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第16話:「とあるカップルは心配性」
しおりを挟む皆様、お世話になっております。
愛錵芽久郎です!
本日も遅刻してしまい、本当に申し訳ありませんm(_ _)m本日、お休みを利用して書き溜めておりますので明日には通常の時間通りに投稿できると思います!
今回のお話も読んでいただいた方に楽しんでいただきますように!
心を込めまして。
+++
「そうか。お、れは…ヴェリきゅんだから好きなのか」
気がついた事実に俺が呆然と呟くと、片喰さんは深く息を吐いた。
「ようやく…気がついたのね」
優しい眼差しをしながら、どこか呆れたように苦笑いをしていた。
「俺って。さっきも話してましたけど…そんなに、わかりやすいんですね。俺、一応は社会人なのになぁ~」
嘘をつくのが得意でないことは自分でもよく理解していたが…こういったことがわかりやすいのは、さすがにマズイと思うんだよな。
純粋に俺が恥ずかしいし!
「わかりやすいことは決して悪いことじゃないわよ」
「そうなんですかねぇ……」
「ワタクシは、どちらかといえば、わかりやすい人の方がいいわ。だってその方が浮気されても、すぐに見抜けるじゃない」
「俺、別に浮気とかしないんですけど…」
「それでもよ。誠実な人の方がヴェリキュスにはいいもの」
そうして笑う姿は、まるでヴェリきゅんを兄弟のように思っているようだった。
「ヴェリきゅんのことを結構、気にかけているんですね」
「そうね。同じ世界から来た人間だからというのもあるのだろうけど、あの子を見ているとなんだか…ほっとけないのよね」
「はは。その気持ち、すごくわかります」
「そうよね。アナタなんて、別の世界から気にかけて実質、保護するくらいだものね」
和やかに紅茶を飲みながら、片喰さんと会話をする。
ある程度、ラリーを続けると片喰さんが改めて切り出してきた。
「アナタはヴェリキュスが推しがどうとか関係なく、好きだと気がついたのよね?」
「…!はい、その通りです」
「じゃあ、それを踏まえて確認したいのだけれど。アナタはヴェリキュスと結ばれたいという気持ちはあるの?」
「それは…正直、まだ気持ちに気がついたばかりで、よくわからないんです」
「そうよね…ワタクシが悪かったわ。変に急かすようなことをして、ごめんなさい。余計なお世話だとは思ったのだけれど、もしもアナタがヴェリキュスとの未来を望むのなら協力してあげたいと思ったの」
「片喰さん……」
「ワタクシは前の世界で、あの子と生まれた時代も違うから、あの子と面識があったわけじゃないけど…どこか放っておけないのよね。ワタクシは、ずっとあの子に寄り添えるわけじゃない。あの子の生い立ちや過去を知っているのは、ワタクシとアナタとルメアーノ、限られた人間しかいないでしょう?アナタがヴェリキュスを好きなのなら、あの子の人生に寄り添うパートナーとしては適任だもの。もちろん、ヴェリキュスの意志を尊重しなければならないから無理矢理、くっつけるつもりはないのだけれど…アナタになら、あの子を託したいと勝手ながら思ったのよ」
「そこまでヴェリきゅんのことを心配してたんですね」
「そうよ。とんだお節介ババアでしょ?」
「そんなこと思いませんよ。ヴェリきゅんは、あまり家庭環境に恵まれなかったようですし、こうやって親身になってくれる人がいるのは…きっと、幸せなことだと思うから」
「アラ、アナタ。意外といいこと言うじゃない」
「俺はいつもいいこと言ってますよ!」
「フフ、冗談よ」
片喰さんは、ころころと楽しそうに笑った。
紅茶がなくなる頃になると徐に立ち上がる。
「そろそろアナタを帰さないとね。突然、脈絡もなく飛び出して来たんでしょう?あの子、とても心配していると思うわ」
「そうですね!ヴェリきゅん、朝ごはんも作ってくれていたのに悪いことしちゃったな…」
「連絡はきてたりしないの?」
「気を遣ってくれているのか、特に何もきていないんです。でも、ヴェリきゅんのことだから、ものすごく心配してくれてると思うんです。早く帰らないと」
「今回はアナタが勝手に出てきたことだけれど、ワタクシがアナタを突然呼び出して連れてったことにしてあげるわ。じゃないと、余計なこと考えそうだもの。あの子」
「余計なことって…?」
「自分がアナタに失礼なことしたんじゃないかって、おそらく心配していると思うわよ?だって、会話の途中で飛び出して来たんでしょう?」
「…っ!本当ですね…どうしよう、ヴェリきゅんに余計な心労を与えてしまった……最低だ、俺」
「過ぎてしまったことは仕方がないわ。とにかく、言い訳を考えてあるからワタクシにちゃんと合わせなさいよ」
「わかりました…」
俺と片喰さんは、ヴェリきゅんが待つ家へと向かった。
家へ帰ると案の定、とても心配した様子のヴェリきゅんがいた。
「響さん…!どこに行っていたんですか!心配しました…」
「ヴェリきゅん…心配かけて、本当にごめんさい」
俺は申し訳なくて玄関の扉を開いたまま、玄関先で深々と頭を下げた。
「そ、そんな!頭を上げてください!心配していましたけど、そこまでの謝罪を求めてないですよ」
