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第24話:「まずは一緒に出かける約束から」
しおりを挟む昨日はお休みをいただき、ありがとうございましたm(_ _)m
ありがとうございましたと言いながら、本日も少しはみ出してしまいましたね…もう時期、仕事が落ち着くので早くもっと時間が取れるようにしたいところです。
ゴタゴタな愛錵ではございますが、少しでもこちら楽しんでいただけますように。心を込めまして。
+++
「あの、これに一緒に行きませんか?」
「これって…」
ヴェリきゅんから渡されたものを覗き込み少し驚いた。
「温泉…?」
「はい。実は先ほど商店街へ買い物に行ったら、3000円ごとにお買い上げで引ける福引きをやっていたんです。そういったものをするのは初めてでしたのでドキドキワクワクしながら引いたんですけど、まさかの一等の温泉旅館ペア宿泊チケットを引いてしまって…別の意味で心臓がバクバクしました…!」
その時のことを振り返るようにヴェリきゅんは頬を紅潮させている。
「すごいじゃない…!えー!温泉とか子どもの頃に家族で行った時、以来だな~でも、本当にこれ一緒に行ってもいいの?」
「も、もちろんです…!響さんだからいいんです!」
チケットを持っていた手をヴェリきゅんに両手で握られる。
俺が驚いて固まっていると、ヴェリきゅんはハッとした顔をして慌てて俺の手を離していた。
「す、すす、すみません…!こんな……ッ!」
恥ずかしそうに赤くなる顔を見て、俺はキュンキュンしながらヴェリきゅんに対する愛おしさが込み上げてきて自然と笑みを溢していた。
「俺もヴェリきゅんと温泉、行けたらすごく嬉しい」
そう告げて笑うと、ヴェリきゅんもすごく嬉しそうに笑ってくれた。
こうして、俺たちは突然ことながらも一緒に休みを合わせて温泉旅館へ泊まりに行くことになったのだった。
+++
「…で、無事に旅館へ行く約束を取り付けたんだね?」
「はい!お休みの日もお互いに合うものに決めました!」
ヴェリくんは張り切ったように言うとカウンター拭きを再開させた。
ヴェリくんの横で麗さんが何やらパソコンで自分のブランド関連の仕事をしながら俺たちの話に参加してくる。
「よかったじゃないの。作戦会議の内容を実践させる為に二人でどこかに行きなさいと言ったのはワタクシたちだけど、まさか温泉旅館への宿泊チケットなんて大物を引き当てるとは、やっぱりヴェリキュスはもってるのね」
「そっそんなことは…!」
「謙遜することなんてないよ。オレも一等とか引き当ててみたい~あ、でもどうせなら宝くじ当てたいな…」
「モモみたいに強欲じゃあ、何も当たらなそうね」
「ひどいっすよ、麗さん!」
軽口を言い合い、ふと隣を見るとヴェリくんが不安そうな顔をしていることに気がついた。
「どうした?ヴェリくん」
「あっいえ、その…響さんと出かけられるってなって嬉しい反面、少し不安になってしまって」
「え、なんで…?」
「旅館へ行くことに対してだけじゃないんです。最近、私のことを少しでも好きになってもらいたくて、いろいろ行動してしまっているけれど、響さんからしたらご迷惑になってるんじゃないかって、ふとした時に不安になるんです」
この間もとんだ勘違いをしてしまいましたし…とこの間の響くんのお姉さんを響くんの彼女と勘違いしてしまった時のことを思い出してしまったようでセルフでヴェリくんが古傷を抉っている。
────ペルシカ!こっちだよ…!
ベルギアと再会したことで思い出した前世の記憶。
オレは前世、貴族であるベルギアの家に代々忠誠を誓い、側で護衛の役目を果たしてきた家柄の生まれだった。
幼い頃からベルギアの側にいて、この愛しい存在を守るのだと胸に誓って。
忠誠心は次第に恋心へと変わっていって、でもお互いに家柄のこともあり、生涯想いを伝えることは叶わなかったけれど。
だからこそ、ヴェリくんのこの自分が抱く気持ちは相手に迷惑がかかるんじゃないかという想いは痛いほどわかる。
ヴェリくん的には怖くて不安かもしれないけど…
前世、想いを告げられずに後悔した身としては自分の心が赴くままに後悔のないようにしてほしいと勝手ながら思う。
……それに、どこからどう見ても二人とも両思いだしね!!
