ることができる。
さらに、その先、無数のさざなみが太陽の光をキラキラと反射させる。
「うーん……、距離は500メートルくらいかぁ……」
と、ちょっと背伸びをして、両手で手傘を作って小島を見る。
「距離が500メートルだとすると……、あの小島の大きさは直径50メートルくらいかぁ……」
もちろん、湖面の下、水の中に沈んでいる部分はもっと大きいかもしない。
「早くみんな戻ってこないかぁ……、あの小島に行ってみたい……」
と、思っていると……。
「なんか来た……」
ゆらゆらと湖面に浮かぶのは……。
「バルケッタ……」
そう、小船。
それが、こちらに向かって、ゆっくりとやってくる。
「バルケッタ……」
そう、テストに出た問題だ……、スペイン語で小船はバッテラ、イタリア語で小船はバルケッタ……、では、おーじろーは? という問題……。
この問題をよく思い出すけど。今だにその答えがわからない……。
「そもそも、おーじろーってなんなの……?」
謎だ……。
と、そんなことを考えている間に小船は近づいてきて、砂浜に乗り上げる。
「おお……」
私は小船に駆け寄り、その中を覗き込む。
「おお……」
全長3メートルくらいの小船……。
かなり新しくて綺麗、しかも、ちゃんとオールまでついてる。
「おお……」
私は船に乗り込む。
砂浜に乗り上げてしまっているので揺れはない。
「いいね……」
デッキ部分は乾いていて、水漏れはない。
「漕ぎ手座も綺麗」
私はそこに座って色々触って強度を確かめる。
「おお、ちゃんとしてる……」
さらに、漕ぎ手座に横になる。
「お空、真っ青……」
横になりながら大空を見上げる。
「ああ……、気持ちいい……」
早くみんな帰ってこないかな、この船であの小島に行けるのに……。
「眠くなってきた……」
三色そぼろ弁当をお腹いっぱい食べたせいか、睡魔に襲われる。
「寝て待ってよう……」
と、まぶたを閉じる……。
すぐに眠りに落ちる。
ああ……、気持ちいい……、ぶらん、ぶらん、揺れるのも気持ちいい……、あの子供たちの訓練場にある揺り椅子、ロッキングチェアみたいな感じ……。
「ぶらん、ぶらん……」
ああ、船もいいなぁ……。
海賊船の船長になりたいなぁ……。
「よーそろー……、ぶらん、ぶらん……」
どのくらい寝ていただろうか……、5分くらいな気もするし、1時間くらい寝ていた気もすする……。
「ぶらん、ぶらん……」
ちゃぷん……。
下ろしてした手、その指先に水が触れる。
「冷たい……」
と、反射的に手を上げる。
「うーん……?」
目を開けて、そして、船底、デッキ部分を見る……。
水面がキラキラと太陽の光を反射させる……。
「ええっ!?」
と、びっくりして上体を起こす。
デッキ、船の中が水浸し!
ちゃぷん、ちゃぷんしてる!
「ど、どうして!?」
と、私は漕ぎ手座の上に立ち周囲を見渡す。
「流されてる!」
そこは湖の中、砂浜から100メートル以上流された沖合いだった。
「ど、どうして……」
しかも、船底に穴が空いていたのか、沈没しかかっている。
「ナビー!?」
「なんで、そこにいるんだ!?」
「どうしたんだ、その船は!?」
と、砂浜のみんなが私に気付いて大きな声で叫ぶ。
「みんなぁ! 助けてぇ! 船が沈んじゃう!」
両手を大きく振ってみんなに助けを求める。
「待ってろ、ナビー!」
「いまいくぞ!」
と、みんながバシャバシャと湖の中に入り、そのまま飛び込むように水泳に切り替える。
「は、早く!」
船の中にどんどん水が入ってくる。
それと共に、視界がどんどん下がっていき、湖面が近づいてくる。
「し、沈む!」
その強い日差しを青々とした木々が遮り、熱せられた空気は湖面を駆け抜けてきたひんやりとした涼風がかき消してくれる。
大きな湖……。
三色そぼろ弁当を食べながら大きな湖を眺める。
直径は1キロ以上……。
形は上空から見た限り円形状……。
そして、湖の中央には小島がある。
小さな……。
どのくらいだろうか……。
数十メートルくらいか?
