【完結】歪の檻にて囚われた美しき彼女の罪と罰、その末路とは

天代智

文字の大きさ
上 下
41 / 60

慧 side

しおりを挟む
 ・・・・


 鬼だ、鬼だと、やたら騒ぐ女がいた。名前は確かショウコ。そう、祥子という名前だ。彼女は事件当時、ずっと怯えていて、自らは何も動こうとしない女だった。人に言われて動く。すべてに対し、受け身の女。そして、責任そのものを酷く恐れていた女だった。

 終始、鬼だと騒いでいたから、そんなに鬼から逃れたいのなら、とっとと動け、こっちを助けろ、と。私は心の中で叫んでいた。

 あれはあれで可哀想な女だったのだろう。しかし私にとっては、ただ鬱陶しいだけの女だった。

「あなたは……鬼って信じます?」

 私は目の前の男にそう尋ねた。何の脈絡もなく、唐突に発した私の質問に、男は戸惑う様子を見せた。まあ、当然の反応だな。

 私は男の返事を待たずに続けた。

「実はあの廃墟には、鬼がいたんです。その鬼は、当初は一人……いや一匹でした」

 鬼の単位がわからないから、とりあえず匹にした。“人”は人につくものだ。それとは分けたかった。

 その鬼がすべての始まり。すべての元凶だった。

「それからですね。人間だった者が一匹、もう一匹と、鬼となって増えていきました。まるで鬼ごっこみたいにね」

 何という連鎖反応だろう。あのまま人間でいてくれたらよかったのに。そうしたら、あの鬼を止められたのかもしれないのに。

 彼らは狂った。いや、元から狂っていたのか。ともかく、彼らは人であることを辞めた。

「なんて、ね」

 私は冗談だ、と口角を持ち上げた。

「でも、あの事件がすべて、鬼という化け物による仕業だと思えていたら、じゃあ仕方ないよねで済んだんですかね……」

 男は答えない。私もそれ以上は、言えなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

終焉の教室

シロタカズキ
ミステリー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【朗読の部屋】from 凛音

キルト
ミステリー
凛音の部屋へようこそ♪ 眠れない貴方の為に毎晩、ちょっとした話を朗読するよ。 クスッやドキッを貴方へ。 youtubeにてフルボイス版も公開中です♪ https://www.youtube.com/watch?v=mtY1fq0sPDY&list=PLcNss9P7EyCSKS4-UdS-um1mSk1IJRLQ3

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

処理中です...