「ううん。ヴェリきゅんには心配かけちゃったしさ。それにすごく、不安にさせたと思う。自分の行動を省みると自分勝手な行動だったなって思うから…これくらいして当然だよ」
「響さん…」
「ここまで反省してるから、響のこと許してあげてくれる?」
「片喰さん……!!」
ヴェリきゅんは、突然に現れた片喰さんに酷く驚いているようだった。
「お疲れ様です。どうして片喰さんがここに…」
「ワタクシが響と以前から約束していたのよ。ルメアーノに渡すプレゼントを一緒に探して欲しくてね。それをこの子はすっかり忘れて、約束のことを突然思い出したから慌てて飛び出したのよ。本当、傍迷惑な子よね」
「響さん、そうだったんですか?!」
「えっと…そうなんだよ。俺、慌てちゃっててさ。ヴェリきゅんに何も言わずに出てきちゃったんだよね。本当にごめんね」
「そういうことでしたら、気にしないでください。俺が勝手に心配してただけなので…それに片喰さんは時間に厳しい方ですからね。焦る気持ちもわかります」
「アラ、随分と言うじゃない。ヴェリキュス?」
「ハッ、しまった!片喰さん、すみません…!」
「フフ、いいのよ。時間に厳しいのは本当のことだもの」
「寛大な御心、ありがとうございます。モモさんが遅刻した時に説教されている片喰さんが、すごく印象的だったものでしたら、つい…」
「モモは基本的に真面目なのだけれど、時々やらかすのよね」
「この間もお皿割られてましたもんね」
「ええ、あれは酷かったわ。六枚も割ったんだもの」
片喰さんのおかげで、楽しそうに笑うヴェリきゅん。
その姿を見て、俺はホッと胸を撫で下ろした。
(本当に片喰さんのおかげだな…今度、何かお礼をしなくちゃ)
その後、片喰さんがお仕事で帰られるまで俺たちは何気ない会話を続けたのだった。
+++
響の家から車に戻ると、ルメアーノが助手席に乗っていた。
「おかえり、ルメアーノ」
「ただいま、麗」
ワタクシは運転席に乗り込むと、ルメアーノとキスを交わした。
「お仕事はひと段落ついたの?」
「ああ、しばらくは麗といられるよ」
「嬉しいわ。さっそく、旦那様の為にも美味しい手料理を振る舞わなくっちゃ」
「麗のご飯は美味しいからね、楽しみだ」
そう言って嬉しそうに笑うルメアーノに、温かい感情が湧き出てくる。
「アナタからの提案通り、彼らに発破を掛けてきたわ」
「ありがとう、さすが麗だね。麗に任せて本当に良かったよ。手間をかけて悪かったね」
「あの子たちのことはワタクシも気になっていたからいいのよ。彼らには幸せになってもらいたいもの」
「あの子たちのことは、同胞が気にしていたからね。出来るだけ同胞の力になってあげたいんだ。本当に麗のしてくれることは、とても助かっているよ」
「同胞って、ヴェリキュスを救いたいと願った神様のことよね?」
「そう。同胞はずっと彼のこと気にかけていたから」
「ずっと不思議だったのだけれど、アナタたちルメアーノの種族は、ワタクシのような番を見つけられない限り人々のいる地上には赴けないのよね?でも、同胞の方は本来の人型ではない鳥の姿とはいえ、ヴェリキュスと面識があったとルメアーノから聞いたけど…どうして、同胞の方は番がいないのにそれができるの?」
「ああ、そうか。我々は本来、地上には降りられない存在。番のいる場所にしか降りられない存在だからね。どうしてなのかと気になってしまうよね。なんというか、同胞は…特別なんだよ」
「特別?」
「そう。同胞はね、本人は知らないけれど番はとうの昔にどこの誰だか、わかっているんだ」
「え?じゃあどうして、同胞の方と番は結ばれないの?それに、どうして本人には教えてあげないの?あと、同胞の方は好きな姿で地上を降りられるなら自ずと番のことを見つけられるはずよね?」
「それがね。番として同胞の管轄の世界で生まれるはずだった魂は逸れてしまって、同胞のいる世界とは別の世界で生を受けてしまったんだ」
「それじゃあ……!」
「そうなんだ。番とはおそらく、出会うことは叶わないんだ。自分の管轄としていない世界のことは見ることも知ることもできないからね」
「なるほど、ルメアーノたちは同胞の方を思って教えていないのね。それと同胞の方が特別なことに関係あるの?」
「そう。我々、種族たちは同胞のことを哀れに思ったんだ。番と出会うことが叶わない代わりに、せめてもと我々は力を出し合って我々の種族の長に祈りを捧げたんだ。そして、同胞は特別な力を手に入れたんだよ。地上に干渉する力を。でも、同胞は真面目だからね。たまに気晴らしに地上に降りることはあっても。ほとんどはずっと、見守っているだけなんだ」
「ヴェリキュスのことは本当に例外中の例外なのね」
「その通りだよ」
ルメアーノは自分が何も力になってあげられないことに、悔やむ気持ちがあるのだろう。力無く笑っていた。
「ルメアーノは、同胞の方の番の存在は知っているの?」
「ああ、もちろん知っているよ。だって───」
番である彼は、この世界に存在しているのだから。
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