「響くんの様子を見てる感じ、ヴェリくんのこと迷惑になんて思ってないと思うよ。なんせ、響くんにとってヴェリくんは推しだしね~あ、そうか」
オレは、とあることに気がつき、ポンと手を叩いた。
「ヴェリくんが推しだからこそ、響くんはそういう方向にいかないのか」
「ああ、確かにそうかもしれないわね」
同意するように頷いた麗さんの様子に麗さんが思うなら、やっぱりそうなのかなと思う。
「えっ!?一体、どういうことですか……!!?」
焦ったようにオレに詰め寄るヴェリくん。
この事実を伝えるのは、ヴェリくんにとって良くないことかもしれない。ヴェリくんのMPが減ってしまう可能性がある。
どうしたものかと考えるオレをよそに、麗さんは躊躇いもなく言ってしまった。
「ヴェリキュス。世の中には、推しにガチ恋…つまり推し相手に対して本気で恋をする人もいるわ。でもね、推しと自分を交えない人もいるの。推しは尊いから自分と絡めて考えちゃいけないってね」
「じゃ、じゃあ響さんは…」
「もしかすると、アナタは尊いものだからって恋愛対象として意識していない可能性もあるわ」
「そ、そんな…!でも、確かにそうかもしれない…」
ヴェリくんはショックを受けたように青ざめている。
この間、ルメアーノさんとベルギア含めた五人で作戦会議をした時は酔ってたのもあって、こんな話出てこなかったもんな~
「響くん、線引いてるように見えないけど、一応その線も考えておいた方がいいかもね。もし、そうだったとしても、この間の作戦会議で話してたことを実践してみたらいいと思うよ。それがきっかけで、そういう風に意識してくれるかもしんないし」
「そうよ。ワタクシたちが一緒に考えて出し合った案なんだもの。きっと上手くいくわ。無理のない程度に実践なさい」
麗さんが元気づけるようにヴェリくんの肩を叩いている。
この人は美貌とカリスマ性から一瞬、ドライに見えるけど案外アツい人なのだ。
「そうですね…!とにかく実践してみます。ありがとうございます!」
ヴェリくんの響くんに対する気持ちの大きさの表れのようにヴェリくんは強く強く頷いていた。
「さあ!もうそろそろ、オープンの時間よ。さっさと準備しましょう!」
「あ、本当っすね。オレ、そういえばバックヤードに名札忘れちゃったんで、取ってきますね」
「わかったわ。なるべく早く戻ってね」
「はい!」
バックヤードへ戻り、自分のところのロッカーを開ける。
すると、携帯にメッセージがきたようで画面が光っていた。
「誰からだ…?」
何気なくアプリを開いて驚いた。
件の響くんからだった。
「なになに?ヴェリきゅんと温泉とか死ぬんだけど、どうしよう…?相談に乗ってくれ……?」
お前もか!!と叫ばなかったオレを誰か褒めて欲しい。
オレは呆れからくる疲れにより少しため息を吐くと、静かに携帯の電源を消した。
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そして一番近くで見守られる位置。
これが腐女子だったら、妄想が暴走して大変なことになりそうな🤣
でもヴェリくん、本当に持ってます✨
その波に乗って頑張って👊😆🎵
響さんは、少し落ち着こうw嬉しくてたまらないのはわかるけれど🤭楽しい思い出になるといいですね🥰
元•悪役令息の心の叫び(笑)
やはり記憶は飛んでいたようですね。響さん、内心残念に思っていたりして🤣
そして保護者?の神様たち、ちゃっかりイチャイチャ🤭
でも、この人達のおかげもあって、ヴェリくん、本音をさらけ出す事が出来るようになりました。前は遠慮ばかりでしたものね。
日本の空気は肌に合っていたようで良かったです。
初恋のままならなさに、ジレンマのたまるヴェリくんですが、心強い味方が4人もいるので、めげずにアタックしてほしいです。
響さん、素敵な人だけど鈍感だから……もしかして、この鈍さで逃してきた恋もあったりして😅
ヴェリくん、頑張って👊😆🎵
これで付き合ってないなんて信じられないです本当に笑
ノア吉様
ご感想、お送りくださりありがとうございます!✨
そうですね(笑)完全に付き合っているようにしか見えないので、付き合ってなくてこれなら付き合ったら一体どうなるんだ…という彼らです😂