緑に覆われた小島……。
まーるい、半球体……、まるで人工物のような……、グレーのコンクリートのような突起物、柱も見える……。
「うーん……」
予想通り、空中衝突に関連する何らの手がかりだろうか。
「東園寺、この場所にも名前を付けておいたほうがいいんじゃないのか?」
和泉がお弁当を食べながら話を振る。
「そうだな……、何がいいだろうか……」
東園寺もお弁当を食べながら、遠くの小島を見ながら答える。
「いつも通り、割と普通なナビーフィユリナ記念オアシスとかいいんじゃないか?」
と、人見が答える。
また始まった……、私をネタにした名前……、馬鹿にしやがって……。
「賛成、いい名前だと思うよ」
佐々木まで賛同する。
「それじゃ、決定だな、この場所は、割と普通なナビーフィユリナ……」
「はんたい、はんたーい!」
東園寺の言葉を遮って大きな声で言う。
「なんだ、ナビーフィユリナ……、反対するなら何か代案を出せ……」
とか、彼が言う……。
「だ、代案?」
「そうだ、反対なら、何か他の名前を出せ」
「う……、きゅ、急に言われも……」
と、考え込む。
「うーん……」
何かいい名前……。
「ないなら、割と普通なナビーフィユリナ記念オアシスでいくぞ……」
あ!
「ここはオアシス! つまり、ユートピア、理想郷! そこから取って、シャングリラにしよう! そうしよう!」
なんとかアイデアを捻り出す。
「おお……」
「ラグナロクに続いてシャングリラ……」
「東園寺が好きそうなネーミングだ……」
「いいな……、シャングリラ……」
予想外に好評。
「よし、それではこのオアシスの名称をシャングリラとする」
と、東園寺がそう言ってくれる。
「賛成、異議なし!」
「いいね、シャングリラ」
「ナビーのネーミングセンスには脱帽だよ」
「えへん」
褒められて鼻高々。
「ここはシャングリラ……」
改めて綺麗な湖を見る。
うん、いいね。
自然と笑みがこぼれる。
やがて、昼食も終り、私たちは後片付けを始める。
「よいしょっと」
空の弁当箱を白くまのリュックサックに片付け、それをシャペルが座っている横に置く。
「見張っててね」
「ピポロポ」
と、私に言葉にそう返事してくれる。
「それでは探索を始めるか」
東園寺も後片付けを終えそう話す。
「どうする、東園寺? 先にあの島を調べるか? それとも湖の外周におかしなものがないか調べるか?」
と、人見が言う。
「そうだな……、まず、湖の外周からやるか、もしかすると、人が住んでいるかもしれんからな」
「ああ、わかった……」
「じゃぁ、やるか、二手に分かれて調べよう、俺と人見は右から、和泉と佐々木は左から行ってくれ」
「おう」
「了解」
と、役割分担も済み、それぞれが探索に出掛ける。
「あれ、私は?」
「ナビーフィユリナ、おまえはここで荷物の見張りでもしていてくれ、どうせ、この大きさだ、すぐ終わる」
「はぁい」
返事をして、シャペルの隣に座り、
「いってらっしゃぁい」
と、声をける。
みんなが手を振って応えてくれる。
その背中を見送る。
見えなくなると、今度は周囲の砂浜を見る。
その砂を手ですくい、風に流す。
さらさらとキメの細かい砂漠の砂だ……。
木陰になる場所にはか細い草花がまばらに生えている……。
「うーん……」
さらに、ぼんやりと、湖の中央にある半球体の小島を眺める。
「どう見ても、人工物だよね、あれ」
「ピポロポ」
その言葉にシャペルも同意してくれる。
生い茂る草木の間から光が漏れる。
おそらく、なんらかの金属が太陽の光を反射しているものと思われる。
「よし」
私は立ち上がり、お尻に付いた砂や枯れ草を払う。
そして、波打ち際まで歩いていく。
小さな波が寄せては返し、寄せては返す……。
相変わらず、小さな魚が泳いでいる姿を見ることができる。
さらに、その先、無数のさざなみが太陽の光をキラキラと反射させる。
「うーん……、距離は500メートルくらいかぁ……」
と、ちょっと背伸びをして、両手で手傘を作って小島を見る。
「距離が500メートルだとすると……、あの小島の大きさは直径50メートルくらいかぁ……」
もちろん、湖面の下、水の中に沈んでいる部分はもっと大きいかもしない。
「早くみんな戻ってこないかぁ……、あの小島に行ってみたい……」
と、思っていると……。
「なんか来た……」
ゆらゆらと湖面に浮かぶのは……。
「バルケッタ……」
そう、小船。
それが、こちらに向かって、ゆっくりとやってくる。
「バルケッタ……」
そう、テストに出た問題だ……、スペイン語で小船はバッテラ、イタリア語で小船はバルケッタ……、では、おーじろーは? という問題……。
この問題をよく思い出すけど。今だにその答えがわからない……。
「そもそも、おーじろーってなんなの……?」
謎だ……。
と、そんなことを考えている間に小船は近づいてきて、砂浜に乗り上げる。
「おお……」
私は小船に駆け寄り、その中を覗き込む。
「おお……」
全長3メートルくらいの小船……。
かなり新しくて綺麗、しかも、ちゃんとオールまでついてる。
「おお……」
私は船に乗り込む。
砂浜に乗り上げてしまっているので揺れはない。
「いいね……」
デッキ部分は乾いていて、水漏れはない。
「漕ぎ手座も綺麗」
私はそこに座って色々触って強度を確かめる。
「おお、ちゃんとしてる……」
さらに、漕ぎ手座に横になる。
「お空、真っ青……」
横になりながら大空を見上げる。
「ああ……、気持ちいい……」
早くみんな帰ってこないかな、この船であの小島に行けるのに……。
「眠くなってきた……」
三色そぼろ弁当をお腹いっぱい食べたせいか、睡魔に襲われる。
「寝て待ってよう……」
と、まぶたを閉じる……。
すぐに眠りに落ちる。
ああ……、気持ちいい……、ぶらん、ぶらん、揺れるのも気持ちいい……、あの子供たちの訓練場にある揺り椅子、ロッキングチェアみたいな感じ……。
「ぶらん、ぶらん……」
ああ、船もいいなぁ……。
海賊船の船長になりたいなぁ……。
「よーそろー……、ぶらん、ぶらん……」
どのくらい寝ていただろうか……、5分くらいな気もするし、1時間くらい寝ていた気もすする……。
「ぶらん、ぶらん……」
ちゃぷん……。
下ろしてした手、その指先に水が触れる。
「冷たい……」
と、反射的に手を上げる。
「うーん……?」
目を開けて、そして、船底、デッキ部分を見る……。
水面がキラキラと太陽の光を反射させる……。
「ええっ!?」
と、びっくりして上体を起こす。
デッキ、船の中が水浸し!
ちゃぷん、ちゃぷんしてる!
「ど、どうして!?」
と、私は漕ぎ手座の上に立ち周囲を見渡す。
「流されてる!」
そこは湖の中、砂浜から100メートル以上流された沖合いだった。
「ど、どうして……」
しかも、船底に穴が空いていたのか、沈没しかかっている。
「ナビー!?」
「なんで、そこにいるんだ!?」
「どうしたんだ、その船は!?」
と、砂浜のみんなが私に気付いて大きな声で叫ぶ。
「みんなぁ! 助けてぇ! 船が沈んじゃう!」
両手を大きく振ってみんなに助けを求める。
「待ってろ、ナビー!」
「いまいくぞ!」
と、みんながバシャバシャと湖の中に入り、そのまま飛び込むように水泳に切り替える。
「は、早く!」
船の中にどんどん水が入ってくる。
それと共に、視界がどんどん下がっていき、湖面が近づいてくる。
「し、沈む!」
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